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シンポジウム

組織委員会の企画のほか、会員より公募し、採択された102テーマのシンポジウムを開催します。
  • シンポジウム日程表(PDF)
  • シンポジウム一覧
    1S1a 細胞死
      オーガナイザー:長田 重一(京都大学)・米原 伸(京都大学)
    1S2a チャネルと細胞接着の接点における新展開
      オーガナイザー:藤吉 好則(京都大学)・月田 早智子(大阪大学)
    1S3a 転写調節と生体機能
      オーガナイザー:益見 厚子(国立感染症研究所)・内海 文彰(東京理科大学)
    1S4a Beyond antibodyという研究領域
      オーガナイザー:杉村 和久(鹿児島大学)・藤井 郁雄(大阪府立大学)
    1S5a シトクロムP450基礎研究と医療との接点
      オーガナイザー:荻島 正(九州大学)・榊 利之(富山県立大学)
    1S6a 生命の起原と初期進化:生化学研究の現状
      オーガナイザー:山岸 明彦(東京薬科大学)・木賀 大介(東京工業大学)
    1S7a 行動をもたらす分子の生化学
      オーガナイザー:内匠 透(広島大学)・裏出 良博(大阪バイオサイエンス研究所)
    1S8a 器官発生における細胞間相互作用
      オーガナイザー:宮島 篤(東京大学)・田中 稔(東京大学)
    1S9a GFPから見える世界
      オーガナイザー:柳川 右千夫(群馬大学)・濱 裕(理化学研究所)
    1S10a 寄生原虫の独特なゲノム・オルガネラ進化
      オーガナイザー:野崎 智義(国立感染症研究所)・佐々木 成江(名古屋大学)
    1S11a エンドサイトーシスによる細胞機能の制御
      オーガナイザー:駒田 雅之(東京工業大学)・石戸 聡(理化学研究所)
    1S12a 細胞表層組織化の統合的理解を目指して
      オーガナイザー:藤原 敬宏(京都大学)・木下 専(名古屋大学)
    1S13a タンパク質膜透過装置の構造とダイナミックな機能
      オーガナイザー:阪口 雅郎(兵庫県立大学)・森 博幸(京都大学)
    1S14a 食品科学・環境科学分野におけるターゲットタンパク質の構造生物学
      オーガナイザー:田之倉 優(東京大学)・三木 邦夫(京都大学)
    1S15a ポストゲノムシーケンス時代: 機能未知タンパク質群の機能発見のチャンス到来!
      オーガナイザー:倉光 成紀(大阪大学)・由良 敬(お茶の水女子大学)
    1S17a S9 セリンプロテアーゼの構造、機能から応用へ
      オーガナイザー:辻 明彦(徳島大学)・伊藤 潔(長崎大学)
    1S18a 天然変性タンパク質による分子認識機構の解明を目指して
      オーガナイザー:佐藤 衛(横浜市立大学)・西村善文(横浜市立大学)
    1S19a レスベラトロールに関する最近の知見
      オーガナイザー:井上 裕康(奈良女子大学)・堀尾 嘉幸(札幌医科大学)
    1S1p リン酸化と細胞応答
      オーガナイザー:後藤 由季子(東京大学)・佐谷 秀行(慶應義塾大学)
    1S2p イノシトールリン脂質研究の新展開
      オーガナイザー:竹縄 忠臣(神戸大学)・佐々木 雄彦(秋田大学)
    1S5p 圧力摂動による柔らかい構造生物学 Soft Structural Biology using Pressure Perturbation
      オーガナイザー:赤坂 一之(近畿大学)・仲宗根 薫(近畿大学)
    1S6p 無脊椎動物における自然免疫:感染微生物の認識、情報伝達、排除の分子機構
      オーガナイザー:川畑 俊一郎(九州大学)・倉田 祥一朗(東北大学)
    1S7p ナノバイオロジー、ナノケミストリー
      オーガナイザー:吉村 成弘(京都大学)・渡邊 朋信(大阪大学)
    1S8p 「運動器」形成・再生のための分子基盤
      オーガナイザー:開 祐司(京都大学)・小守 壽文(長崎大学)
    1S9p テトラスパニンの生化学 〜その機能と疾患との関わりにおける新展開〜
      オーガナイザー:中西 徹(就実大学)・宮戸 健二(国立成育医療センター)
    1S10p 酵素の隠された反応を理解することで見える世界
      オーガナイザー:植野 洋志(奈良女子大学)・楯 真一(広島大学)
    1S11p タンパク質修飾による遺伝子発現制御のクロストーク
      オーガナイザー:大熊 芳明(富山大学)・伊藤 敬(長崎大学)
    1S12p 蛋白質凝集とその生体に与える影響
      オーガナイザー:M田 大三(神戸大学)・後藤 祐児(大阪大学)
    1S13p 細胞の分裂・分化と高次生命現象
      オーガナイザー:藤森 俊彦(基礎生物学研究所)・木村 暁(国立遺伝学研究所)
    1S14p 天然物生合成研究の新展開:生合成系の分子解剖から分子構築へ
      オーガナイザー:佐藤 文彦(京都大学)・福崎 英一郎(大阪大学)
    1S15p 動植物のオルガネラ・微生物で機能する膜輸送体解析法の新展開
      オーガナイザー:魚住 信之(東北大学)・前島 正義(名古屋大学)
    1S17p 有機物形成から生物進化へ-地球における生命構造と反応の発展-
      オーガナイザー:白井 浩子(岡山大学)・池原 健二(奈良佐保短期大学)
    1S19p 網羅的解析、さてその次は?
      オーガナイザー:日和佐 隆樹(千葉大学)・朝長 毅(医薬基盤研究所)
    2S1a タンパク質品質管理とレドックス制御
      オーガナイザー:永田 和宏(京都大学)・稲葉 謙次(九州大学)
    2S2a プロテオリシスによる多様な生理機能とその破綻による病態
      オーガナイザー:田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)・反町 洋之(東京都臨床医学総合研究所)
    2S3a 金属・小分子ネットワークによる遺伝情報発現制御
      オーガナイザー:五十嵐 和彦(東北大学)・佐上 郁子(京都府立大学)
    2S7a 血栓症の分子メカニズム:最近の進歩
      オーガナイザー:宮田 敏行(国立循環器病センター)・堀内 久徳(京都大学)
    2S8a 翻訳されうる21番目のアミノ酸、セレノシステインを含有するタンパク質研究のブレーク・スルー
      オーガナイザー:高橋 和彦(北海道薬科大学)・江崎 信芳(京都大学)
    2S9a 生命システムの理解と制御にむけた統合的・合成的アプローチ
      オーガナイザー:齋藤 博英(京都大学)・油谷 浩幸(東京大学)
    2S11a 糖鎖生物学研究-他分野から糖鎖へ
      オーガナイザー:小堤 保則(京都大学)・西原 祥子(創価大学)
    2S12a ノンコーディングRNAが制御する多様な機能
      オーガナイザー:古川 貴久(大阪バイオサイエンス研究所)・中川 真一(理化学研究所)
    2S13a Dissection of Signaling Mechanism to Cancer by Transgenic Mouse Model Approach
      オーガナイザー:武藤 誠(京都大学)・成宮 周(京都大学)
    2S14a 植物の成長生理とメンブレントラフィック
      オーガナイザー:西村 いくこ(京都大学)・嶋田 知生(京都大学)
    2S17a 中心体の新たな機能:シグナル伝達の拠点から細胞分化・移動まで
      オーガナイザー:多賀谷 光男(東京薬科大学)・柳 茂(東京薬科大学)
    2S19a 発がんの新しい分子基盤
      オーガナイザー:間野 博行(自治医科大学)・畠山 昌則(北海道大学)
    2S1p 生物時計と生体リズム
      オーガナイザー:岡村 均(京都大学)・影山 龍一郎(京都大学)
    2S2p 幹細胞とエピジェネティクス
      オーガナイザー:古関 明彦(理化学研究所)・岩間 厚志(千葉大学)
    2S3p プリオンの感染と進化 −プリオンはどこまで分ったか?−
      オーガナイザー:桑田 一夫(岐阜大学)・田中 元雅(理化学研究所)
    2S7p 遺伝子発現のセルバリア:核膜の機能・構造理解とバリア克服
      オーガナイザー:斉藤 寿仁(熊本大学)・今本 尚子(理化学研究所)
    2S8p 新たなアミノ酸関連酵素研究への挑戦!! 〜構造機能解析から産業利用まで〜
      オーガナイザー:高木 博史(奈良先端科学技術大学院大学)・稲垣 賢二(岡山大学)
    2S9p 生物化学・医療データからの有用情報の抽出と予測問題への適用
      オーガナイザー:岡本 正宏(九州大学)・江藤 望(宮崎大学)
    2S11p 糖鎖のもつユニークな生物学的機能と疾患
      オーガナイザー:木下 タロウ(大阪大学)・遠藤 玉夫(東京都老人総合研究所)
    2S12p 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム
      オーガナイザー:稲田 利文(名古屋大学)・大野 睦人(京都大学)
    2S13p 生命科学における血管新生研究のインパクト
      オーガナイザー:佐藤 靖史(東北大学)・高倉 伸幸(大阪大学)
    2S14p 光合成生物の光受容と情報伝達
      オーガナイザー:河内 孝之(京都大学)・荒木 崇(京都大学)
    2S17p トランスポーター研究のパラダイムシフト −ヒトシステムの理解を目指して−
      オーガナイザー:森山 芳則(岡山大学)・金井 好克(大阪大学)
    2S19p Gタンパク質共役受容体(GPCR)研究の新展開
      オーガナイザー:植田 充美(京都大学)・石黒 正路(サントリー生物有機科学研究所)
    3S1a 低分子量GTPaseから眺めるメンブレントラフィック研究の新展開
      オーガナイザー:中山 和久(京都大学)・福田 光則(東北大学)
    3S2a 活性酸素シグナル伝達の分子制御
      オーガナイザー:赤池 孝章(熊本大学)・住本 英樹(九州大学)
    3S3a 生体鉄機能の多様性―生命と分子からのメッセージ
      オーガナイザー:石森 浩一郎(北海道大学)・竹谷 茂(京都工芸繊維大学)
    3S7a アルツハイマー病の分子病態と発症機構の新展開
      オーガナイザー:鈴木 利治(北海道大学)・道川 誠(国立長寿医療センター)
    3S8a がん関連遺伝子の機能から明らかになる新しいがん特性シグナル
      オーガナイザー:久保田 俊一郎(東京大学)・三木 徹(長岡技術科学大学)
    3S9a ペプチドの多様性と機能
      オーガナイザー:南野 直人(国立循環器病センター)・長澤 寛道(東京大学)
    3S11a 糖鎖と進化:糖鎖を遡ると今の生命システムがわかる
      オーガナイザー:北島 健(名古屋大学)・平林 淳(産業技術総合研究所)
    3S12a ホスファターゼによる細胞機能の制御─癌、免疫・神経疾患への関与─
      オーガナイザー:島 礼(宮城県立がんセンター)・野田 昌晴(基礎生物学研究所)
    3S13a メタボロミクスが切り拓くヒトシステム生物学
      オーガナイザー:曽我 朋義(慶應義塾大学)・末松 誠(慶應義塾大学)
    3S14a 動植物におけるアロ認証機構
      オーガナイザー:澤田 均(名古屋大学)・高山 誠司(奈良先端科学技術大学)
    3S17a 低分子物質によるエピゲノム制御
      オーガナイザー:深水 昭吉(筑波大学)・柳澤 純(筑波大学)
    3S19a ヌクレオソーム機能を介した核内反応制御
      オーガナイザー:堀越 正美(東京大学)・関 政幸(東北大学)
    3S1p G蛋白質シグナル伝達の新たな概念化
      オーガナイザー:根岸 学(京都大学)・伊東 広(奈良先端科学技術大学院大学)
    3S2p リン酸化プロテオミクスによるシグナル伝達解析の新展開
      オーガナイザー:石濱 泰(慶應義塾大学)・木下 英司(広島大学)
    3S3p 生体微量金属研究の新展開:その潜在性と創造性
      オーガナイザー:神戸 大朋(京都大学)・深田 俊幸(理化学研究所)
    3S7p 細菌の生残戦略をめぐるあらたな展開
      オーガナイザー:天野 富美夫(大阪薬科大学)・泉福 英信(国立感染症研究所)
    3S8p 概日時計の分子制御と時刻リセット
      オーガナイザー:深田 吉孝(東京大学)・石田 直理雄(産業技術総合研究所)
    3S9p タンパク質架橋反応を標的とした病態解析と制御
      オーガナイザー:小嶋 聡一(理化学研究所)・一瀬 白帝(山形大学)
    3S11p 膜マイクロドメインを介した病態発症機構の解明とその制御
      オーガナイザー:井ノ口 仁一(東北薬科大学)・岩渕 和久(順天堂大学)
    3S12p 生理活性リゾリン脂質研究 update
      オーガナイザー:石井 聡(東京大学)・青木 淳賢(東北大学)
    3S13p ミトコンドリアが語る細胞機能・病態研究の新たな潮流
      オーガナイザー:岡本 浩二(東京工業大学)・石原 直忠(東京医科歯科大学)
    3S14p 「ストリゴラクトン」-植物ホルモンおよび寄生・共生の科学シグナルとしての機能
      オーガナイザー:山口 信次郎(理化学研究所)・秋山 康紀(大阪府立大学)
    3S17p 感染とその防御の新たなる分子基盤的展開
      オーガナイザー:木戸 博(徳島大学)・片岡 宏介(徳島大学)
    3S19p クロマチン生物学の近未来
      オーガナイザー:大山 隆(早稲田大学)・東中川 徹(早稲田大学)
    4S1a 変貌するオルガネラ像:ダイナミクスと高次機能
      オーガナイザー:大隅 良典(基礎生物学研究所)・吉森 保(大阪大学)
    4S2a 感染の検知と細胞応答
      オーガナイザー:竹内 理(大阪大学)・米山 光俊(京都大学)
    4S3a "オミックス研究の最前線" -ショウジョウバエをモデルとして-
      オーガナイザー:山本 雅敏(京都工芸繊維大学)・松本 博行(米国オクラホマ大学)
    4S7a 計算科学と実験科学の融合から見えてきた生体分子の機能
      オーガナイザー:林 秀行(大阪医科大学)・田村 隆(岡山大学)
    4S8a Kunitz型セリンプロテアーゼインヒビターのタンパク質化学と生理的作用
      オーガナイザー:井上 國世(京都大学)・林 辰弥(三重県立看護大学、三重大学)
    4S11a 翻訳後修飾ADP-リボシル化とO-GlcNAc化の意義
      オーガナイザー:益谷 美都子(国立がんセンター)・亀村 和生(長浜バイオ大学)
    4S12a 膜リン脂質トポロジーの生物学
      オーガナイザー:植田 和光(京都大学)・田中 一馬(北海道大学)
    4S13a 脂肪酸代謝と病態―量から質へ―
      オーガナイザー:島野 仁(筑波大学)・有田 誠(東京大学)
    4S14a 高次タンパク質複合体構造の変遷によるDNA複製の進行制御
      オーガナイザー:片山 勉(九州大学)・石野 良純(九州大学)
    4S17a トランスポゾンとの共生が織りなすゲノムシステムのダイナミクス
      オーガナイザー:小布施 力史(北海道大学)・石野 史敏(東京医科歯科大学)
    4S19a 発生ダイナミクスの多次元的プロファイリング
      オーガナイザー:見学 美根子(京都大学)・柊 卓志(京都大学)
    4S1p ストレス応答の新機軸
      オーガナイザー:垣塚 彰(京都大学)・一條 秀憲(東京大学)
    4S2p 「自然炎症」−病原体センサーと内因性リガンドによる非感染性炎症反応の分子基盤−
      オーガナイザー:牟田 達史(東北大学)・小川 佳宏(東京医科歯科大学)
    4S3p プロテオミクス秘伝の奥義一挙公開
      オーガナイザー:榊原 陽一(宮崎大学)・小寺 義男(北里大学)
    4S7p 遺伝子制御法と遺伝子導入法の展開からみえるもの 〜新技術から医薬応用に向けての新しい研究展開〜
      オーガナイザー:武内 恒成(新潟大学)・村上 章(京都工芸繊維大学)
    4S11p 細胞死・細胞増殖制御を司る新しいシグナル伝達系、Hippo pathway
      オーガナイザー:畑 裕(東京医科歯科大学)・仁科 博史(東京医科歯科大学)
    4S12p 生体膜リン脂質生合成メカニズムの新展開
      オーガナイザー:進藤 英雄(東京大学)・井上 貴雄(東京大学)
    4S13p エネルギー代謝はどのように老化に関わるか
      オーガナイザー:石井 直明(東海大学)・石神 昭人(東邦大学)
    4S14p 化学物質による遺伝子修飾と毒性発現
      オーガナイザー:遠山 千春(東京大学)・渡邊 肇(基礎生物学研究所)
    4S17p フィードバックループと形づくり
      オーガナイザー:稲垣 直之(奈良先端科学技術大学院大学)・別所 康全(奈良先端科学技術大学院大学)
    4S19p 細胞はいかにして"対称性の破れ"を獲得するか 〜細胞極性研究の新展開〜
      オーガナイザー:碓井 理夫(京都大学)・田ノ上 拓自(神戸大学)
  • シンポジウム概要
    1S1a 細胞死
      オーガナイザー:長田 重一(京都大学)・米原 伸(京都大学)
    アポトーシスと呼ばれる細胞死はcaspaseの活性化によって誘導されるという分子機構が明らかとなり、分子機構の理解が飛躍的に進んだ。これを受け細胞死の研究は、アポトーシスの調節機構とその生理機能の解析にシフトしている。また、アポトーシスを引き起こされた細胞の生体内での振る舞いや生理機能の研究も進展している。例えば、アポトーシス細胞の貪食による処理機構や、その生理的意味は大変興味深いし、アポトーシス細胞が免疫系の調節因子として重要な機能を持つことが分子レベルで示されつつある。一方、caspaseに依存しない細胞死が複数存在すると広く認識されつつあり、それらの生理機能や疾患との関わりが今後の大きな問題となっている。本シンポジウムでは、上記のような細胞死研究の新しい展開について、いくつかのトピックスを紹介し、討論を深めることを目的としたい。

     

    1S2a チャネルと細胞接着の接点における新展開
      オーガナイザー:藤吉 好則(京都大学)・月田 早智子(大阪大学)
    細胞接着は接着分子によることが明らかにされ、カドヘリンやインテグリンをはじめとして重要な機能を担う接着分子が次々に発見されて研究されている。また、チャネルとして膨大な数のイオン選択性チャネルが知られており、研究の進展がめざましい。しかし、この2つの重要な機能を備えた分子は、さらに複雑で重要な機能を担うことができる可能性がある。この様な、チャネルと細胞接着の機能的な接点の現状と将来の展望を、構造と機能の視点を中心に議論したい。

     

    1S3a 転写調節と生体機能
      オーガナイザー:益見 厚子(国立感染症研究所)・内海 文彰(東京理科大学)
    サイトカインや増殖因子の刺激によって、細胞膜の受容体を介して細胞質因子はリン酸化などのタンパク質修飾を受ける。未修飾では細胞質に存在する細胞質因子はタンパク修飾によって細胞核に移行する場合もある。核内に移行したこれらの因子や既に核内に存在している転写因子は細胞質からの情報を受け取り、特定の遺伝子プロモーターのDNA配列に結合し、その遺伝子を正にも負にも制御する。正に制御された標的遺伝子は上昇し,タンパク質合成に至り細胞や臓器の機能を調節する。結果として生体防御機構、細胞増殖に伴う癌化など遺伝子によって様々な生物反応を伴う。本シンポジウムでは外界からの刺激による細胞核における転写機能調節が如何に生体機能に影響を及ぼすかについて、特定の転写因子を培養細胞及び個体レベルで過剰発現またはノックダウンすることによって解明する研究内容を中心に取り上げる。

     

    1S4a Beyond antibodyという研究領域
      オーガナイザー:杉村 和久(鹿児島大学)・藤井 郁雄(大阪府立大学)
    高い分子標的能と安全性を特徴とする医薬品としての有効性から、ヒト抗体IgGを中心とした抗体医薬品の開発が世界的に行われている。特に近年では、ヒト完全抗体のみならず、ドメイン抗体や単鎖Fv抗体といった低分子化抗体から、ナノボディなどを代表とする非ヒトタンパク質までもが治療用タンパク質として、開発対象となっている。本シンポジウムでは、抗体に限らずに広くタンパク質・ペプチド・核酸を含めた抗体様機能を持った医薬品の新規フォーマットやその単離手法の開発に焦点を当て、この分野の展望について議論したい。

     

    1S5a シトクロムP450基礎研究と医療との接点
      オーガナイザー:荻島 正(九州大学)・榊 利之(富山県立大学)
    最近、ステロイド合成系シトクロムP450(P450)が、古典的な内分泌器官以外の組織や器官でも極めて微量ながらも発現し、局所的ステロイド合成に関与していることが判明した。局所ステロイドには従来型のものとは異なる生理機能が予想され、その調節・維持、さらには破綻とともに実体の解明が求められている。従来型ステロイド合成系の酵素欠損や酵素過剰症などがあるが、酵素を標的とした治療はほとんどなされていない。最近、ヒトアロマターゼ全長のX-線構造が、膜結合型P450として初めて解かれ、酵素阻害によるエストロゲン依存性乳がん治療に新たな展開が期待される。他のステロイド合成系酵素の構造解析も進行しており、薬物代謝系P450と異なり極めて厳密な基質認識を示す酵素の構造活性相関から得られる情報は健康維持や疾病治療法確立に繋がりうる。主に遺伝子から同定された植物や微生物P450の反応の多様性から、化学的に困難な反応を遂行させ新規医薬品開発に繋げる研究も進んでいる。そこで、ステロイドを中心にしたP450の基礎研究と医療との接点から研究の新たな発展を目指す。

     

    1S6a 生命の起原と初期進化:生化学研究の現状
      オーガナイザー:山岸 明彦(東京薬科大学)・木賀 大介(東京工業大学)
    生命の起原は誰もが興味を抱く課題である。半世紀前のオパーリンやミラーの実験から現在の研究はどこまで進んだのだろうか。地学的発見によって地球初期の状態はかなり良く分かってきた。遺伝子情報の蓄積から生命の共通の祖先の正体に関する情報も実験的にアプローチ可能となった。RNAワールドの研究もかなり進んできた。そういう意味で、生命の起原と初期進化は今や、明らかに実験研究の対象となってきている。しかし反面、ではどのように生命が誕生したのかと問われれば、まだblack boxだらけでもある。まだ、決定的ステップに対する情報を欠いている生命の起原研究の現状を、化学進化、タンパク質の起原、RNAワールド、遺伝暗号の進化、リポソーム、全生物の共通の祖先等、様々な生化学的側面から探る。そして、生命の起原を解明するために今何が必要かを議論する。

     

    1S7a 行動をもたらす分子の生化学
      オーガナイザー:内匠 透(広島大学)・裏出 良博(大阪バイオサイエンス研究所)
    ゲノム計画や遺伝学の進展とともに、概日リズム、睡眠、食餌、社会行動等、動物の行動を規定する分子、タンパク質が明らかにされつつある。行動をもたらす分子の同定のみならず、それらの、例えばリン酸化をはじめとする生化学的修飾が、個体の行動に影響を与えることもわかってきた。さまざまな行動を例に、それらを規定する分子、タンパク質及びその生化学的解析の最新の成果を提示、議論する。いわば、個体の生化学的研究ともいうべきあらたなパラダイムを提供するものと期待される。

     

    1S8a 器官発生における細胞間相互作用
      オーガナイザー:宮島 篤(東京大学)・田中 稔(東京大学)
    肝臓、膵臓、腎臓などの器官は複数の異なる細胞群から構成されている。これらの器官がそれぞれに特有の形態を形成し機能を発揮するメカニズムについての研究は未だ発展途上であるが、遺伝子改変マウスや細胞表面抗原の発現を指標に純化した細胞の培養や移植などによる研究が進展しつつある。本シンポジウムではこうした解析方法による器官を構成する異なる細胞間の相互作用(例えば、epithelial cellとmesenchymal cellの相互作用など)に関する最新の話題を中心にする。

     

    1S9a GFPから見える世界
      オーガナイザー:柳川 右千夫(群馬大学)・濱 裕(理化学研究所)
    下村脩博士が発光オワンクラゲから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見され、昨年ノーベル化学賞を受賞された。生化学をはじめ細胞生物学、神経科学など幅広い研究領域へのGFPの応用、貢献については日々蓄積されている。そこで、蛍光タンパク質を用いたイメージング技術など、最近の知見や成果を紹介する。例えば、細胞周期の進行を追跡するための蛍光プローブの開発、蛍光タンパク質をFRETに応用して細胞の膜電位を計測する方法、split GFPの生化学研究への応用、photoconversionを起こす蛍光タンパク質Kaedeを応用した培養細胞における細胞内機能の解析、GFPを利用してシナプスに局在する分子の数を計測する方法、GFPを特定のニューロンに発現させた遺伝子改変動物を用いた研究などについて、紹介する。

     

    1S10a 寄生原虫の独特なゲノム・オルガネラ進化
      オーガナイザー:野崎 智義(国立感染症研究所)・佐々木 成江(名古屋大学)
    寄生原虫は真核生物の進化において比較的早期に主幹から分岐し、極めて多彩な細胞構造・オルガネラ機能・代謝経路などを有している。その多様性が、独自の寄生環境(例えば細胞内寄生や嫌気的代謝など)への適応を可能とし、それぞれの生物属・種に特異的な寄生形態(マラリアの赤血球内寄生や赤痢アメーバの腸管寄生など)と病態を起こす。寄生原虫のゲノムは高等真核生物と比較して小さく、多くの原虫でゲノム解読が終了している。また、生化学・細胞生物学・遺伝学・ゲノム・ポストゲノム等の解析手法も豊富であるため、オルガネラや代謝の多様性と進化を研究するために極めて有用な生物群である。本ワークショップでは寄生原虫で発見された、オルガネラの構造と機能の驚くべき多様性について、特にミトコンドリアやプラスチド様関連オルガネラを中心として、議論する。

     

    1S11a エンドサイトーシスによる細胞機能の制御
      オーガナイザー:駒田 雅之(東京工業大学)・石戸 聡(理化学研究所)
    細胞表面では、種々のリガンドに対する受容体、MHC分子、トランスポーター、細胞接着分子などの多様な膜タンパク質がそれぞれ固有の機能を担っている。それらの細胞膜上の発現量は常に一定ではなく、細胞がおかれた状況に応じてダイナミックに調節されていると考えられる。最近の研究から、クラスリンおよびカベオラ依存性のエンドサイトーシスとそれに続く細胞内トラフィックが、多様な細胞膜タンパク質の細胞表面上の発現レベルを調節するメカニズムとしてはたらいていること、そしてその調節がそれらの膜タンパク質の機能を制御する上で極めて重要な役割を果たしていることが明らかにされてきている。本シンポジウムでは、様々なタイプの細胞膜タンパク質のエンドサイトーシス/細胞内トラフィックの分子機構とその生理的意義に関する最近の知見を取り上げ、互いの交流を深めたい。

     

    1S12a 細胞表層組織化の統合的理解を目指して
      オーガナイザー:藤原 敬宏(京都大学)・木下 専(名古屋大学)
    外界とのインターフェイスである細胞膜の直下には、アクチン細胞骨格を中心に組織化された蛋白質群の動的なネットワークが存在する。このシステムは細胞の形状や力学特性を決定するだけでなく、増殖因子受容体や接着分子などの膜蛋白質の局在・拡散・クラスタリング・シグナル伝達の制御などにも重要な役割を果たすことがわかってきた。しかしながら、このシステムの物質的基盤に関する知見は未だ断片的である。そこで、「細胞骨格系」「細胞表層」「組織化」をキーワードに、生化学、分子細胞生物学、電子顕微鏡法、1分子レベルまでのライブセルイメージング、数理モデリングなどの手法を用いてこのシステムの解析に取り組む研究者が、最新の話題を提供する場を提案したい。解明すべき問題を実験と理論の両面から整理し、活発に議論を交わすことで、統合的な理解に向けた新たなパラダイム形成を促す場となることが期待できる。

     

    1S13a タンパク質膜透過装置の構造とダイナミックな機能
      オーガナイザー:阪口 雅郎(兵庫県立大学)・森 博幸(京都大学)
    膜をへだてたタンパク質の輸送や膜タンパク質の膜への組み込みは,生命存立の根幹をなすイベントである。各オルガネラ膜上には、個別のタンパク質膜透過装置が備わっており、 選択的・効率的なタンパク質の膜透過・膜組み込みを可能にしている。これまで複数のオルガネラ膜系で多数の関連する因子が同定されている。最近では、これら装置の立体構造が解明されつつあり,膜透過・膜組み込みの分子レベルでの理解が進んでいる。さらに,膜透過装置は、因子間の連携によって予想外のダイナミックで柔軟な機能を持つことも明らかになりつつあり,研究は新たな局面を迎えている。タンパク質分子の膜透過および膜への組み込みに焦点をあて,研究の全容を総括しつつ新たな視点を提案できるシンポジウムとしたい。

     

    1S14a 食品科学・環境科学分野におけるターゲットタンパク質の構造生物学
      オーガナイザー:田之倉 優(東京大学)・三木 邦夫(京都大学)
    食品科学および環境科学は,現在の社会生活に密接に関係しており,われわれの生活に直接関係する食糧問題から地球規模に及ぶ環境問題まで極めて多岐にわたって拡がっている.そのような食品科学・環境科学の基盤となるものは生命科学の諸現象であり,それらの基本的な分子機構を理解することは,農学的あるいは工学的な応用への見地から不可欠な取り組みである.近年,農作物増産や新しいバイオ燃料から地球温暖化に至るまで,食品・環境分野での諸問題を幅広く見据えて,それらの基盤となる生命現象で中心的役割を果たしているタンパク質の構造生物学研究が注目を集めている.本シンポジウムでは,このような食品・環境分野での興味深いテーマを取り上げ,それぞれの鍵を握る重要なターゲットタンパク質の構造と機能について,最近の研究で得られた知見に基づいて議論するとともに,それらの産業的な応用も視野に入れた展望を示したい。

     

    1S15a ポストゲノムシーケンス時代: 機能未知タンパク質群の機能発見のチャンス到来!
      オーガナイザー:倉光 成紀(大阪大学)・由良 敬(お茶の水女子大学)
    ヒトを含めて1,000種類近い生物のゲノム情報が入手できるようになってみると、「いずれの生物種においても、機能不明のタンパク質が、まだ 1/3〜1/2 程度残されており」、細胞全体のシステムを理解するための大きな障壁になっていることがわかった。機能未知タンパク質の中で、多くの生物に共通なものだけでも約500種類が機能未発見の状態で残されている。人類の研究の歴史を考えるとき、細胞全体のゲノム情報が得られるようになった今の時代だからこそ到来した「機能発見のチャンス」である(倉光成紀 (2008)「多数の基本的生命現象発見のチャンス到来!」 生化学 80巻(12号)、p.1075)。それら機能未知タンパク質群の機能推定には、立体構造解析の他、ゲノムワイドな mRNA解析、タンパク質発現解析、代謝物質解析、形態観察などを利用したバイオインフォマティックス的解析法が貢献している。推定された機能の確認は、これまでに行われてきた各論的な構造機能解析によって行われる。そのようにして機能が発見されたタンパク質の中には、実に奇妙な活性を持つことがわかったものもあるが、一方、「なぜ、その存在に気付かなかったのだろう」と思うようなタンパク質もある。これらを含めて、これまでに機能が発見された機能未知タンパク質の研究例を紹介するとともに、残された機能未知タンパク質の機能発見に向けて積極的な意見交換を行い、今後の研究発展に寄与するために、本シンポジウムを提案する。

     

    1S17a S9 セリンプロテアーゼの構造、機能から応用へ
      オーガナイザー:辻 明彦(徳島大学)・伊藤 潔(長崎大学)
    S9セリンプロテアーゼファミリーは、他のセリンプロテアーゼとは異なる性質を多く有している。立体構造は、N末側のb-プロペラドメインとC末側の触媒ドメインからなる構造で、b-プロペラドメインが活性部位に蛋白質基質が接近するのを防いでいるため、分子量が小さいペプチド基質のみに作用する。S9プロテアーゼは、生理活性ペプチドの量の調節に関わるだけでなく、細菌の病原性や糖尿病、がん等にも関係し、有望な創薬の標的分子でとして期待されている。今回のシンポジウムでは、S9 プロテアーゼの立体構造、トリパノソーマの病原性に重要なオリゴペプチダーゼB、線虫を用いたS9プロテアーゼの生理機能、歯周炎原因菌におけるジペプチジルアミノペプチダーゼの機能等に関する研究発表を行い、この研究領域の方向性を示すとともに、日本では研究者人口が少ないS9 プロテアーゼの研究を活性化したいと考えている。

     

    1S18a 天然変性タンパク質による分子認識機構の解明を目指して
      オーガナイザー:佐藤 衛(横浜市立大学)・西村善文(横浜市立大学)
    特定の立体構造を取らずに変性状態で存在する天然変性タンパク質は、ターゲット分子と相互作用するとターゲット分子の構造に依存した特定の立体構造を形成する(結合と連結した折り畳まり)。天然変性タンパク質は真核細胞に数多く見られるのが特徴で、ヒト転写関連因子ではその約50%が天然変性タンパク質を含んでいると予測されている。天然変性タンパク質は結合と連結した折り畳まりを通じて細胞内の様々なネットワークの中心的役割を果たすハブタンパク質として機能し、1つのタンパク質が複数のタンパク質と相互作用するという従来のタンパク質科学の概念を超えたまったく新しいタンパク質として注目されている。本シンポジウムでは、このようなネットワークの中心となる天然変性タンパク質によるターゲット分子の認識機構を解析する構造生物学的手法及び情報生物学的手法について紹介し、シンポジウム参加者との討論を通じて方法論のさらなる進展を図りたい。

     

    1S19a レスベラトロールに関する最近の知見
      オーガナイザー:井上 裕康(奈良女子大学)・堀尾 嘉幸(札幌医科大学)
    レスベラトロールはポリフェノールの1つで、1940年に北海道帝国大学・高岡道夫博士により、バイケイソウの根より分離精製、命名された日本オリジナルの抗菌活性物質である。1963年には、生薬・虎杖根からも分離精製されている(熊本大学)。また赤ワインに含まれ、虚血性心疾患の発生頻度がワイン摂取量に反比例するという「フレンチパラドックス」(1992年)に関与する成分として注目されている。近年その分子的研究が進み、Sirtuin 活性化を介して寿命延長や生活習慣病予防につながる可能性が報告され話題となっている。この他にも、COX-2の発現抑制、PPAR活性化などが報告され、発癌抑制や脳保護効果など、多様な機能を持つことが見出されており、「薬食同源」につながる成分として注目されている。本シンポジウムでは、生化学的な基盤に立ちながら、分野横断的にレスベラトロールの機能を明らかにしていきたい。

     

    1S1p リン酸化と細胞応答
      オーガナイザー:後藤 由季子(東京大学)・佐谷 秀行(慶應義塾大学)
    細胞は、種々の細胞外シグナルに応答して細胞運命を変える際、たんぱく質リン酸化を介したシグナル伝達を頻繁に用いる。リン酸化反応(の可逆性)を利用した精緻なたんぱく質機能制御は枚挙に暇がない。細胞の増殖、生死、分化、運動、代謝等基本的な営みのほとんどにリン酸化が利用されている。様々なリン酸化酵素と脱リン酸化酵素が巧妙に連携しながら、細胞内の状況に応じて外部からのシグナルを適切に伝達することにより細胞の恒常性は保たれ、そのシグナルの破綻は種々の疾患の原因となる。本シンポジウムではリン酸化による細胞応答に関わる最新の知見をご紹介いただく。

     

    1S2p イノシトールリン脂質研究の新展開
      オーガナイザー:竹縄 忠臣(神戸大学)・佐々木 雄彦(秋田大学)
    ホスファチジルイノシトールは脂質二重層の細胞質側に偏在するグリセロリン脂質である。極性基のイノシトール環は細胞質側に露出しており、リン酸化修飾を受ける結果、イノシトールリン脂質と総称される派生体が生体膜に存在する。この脂質群は形質膜やオルガネラ膜の特異的なランドマークとなっており、タンパク質の細胞内局在および活性を制御し、さらには生体膜の形状変化をも引き起こす。また、ホスホリパーゼの働きにより生成するイノシトール三リン酸やアラキドン酸の代謝産物も、生理活性物質として細胞内外で機能する。イノシトールリン脂質による生体機能調節の重要性が、様々な学問分野の研究成果として次々と報告されている現状である。本シンポジウムでは、イノシトールリン脂質の超微局在、標的タンパク質への作用様式、代謝酵素(ホスホリパーゼ、アシルトランスフェラーゼ、リン酸化・脱リン酸化酵素)の生理機能について最新の知見をご発表いただく。研究の方法論、医療への応用を含め、イノシトールリン脂質にまつわる生物学の将来を展望する議論を深める機会となることを期待する。

     

    1S5p 圧力摂動による柔らかい構造生物学 Soft Structural Biology using Pressure Perturbation
      オーガナイザー:赤坂 一之(近畿大学)・仲宗根 薫(近畿大学)
    細胞内の蛋白質は、機能、相互作用、認識、会合、異常化など、非常にダイナミックに変化している。それらの間では自由エネルギーの差はわずかで、熱揺らぎで克服できる程度に設計されている。その設計は地球環境に適合した進化によって達成され、すでに遺伝子情報の中に組み込まれている。結晶を中心とした硬い構造生物学に代わって、生理条件下で熱揺らぎを“もろ”に感じるやわらかい構造生物学が必要な時代が到来している。それを読み取るには、熱揺らぎの効果を“もろ”に測定できる圧力摂動が有効である。圧力とカップルしたさまざまな分光学の発展によって、これが可能になり、新しい時代の揺らぐ蛋白質の実像が初めて得られ始めた。本シンポジウムではこのような学問的背景、時代背景の下で、これまで多用されていない圧力に焦点をあわせ、この分野の先頭に立つエキスパートたちが競演する。

     

    1S6p 無脊椎動物における自然免疫:感染微生物の認識、情報伝達、排除の分子機構
      オーガナイザー:川畑 俊一郎(九州大学)・倉田 祥一朗(東北大学)
    黄色ショウジョウバエの初期発生段階で背腹軸形成をつかさどっているToll経路が、成体においては自然免疫の根幹をなすカスケード経路のひとつであることが判明して10年が経過した。その間、異物認識タンパク質の同定や構造機能、認識情報の伝達経路と抗菌ペプチドの発現制御、さらには、異物排除に関する様々な分子機構が解明され、哺乳類の自然免疫研究の推進にも大きな影響を与えている。本シンポジウムでは、黄色ショウジョウバエだけでなく、他の昆虫、節足動物、あるいは原索動物で見いだされた自然免疫の分子機構を紹介し、多細胞生物の自然免疫の多様性と普遍性を理解するための場を提供したい。

     

    1S7p ナノバイオロジー、ナノケミストリー
      オーガナイザー:吉村 成弘(京都大学)・渡邊 朋信(大阪大学)
    ナノメートルの世界で繰り広げられる生命現象(バイオロジー)と、それを観察するためのナノメートル精度の計測技術(ナノテクノロジー)は、ナノバイオロジーという分野を作りあげた。ナノバイオロジーは、1986年の原子間力顕微鏡の開発に始まり、わずか20年あまりで急激な進化を遂げた。細胞内の蛋白質1分子を観察する1分子可視化技術や、レーザートラップ法を用いたナノ計測顕微鏡などの技術は、生命現象をナノメートル、ピコニュートン、ミリ秒のレベルで解明することを可能にするにまで至っている。また、ナノバイオロジーの発展には、デバイスの進化と共に、特殊蛍光プローブや人工タンパク質などの開発も大きな役割を果たしてきた。今や個体内(低侵襲・非侵襲)で分子の相互作用や化学反応を観るための新しいプローブが次々に開発されている。本シンポジウムでは、プローブ作りから、1分子計測、生細胞観察、in vivoイメージングに至る最先端の「ナノ」を紹介する。

     

    1S8p 「運動器」形成・再生のための分子基盤
      オーガナイザー:開 祐司(京都大学)・小守 壽文(長崎大学)
    長い高齢期を過ごす現代人にとって、脳の認知機能と共に、そのQOL(quality of life)を決定することになる運動器(Locomotive Organ)の機能維持や再生修復には、かつてない強い関心がよせられている。代表的な運動器疾患である変形性膝関節症では、自覚症状を有する患者数で約1000万人、X線診断による潜在的な患者数で約3000万人存在すると推定されている。運動器は、その主な構成要素である筋肉と骨・軟骨のみならず、これらを連結する腱・靭帯をはじめ関節包や骨・軟骨膜など、多様な組織の統合の上に成立している。本シンポジウムでは、これを念頭に、その機能維持と再生修復技術の開発に向けた新しい分子基盤の発掘と展望について、活発な討論の場を提供する。

     

    1S9p テトラスパニンの生化学 〜その機能と疾患との関わりにおける新展開〜
      オーガナイザー:中西 徹(就実大学)・宮戸 健二(国立成育医療センター)
    テトラスパニンは膜4回貫通型蛋白質で、多細胞生物のみに存在する一群の膜蛋白質ファミリーである。ヒトでは30種以上が知られているが、その機能については一部について研究が行われているものの不明のものが多く、またそれらを統一して理解しようとする試みもこれまで行われていない。今回、このテトラスパニンに関する研究者が一堂に会し、特にリウマチ、感染症、細胞接着、神経疾患、循環器障害、生殖などの各種疾患との関わりからこのテトラスパニンを論じる初めての機会であり、その意味で、大変意義深くまた本分野の今後の進展に大きく寄与する試みであると考えられる。

     

    1S10p 酵素の隠された反応を理解することで見える世界
      オーガナイザー:植野 洋志(奈良女子大学)・楯 真一(広島大学)
    酵素の多様性は,酵素学の基盤となる重要な研究課題である.最初に酵素反応が発見・報告された時点で,その酵素の性質が定義されてしまい,細胞や生体内での隠された触媒作用や真の基質などが理解されないまま,というのがほとんどであろう.ポストゲノムの時代にあっては,ミススプライシングの結果生産される遺伝子産物の触媒作用の異常性,基質特異性の改変などの問題が浮上しているがまだ一般的には認識されていないであろう.また,分析キットの利用が一般化された現在,酵素は,その定義された基質に対して100%の反応効率を示し,他の化合物を基質としないような誤解,そして,副反応というものを触媒しないという誤解,精製した酵素は細胞内でも精製標品と同じ触媒作用を示す,など多くの酵素に対する考え違いも見受けられる.ここで,いま一度酵素のもつ多面性,その機能の多様性について見渡す機会としたい.

     

    1S11p タンパク質修飾による遺伝子発現制御のクロストーク
      オーガナイザー:大熊 芳明(富山大学)・伊藤 敬(長崎大学)
    近年、真核生物においては、遺伝子発現に関わるタンパク質の同定に加え、その翻訳後修飾による遺伝子発現調節機構の解析が進んでいる。これらのタンパク質の多くは、複数のアミノ酸残基がリン酸化、ユビキチン化、メチル化、アセチル化、スモ化など複数の翻訳後修飾を受け、そのパターンにより活性が精巧に調節されていることが明らかになってきた。本シンポジウムでは、遺伝子発現におけるタンパク質修飾とその機能制御の研究で活躍されている先生を講演者に迎え、これら修飾によりいかにクロマチン構造とPol IIによる遺伝子転写が調節され、遺伝子発現ネットワークが制御されているかを議論したい。

     

    1S12p 蛋白質凝集とその生体に与える影響
      オーガナイザー:M田 大三(神戸大学)・後藤 祐児(大阪大学)
    生体内で合成される蛋白質は、通常、その機能的な天然構造を形成する。しかしながら、蛋白質は、本来、不安定で濁りやすい、扱いにくい物性をあわせ持つ。アミロイド病は、蛋白質が生体内において、特定の凝集状態を形成することにより細胞毒性を獲得したり、線維構造が組織に沈着することで細胞に不都合を与えることで発症すると考えられており、実際にin vitroの系において、このような影響を確認することができる。しかしながら「これら凝集状態の形成機構」、「凝集体が直接細胞に与える影響」の詳細については、未だに明らかにされていない。本シンポジウムでは、生命科学における「蛋白質凝集の意義と影響」について理解を深めることを目的とし、「アミロイド線維形成の物理化学的側面(後藤、田村、浜田、古川)」、「脂質膜と蛋白質凝集の相互作用(笹原)」「細胞に対する凝集体の影響(古川、永井)」について、講演いただく。

     

    1S13p 細胞の分裂・分化と高次生命現象
      オーガナイザー:藤森 俊彦(基礎生物学研究所)・木村 暁(国立遺伝学研究所)
    細胞分裂機構の理解は、酵母や培養細胞など「単細胞」をモデルとした系で飛躍的に進んできた。一方で、細胞の分裂は多細胞生物の成立にも必須の要素である。これまでに蓄積された知見を生かし、多細胞生物において細胞分化、体軸形成、幹細胞の維持、がんなどの様々な高次生命現象と細胞分裂メカニズムを結びつけ、高次生命現象の制御メカニズムを考察できる時期に来ている。この目的のために、分子生物学的手法に加え、発生工学、イメージング技術、更には取得した画像の数理的解析技術など新たな手法が研究に取り入れられ、細胞分裂と多様な高次生命現象を結びつける研究の進展が期待されている。本シンポジウムでは、細胞分裂・分化をキーワードに様々な実験系でその最前線の研究を行っている研究者に講演して頂き、共通あるいは固有の分子機構の存在や、高次生命現象における役割を議論する。

     

    1S14p 天然物生合成研究の新展開:生合成系の分子解剖から分子構築へ
      オーガナイザー:佐藤 文彦(京都大学)・福崎 英一郎(大阪大学)
    ゲノム情報の解読の進展とともに、生物の代謝系を遺伝子レベルで解析する段階から、再構築する方向に研究が進展している。こうした研究は合成生物学という新たな学問分野と融合し、新たな学問の潮流を生み出すとともに、有用物質生産において、新規機能性分子創成の可能性を展開している。本シンポジウムでは、植物と微生物の代謝研究から広がる代謝工学の新展開を中心に話題を提供してもらう。

     

    1S15p 動植物のオルガネラ・微生物で機能する膜輸送体解析法の新展開
      オーガナイザー:魚住 信之(東北大学)・前島 正義(名古屋大学)
    電気生理学測定法とりわけパッチクランプ法はサイズが小さい細胞への適用が難しいため、微生物や動植物の細胞内小器官(オルガネラ)で機能するイオン輸送体の実時間測定報告は極めて少ない。しかし、大腸菌・酵母などの微生物を巨大化する方法が開発され、さらに微生物で動植物由来の膜輸送体が機能発現することが見いだされてからは、国内のいくつかのグループは世界に先駆けてこの方法で新たな膜輸送体の機能解析報告を行っている。また、微生物やオルガネラで発現する輸送体の新たな実時間測定法が報告され、詳細な膜輸送体の機能の実態が明らかとなってきた。いわば新世代パッチクランプ法を含めたこれらの膜輸送体解析系の進展は、未知のままとなっていた膜輸送体の機能解明を可能とした。本シンポジウムにおいて、この実績を示している研究者による講演を通じて、全細胞膜に対象が広がった実時間膜輸送体の機能解析法とその性質について考察と情報交換を行う。

     

    1S17p 有機物形成から生物進化へ-地球における生命構造と反応の発展-
      オーガナイザー:白井 浩子(岡山大学)・池原 健二(奈良佐保短期大学)
    二つの独創的な仮説が、提唱されている(いずれも通説を批判する)。生命の起源および遺伝暗号の成立に関しては通説の「RNAワールド仮説」を批判する、池原による「GADV-タンパク質ワールド-仮説」であり、進化に関しては通説の「ネオ・ダーウイニズムを柱とした進化の総合説」を批判する、白井・長野による「余剰進化論」である。それらに関連して、生物に関する根源的なテーマとして、生命発祥にいたる化学進化から生物進化を統一的に見渡し、生化学反応の成立経緯を考える。

     

    1S19p 網羅的解析、さてその次は?
      オーガナイザー:日和佐 隆樹(千葉大学)・朝長 毅(医薬基盤研究所)
    ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスとさまざまな網羅的解析方法が開発され、標的分子のスクリーニング法として活用されている。それらのテクノロジーは近年飛躍的進歩を遂げ、従来の10倍、100倍の速度で多くの分子が同定されるようになった。しかしながら、同定された分子群の中から真の標的分子を選別することは決して容易ではない。網羅的解析を有効に利用できるかどうかは次の段階の研究次第である。あるいは網羅的解析そのものにも一工夫必要かもしれない。そこで本シンポジウムでは網羅的解析結果に基づき、独自の解決策により目的分子の特定、または実用化に向けた開発等に成功した実例をご紹介いただき、同様のアプローチを試みる多くの研究者の参考にしたい。

     

    2S1a タンパク質品質管理とレドックス制御
      オーガナイザー:永田 和宏(京都大学)・稲葉 謙次(九州大学)
    小胞体には、分泌タンパク質や膜タンパク質のproductive foldingを促すシステムが存在する一方で、最終的にミスフォールドした蛋白質を速やかに分解するためのシステム(小胞体関連分解システム)も存在する。これら二つのシステムにおいて、チオールジスルフィド交換を介したレドックス反応が極めて重要な役割をもつことが,明らかになりつつある。実際、ヒト細胞の小胞体中には、約20種類ものProtein Disulfide Isomerase (PDI) familyのタンパク質が存在する。しかしながら、何故そのように多くのPDI familyのタンパク質が存在し、それぞれの因子が具体的にどのような機能を担っているかは、未解明な点が多い。本シンポジウムでは、上記研究分野の開拓に意欲を燃やす新進気鋭の研究者と海外からの招待講演者を交え、最新の研究成果を発表する。これにより、本研究分野の現状把握を促すとともに,今後の研究の発展性について熱く議論を交わしたいと考えている。

     

    2S2a プロテオリシスによる多様な生理機能とその破綻による病態
      オーガナイザー:田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)・反町 洋之(東京都臨床医学総合研究所)
    プロテオリシス(蛋白質分解)は基質蛋白質のペプチド結合を切断する事により、分解消去、分解断片の再利用、基質機能の変換、など多岐にわたる形で細胞機能を調節している。特に細胞内では、両刃の剣であるプロテオリシスが多寡無く適切に執行されるよう、様々に厳密な活性制御が行われている。その機能の重要性故に、遺伝子変異などにより活性制御が破綻すると、細胞〜個体レベルで多様な病態、さらには死をももたらしてしまう。一方、プロテオリシスの異常を伴う疾患は、プロテオリシスの生理機能や作用機序の分子機構について解明する貴重な機会を与え、最終的には疾患治療にフィードバックされることも事実である。これらをふまえ、細胞内の主要なプロテオリシス系であるユビキチン・プロテアソーム系、オートファジー系、カルパイン系などの生理機能と関連疾患について最新の知見をもとに議論し、プロテオリシスによる生体のモジュレーションの新しいパラダイムを提示したい。

     

    2S3a 金属・小分子ネットワークによる遺伝情報発現制御
      オーガナイザー:五十嵐 和彦(東北大学)・佐上 郁子(京都府立大学)
    全ての生命体は、バクテリアからヒトまで、金属イオンや酸素、CO,NOなど様々な自然環境小分子を細胞内の分子ネットワークに組み込み、利用しながら進化してきた。金属イオンやそれを含むポルフィリンは、酵素活性制御や電子伝達機能の必須の補欠分子族であると同時に、様々な遺伝子の発現を制御している。また、金属イオンや金属ポルフィリンによって体内での生合成・活性化が仲介されるガス状小分子の酸素やCO,NOは、エネルギー生産やシグナル伝達等に関与する一方で、その過剰生合成はアポトーシスや疾患を引き起こす。したがって、生命体は、これらを感知し生命機能へ利用すると同時に、防御システムも進化させてきた。本シンポジウムでは、遺伝子発現制御という観点から、これら小分子の新たな役割についての研究の最前線を概観し、これらの小分子に仲介されるシグナル伝達系と生体機能制御とのネットワークについて議論する。

     

    2S7a 血栓症の分子メカニズム:最近の進歩
      オーガナイザー:宮田 敏行(国立循環器病センター)・堀内 久徳(京都大学)
    心筋梗塞や脳梗塞といった動脈の血栓性疾患は、高齢化社会を迎えた現在、国民の安全・安心な生活を脅かす疾患として脅威の対象となっている。生体内での血栓形成は瞬間的に生じる現象のため、これまでその解析は困難であった。また、核のない血小板では、生化学・分子生物学的な解析法を応用しにくい面があった。しかし、近年の生物学・医学に用いられる革新的技術、即ち、生体内イメージングや発生工学的手法を用いた研究は、従来の壁を打ち破りつつあり、この数年で血栓症の研究は大きく進んだ。こういった研究の進展を背景に、国内で血栓症の研究を精力的に進めている若手研究者を中心に、海外の演者も交えて、血栓症でも特に動脈内の血栓症の研究の最前線を紹介するために、本シンポジウムを企画した。

     

    2S8a 翻訳されうる21番目のアミノ酸、セレノシステインを含有するタンパク質研究のブレーク・スルー
      オーガナイザー:高橋 和彦(北海道薬科大学)・江崎 信芳(京都大学)
    生体内には十数種類の必須微量元素セレンを含有するタンパク質が存在しており、全てレドックス制御、活性酸素種の除去に関わる酵素である。セレンはCysのSがSeに置き換わった翻訳されうる21番目のアミノ酸、セレノシステイン(Sec)の形でこれらの酵素の活性部位を形成している。Secの翻訳機構は独特であり、最新の研究成果を発表する。ごく最近、薬物代謝酵素の誘導応答におけるセレン含有タンパク質の役割、多様な疾患の発症メカニズムへのSec含有タンパク質の関与が国内の研究者を中心に明らかにされつつあるので報告する。また、世界中のセレン研究者が4年に1回一堂に会する国際シンポジウム(会頭:京大・化研 江崎信芳)が2010年5月31日から6月4日に京都で開催される。 (http://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/labos/bm2/index_se2010.html)生化学会会員にこれを告知し、参加を呼び掛けることも本シンポ開催を希望する理由の一つである。

     

    2S9a 生命システムの理解と制御にむけた統合的・合成的アプローチ
      オーガナイザー:齋藤 博英(京都大学)・油谷 浩幸(東京大学)
    近年、細胞内に潜む機能性DNAやノンコーディングRNA、未知の蛋白質ネットワークの包括的解析技術が飛躍的に進展し、複雑な生命設計図に刻まれた無数のピースが、従来にない速度で理解されつつある。一方でsimpleな生命設計図を立脚点とし、人工的に生体分子や遺伝子回路を「創る」ことで、 生命システム構築原理の理解と新規テクノロジーの誘発を目指す、シンセティックバイオロジー研究も始まっている。これら研究のコンセプトは従来から存在したが、高速マイクロアレイやゲノム人工合成などの技術革新が、新しい研究潮流を生み出している。本シンポジウムでは、これら異分野の研究者を一同に介し、両アプローチから生命システムの理解と制御を目指す研究を紹介したい。また一方で、生命システムの統合的解析から生命設計図の概要を垣間みたとき、その研究の発展が、生命システムを創るアプローチにつながる可能性はないだろうか? この観点から、両研究の接点についても議論したい。

     

    2S11a 糖鎖生物学研究-他分野から糖鎖へ
      オーガナイザー:小堤 保則(京都大学)・西原 祥子(創価大学)
    糖鎖生物学の研究は、糖鎖を出発点として種々の生物学的現象に迫る縦糸の研究と、生物学的現象から出発して糖鎖研究に到達する横糸の研究が織りなって進んできている。本シンポジウムでは、最近の横糸の研究に注目して演題を選択した。出発点の生物学的現象としては、オートファジー、シナプス小胞のアミノ酸トランスポート、抗ガン剤耐性、ERでのタンパク合成、ヒストンのメチル化等を取り上げた。そして、対象となる糖鎖研究は、各々、ペプチドグリカン、シアル酸、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、N-結合型糖鎖、O-GlcNAc等である。この様な異なる生物学分野で見出された新しい糖鎖機能は、糖鎖が持つ多様な生物学的機能とその広がりを反映している。聴衆の縦糸の研究者とともに、糖鎖生物学研究の今後について新しい布を織って行きたい。

     

    2S12a ノンコーディングRNAが制御する多様な機能
      オーガナイザー:古川 貴久(大阪バイオサイエンス研究所)・中川 真一(理化学研究所)
    大規模なトランスクリプトーム解析によって、高等真核生物のゲノムの領域のほとんどがRNAとして転写されていること、それらの転写産物の半分以上が蛋白質をコードしていない、いわゆるノンコーディングRNAであることが明らかとなった。これらノンコーディングRNAの中でも、20-30塩基の「小さなRNA」が相補的な配列を持つターゲット遺伝子の発現を抑制する「RNAサイレンシング」の機構に関しては過去10年で大幅に理解が進み、古典的なセントラルドグマで単なる情報の運び屋としての役割しかRNAに与えられていなかったことの方が近年ではむしろ不自然に思われるほどである。本シンポジウムでは進展著しいRNAサイレンシング研究の最前線の話題を取り上げると共に、RNA分子自身が機能分子として働いている核内高分子ノンコーディングRNAやトランスクリプトーム解析にも目を向け、RNAに何が出来るのかということを包括的に捉えることを試みたい。

     

    2S13a Dissection of Signaling Mechanism to Cancer by Transgenic Mouse Model Approach
      オーガナイザー:武藤 誠(京都大学)・成宮 周(京都大学)
    がんの発生と悪性化進展について、細胞レベルで多くの遺伝子やゲノムの変化が調べられてきており、それらの細胞内での機能についても多くの知見が蓄積してきた。しかし、これらの細胞内変化が、同種または異種 (heterotypic) の細胞間、さらには組織や器官、個体全体の諸反応というレベルでどのように統合されているかについては、今後の大きな課題である。これらの研究には、分子的な細胞学に始まり、遺伝子改変動物、画像技術などを駆使した多角的なアプローチが必要で、このシンポジウムでは内外で活躍する研究者に遺伝子改変マウスを用いた最近の知見を発表してもらい、議論したい。具体的には、がんの発生と悪性化進展に関与する主要な増殖刺激、アポトーシス抑制、細胞運動促進、血管新生などの間質反応など、諸シグナルを制御する 細胞外リガンド、細胞表面受容体、細胞内シグナル分子、 転写因子などの変化が全体として個体レベルでどのような結果をもたらすかを論ずる。

     

    2S14a 植物の成長生理とメンブレントラフィック
      オーガナイザー:西村 いくこ(京都大学)・嶋田 知生(京都大学)
    大地に根を張り動かないことを選択した植物は,発芽した場所で一生を過ごす.物言わぬポーカーフェイスの植物は,置かれた環境でじっと耐え忍んで生きているのか?最近,シロイヌナズナ突然変異体を用いた分子遺伝学的解析から,植物は成長過程や環境変化に対応して細胞内のメンブレントラフィックシステムを活用しダイナミックに生きている様子が分かってきた.メンブレントラフィックは酵母などの単細胞生物から動植物などの多細胞生物まで広く保存された機構であるが,植物はこの基本的な機構を独自の生き方に利用する技を獲得してきた.即ち,重力などの外環境に対する応答性,病虫害に対する抵抗性や形態形成といった多細胞レベルにおける高次生命現象にメンブレントラフィックが深く関わっていることが明らかとなってきた.本シンポジウムでは,植物の生活環の様々な局面で働くメンブレントラフィックの機能を紹介し議論したい.

     

    2S17a 中心体の新たな機能:シグナル伝達の拠点から細胞分化・移動まで
      オーガナイザー:多賀谷 光男(東京薬科大学)・柳 茂(東京薬科大学)
    微小管は、間期においては小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリアなどのオルガネラの局在および移動に関与し、有糸分裂期には染色体の分配を司る。微小管の形成中心は中心体であり、中心体は核近傍に位置する構造体である。中心体はいわばオルガネラの「交差点」であるが、近年、そういった受動的な役割だけではなく、細胞内のシグナル伝達やタンパク質分解に関与する分子を積極的に濃縮したり、異なるオルガネラに存在するタンパク質の出会いをもたらす拠点として機能することが明らかになりつつある。また、上皮細胞における一次繊毛形成や神経細胞の移動と層構造の構築など、分化細胞においても重要な役割を担う。本シンポジウムでは、こうした中心体の新たな機能の研究を進める研究者を集め、中心体に関連する研究の今後の動向を探る。

     

    2S19a 発がんの新しい分子基盤
      オーガナイザー:間野 博行(自治医科大学)・畠山 昌則(北海道大学)
    これまで固形腫瘍の発症機構は、造血器悪性腫瘍の場合に比べてその解明が遅れていたと言わざるを得ない。しかしこの数年で驚くべき知見が次々と明らかになり、固形腫瘍の発がん分子基盤が確立されつつある。とりわけ、EGFR、BRAF、AKT1、ALK、三量体Gタンパクに代表される増殖関連遺伝子の活性型点突然変異、ピロリ菌の内在性がん遺伝子の発見、固形腫瘍における染色体転座の存在とそれに伴うがん遺伝子の発見など、将来のがん診断・治療に直結する報告が相次いでいる。さらに米国のCancer Genome Atlasプロジェクトに代表されるゲノム技術を用いた大規模アプローチも大きな波となり、「発がん」に関する我々の理解も急速に変わろうとしている。本シンポジウムではこうした最新の研究成果を紹介し、「なぜがんが 生じるのか?」と言う根源的な疑問について活発な議論を行いたい。

     

    2S1p 生物時計と生体リズム
      オーガナイザー:岡村 均(京都大学)・影山 龍一郎(京都大学)
    生命活動は、いろいろなリズムを刻むことが知られている。代表例として、概日時計のような1日周期や冬眠のような1年周期といった環境に順応するタイプのリズム、および細胞周期時計や分節時計のように生命固有のリズムがある。また、一見定常と思われていた状態においても、個々の遺伝子レベルでは発現がリズミックに変動することがわかってきた。これらのリズムの異常は、種々の疾患と密接に関わっている。本シンポジウムでは、いろいろな生命活動における生体リズムや遺伝子発現リズムの果たす意義およびリズム形成の分子機構について最新の知見を紹介する。

     

    2S2p 幹細胞とエピジェネティクス
      オーガナイザー:古関 明彦(理化学研究所)・岩間 厚志(千葉大学)
    DNAメチル化やヒストン修飾、non-coding RNAなど多様な分子機構が機能するエピジェネティクスは、細胞特異的な遺伝子発現様式の確立を通して、細胞の多様性を担保するとともに、多彩な細胞活動を可能とする。近年、ES細胞の網羅的な解析により、ES細胞の多能性を維持するエピジェネティック機構の一端が明らかにされた。一方で、多能性幹細胞・組織幹細胞の分化過程、あるいは体細胞から多能性幹細胞へのリプログラミングにおけるダイナミックなエピジェネティック変化は、細胞形質を規定するエピジェネティクスの重要性とともにその複雑さを如実に表わしている。さらに、エピジェネティクス制御の破綻が、癌幹細胞の形成を始めとした各種疾患に直結することも認識されつつある。本シンポジウムでは、幹細胞の分野におけるエピジェネティクス研究の最新の知見を、実際に研究に携わる若手研究者から紹介していただき、今後の幹細胞とエピジェネティクス研究の方向性について議論を深めたい。

     

    2S3p プリオンの感染と進化 −プリオンはどこまで分ったか?−
      オーガナイザー:桑田 一夫(岐阜大学)・田中 元雅(理化学研究所)
    プリオンの感染メカニズムが、原子分解能で解明されつつある。さらに、タンパク質による感染という現象が、プリオンのみでなく、ある種のアミロイドーシスにおいても見られることが分かってきた。このような、タンパク質立体構造の感染現象、さらには、進化(プリオンを継代すると、潜伏期が次第に短くなる。すなわち、感染力の面で進化する)という現象は、生物学上の基本原理に関わる、と考えられる。本シンポジウムでは、このようなプリオン学の最新の知見に基づいて、活発な議論を行う。

     

    2S7p 遺伝子発現のセルバリア:核膜の機能・構造理解とバリア克服
      オーガナイザー:斉藤 寿仁(熊本大学)・今本 尚子(理化学研究所)
    核膜は、遺伝子発現の場となる核内を細胞質から仕切ることで(fence:バリア)原核細胞には見られない秩序を真核細胞に付与している。例えば、核−細胞質間輸送は、真核細胞の遺伝子発現を時空的に制御する。また、核膜をクロマチンに繋ぐ核ラミナは、早老症などの遺伝病の原因であることが示されるなど、遺伝子発現の制御に寄与する。一方で、核膜は、外来性遺伝子を導入して細胞を操作するときに大きな障壁(obstacle:バリア)として立ち現れてくる細胞内構造でもある。核膜は、様々な側面で細胞機能を制御する重要な「遺伝子発現のセルバリア」である。しかし、高度に不溶性のため、その解析は遅れている。本シンポジウムでは、再構築系、イメージング、翻訳後修飾の操作により、核膜の機能構造の生化学的理解の実現と、バリア克服を議論する。基礎と応用を目指す研究者を交え、真核生物の細胞機能の理解を細胞操作に繋げる問題を掘り下げる。

     

    2S8p 新たなアミノ酸関連酵素研究への挑戦!! 〜構造機能解析から産業利用まで〜
      オーガナイザー:高木 博史(奈良先端科学技術大学院大学)・稲垣 賢二(岡山大学)
    アミノ酸はタンパク質の構成成分としてだけでなく、様々な生理機能を有しており、D-アミノ酸や非蛋白質性アミノ酸についても代謝酵素の発見に伴い、各々の機能解析が進んできた。例えば、D-セリンは記憶や学習など脳の高次機能制御に、D-アスパラギン酸は脳ホルモンやテストステロンの量的制御に働いているなど、D-アミノ酸が高等動物においても重要な生理機能を有することが明らかとなってきた。また、L-プロリンのアナログであるL-アゼチジン-2-カルボン酸についても、N-アセチル化により解毒する酵素が酵母に存在し、その構造や機能が注目されている。本シンポジウムでは、新しい生理機能の解析や新規バイオ素材の開発などの観点から興味深いアミノ酸および関連化合物(アナログ、誘導体)に焦点を当て、それらの代謝(合成・分解・修飾・排出・調節)に関わる重要な酵素について、酵素特性、反応機構、立体構造、生理機能などの解析例を中心に、ユニークなアイデアやアプローチに基づく最新の研究成果を紹介し、産業への利用についても積極的に議論する。

     

    2S9p 生物化学・医療データからの有用情報の抽出と予測問題への適用
      オーガナイザー:岡本 正宏(九州大学)・江藤 望(宮崎大学)
    現在は、様々な生化学分析装置の高速化、自動化により、DNAマイクロアレイ等の遺伝子発現データ、細胞内タンパク質の発現データなど、数万、数十万の大量のデータが一度に得られる時代だが、これらのデータから何らか傾向を読みとり、効率的に識別・分類するためには、人工知能などコンピュータを用いた知識情報処理法や統計学的手法は必須である。このシンポジウムでは、データドリブンな形で有用情報を抽出すための効果的手法および、そこから得られた結果を予測問題へ適用するための方法に焦点をあて、その事例を紹介・討論する。

     

    2S11p 糖鎖のもつユニークな生物学的機能と疾患
      オーガナイザー:木下 タロウ(大阪大学)・遠藤 玉夫(東京都老人総合研究所)
    いわゆるポストゲノムの時代に入り、セントラルドグマに直接従わないタンパク質の翻訳後修飾の問題は、国際的にも大きな研究の潮流の1つになりつつある。タンパク質の50%以上には糖鎖が付加されていると推定されており、また翻訳後修飾の中でももっとも頻度の高いのは糖鎖による修飾である。近年、糖鎖解析技術の進歩、糖鎖生合成に関わる糖鎖遺伝子のクローニング、さらに糖鎖遺伝子のノックダウンやノックアウト体の作製および解析により、糖鎖は細胞の運命や感染の成立を決定するなどさまざまな生命現象に関わることが明らかになりつつある。またヒトの先天性疾患で糖鎖異常が原因になっているものが明らかになり、こうした疾患研究からも糖鎖の機能解明がめざましく進んでいる。本シンポジウムでは、糖鎖に含まれるユニークな生物学的機能の解明、疾患における糖鎖の意義を中心に糖鎖研究の現状および今後期待される点について紹介し議論を深めたい。

     

    2S12p 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム
      オーガナイザー:稲田 利文(名古屋大学)・大野 睦人(京都大学)
    生物の持つ複雑で巧妙な形態・機能の獲得には、RNAレベルでの遺伝子発現制御プログラムが重要な役割を果たしている。すなわち、個体発生の過程において、様々な「非対称性」獲得機構により、単一の受精卵から非対称な細胞群が生成され、「多様性」獲得機構により、分化過程で形成される細胞が担う多様な機能の獲得に必要な遺伝子産物自体の多様性が獲得される。さらに、「品質保証」機構の厳密な監視により、RNAレベルでの制御の正確性が保証される。本シンポジウムでは、これら3つのRNA 制御機構の包括的な理解を目指した研究の現状と展望について議論したい。特に、生体における非対称性を生み出すmRNAの輸送・局在・翻訳・品質保証,及び多様性を生み出す選択的スプライシングなどの時空間的制御機構の現状について紹介する。

     

    2S13p 生命科学における血管新生研究のインパクト
      オーガナイザー:佐藤 靖史(東北大学)・高倉 伸幸(大阪大学)
    血管形成の関与しない臓器形成はないといっても過言ではなく、これは成体における、炎症・がん・虚血疾患など種々の病態形成にも同じことがあてはまる。近年、血管形成に関与する分子の旺盛な単離およびその遺伝発生工学的手法などを用いた機能解析が進み、従来の血管形成の概念(脈管形成と血管新生)に分子論的な意味付けがなされてきた。また生理的な血管形成と、病的な血管形成では機能分子の大きな相違は見られないものの、血管細胞(内皮細胞、壁細胞)とその周囲を構成する細胞との細胞間相互作用が病的組織で観察される異常血管の形成に関わることも明らかになりつつある。このような血管形成の分子メカニズムの解明に立脚し、血管形成を制御する臨床応用がここ数年あいだに急速に伸展してきた。そこで本シンポジウムでは、血管形成の分子メカニズムがどこまで明らかにされてきたのか、血管形成研究分野のup dateな話題を紹介する。

     

    2S14p 光合成生物の光受容と情報伝達
      オーガナイザー:河内 孝之(京都大学)・荒木 崇(京都大学)
    光合成をおこなって生命活動を営む生物にとって、光は生存に必須の環境要因であり、多様かつ変動する光環境に対する適応として、種々の光受容体と光受容体からの情報伝達系、そしてアウトプットとしての多様な生理応答を進化の過程で発達させてきた。本シンポジウムでは、光合成生物の光応答の多様性を俯瞰し、普遍性を考えるために、シアノバクテリアから被子植物にいたる光合成生物の光受容体と光受容体からの情報伝達、生理応答に関する最近の研究の進展を紹介したい。シアノバクテリアの新規の光受容体の同定や光環境適応において必須の役割を果たす生物時計の生化学、生物時計により制御される日長応答(光周性)の機構、光情報による気孔開閉調節の生化学といったトピックスを取り上げる予定である。

     

    2S17p トランスポーター研究のパラダイムシフト −ヒトシステムの理解を目指して−
      オーガナイザー:森山 芳則(岡山大学)・金井 好克(大阪大学)
    トランスポーター研究の目標の一つが、個々の輸送機構を構造に基づき理解し、個体の中での役割を明らかにすることにあるのは間違いがない。細菌においては、遺伝学的手法やタンパク質の大量発現系を用いることにより、この目標を達成するための環境がほぼ整ったといってよいだろう。ここ数年で結晶構造が続々報告され始めたのはこの反映である。一方で、真核生物、特にヒトのトランスポーターについては、未だに大きな山が我々の行く手を塞いでいるように思える。しかし現在、この山を超えるべく、新しい結晶作製法、機能を維持したヒト・トランスポーターの大腸菌内大量発現、遺伝子破壊動物とメタボロームのコラボレーション等のブレークスルーテクノロジーが、我が国の研究者の手によって誕生しようとしている。我々はこうしたブレークスルーテクノロジーを用い、その力の射程を想像し、互いにネットワークを組み、新たなパラダイムのもとでトランスポーター研究を展開する時期に至ったものと考えられる。本シンポジウムでは、こうした観点から、特にヒト・トランスポーターに向けた、いくつかのブレークスルーテクノロジーの萌芽とその成果を紹介する。そこから、ポストゲノム時代に対応した新たなトランスポーター研究の推進フレームが見えてきたら幸いである。

     

    2S19p Gタンパク質共役受容体(GPCR)研究の新展開
      オーガナイザー:植田 充美(京都大学)・石黒 正路(サントリー生物有機科学研究所)
    7回膜貫通タンパク質で、細胞内での情報伝達に大きな役目を担うGPCR(Gタンパク質共役受容体)の研究の進展はめざましく、細胞外刺激に対する各種感応センサーとしての活性と受容情報の細胞内への伝達に見られる機能と構造の分子相関研究に、新しい発想に基づく構造生物学的アプローチや膜タンパク質の発現実験などが積極的に取り入れられ、新しい展開を見せ始めている。一方、ゲノム解読から、オーファン受容体の予測と未知なるリガンド探索・発見はますます注目を集めている。こういう状況下で、生理学的基盤研究やゲノム・プロテオーム創薬などの研究動向の最前線をまとめて解説するとともに、今後の基礎医学、生理学、システムバイオロジーなどへの発展と実用研究指針を概観する。

     

    3S1a 低分子量GTPaseから眺めるメンブレントラフィック研究の新展開
      オーガナイザー:中山 和久(京都大学)・福田 光則(東北大学)
    細胞内のオルガネラどうしの間や細胞膜との間の物流(タンパク質や脂質の輸送)を仲介するメンブレントラフィックの過程は、ArfファミリーやRabファミリーなどに属するさまざまな低分子量GTPaseによる調節を受ける。メンブレントラフィックによって、積み荷タンパク質が選別されて正しい目的地に送り届けられるとともに、多様な細胞機能が時間的・空間的に支配されている。本シンポジウムでは、ArfファミリーやRabファミリーによるエンドサイトーシスやリソソームとその関連オルガネラへの選別輸送の調節、極性細胞における頂端膜と側基底膜への選別輸送の調節、さらには細胞運動や細胞分裂におけるメンブレントラフィックの役割などに焦点を当て、第一線で活躍する本邦のメンブレントラフィック研究者に最先端の研究成果を紹介していただく。

     

    3S2a 活性酸素シグナル伝達の分子制御
      オーガナイザー:赤池 孝章(熊本大学)・住本 英樹(九州大学)
    近年、活性酸素(reactive oxygen species, ROS)は生体分子に非特異的な化学損傷をもたらす単なる毒性因子ではなく、巧妙に制御されたシグナル伝達機構の担い手であるというコンセプトが生命科学分野に広く展開している。本シンポジウムでは、ケミカルバイオロジーの新たな視点から『活性酸素(ROS)シグナル』の最先端研究を紹介し議論することにより、多彩な生命現象と疾患病態に関与しているROSシグナルの真の生理機能の解明に迫る。すなわち、ROSによるシグナル形成機構、そのセンサーとエフェクター分子の同定や機能解明の最前線、および、ROSのバイオイメージングなどの最先端技術を取り上げ、ROSシグナルの新たな研究の展望を多面的に議論する。生物種に普遍的に発現されているROSシグナルの統合的理解は、基礎から応用まで生命科学の幅広い分野における学術展開に資するものである。

     

    3S3a 生体鉄機能の多様性―生命と分子からのメッセージ
      オーガナイザー:石森 浩一郎(北海道大学)・竹谷 茂(京都工芸繊維大学)
    生体金属イオンとしての鉄は,バクテリアからヒトに至るまで,その生命維持に必須な元素のひとつで,その機能は呼吸,代謝,エネルギー生産など多岐にわたっている.なぜ,鉄はこのようにすべての生物の生命活動に必須な元素であろうか.また,なぜ生物は数ある金属元素の中から鉄を選んだのであろうか.単なる偶然かあるいは必然か.このような疑問に対しては,鉄を取り巻く生命現象やそれを支える多様な鉄を含む生体分子の広範で徹底的な研究の中にその答えが隠されているはずである.つまり,生体鉄機能の多様性を明らかにするためには,その生命と分子からのメッセージを解き明かすことが必要であり,生体鉄の多様性の研究は生命そのものについても新たな展開を与えてくれるかもしれない.このような視点をもとにして,バクテリアや植物,高等動物までその広い生物種を対象として,分子レベルから個体レベルまでの生体鉄研究の最前線を俯瞰してみたい.

     

    3S7a アルツハイマー病の分子病態と発症機構の新展開
      オーガナイザー:鈴木 利治(北海道大学)・道川 誠(国立長寿医療センター)
    アルツハイマー病(AD)は、変性型認知症の最大疾患であり、脳にβアミロイド(Aβ)沈着や神経原線維変化など特徴的な分子病態を示す。家族性ADでは、原因遺伝子として同定されたAβ前駆体タンパク質APPとAPPの膜内切断酵素であるγセクレターゼの触媒ユニットプレセニリン(PS)の遺伝子変異が、Aβの質的・量的変化を引き起こすことで発症し分子病態が顕著になる。しかしながら、患者数の多い孤発性ADでの発症機構は単純ではなく、分子病態も様々な過程を経ると考えられる。本シンポジウムでは、AD生化学研究の最新の成果から、孤発性ADの発症機構の提唱と分子病態に関する最新知見を公表し討論する。これら最新のの成果を踏まえ、今後想定される創薬や治療法の方向性も議論する。

     

    3S8a がん関連遺伝子の機能から明らかになる新しいがん特性シグナル
      オーガナイザー:久保田 俊一郎(東京大学)・三木 徹(長岡技術科学大学)
    がん細胞には細胞の増殖、分裂、運動性、細胞死など様々な細胞機能に異常が見られ、これらは癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活性化をひきおこす様々な変異の蓄積に由来する。このような癌関連遺伝子の研究から様々な細胞内機能ががん細胞の特性を支配することが解明され、新しいシグナル伝達経路が明らかになりつつある。本企画では癌関連遺伝子の解析により解明された新しいがん特性シグナルを考え、それらの臨床応用(がんの診断・治療法)を議論する。がん細胞の特性を支配する細胞内機能の例として細胞骨格の調節(細胞質分裂に関与するECT2と細胞運動能に関与するPI5K)、受容体型蛋白キナーゼの調節(RET下流で働くAktの基質Girdinの機能とEGF受容体の肺がんでの異常)、および新しい癌抑制遺伝子の機能(細胞増殖抑制に関与するTFL、そしてメラノーマの悪性形質を抑制し浸潤能にも関与する新規のがん抑制遺伝子)に注目し、それらの制御するシグナル伝達経路を議論してがんの診断・治療法への応用を考えたい。

     

    3S9a ペプチドの多様性と機能
      オーガナイザー:南野 直人(国立循環器病センター)・長澤 寛道(東京大学)
    ペプチドは細胞間情報伝達物質として多様な機能を担っているが、タンパク質から特異的切断、修飾を受けて生成するため、ゲノム情報のみから実在するペプチド構造を知ることは困難である。さらに、ホルモン、神経伝達物質、循環調節因子などとしての機能以外に、哺乳類でもパラクリン機能の重要性が強く認識されるようになった。一方、無脊椎動物でもペプチドの構造・機能の多様性に関する情報は拡大、蓄積されてきており、更に植物においても情報伝達物質としてのペプチドの構造、機能が明らかとなりつつある。このような現況を踏まえ、ペプチドの構造及び機能に関する概念を再考、討論し、今後一層の研究の進展を図りたい。

     

    3S11a 糖鎖と進化:糖鎖を遡ると今の生命システムがわかる
      オーガナイザー:北島 健(名古屋大学)・平林 淳(産業技術総合研究所)
    近年、糖鎖解析技術の進歩とゲノム情報の整備によって様々な生物の糖鎖研究が総合的に進展しつつある。その結果、糖鎖遺伝子の多様な発現が大胆、あるときは緻密に制御されていることが分かってきた。例えば、線虫からヒトまで共通する細胞運命決定因子が独特な糖鎖をもち、その構造変化が発生や形態形成の異常をもたらす一方、チンパンジーとヒトのような近縁の生物間における細胞表面シアル酸のわずかな構造差が感染や免疫機構に違いをもたらす実態が指摘されている。ここで指摘すべき点は、生命の歴史が糖鎖生成・多様化の必然とその活用における偶然的要素によって彩られているという「事実」である。我々は今、生物を遡って研究を進めることによって、糖鎖機能における普遍的側面と個別的側面をシステマティックに解析できる時代に入ってきた。本シンポジウムでは、このような観点から先見性のある成果を上げている研究者を集め、最新の知見を紹介していただくとともに、活発な議論を通し、生物が辿り着いた現生命システムの成り立ちを見つめ直す新しい生命科学のパラダイム「システム進化生化学」の方向性を打ち出す。

     

    3S12a ホスファターゼによる細胞機能の制御─癌、免疫・神経疾患への関与─
      オーガナイザー:島 礼(宮城県立がんセンター)・野田 昌晴(基礎生物学研究所)
    ヒトゲノムにおいて100を越えるホスファターゼの生化学的、分子生物学的解析による機能解明の進歩が近年著しい。一方で、遺伝子改変マウスの利用やヒト疾患遺伝子の解析により、ホスファターゼの生理機能が明らかにされつつある。とりわけ最近では、様々な疾患の発症要因にホスファターゼの異常が関わることを示す知見が続々ともたらされている。本シンポジウムでは、脱リン酸化を正面にすえて、新たに明らかになったダイナミックな細胞の制御機構、さらにホスファターゼと癌、神経・免疫疾患との関わりをテーマとし、最近進展が顕著である研究者にその研究成果を紹介していただく。

     

    3S13a メタボロミクスが切り拓くヒトシステム生物学
      オーガナイザー:曽我 朋義(慶應義塾大学)・末松 誠(慶應義塾大学)
    代謝物は遺伝子と酵素の発現に基づいて生産される一方、代謝物の変動が遺伝子や酵素の発現を制御する。また、生体に不可欠であるエネルギーやDNA、タンパク質、脂質などの生体高分子の前駆体は代謝によって生産される。この複雑に相互作用している分子ネットワークの解明なしには、生体の動的な振る舞いを包括的に理解することはできない。メタボロミクスは、細胞や生体内に存在する代謝物質の変化をバイアスのかからない手法で網羅的に探索し、生命のシステムを包括的に理解しようとする新たな方法論である。最近の分析技術、データ処理技術の発展に伴い、代謝産物の網羅的な測定が可能になり様々な分野で興味深い研究成果が生まれてきた。本シンポジウムでは、メタボロミクスを用いてヒトや哺乳動物の生命システムの解明に取り組んでいる気鋭の研究者に最先端の成果を紹介して頂く。

     

    3S14a 動植物におけるアロ認証機構
      オーガナイザー:澤田 均(名古屋大学)・高山 誠司(奈良先端科学技術大学)
    有性生殖は遺伝的に多様な子孫を残すための仕組みであり、それは主に遺伝的に異なる配偶子を選抜するアロ認識過程と、選ばれた雌雄の配偶子が細胞融合する膜融合過程により構成される。ここでは、これらを総称して『アロ認証』と呼ぶ。このアロ認証機構は生物種で全く異なるものと今まで考えられ、個別に研究が進められてきた。しかし、最近、雌雄同体の原索動物ホヤ類が自家不稔になるアロ認識機構が被子植物におけるアロ認識(自家不和合)機構と酷似していること、また、植物配偶子膜融合に必須の遺伝子が動物にも広く存在することが明らかにされ、今や、アロ認証機構の研究は、動植物の枠を越えた中核機構の解明に焦点が当てられている。本シンポジウムでは、配偶子のアロ認識機構や膜融合機構に関するパラダイムチェンジともいえる新知見・新展開を紹介し、今後の課題と展望について議論したい。

     

    3S17a 低分子物質によるエピゲノム制御
      オーガナイザー:深水 昭吉(筑波大学)・柳澤 純(筑波大学)
    DNAやRNAおよびタンパク質などの生体高分子を網羅的に解析するプロジェクトによって、生命の全体像に対する理解が飛躍的に進展してきた。さらに、生体低分子の動態を調べるメタボローム解析が進められており、多くの情報が提供されるに至っている。これらの成果をもとに、低分子物質と生体高分子が複雑なネットワークを形成し、生命機能を調節していることが明らかになりつつある。そこで本シンポジウムでは、遺伝子発現、恒常性維持機構から計測系までを取り上げて、さまざまな低分子物質から見たエピゲノム制御について、新しい角度から議論したい。

     

    3S19a ヌクレオソーム機能を介した核内反応制御
      オーガナイザー:堀越 正美(東京大学)・関 政幸(東北大学)
    1953年のDNA 二重らせん構造モデル、1961年のオペロン説、1968年の遺伝暗号、そして1971年の逆転写酵素の発見と続く約20年間の研究成果によってセントラルドグマは完成した。分子生物学研究はその後、得られた様々な基本原理・原則に基づき、真正細菌から真核細胞へと演繹的に研究領域が急速に展開した。遺伝子制御領域では、長年、日本は後追いする状況が続いてきた一方で、そういった研究に飽き足らない遺伝子制御研究者は早くからヌクレオソーム構造からの機能解析に着手し、様々な核内反応において先駆的な研究がなされつつある状況にあるといってよい。その中から転写、複製、修復、組換え、染色体分配等といった幅広い領域における代表的な研究を紹介し、大学院学生や若い研究者が、真にオリジナリティーのある研究とは何かと考えるように啓発するシンポジウムにしたいと考えている。

     

    3S1p G蛋白質シグナル伝達の新たな概念化
      オーガナイザー:根岸 学(京都大学)・伊東 広(奈良先端科学技術大学院大学)
    様々な生命現象 を司る細胞情報伝達システムにおいて、Gタンパク質は分子スイッチとして重要な役割を果たしている。タンパク質 合成過程や生体の受容体応答の研究から、活性化と不活性化の コンフォメーション変化(Gサイクル)を介して様々な生理反応の制御に関わることが明らかにされてきた。近年、このGサイクルの過程の新たなファイン・チューニング制御因子の発見や、時空間的な細胞内での詳細な活性化状態の可視化、恒常的作動型Gタンパク質の発見などにより、諸種のGサイクルに共 通なあるいは特異的な制御機構が見出された。本シンポジウムでは、細胞機能の発現に向けてのGサイクルの新たな調節機構の概念化を目指し、最新のGタンパク質シグナルの体系的・ 統合的理解を深めることを行う。

     

    3S2p リン酸化プロテオミクスによるシグナル伝達解析の新展開
      オーガナイザー:石濱 泰(慶應義塾大学)・木下 英司(広島大学)
    近年のプロテオーム解析技術の発展は目覚しく、特にリン酸化プロテオミクスは、ここ数年でリン酸化分子の特異的濃縮法開発が進んだこともあり、急速に成果を生み出しつつある。例えばタンパク質公共データベースUniProtに登録されているヒトタンパク質のリン酸化部位数は一昨年8月では11,501部位であったが、本年1月時点で24,274部位と倍増しており、従来の「20-30%の頻度でヒトタンパク質リン酸化が存在する」という定説はすでに覆り、60%近くのヒトタンパク質はリン酸化を受けていることが証明されている。リン酸化プロテオミクス分野でこのような大きな変化が起きつつある状況のもと、第80回、81回大会では、本分野は一般口頭発表「プロテオミクス(解析技術)」で技術的な発表のみが行われたにも関わらず、会場は立ち見がでるほど盛況であった(提案者(石濱)が過去2回の座長を務めた)。今回の提案では、本技術の様々な関連分野へのひろがりを包括的に考慮し、学会員の幅広いニーズへ対応した人選を行った。

     

    3S3p 生体微量金属研究の新展開:その潜在性と創造性
      オーガナイザー:神戸 大朋(京都大学)・深田 俊幸(理化学研究所)
    生体微量金属は様々な生命活動に必須であり、個体発生・神経系・免疫系・内分泌系・生殖系等の高次生命機能に密接に関与している。従来、必須微量元素の研究は栄養学的な実験手法によって牽引されてきたが、最近、生体微量金属がなぜ生命機能に重要であるのかという問いに対する答えが分子レベルで明らかにされつつあり、生体微量金属研究は急展開を迎えている。本シンポジウムでは、先ず亜鉛や鉄・銅等の生体微量金属が個々の生体機能にどのように関与してどのような機能を有しているのかについて概観し、さらに形態形成や細胞内シグナル伝達における役割についての発見を新たな分析技法を交えて情報提供する。それらの新しい知見をもとに、生体微量金属研究の潜在性と創造性を活発に議論して異分野領域研究との交流を促進させることにより、このシンポジウムをさらなる新展開を目指す出発点としたい。

     

    3S7p 細菌の生残戦略をめぐるあらたな展開
      オーガナイザー:天野 富美夫(大阪薬科大学)・泉福 英信(国立感染症研究所)
    細菌は、環境中や感染宿主内で、周囲から受けるさまざまなストレスに順応し、あるいは抵抗して生きている。この細菌の生残戦略を考える上で、バイオフィルム形成およびVBNC(Viable but Non-Culturable)状態への移行は、非常に多くの示唆に富む現象である。これらはいずれも、細菌が増殖状態から離れ、前者では新たな集合体を形成しながら環境ストレスから自己の集団を防御し、後者では代謝経路を大きく変化させて環境に適応して外界のストレスの影響を最小限に食い止めようとする現象である。また、バイオフィルム形成では、Quorum sensingによって細菌がオートインデューサーを放出し情報伝達を行うことにより、安定な細菌叢を構築する。本シンポジウムでは、これらの現象にさまざまな角度から焦点を当て、そこに関与する遺伝子ならびに調節機構の研究について、新たな展開を紹介する。

     

    3S8p 概日時計の分子制御と時刻リセット
      オーガナイザー:深田 吉孝(東京大学)・石田 直理雄(産業技術総合研究所)
    バクテリアからヒトまで存在する生物時計の分子機構は、時計遺伝子Perの同定をきっかけに爆発的に研究が進んだ。時計遺伝子の転写と翻訳を骨格とする約24時間周期の分子的な振動機構が明らかになってきたが、この分子時計を外部から制御する仕組みについては、驚くほど分かっていない。多くの生物の時計機構を調節する共通因子としては光シグナルが挙げられるが、光によるリズム制御の他に、生物の個体内に存在する無数の時計が、どのような生体因子によって、どのように統括的にコントロールされて一つの個体リズムを生み出すのか、大きな謎に包まれている。このシンポジウムでは、多くの生物に存在する時計の分子的仕組みが、多様な因子によってどのように制御されているかを考えると共に、多様な入力機構の観点から、ヒトの肥満や発癌などの病態に関する問題にも迫りたい。

     

    3S9p タンパク質架橋反応を標的とした病態解析と制御
      オーガナイザー:小嶋 聡一(理化学研究所)・一瀬 白帝(山形大学)
    トランスグルタミナーゼは、タンパク質のリシン残基-グルタミン残基間にイソペプチド結合を形成するタンパク質架橋酵素ファミリーであり、ヒトゲノムには10種類が存在する。すべての組織、細胞に存在し、さらに、血中、細胞外基質、細胞膜の外と内、サイトゾル、ミトコンドリア、核と多彩な分布を示し、架橋による基質タンパク質構造の安定化に加え、架橋による基質タンパク質の機能変化を介して、循環器病疾患、動脈硬化、癌、脳梗塞、皮膚疾患、関節リューマチ、肝疾患など、様々な疾患の病態形成に関わることが明らかとなり、注目が集まっている。本シンポジウムでは、国内外からトランスグルタミナーゼ研究の第一線で活躍する研究者を招き、翻訳後タンパク質架橋修飾反応を標的として、どのような新規の病態形成機構が明らかとなりつつあるか、その解析と制御について、最新の知見を聞き、議論することを通し、新しい生命原理と創薬の基盤を見出すことを目的としている。

     

    3S11p 膜マイクロドメインを介した病態発症機構の解明とその制御
      オーガナイザー:井ノ口 仁一(東北薬科大学)・岩渕 和久(順天堂大学)
    生体膜マイクロドメイン(リピドラフト)はコレステロールとガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質に富む膜上の微小領域であり,種々の情報伝達分子が秩序だった超分子複合体を形成し,細胞の内外をつなぐさまざまな生命現象を制御している。その機能異常は,様々な疾患の発症原因であることが示されつつある。本シンポジウムでは,膜マイクロドメインの構成原理研究の最近の進歩を踏まえ,免疫機能,神経機能,膜輸送機能,聴覚機能,感染そして代謝性疾患などにおける膜マイクロドメインの関与とその機能異常について紹介し,さらに新たな治療法開発に向けてマイクロドメイン矯正療法の可能性を討論する。なお発表は英語で行う。

     

    3S12p 生理活性リゾリン脂質研究 update
      オーガナイザー:石井 聡(東京大学)・青木 淳賢(東北大学)
    近年、生体膜リン脂質に由来するリゾホスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン1リン酸(S1P)、2-アラキドニルグリセロール(2-AG)などの「生理活性リゾリン脂質」の生理機能に世界的な注目が集まっている。免疫学・神経学・発生学・生理学をはじめとして多彩な研究領域からのアプローチにより、精力的な研究が現在進んでいる。これらリゾリン脂質は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)を介して多彩な生理機能を発揮することから、疾患治療の標的として期待されている。さらにここ数年の間に、リゾホスファチジルセリン(LPS)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)等の新規生理活性リゾリン脂質がその特異的GPCRとともに相次いで発見されており、この研究分野は新しい局面を迎えつつある。本シンポジウムでは、特に日本人研究者の貢献度が極めて高いこの研究分野において、国際的に活躍する研究者に最新の研究成果を講演いただく予定である。

     

    3S13p ミトコンドリアが語る細胞機能・病態研究の新たな潮流
      オーガナイザー:岡本 浩二(東京工業大学)・石原 直忠(東京医科歯科大学)
    ミトコンドリアはエネルギー生産と細胞機能制御の両面において中心的役割を果たしているオルガネラである。本シンポジウムはミトコンドリア研究の最新の成果をピックアップし、細胞機能・病態研究の未来について議論することを目標としている。具体的には、(1) エネルギー代謝におけるミトコンドリアの生理機能と病態、(2) ミトコンドリア膜動態と細胞高次機能、(3) ミトコンドリアおよびミトコンドリアタンパク質の品質管理、という3つの括りで、それぞれの新たな潮流を紹介する。オルガネラ・細胞・個体という生命の階層性を通して、これらのトピックを同時に議論することにより、ミトコンドリアの多様な働きが実は密接にリンクしていること、このオルガネラに摩訶不思議かつ未踏の原野が広がっていることを感じてもらえるのではないかと期待している。

     

    3S14p 「ストリゴラクトン」-植物ホルモンおよび寄生・共生の科学シグナルとしての機能
      オーガナイザー:山口 信次郎(理化学研究所)・秋山 康紀(大阪府立大学)
    地上部の枝分かれが過剰に形成される突然変異体の研究から、カロテノイド由来の新しい植物ホルモンの存在が示唆されていたが、その正体は長らく不明であった。昨年、この新しいホルモンが、「ストリゴラクトン」またはその代謝産物であることが明らかにされた。ストリゴラクトンは、40年ほど前にワタの根滲出液中に存在する根寄生植物「ストライガ」の種子発芽刺激物質として、最初に単離・同定された。さらに最近、植物の共生菌であるアーバスキュラー菌根菌の宿主認識物質として機能することが明らかになった。すなわち、ストリゴラクトンは、根圏における共生・寄生と地上部の形態制御において鍵となる物質である。本シンポジウムでは、ストリゴラクトンの植物ホルモンおよび根圏情報物質としての機能について紹介するとともに、ストリゴラクトン生合成やシグナル伝達機構に関する最新の話題を提供する。

     

    3S17p 感染とその防御の新たなる分子基盤的展開
      オーガナイザー:木戸 博(徳島大学)・片岡 宏介(徳島大学)
    新興・再興感染症の脅威が世界で叫ばれている中で、病原体侵入の最初の現場である粘膜で防御を司る生体の分子基盤と、病原体の感染と発病の分子基盤を軸に、感染症学と免疫学のクロストークの最先端研究を紹介していただきます。具体的には、病原体側の表面抗原因子、そして宿主側の液性および細胞性因子、またこれらの因子によって誘導される生体内分子を基盤に、感染機序の解明や防御機構の解明、感染症対策としての粘膜ワクチン開発についての新展開にまで議論を深めていただきます。

     

    3S19p クロマチン生物学の近未来
      オーガナイザー:大山 隆(早稲田大学)・東中川 徹(早稲田大学)
    クロマチンの基本単位であるヌクレオソームの発見から35年の歳月が経過した。以来、一時は等閑視の憂き目を見たクロマチン生物学は、エピジェネティクス時代のなかで再び隆盛期を迎えている。遺伝子発現調節においてクロマチンレベルでの説明を迫る多くの生物現象が蓄積されている。クロマチンを構成するDNAやヒストンをはじめとするタンパク質の修飾の化学は加速度的に進歩した。クロマチンの基盤構造に関しても、DNAの物理的特性から新たな光が当てられつつある。ごく最近では、クロマチンの階層的構造について、従来、定説と見なされていた30 nm繊維の存在が否定される可能性が示された。本シンポジウムでは、ヌクレオソーム発見35年の節目にあって、クロマチン生物学の諸々の基本相を横断的に概観し、「木より森を見る」ことを狙いつつ近未来への展開を議論する。

     

    4S1a 変貌するオルガネラ像:ダイナミクスと高次機能
      オーガナイザー:大隅 良典(基礎生物学研究所)・吉森 保(大阪大学)
    近年の研究進展により、細胞内の機能的構造体であるオルガネラのイメージが変貌しつつある。まずオルガネラ動態の再検討が進み、オルガネラが極めてダイナミックかつ迅速に形態を変化させて機能を発揮していること、そのような動態の破綻が疾患と密接に関わっていることが明らかになってきた。一過性に現れては消えるオルガネラ・オートファゴソームの形成メカニズムにもメスが入りつつある。また電子顕微鏡のイメージから従来独立性が高いと考えられて来たオルガネラ間で、相互に活発なもののやり取りが行われていることが分かってきた。さらに、オルガネラが個々の細胞の生存のみならず、中枢神経のパターン形成や生体防御等、様々な高次生体機能をも制御している様子が垣間見え始めている。本シンポジウムでは、新しい概念が創成されつつあるオルガネラ研究の最前線で活躍する若手研究者による話題提供に基づき議論を進める。

     

    4S2a 感染の検知と細胞応答
      オーガナイザー:竹内 理(大阪大学)・米山 光俊(京都大学)
    今なお大きな社会問題となっている感染症を克服するためには、それぞれの病原体の感染と増殖、病原性の分子機構を知ると同時に、宿主である我々の生体防御機構を明らかにし、両者の関係を総合的に理解することが必要不可欠である。生体防御において重要な役割を担っている自然免疫は、様々な感染をパターンとして認識し速やかな病原体排除を行うと共に、その後に誘導される獲得免疫の誘導や制御にも深く関わっていることが知られている。近年、この自然免疫における感染の検知についての解析が大きな進展をみせており、様々な感染センサー分子が発見され、それらを介したシグナル伝達、さらには獲得免疫制御へ至る細胞応答が明らかにされつつある。本シンポジウムでは、この感染の検知を起点とした免疫誘導における細胞機能制御に焦点をあて、その分子機構について討論したい。

     

    4S3a "オミックス研究の最前線" -ショウジョウバエをモデルとして-
      オーガナイザー:山本 雅敏(京都工芸繊維大学)・松本 博行(米国オクラホマ大学)
    ショウジョウバエは、遺伝学的知見が膨大であり、全ての遺伝子に対応した変異体系統があと数年で完備されるなど、生命科学研究の代表的なモデル生物である。ほ乳類モデル生物は、現段階においてゲノムのアノテーションがショウジョウバエに比べて不完全であり、遺伝的背景の多様性が遺伝子機能の比較解析をしばしば困難なものとしている。しかしながら、ショウジョウバエはその優れたゲノム情報に加えて、均一な遺伝的背景を持つ系統の維持や集団の作成が可能であることから、ポストゲノム時代においても基本的な生命現象を解析するための最適なモデル系であろう。本シンポジウムでは、現在急速に整備されつつあるショウジョウバエの近縁種のゲノミックスを皮切りに、プロテオミックス、さらに他の“オミックス(-omics)”と総称されるポストゲノムを代表する種々の分野を紹介し、今後の展望を討論する。

     

    4S7a 計算科学と実験科学の融合から見えてきた生体分子の機能
      オーガナイザー:林 秀行(大阪医科大学)・田村 隆(岡山大学)
    タンパク質を中心とした生体分子の機能はさまざまな物理・化学的解析手段の発展によって原子レベルまで明らかにされてきている.しかし,それらによって得られた精緻な機構も「動きの描写」にとどまっている限りにおいては現象論的なものであり,生体分子間の相互作用においてどのような「力」―反応駆動力や安定化エネルギーなど―が存在し,秩序だった動きをもたらしているかというところまで解明しなければ,生体分子を本質論的に理解したとは言えない.この意味において,それらの「力」を解析するために量子力学・分子力学を駆使した計算科学が必須の手段として浮かび上がってくる.一方,これら計算科学は独立した学問体系ではありえず,つねに実験科学からの課題の提供と検証によって磨かれなければならない.本シンポジウムは第一線の研究者によって紹介される計算科学と実験科学の融合を通じて,生体分子の機能の本質的理解への道筋を示すことを目的とする.

     

    4S8a Kunitz型セリンプロテアーゼインヒビターのタンパク質化学と生理的作用
      オーガナイザー:井上 國世(京都大学)・林 辰弥(三重県立看護大学、三重大学)
    Kunitz型セリンプロテアーゼインヒビターは、大豆トリプシンインヒビター (STI) が最初に記載された。植物から類似のインビターが多数報告されているが、植物には標的プロテアーゼは存在しないとされている。これらの生理的意義は不明のままであるが、微生物や昆虫に対する防御機能が注目されている。STI によるトリプシン阻害の解析により、セリンプロテアーゼの反応中間体や反応機構の解明が進んだ。一方、哺乳動物には、膵臓トリプシンインヒビターをはじめ多くのKunitz型インヒビターが知られている。近年、血液凝固や細胞分化の調節制御に関わるプロテアーゼ系にはKunitz型ドメインを1個ないし複数個持つインヒビター(HAI-1、Bukininなど)が見いだされ、その生理機能やドメイン構造の役割について興味深い報告がされている。本シンポジウムでは、Kunitz型ドメインの構造と機能にわたる最新の話題を提供していただく。

     

    4S11a 翻訳後修飾ADP-リボシル化とO-GlcNAc化の意義
      オーガナイザー:益谷 美都子(国立がんセンター)・亀村 和生(長浜バイオ大学)
    エピジェネティクス勃興に刺激され、発現形質を劇的に変化させる‘翻訳後修飾’は、生命科学の重要課題として再認識されてきた。本シンポジウムでは、特にADP-リボシル化とO-GlcNAc化を取り上げ、生理機能や構造解析に関する最近の知見をジョイント形式で紹介して頂く。ADP-リボシル化:ポリADP-リボシル化はタンパク質のGlu/Asp残基を修飾し、DNA修復やクロマチン制御、分化、細胞死誘導等に関与する。PARP ファミリーの中にはモノADP-リボシル化を行う分子も知られる。ADP-リボシル化修飾の多彩な機能と分解系による制御、他の翻訳後修飾との相互作用を取り上げる。O-GlcNAc化:多細胞生物の核・細胞質タンパク質Ser/Thr残基のGlcNAc修飾。哺乳類の胚発生に必須であること、また、細胞内栄養センサーとしてインスリン抵抗性獲得と密接に関係することからも注目されつつある。O-GlcNAc化の興味深い点は、リン酸化と拮抗または協調する可能性が高いことである。

     

    4S12a 膜リン脂質トポロジーの生物学
      オーガナイザー:植田 和光(京都大学)・田中 一馬(北海道大学)
    生体膜を構成する脂質分子は、膜内で均一に分布している訳ではない。例えば、特定の脂質分子の集合により微小なドメイン(例:ラフト)を形成することや、脂質二重層間で異なった分布を示すこと(脂質の非対称性)が知られている。脂質分子の層内分布や非対称性の変化が引き起こす膜リン脂質のトポロジー変化は、膜の物理的性質や膜タンパク質の活性あるいは局在を制御することにより、シグナルの伝達や輸送小胞の形成等、様々な細胞機能の制御に積極的に関わっていることが明らかにされつつある。一方で、膜脂質と相互作用することにより、膜の形態変化を引き起こすようなタンパク質も次々に見出されている。本シンポジウムでは、膜リン脂質トポロジーの形成や制御機構、また、その細胞機能について第一線で活躍されている研究者に発表いただき、本分野の今後の方向性や発展性について議論したい。

     

    4S13a 脂肪酸代謝と病態―量から質へ―
      オーガナイザー:島野 仁(筑波大学)・有田 誠(東京大学)
    脂肪酸は生物の主要な構成成分であり、その代謝系の異常は炎症性疾患やメタボリックシンドロームなどの病態に深く関わっていることが明らかにされてきています。とくに脂肪酸の「量的」要素のみならず「質的」要素(脂肪酸の炭素鎖の長さ、二重結合の数や位置の違い。例えば魚油に多いDHAやEPAなどのω3系脂肪酸とアラキドン酸などのω6系脂肪酸の違い)が、炎症反応やエネルギー代謝のコントロールにおいて重要であることが注目されています。また、質量分析計を用いたメタボローム解析と呼ばれる網羅的かつ高感度な分析手法により、全く新しい構造と生理活性を有する脂肪酸代謝物が明らかにされてきています。そこで本シンポジウムでは、脂肪酸代謝系が各種病態に及ぼす影響について分子レベルで理解し、その機能制御という観点から新しい治療応用の可能性について議論したいと考えています。

     

    4S14a 高次タンパク質複合体構造の変遷によるDNA複製の進行制御
      オーガナイザー:片山 勉(九州大学)・石野 良純(九州大学)
    染色体の複製過程では、多様な機能を持つ動的高次タンパク質複合体が形成され、それらの構造変換によって複製の進行が制御されている。その構造形成と変換はあまりに複雑であるため、全体像や動態の把握は決して容易でない。しかし、これらの複合体を構成する主要なタンパク質の構造解析や相互作用因子の解明が進んだことなどにより、最近、複製開始複合体や複製フォーク複合体について、全体構造と動態を提示する新しいモデルが次々と発表されるようになった。これらの構造解析研究は、細胞周期と連係した複製開始制御、開始反応から伸長反応への移行、修復、組換え、チェックポイント、分配、染色体再構築などの分子機構を理解するための重要な情報をもたらし、複製過程で必要とされる多様な機能を説明する基盤となる。本シンポジウムでは、種々の機能を内包するタンパク質複合体の構造、動態、機能メカニズムに焦点を当てて、高次複合体が持つ特徴と作動原理について議論するとともに、染色体複製研究の今後の発展を考察したい。

     

    4S17a トランスポゾンとの共生が織りなすゲノムシステムのダイナミクス
      オーガナイザー:小布施 力史(北海道大学)・石野 史敏(東京医科歯科大学)
    トランスポゾンの侵入、転移はゲノム機能を撹乱し、この大変動を乗り越えた生物は、新たな種分岐の原動力として、あるいは自らの染色体機能基盤として、これらトランスポゾン様関連因子をしたたかに利用しているらしい。実際にトランスポゾン由来の様々な蛋白質や配列は、ゲノムシステムを支えるヘテロクロマチン、エピジェネティクス、サイレンシング、インプリンティング、インシュレーションなどのメカニズムにも必要であることが次第に明らかになりつつある。このように、トランスポゾンとの共生によるゲノムシステムの成り立ちやそのダイナミクスについて、染色体の維持、継承、機能発現に加えて、機能獲得、進化、疾患との関わりなど、広い視野から議論できる場を提供したい。

     

    4S19a 発生ダイナミクスの多次元的プロファイリング
      オーガナイザー:見学 美根子(京都大学)・柊 卓志(京都大学)
    動物の発生過程では、1個の受精卵から細胞分裂により多様な細胞種が生み出され、それらが相互作用を繰り返して細胞分化を連鎖的に誘導し、規則的に配列して組織ひいては個体を構築していく。相互作用の実体である細胞間シグナル分子と作用機序についての知見は蓄積し、複数のシグナル経路のクロストークにより個々の発生現象が制御されるメカニズムについても明らかになりつつある。しかし動的に分化状態と位置関係を変化させていく細胞同士で複数のシグナルが変換され、発生現象が連鎖していく時空間的ダイナミクスについては、不明な点が多い。本シンポジウムでは、分子シグナルが組織形成の素過程に変換されていくメカニズムとダイナミクスを、遺伝学、分子・細胞イメージング、数理解析を組み合わせた革新的なプローチにより解こうとする最新の発生研究を紹介する。

     

    4S1p ストレス応答の新機軸
      オーガナイザー:垣塚 彰(京都大学)・一條 秀憲(東京大学)
    紫外線、熱、重金属などの物理化学的ストレス、あるいは、ウイルス、細菌などの生物的ストレスに代表される環境ストレスに対し、細胞は多彩なシグナル伝達機構を駆使することによって適応し、恒常性を維持しようとする。基礎生物学的観点からは、細胞がどのようにしてストレスを感知し(ストレスセンシング)、適切なシグナル伝達経路を活性化して(ストレスシグナル)、様々な生物学的反応(ストレスレスポンス)を誘導するのか、それぞれのステップに於ける正確な分子機構の解明が極めて重要である。一方、ストレスに対するシグナル伝達機構の破綻が、癌、神経変性、アレルギー、糖尿病等、多様な疾患の原因となることが分子レベルで明らかになりつつある。本シンポジウムでは、生理的、病理的な状態での多様なストレス応答の実態とその制御という視点からストレスシグナル研究の最前線に迫りたい。

     

    4S2p 「自然炎症」−病原体センサーと内因性リガンドによる非感染性炎症反応の分子基盤−
      オーガナイザー:牟田 達史(東北大学)・小川 佳宏(東京医科歯科大学)
    全ての多細胞生物に保存されている病原体センサーは、病原体を認識する一方、自己成分にも応答しうる。腸管において、常在菌と病原体センサーが平衡状態にあるように、代謝産物などの内因性リガンドと病原体センサーにも平衡状態が存在し、その破綻が非感染性炎症を誘導する可能性がある。この平衡状態、すなわち内因性リガンドと病原体センサーの相互作用によって生じる応答反応を、「自然炎症」という新たな概念としてとらえ、その理解を進めることは、種々の病態の分子基盤を解明するための新たな糸口になるものと期待される。実際に、「自然炎症」として統括できる概念が、ハエ遺伝学、マウス免疫学、ヒト臨床医学の各分野において確立されつつある。本シンポジウムでは、これらの分野の第一線で研究を進める研究者を一堂に会し、病原体センサーを介した内因性リガンドに対する応答の分子機構と、癌、肥満・動脈硬化、自己免疫疾患等の非感染性慢性炎症疾患の病態の解明を目指すために、「自然炎症」についての理解を深める端緒としたい。

     

    4S3p プロテオミクス秘伝の奥義一挙公開
      オーガナイザー:榊原 陽一(宮崎大学)・小寺 義男(北里大学)
    現在、プロテオミクスの領域に関する新技術は、最新のハイテク機器を用いて網羅性の向上、高感度化、自動化を目指したものが多い。これらの研究は、潤沢な研究資金を背景とした大型プロジェクトによるものが多く、個人的規模で運営されている大多数の研究室で即導入できる技術として、広く普及することは困難と思われる。本シンポジウムでは、研究者の独創的な発想を元に開発された斬新なプロテオミクス技術でありながら、多数の研究者が共通機器等を活用して手軽に導入可能なものを取り上げて紹介する。このシンポジウムをきっかけにして、たくさんの研究者がプロテオミクス技術を取り入れた研究を独創的に展開するお手伝いが出来ればと思います。

     

    4S7p 遺伝子制御法と遺伝子導入法の展開からみえるもの 〜新技術から医薬応用に向けての新しい研究展開〜
      オーガナイザー:武内 恒成(新潟大学)・村上 章(京都工芸繊維大学)
    遺伝子導入と遺伝子抑制は、生体機能や分子機能解析において今や必須の技術であり、今後もさらに重要性を増すことは間違いない。遺伝子導入技術については、実にさまざまな新規方法が取り入れられている。単に培養細胞に導入するだけでなく、組織個体への工夫から解析・イメージング応用だけでなく、医療への応用も加速している。RNAi法、アンチセンス法、デコイ法などの遺伝子抑制技術も、その目覚ましい進展からすでに一般的な方法論となっている。しかし一方、組織生体への適応と医薬品応用などへのさらなる応用展開のためには、遺伝子導入・デリバリー技術の進展とは切り離せない。本シンポジウムでは、単に方法論に留めず両技術を統合して俯瞰し、技術開発と利用研究から可能となった解析例と、今後の応用展開を考えたい。 物理化学的手法による遺伝子とタンパク質の導入、さらにはウイルスによる導入技術の新展開を紹介し遺伝子導入発現の現状と課題をまず捉える。さらにRNAiとOligoによる遺伝子抑制法の状況と技術展開から今後を紹介する。 各自の目的に応じた日々の解析研究への対応として役立つ解析技術としてのみならず、 「これらの研究が医療や核酸医薬をはじめ、いかに応用展開するか」を医学・生物科学だけでなく化学や医工学など幅広い観点からとらえ、「“発現”と“抑制”という二つの研究相互の重要性」と今後の展望についても議論する。

     

    4S11p 細胞死・細胞増殖制御を司る新しいシグナル伝達系、Hippo pathway
      オーガナイザー:畑 裕(東京医科歯科大学)・仁科 博史(東京医科歯科大学)
    Hippo pathwayはショジョウバエで見出され2003年にはじめて提唱されたシグナル伝達系で、セリン・スレオニンキナーゼHippoとWarts、それらの活性を制御するアダプター分子SalvadorとMatsが中核を形成し、Wartsが転写制御因子Yorkieを抑制することによって、細胞周期・細胞死を制御する。接着分子FAT、細胞膜裏打ち蛋白Merlin、腫瘍抑制分子dRASSFなども構成因子として位置づけられている。これらの構成分子は哺乳動物を含む多くの種で保存され、その遺伝子変異が器官の大きさの異常や腫瘍形成をもたらすことが報告されている。本シンポジウムでは、最近、急速に発表論文数が増え、複雑な広がりをみせているHippo pathwayの全体像を総括して、関連研究者間の連携を図るとともに、さらに多分野の研究者の関心を集めることを目指し、様々な動物を対象とする研究成果を発表し討論したい。

     

    4S12p 生体膜リン脂質生合成メカニズムの新展開
      オーガナイザー:進藤 英雄(東京大学)・井上 貴雄(東京大学)
    全ての細胞は生体膜で覆われて機能している。その生体膜を構成するグリセロリン脂質は、組織や細胞によって極性基(コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトールなど)、脂肪酸鎖長、不飽和度などが多種多様である。グリセロリン脂質は2種類の生合成経路を経て成熟することが1950年代に報告された。一度、ケネディ経路(de novo経路)でグリセロリン脂質は生合成され、その後にランズ回路(リモデリング経路)でsn-2位に多様な脂肪酸を持つようになる。これまで、グリセロリン脂質の代謝経路に関わる酵素群が詳細に調べられたが、ランズ回路のアシル転移酵素群が未同定であった。近年、ランズ回路提唱から50年以上を経てようやくアシル転移酵素が次々と発見され始めた。新しいアシル転移酵素群の内容を中心に、再び脚光を浴び始めたグリセロリン脂質生合成の分野をシンポジウムとして提案したい。

     

    4S13p エネルギー代謝はどのように老化に関わるか
      オーガナイザー:石井 直明(東海大学)・石神 昭人(東邦大学)
    1990年のTom Johnsonによる世界で最初の寿命遺伝子の発見が、その後の老化の分子レベル研究の飛躍的な進歩をもたらしている。その中で特筆すべきはインスリン・シグナル伝達系を介したエネルギー代謝が老化に深く関わっていることが明らかになったことである。一方、エネルギー代謝はその副産物としてミトコンドリアの電子伝達系から活性酸素を発生させ、核酸やタンパク質などあらゆる細胞構成成分に傷害を与えて老化を促進する。これに対して生物は抗酸化機構を発達させてきた。生物の個々の寿命は活性酸素の発生量とこれに対する防御能力のバランスにより決定されていると考えられるようになった。近年、これらの研究は老化の分子メカニズムの解明のみならず、カロリー制限や抗酸化によるアンチエイジングの世界にまで幅が広がるようになってきた。そこでエネルギー代謝に関するさまざまな観点から老化を考える。

     

    4S14p 化学物質による遺伝子修飾と毒性発現
      オーガナイザー:遠山 千春(東京大学)・渡邊 肇(基礎生物学研究所)
    近年、胎児期の化学物質への曝露が成熟後に悪影響を引き起こす、いわゆる胎児期起源の成人疾患の概念が提唱されている。この現象には、遺伝子修飾によるエピジェネティックな変化の関与が示唆されている。さらに、化学物質への胎児期曝露によるエピジェネティックな変化が次世代においても観察されるとの報告もなされ、環境からの獲得形質が遺伝することを意味する重大な問題提起となっている。ところが、これらの影響については現象論が先行しており、実質的な理解のためには分子レベルでのエビデンスに基づく研究が不可欠である。そこで、この分野で活躍をしている若手研究者に、化学物質による遺伝子修飾と毒性に関する現象とその分子基盤、ならびに新たな解析方法の観点から講演をしていただく。なお、このシンポジウムは、昨年度の公募シンポジウム「分子毒性学の進展」が盛会であったことを受けて企画したことを付記する。

     

    4S17p フィードバックループと形づくり
      オーガナイザー:稲垣 直之(奈良先端科学技術大学院大学)・別所 康全(奈良先端科学技術大学院大学)
    組織や細胞は発生・分化に伴って単純な形態から次々に非対称性や不均一性を獲得して固有の形態を形づくる。生命システムがゲノム情報を用いていかにして複雑で美しい形態を形成するかという問題は興味深い大きな謎である。現在、発生学的・分子細胞生物学的手法に加えて最先端の分子計測や数理解析といった様々な研究手法を融合させたアプローチで、この問題を明らかにしようとする試みがなされつつある。その結果、以前から形態形成を理解する鍵として提唱されてきたシグナルのポジティヴフィードバックループやネガティヴフィードバックループが分子レベルで明らかとなりつつある。本シンポジウムでは、様々な形態形成のモデルを用いた最先端の研究成果にスポットをあてつつ、いかにして生命の形態形成の原理を分子レベルで迫ってゆくか、その可能性を議論したい。

     

    4S19p 細胞はいかにして"対称性の破れ"を獲得するか 〜細胞極性研究の新展開〜
      オーガナイザー:碓井 理夫(京都大学)・田ノ上 拓自(神戸大学)
    多細胞生物の器官や組織は、多様な形態と機能とを備えている。たとえば哺乳類の呼吸器官である気管支・肺は、上皮細胞シートからなるチューブが多数分岐した形態をとっており、大きな表面積を使ってガス交換を行う。また、可動性の繊毛を発達させて異物を体外に排除する機構を持っている。このような統合された形態と機能は、構成する一つ一つの細胞の形態や機能が有機的に統合されてはじめて意味を持つ。上の例では、上皮細胞は、頂部-側底部という極性を持つことで方向性のあるガス交換を実現し、チューブの長軸方向に平面内極性をつくることで方向性のある異物排除を達成している。しかし、細胞極性が個体発生の過程でどのような素過程をへて形成されるかは、依然多くが謎に包まれている。本シンポジウムでは、細胞の対称性が破れて極性を獲得する過程に注目し、その基本メカニズムにせまる研究を紹介するとともに、今後の研究の方向性を探りたい。