※セッション番号について:
開催日 + 午前 / 午後(A / P)+ ワークショップ(W)+ 会場
(例)2PW15:第2日目・午後・ワークショップ・第15会場
※時間について:(午前)9:00-11:30、(午後)12/6-8 16:00-18:30、12/9 13:30-16:00
※講演言語について: J 日本語 E 英語 J/E 演者が選択
※オンデマンド配信について( LOD Lecture on Demand):オンデマンド配信あり
(個別の演者の希望により、配信されない演題もあります)
1AW01 |
いかにして「使える」データベースを維持し続けるか? How to maintain the database that works? |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
粕川 雄也(理化学研究所)、
坊農 秀雅(情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター) |
- オープンデータ、オープンサイエンスの流れの中、生命科学研究におけるデータベース(DB)の役割や重要性は非常に大きくなっている。例えば、Scientific dataやGigascienceなどのデータジャーナルやプレプリントサーバー(biorxiv)が生命科学分野でも普及しつつあり、公共DBは検索のためのツールに留まらず、自らのデータを発表する場所としての役割も担うようになってきた。しかし一方で、DB中に再現性の検証に必要なメタデータ、とくにデータの品質に関する情報が記載されていない、DB構築や維持管理の予算や人的資源が足りないなどの根深い問題も依然として存在する。そこで、DB運用者だけでなく、予算策定に関わる関係者やDB登録者・利用者といったさまざまなステークホルダーにお集まりいただき、すべての関係者が協力して溝を埋めながら、いかにして有用なDBの構築・維持・運用に寄与していけるのか議論したい。
1AW02 |
RNA生理学の学際的アプローチ ―非コードRNAの全貌を明らかにする新たな試み― Launching an RNA physiology with interdisciplinary approaches
―An attempt to elucidate molecular mechanisms in functions of long noncoding RNAs― |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
黒川 理樹(埼玉医科大学)、片平 正人(京都大学) |
- 20世紀、遺伝情報をアミノ酸配列へと仲介するRNA分子が研究の中心であったが、今世紀に入りセントラルドグマに与しない非コードRNA(ncRNA)が注目を集めている。多様なゲノム領域から転写されるncRNAの生理機能もまた多様で、普遍的なメカニズムは見えてこない。これらncRNAの生理機能を知ることで共通の作用機構の解明を目指す試みを『RNA生理学』として、本ワークショップ(WS)を企画した。RNA生理学は、ncRNAを生化学、分子生物学、生物物理学、そして、計算科学など広範な研究方法を用い、その生理機能を知り共通の作用機構を明らかにする。研究対象も植物からヒトまで、複雑な生命現象のなかに普遍的メカニズムを追求し、その成果の臨床医学への応用を志向する。今回、様々なncRNAに取組む新進の研究者に参集してもらった。ここでの論議から『RNA生理学』の方向性が生まれることを期待する。
1AW03 |
脂肪細胞性質決定の転写、エピゲノム調節 Transcriptional and epigenetic regulation in characteristic determination of adipocyte |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
稲垣 毅(群馬大学)、大野 晴也(広島大学) |
- 脂肪組織はエネルギーの貯蔵を行うだけではなく、熱産生や内分泌機能を介して、全身のエネルギー代謝に大きく関わっている。脂肪組織には、エネルギー蓄積型の白色脂肪と消費型の褐色脂肪がある。さらに、白色脂肪は外部環境に応答して、ミトコンドリアが豊富な褐色脂肪様のエネルギー消費型の細胞へ形質転換(ベージュ化)する。そのため、脂肪細胞の形成や形質変化の詳細を理解し、脂肪組織の量や質を変化させることができれば、肥満症や糖尿病などの治療応用へと繋がることが期待される。脂肪細胞の分化にはPPARγをはじめとする多くの転写因子が関わっている。さらに、これらの転写因子が形成する転写調節複合体やヒストン修飾酵素を含むエピゲノム因子との関連が明らかにされつつあり、注目が集まっている。本セッションでは、脂肪細胞の性質決定に関与する転写の分子機構の解明に焦点を当て、最新情報を紹介するとともに今後の展望について議論したい。
1AW05 |
X線自由電子レーザーが捉えるタンパク質ダイナミクス研究の最前線 Frontiers in protein dynamics science by X-ray free electron lasers |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
南後 恵理子(理化学研究所)、久保 稔(理化学研究所) |
- X線自由電子レーザー(XFEL)は今世紀に入ってから実用化された新たなX線光源である。日本においては、米国に続いて2012年にXFEL施設SACLAが供用を開始し、XFELを用いた研究が展開されている。タンパク質結晶構造解析においては、10フェムト秒より短い高輝度XFELパルスを用いることで、放射線損傷が起こる前に回折像を取得することが可能となり、生体内での機能条件に近い室温でも無損傷の構造解析ができるようになった。最近ではさらに時分割結晶構造解析の装置が開発され、機能状態でタンパク質が動いている姿を数10フェムト秒の時間分解能かつ原子分解能で精密に捉えられるようになってきており、今後のタンパク質ダイナミクス研究の強力な手段として期待されている。本ワークショップでは、SACLAにおけるタンパク質の時分割結晶構造解析の現状や、膜タンパク質のダイナミクス研究の最新の成果を紹介し、今後の展望について討論を行う。
1AW06 |
微生物からヒトに至るトランスグルタミナーゼ遺伝子ファミリーの多彩な機能 Various functions of transglutaminase gene family from microorganisms to humans |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
一瀬 白帝(山形大学)、人見 清隆(名古屋大学) |
- タンパク質架橋結合酵素であるトランスグルタミナーゼ(TGase)は、約2億年前に現れ、その後の進化により膨大な種類の基質を架橋結合するようになって、多彩な機能を獲得した。微生物と動物のTGaseは活性部位以外のアミノ酸配列は異なっており、機能的収斂進化の好例である。神谷博士(九州大学)は活性型微生物由来TGase前駆体の設計と機能評価、柴田博士(九州大学)はショウジョウバエTGaseの外皮形成、免疫寛容、初期発生や寿命などにおける役割と新規の分泌機構、西浦博士(兵庫医大)は137番グルタミンをグルタミン酸に変異したS19リボソーム蛋白質遺伝子をノックインしたマウスの全身性エリテマトーデス様病態、河邉博士(大阪府立大学)は中枢グリア細胞におけるTGaseの機能、辰川博士(名古屋大学)は線維化モデルマウスにおいてTGaseイソ酵素特異的に架橋結合される基質の包括的解析、最後に尾崎博士(山形大学)は自己免疫性第XIII/13因子(血漿TGase)欠乏症1名から作製したヒト単クローン抗体の標的部位と作用について述べ、相互に議論する。
1AW07 |
TOR研究の奔流 The surge of TOR research |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
前田 達哉(東京大学)、武井 延之(新潟大学) |
- 免疫抑制剤/抗がん剤ラパマイシンの標的であるTORキナーゼは、栄養・エネルギー・増殖因子・ストレスなど細胞内外の増殖関連シグナルを統合し、細胞の成長と生存とを統御するという重要かつ根本的な役割を果たしている。TORはTORC1とTORC2という2つのキナーゼ複合体として存在するが、各々の構成・制御・機能は真核生物を通じて広く保存され、さまざまな実験系の利点を活かした研究が進められている。哺乳類においては、発生・分化・神経機能・がん・生活習慣病・老化への決定的な関与が示されて、多くの分野にわたる関心を集めるようになった。既に制御機構の大枠は明らかにされ、広範な生理機能のそれぞれに寄与する標的基質も同定されつつあるなど、TOR研究はいよいよ成熟期を迎えつつある。本ワークショップでは、今まさに展開しつつあるTOR研究の最前線を紹介するとともに今後を展望したい。
1AW08 |
量子センサー技術を用いた生命現象の理解と革新に向けて Towards innovation and understanding of biological phenomena by quantum sensor |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
横谷 明徳(量子科学技術研究開発機構)、安達 基泰(量子科学技術研究開発機構) |
- 計測・センサ技術の高度化は生命現象の解明やその応用のフロンティアを常に切り拓いてきた。近年、量子力学的な効果を利用することで、古典力学の活用を基本とした従来の観測技術を凌駕する感度や空間分解能等を得る量子計測・センサ技術が大きく発展しつつある。磁場・電場・温度、光等の外界の変化に非常に高感度に反応する可能性を持つ量子計測・ センサ技術は、幅広い用途にブレークスルーをもたらす技術となってきており、生命現象の解明に更なる革新を与える可能性を現し始めている。本ワークショップでは、量子計測、センサー技術という新たな観測技術に着目し、量子生命科学という新たな分野の創出や、がんやその他生命現象の本質的理解への展開を考えてみたい。
1AW09 |
虫の会(まじめ版)4:分子から形態・生命現象まで分野横断 Insect club formal version in ConBio for insect geeks 4: next approaches to entomology from not only molecular aspect but also morphology and biological phenomena |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
仲里 猛留(ライフサイエンス統合データベースセンター)、武藤 愛(奈良先端科学技術大学院大学) |
- 次世代シーケンサー(NGS)やゲノム編集といった技術革新により、昆虫をはじめとする非モデル生物でも医学分野に応用できるようなすぐれた成果が得られるなど、研究対象の裾野が広がっている。また、オミックス解析として全遺伝子の挙動を生命現象や形態と結びつけて解釈できるようになってきただけでなく、分類学分野でも従来の形態だけでなくDNAバーコーディングが用いられるようになるなど、分子生物学にとどまらず分野横断的に研究を加速させている。今回の虫の会・まじめ版では改めて「昆虫」を中心に(しかし、他の生物種とも比較しながら)幅広い分野の研究者が一堂に会し議論することで、データからモノ、分子から形態・生命現象といった軸から研究の現状を通観し、「相互作用」により将来の研究を推進させることを目的とする。
1AW10 |
巨大ウイルス研究の朝(あした) The Dawn of Giant Virus Biology |
J/E |
LOD |
- ミミウイルスの発見を皮切りに、世界中から多くの「巨大ウイルス」が分離され、生物とウイルスの境界に位置するその生態学的、ゲノム科学的研究が盛んとなった。そして、巨大ウイルス研究者は、フランスの研究グループを中心に、生物の起源にも迫るその存在自体の謎に果敢に挑戦している。近年日本でも巨大ウイルス研究が徐々に進展し、先行する研究グループを急速に追い上げつつある。本ワークショップでは、そうした巨大ウイルス研究者が一同に会し、ミミウイルス、ピソウイルス、マルセイユウイルスなど巨大ウイルスに関する最先端の研究成果について議論する。巨大ウイルスとは何者なのか。巨大ウイルスは生物にとってどういう存在なのか。そして巨大ウイルスはどのように進化してきたのか。私たちの前に大きく横たわる巨大ウイルス・ミステリーの解明に向けた展望を示したい。
1AW15 |
細胞骨格により制御される転写と細胞機能: 細胞形質転換と疾患 Transcription and cellular functions regulated by cytoskeleton: cellular phenotypic modulation and deseases |
J |
オーガナイザー: |
林 謙一郎(大阪大学)、木岡 紀幸(京都大学) |
- 細胞骨格及び細胞骨格関連タンパク質は細胞形態の維持や細胞運動制御以外にも転写調節に直接的または間接的に寄与し、細胞形質転換(分化・脱分化)及び疾患と関連することが知られている。特に外因性刺激や細胞接着により誘起されるアクチンの重合・脱重合(actin dynamics)は転写制御に重要な役割を果たす。繊維化疾患の起点となる上皮間葉転換(EMT)及び浸潤癌の進展に寄与する癌関連繊維芽細胞の活性化に関わる転写補助因子MRTF-A/BやHippoシグナル伝達に関与する転写補助因子YAP/TAZのアクチンによる機能制御が例として挙げられる。また、単量体アクチンやアクチン関連タンパク質は核内にも存在し、クロマチン構造の維持・変化に関わっている。本ワークショップでは細胞骨格による転写制御と細胞形質転換及び疾患との関連について最新の知見を紹介する。
1AW16 |
ペルオキシソーム・バイオロジー New aspects of peroxisome biology: functions, biogenesis, homeostasis, and diseases |
J |
オーガナイザー: |
藤木 幸夫(九州大学)、阪井 康能(京都大学) |
- 真核細胞は緻密に分化した膜構造で区画化されたオルガネラを発達させ、各々が固有の機能を発揮することで高度な細胞機能を実現させている。オルガネラの機能は、細胞に課せられた要求に応答して各オルガネラの量、構成成分、構造をダイナミックに変化させる仕組みと、機能の恒常性を維持する機構の両方により統合的に制御されている。
ペルオキシソームは、植物グリオキシソームや菌類Woronin bodyを含めミクロボディーとも呼ばれる真核細胞に広く存在するオルガネラであり、種々の酸化反応や脂質代謝等の生命維持に必須な代謝機能を有する。本ワークショップでは、動物細胞、植物、酵母、糸状菌類等の様々な生物種において、神経疾患や動植物への定着や感染など、明らかとなってきたペルオキシソームの新たな生理機能と分子機構に関する内外の最新の知見を紹介し、ペルオキシソームが細胞機能や個体恒常性に果たす役割やその制御機構について議論する。
1AW17 |
筋生物学の統合的理解にむけた新たな潮流 Integrated Muscle Biology |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
櫻井 英俊(京都大学)、金川 基(神戸大学) |
- 骨格筋は日常生活動作に必須の組織であり、最近では国民的問題として直面している生活習慣病や加齢性筋萎縮(メタボリック・ロコモティブ症候群)などにも深く関連することが明らかになってきた。また、東京五輪や超高齢化社会を目前にひかえ、個人の運動機能やQOLの向上につながる統合的な筋研究に社会的興味がもたれている。歴史的にも筋の作動原理に関して本邦の研究者が多大な貢献を果たしてきたのは周知の通りであるが、いま、新たな筋生物学研究の潮流が湧きあがろうとしている。例えば、骨格筋が宿す幹細胞研究は本邦の研究が世界をリードし、筋再生・肥大・萎縮のメカニズムが分子レベルで明らかになってきた。また、難治性筋疾患の原因遺伝子の同定・機能解明により、画期的な治療法も開発されつつある。筋を物理的刺激の感知組織としてとらえたメカノバイロジー研究はQOL向上の礎となるであろう。更に可視化技術により筋を中心とする他臓器連関についても新たな局面をむかえている。本ワークショップは、新たな潮流を生み出している気鋭の研究者、次世代の活躍が嘱望される若手を中心に構成し、最新の筋生物学を統合的に考える場としたい。
1AW18 |
細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 Decoding of organelle zone responsible for cellar function |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
清水 重臣(東京医科歯科大学)、西頭 英起(宮崎大学) |
- オルガネラは、各々が高度に専門化した役割を分担している。多様な生命現象を理解するためには、このオルガネラの機能や動態を正しく解析することが必要不可欠である。最近の超解像顕微鏡の開発や高速度撮影技術の急速な進歩により、細胞の観察技術は飛躍的に発展し、オルガネラを精密に観察できるようになった。その結果、「1つのオルガネラの中に、異なる役割を担う領域が存在すること」や「オルガネラ機能の多くは、これらの領域における素反応の集積として発揮されること」が明らかにされつつある。現在は、このような新しい視座に立って、オルガネラ研究を一段深いレベルで行うことが可能となった。本ワークショップでは、オルガネラの限局された機能領域(オルガネラ・ゾーン)で繰り広げられる細胞現象の解明に取り組む研究者達に、最近の知見を紹介していただき、新たなオルガネラ・ゾーン研究の今後について議論したい。
1AW19 |
亜鉛シグナリング:細胞の増殖・分化・死を司る新しい制御機構 Zinc signaling in cellular proliferation, differentiation, and death |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
深田 俊幸(徳島文理大学)、神戸 大朋(京都大学) |
- 亜鉛は生命維持に必須であり、その摂取量低下は成長遅延・味覚異常・皮膚脆弱化を主訴とする亜鉛欠乏症をもたらす。老齢者では全身の亜鉛量が低下する傾向があり、この加齢を伴う亜鉛減少が老齢型疾患に関与すること、これらの治療に供する医薬品によって、亜鉛欠乏が相乗的に惹起されることが示されている。また、偏ったダイエットによっても亜鉛欠乏がもたらされることが判明し、亜鉛の恒常性異常と現代人が対峙する病気には密接な関係があると認識されつつある。亜鉛の恒常性は亜鉛トランスポーターが担っている。今までの研究から、亜鉛トランスポーターが輸送する亜鉛は機能的なシグナル因子として作用すること、この亜鉛シグナルが細胞機能の制御に深く関わることを示されている。本ワークショップでは、国際亜鉛生物学会と亜鉛栄養治療研究会の主要メンバー、および次世代を担う若手研究者を国内外から招聘し、亜鉛シグナルが関わる細胞機能の分子基盤の最新情報を共有することによって今後の課題を議論する。
1AW20 |
難治性疾患克服バイオロジー:生殖・発生・小児疾患を中心に Biology for overcoming intractable diseases: From reproduction to childhood |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
宮戸 健二(国立成育医療研究センター研究所)、中林 一彦(国立成育医療研究センター研究所) |
- 現代医学の進歩により多くの疾患の完治が可能となった一方で、生殖・発生・小児分野に絞ってみると、治療法が確立されていない難治性希少疾患が多数存在する。「小児・周産期医療」に次世代が生まれるまでの「母性・父性医療」を加えて包括的に取り扱われる病気が「成育疾患」である。成育疾患は個別の疾患の集まりであるが、成人期発症疾患とは異なり、ゲノム・細胞・組織レベルで若齢に特化した共通原理が関わっている可能性がある。本ワークショップでは、成育疾患の発症メカニズム解明をめざした基礎研究から診断・治療法開発をめざした臨床研究までを扱う。生命科学基礎研究と疾患研究は表裏一体である。基礎研究成果・技術は疾患研究に応用され、難治疾患研究を通じて生命の基本メカニズムが解明される場合もある。各分野の最先端の基礎・臨床研究者を横断的に集め、成育疾患の克服に向けた今後の展望を議論したい。
1AW21 |
病態モデル動物からアプローチする発達障害の分子病態理解 Understanding of molecular pathogenesis of developmental disoders approaching from disease model animals |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
内野 茂夫(帝京大学)、内匠 透(理化学研究所) |
- 自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーション障害や興味・行動の限局化、リズム・感覚・運動機能の障害など多岐にわたる症状を呈する脳の発達障害である。ASDは出生100人に1人を超える程の高い罹患率であるが、その病態は未だ十分に解明されていないため根本的治療法は開発されていない。近年のヒトゲノム解析から、ASDの発症や神経病態に関わる多数の遺伝子・染色体異常が明らかになり、今やASD研究は精神疾患研究の中では最も分子生物学的理解の進む領域である。本ワークショップでは、ASDと関連性が見出されたシナプス機能分子やエピジェネティック関連分子、染色体構造異常に着目して作出した動物モデル(マウス、マーモセット)を用いた最新の研究を提示するとともに、ASDの病態理解から新たな治療戦略までを議論したい。さらに、ASDの診断マーカーの開発に取り組む最前線の臨床現場も紹介する。
1AW23 |
End malaria ―マラリアのeliminationをめざして End malaria - Twards malaria elimination |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
北 潔(長崎大学)、坪井 敬文(愛媛大学) |
- マラリアは、毎年2億人以上が罹患し年間40万人以上が死亡する重篤な感染症である。最後の砦である治療薬アルテミシニンの使用により、現在死亡者数は減少傾向となり、WHOは「2030年までにマラリアエリミネーション」を目標に掲げた。しかし、アルテミシニン耐性マラリアがすでに出現している。そこで、エリミネーションを達成するためには、病態の理解、迅速で精確な診断法の確立、治療のための創薬、予防のためのワクチン開発は一時も休む事はできない。そしてこれを支えるのが「基礎生命科学」である。本ワークショップではこのマラリアとの闘いを支える国際的に活躍している若手の最先端研究を紹介したい。
1AW24 |
脳疾患におけるグリア病態の新展開 Novel insights of glial pathophysiology in the brain disorders |
J |
オーガナイザー: |
富田 泰輔(東京大学)、斉藤 貴志(理化学研究所) |
- アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経変性疾患や虚血性脳卒中、精神疾患にいたるまで神経炎症の関与が明らかとなってきた。これら疾患脳内では慢性炎症状態にあると想定されており、脳内免疫担当細胞であるグリア細胞の関与が注目を集めている。しかしながら、病態形成におけるグリア細胞の制御機構や分子動態は各種疾患の複雑性もあり、十分に理解されていない。病態メカニズムの解明から創薬標的の提示のためにも、各疾患状態におけるグリア病態の共通点や相違点を見出すことは重要なテーマとなっている。そこで本ワークショップでは、脳疾患におけるグリア病態について様々な角度から介入している新進気鋭の研究者に新たな知見を紹介していただき、今後の展望について議論したい。
1AW25 |
遺伝暗号Magic20の起源と進化 Origin and evolution of the genetic code "Magic 20" |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
横堀 伸一(東京薬科大学)、別所 義隆(中央研究院) |
- タンパク質の20種類のアミノ酸は、しばしば「Magic 20」と称される。生物3ドメインにおける遺伝暗号の類似性から、全生物最終共通祖先LUCAで、現在のアミノ酸20種を使用する標準暗号が確立していたと考えられている。遺伝暗号は、変化するとゲノムの全てのタンパク質が一度に変わってしまうので、生物進化において最も保守的なシステムである。現在のほとんど全ての生物は、LUCAの遺伝暗号をそのまま使用しているが、マイコプラズマ、藻類、ミトコンドリアなど、例外暗号を使用する生物も多く見つかっている。これらの生物やオルガネラにおける変則暗号を解読するメカニズムや系統進化の知見が、初期遺伝暗号の進化を考察する材料となり得る。このワークショップでは、現在の遺伝暗号システムが初期生命において如何に構築されたか、起源に迫ることを目指し包括的に議論する。
1AW27 |
糖鎖修飾と,末梢組織から見た神経系疾患 Glycosylation and CNS disorders stemming from peripheral dysfunctions |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
加藤 啓子(京都産業大学)、北川 裕之(神戸薬科大学) |
- 我々はこれまで、『脳と脊髄からなる中枢神経系が、末梢の器官系に属する各器官(臓器)の機能を調節し、個体の恒常性を統御している』という考え方に基づき、個体を眺めてきた。このワークショップでは、その逆のベクトルで個体を眺め、神経系疾患の発症機序をとらえる。すなわち、血管障害、筋力低下、胆肝系機能障害、脳関門機能異常といった末梢の機能障害から、各種神経(精神)疾患 — アルツハイマー病、知的障害、うつ・不安症、てんかん — の発症メカニズムを探る。また、このワークショップにおける原因分子のキーワードは糖質と糖鎖である。細胞内には多くの糖質が、細胞外環境には多くの糖鎖が存在し、末梢の器官から中枢への情報の伝達や、代謝産物の伝搬に重要な役割を果たす可能性を示したい。
1PW01 |
クライオ電顕で見えてきた生命現象 New inghts of biological phenomena revealed by cryoEM |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
光岡 薫(大阪大学)、横山 謙(京都産業大学) |
- 凍結試料を透過型電子顕微鏡で観察する手法、すなわちクライオEM は、電子直接検出器の開発により構造生物学に革命をもたらしつつある。クライオEM を用いることにより、タンパク質の構造やオルガネラ、時には細胞全体の詳細の構造を見ることが可能になった。単粒子解析を利用することで原子分解能に近い精度で生体高分子複合体を観察できる一方、トモグラフィーを用いれば、生体分子が細胞内のどこでなにをしているのか、そしてどのように働くのか、についての理解も可能になる。このワークショップでは、単粒子解析による超分子複合体の構造解析、およびクライオトモグラフィーによる細胞やオルガネラまるごとの構造解析についての最新の研究成果を発表する。加えて、クライオEMを用いた構造生物学に関する最新の解析手法についても紹介する。
1PW02 |
RNA制御が支える真核生物の複雑な形質発現機構 RNA regulation providing complexity of gene expression system in eukaryotes |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
甲斐田 大輔(富山大学)、片岡 直行(東京大学) |
- 真核生物の形質発現には、DNAが持つ1次配列の情報や、転写のオン/オフだけでなく、選択的スプライシングやRNA修飾、翻訳や分解など、RNA段階での様々な制御が非常に重要であることが明らかとなってきている。このようなRNA段階での制御が、高等真核生物の複雑さの源泉となっているが、この制御は非常に複雑であり、かつ高度な正確性が要求される。したがって、このRNA制御に破綻が生じた場合、様々な疾患の引き鉄となることが予想される。近年、RNA制御の破綻と疾患の因果関係が明らかとなっている例がいくつか報告されてきている。本ワークショップでは、RNA制御の詳細なメカニズムの解析や、破綻が起こった場合の細胞機能変化、さらには、RNA制御の破綻が引き起こす様々な疾患の発症機構などに焦点をあて、RNA制御がいかにして高等真核生物の複雑な形質発現に貢献しているのかについて議論したい。
1PW03 |
ゲノム安定性を脅かすDNA複製ストレスの実態 Causes and consequences of DNA replication stress |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
塩谷 文章(国立がん研究センター研究所)、大橋 英治(九州大学) |
- 細胞は、紫外線や化学物質などの外的要因のみならず、G4構造や反復配列など特殊なDNA配列やクロマチン構造、さらにはがん遺伝子の発現異常などによる内的要因によってDNA複製ストレスを受けることが知られている。近年、従来から知られてきた脆弱部位(CFS)とは異なり、DNA複製と転写活性の共役した脆弱部位(ERFS)が報告され、またその要因としてDNA-RNA hybrid構造の存在も示唆されており、複製ストレスの多様性とそれを解消する仕組みの重要性が明らかになりつつある。実際に複製ストレスを受けた細胞では、DNA複製・組換え・修復・チェックポイントを駆使して対処するが、しばしば不正確な複製や修復を誘発し、ゲノム不安定性やがん化の要因となり得る。本ワークショップでは、様々な要因から起こる複製ストレスに対処する種々の仕組みとその結果としての細胞の運命に焦点を当て、その分子メカニズムや意義について議論したい。
1PW05 |
「個性」創発神経基盤の統合的理解に向けた階層横断的解析 Measuring, examining, understanding of the neurological basis for individuality by means of multidisciplinary approaches |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
冨永 貴志(徳島文理大学)、郷 康広(自然科学研究機構新分野創成センター) |
- 「個性」はどのように創発されるのであろうか?さまざまな「個性」は、ゲノムの個体差がその基盤をなすが、育ち方・生活習慣等の環境的要因によっても「個性」は変容し発露する。しかし、その神経基盤や遺伝的・環境的背景については未だ十分には明らかにされていない。近年、脳画像データ、行動データ、神経活動データ、細胞動態オミクスデータ等の「ビッグデータ」が各階層で集積し、それらをデータ駆動型アプローチにより、定量的・階層横断的に理解するインフラが整いつつある。このような背景をもとに、本ワークショップでは、いきものの「個性」を多階層で高精度に測り・知の共有化を図り・包括的に理解することを目指す。
1PW06 |
生体金属動態の分子科学-「生命金属科学」への展開 Molecular Science for Dynamics of Biometal - Road to "Biometal Science" |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
石森 浩一郎(北海道大学)、城 宜嗣(兵庫県立大学) |
- 生体内には多くの金属イオンが「生体金属」として存在し、生命維持のさまざまな過程で重要な役割を果たしている。特に遷移金属は微量にもかかわらず、その特異な化学的、物理的特性が種々の生体内反応に必須であることから、金属錯体の配位化学から金属酵素の構造・機能解析までの生物無機化学研究での中心的な位置を占めている。一方、ヒポクラテスの時代から貧血に対する治療として鉄投与が知られていたように、遷移金属は古くから病態との関連で医学、薬学分野でも注目されており、近年では特定の遷移金属の欠乏と病態との相関から、遷移金属を標的とする創薬の可能性も示されている。本ワークショップでは、このような生体遷移金属に対する2つのアプローチについて、最新で多様な生物学的、生化学的、あるいは物理化学的研究をもとに、金属イオンの細胞内動態という新たな観点で統合的に理解し、「生体金属」の生物学的重要性とその医学、薬学への応用から「生命金属科学」を展望する。
1PW07 |
先端的異分野連携で切り開くシグナル伝達研究 Opening up a new window on signal transduction research by advanced interdisciplinary alliances |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
武川 睦寛(東京大学)、鈴木 貴(大阪大学) |
- 細胞内の情報伝達は、シグナル伝達因子の翻訳後修飾、分子間相互作用、局在変化、合成・分解などの多様な生化学反応を介して、時間的かつ空間的に厳密に制御されている。昨今の解析技術の進歩により、生体のシグナル伝達は活性化・不活性化による単純な一次線形的反応ではなく、正負のフィードバックや異なる経路間のクロストークなどを含む複雑な高次非線形反応であり、この多様かつ動的な反応様式こそが生命機能制御の根源的メカニズムであることが明らかにされてきた。しかしながら、生体内における情報伝達ネットワークの制御やその破綻がもたらす疾患発症機構に関しては未だ不明な点が数多く残されている。シグナル伝達に関する多様かつ膨大な情報を統合して、その本質を理解するには、従来の分子生物学的手法のみでは不可能であり、シグナル伝達を数式として捉え、モデル化を図る数理科学的手法や、オミクス解析、分子イメージング、インタラクトーム解析など、多様な先端技術の異分野連携が必須である。本ワークショップでは、先端的異分野連携を駆使したシグナル伝達研究を紹介する。
1PW08 |
ハイブリッドサイエンスの新時代 ~生命科学とデータ科学を繋ぐ~ A new era of hybrid-science - integration of life and data sciences |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
島村 徹平(名古屋大学)、大澤 毅(東京大学) |
- 次世代シークエンサーや質量分析計の技術革新により、生命科学における膨大なビッグデータが日々蓄積されている。統計学や機械学習(AI)などの新しい情報解析技術を駆使したデータ科学が生命科学分野における画期的な発見やイノベーションにおいて必須である。ビッグデータの利活用の重要性が盛んに論じられる一方、日本国内ではデータ解析を担う人材不足が深刻化している。そこで、実験を主とするウエット研究者と理論やコンピュータ解析を主とするドライ研究者たちの研究融合やコミュニティの形成、さらには生命科学およびデータ科学の両分野の基本的知識や課題解決力を併せもつ人材の育成が急務となっている。本ワークショップでは、データ駆動型研究により生命科学分野を切り開いている若手研究者が当該分野の魅力を紹介するとともに、生命現象とビックデータを繋ぐハイブリットサイエンスの最新の知見や若手研究者の新規参入のきっかけを提供する。
1PW09 |
またまたやってきたオモロイ生き物の分子生物学 Molecular Biology of Intriguing Creatures |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
三浦 恭子(北海道大学)、黒岩 麻里(北海道大学) |
- 生命科学を生業とする研究者なら誰しも、大好きな”オモロイ生き物”がひとつくらいはあるだろう。それはきっと線虫やショウジョウバエ、マウスなどのモデル生物ではなく、奇妙な生態や美しい形などの不思議な生命現象を煌びやかに纏った、実験室の外に息づく多士済々の生物種に違いない。これらのオモロイ生き物は、これまで分子生物学的な解析が困難な対象として位置づけられてきた。近年、次世代シーケンス解読や CRISPR/Cas9 によるゲノム編集など革新的技術の登場により、解析が困難であった生物種の生命現象と遺伝子・ タンパク質機能を結びつけることが可能になりつつある。さらには、それらの生き物固有のオモロイ分子機能を、社会や医学に役立てようという動きが始まっている。本ワークショップでは、多岐に渡る方面で活躍されているオモロイ生き物研究者の最新の研究について紹介したい。
1PW10 |
農と食の未来を切り拓け!ホルモン研究 Hormone research opens up the future of agriculture and food practice! |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
矢澤 隆志(旭川医科大学)、佐藤 貴弘(久留米大学) |
- ホルモンはごく微量で生体の恒常性を維持しうる有機化合物であり、動植物界全般に幅広く存在している。動植物における新しいホルモンの発見やその役割の理解に繋がる研究は、飼養・繁殖技術の向上や作物などの生産性向上を通じて、農と食の発展に大きく貢献してきた。しかしながら、爆発的な世界人口の増加や、それに伴う食糧・環境問題を抱える昨今、これらの諸問題を解決するためには、既存の手法や概念に止まることなく新たな方策を見いだすことが急務となっている。そこで本ワークショップでは、農と食への応用を視野に多様な動植物種を用いて分子生物学的あるいは生化学的な研究を進める中堅・若手研究者に講演していただき、ホルモン研究が農と食の未来を拓く可能性を議論する。講演は、新規ホルモンの発見・同定(井田)と、ホルモン研究の農畜水産業への新たな応用~実用化へ(澤、島田、河野)、食とホルモンによる健康制御(秋枝)で構成する予定である。農学を始めとする幅広い分野で研究される皆さまの参加を期待します。
1PW15 |
細胞機能を調和させるオルガネラシグナリング Organelle siginaling harmonizing cellular functions |
J |
オーガナイザー: |
佐藤 健(群馬大学)、花房 洋(名古屋大学) |
- 細胞は発生の過程や細胞内外の環境変化等に対応して、オルガネラの形態や動態、活性を調整し、適切にその機能を発揮する。近年、この過程には、オルガネラ機能を調節するシグナリングと、オルガネラから発するシグナリングの双方が絶妙に連携することが重要であり、これらによって細胞機能に応じたメンブレントラフィックや、オルガネラ生合成・分解等が制御されていることが明らかになりつつある。また、超解像ライブイメージングシステム等の新たなテクノロジーの発展とともに、今まで観ることのできなかったオルガネラの真の姿が明らかとなりつつある。本ワークショップでは、様々な手法やモデル生物を駆使することによって、オルガネラ研究の新たな局面を切り開いている研究者の方々に、分子レベルから個体レベルまで広く最新のトピックスをご紹介いただき、議論する。
1PW16 |
細胞競合の分子機構と生理的意義:どこまでわかって何がわからないのか What we know and what we do not know about cell competition |
J |
オーガナイザー: |
井垣 達吏(京都大学)、藤田 恭之(北海道大学) |
- 細胞競合とは、近接する細胞間で相対的に適応度の高い細胞(winner)が低い細胞(loser)を排除する現象であり、発生過程における優良細胞の選択や組織からのがん原性細胞の排除など、多様な生命現象に関わる可能性が示されつつある。ここ10年ほどの研究で、細胞競合を引き起こしうる様々な因子が見いだされ、その分子メカニズムの理解が進んできた。一方で、異なるトリガーによって引き起こされる細胞競合現象にどの程度の共通原理が存在するのか、また、その分子メカニズムの全貌や生理的役割はいまだ多くの謎に包まれている。本ワークショップでは、様々な解析系で見いだされた細胞競合現象の分子メカニズムとその普遍性、生理的意義について、どこまでわかって何がわからないのか、そして何を理解すべきなのかを整理しながら、現状と今後の展望について議論したい。
1PW17 |
アクチンが担うメカノシグナリング Actin Takes Center Stage in Mechano-Signaling |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
川内 敬子(甲南大学)、平田 宏聡(名古屋大学) |
- 細胞は、液性化学因子のみならず、細胞内外の様々な力学的環境にも応答する。この力学的入力に起因した細胞内シグナリング(メカノシグナリング)が細胞の機能や運命に多大な影響を与えており、その機構の解明に向けた取組みが活発になってきている。そのような中、古くから膨大な研究がなされてきたアクチンが、メカノシグナリングのメディエーターとして改めて注目を集めている。アクチン骨格は細胞内における主要な構造・動力装置としてメカノシグナリングをモジュレートするとともに、メカノシグナリングにおける反応場を提供し、さらにはアクチンそのものがシグナル分子としてメカノシグナリングに関わっていることも明らかになってきた。アクチンを介したメカノシグナリングの恒常性破綻が癌をはじめとする疾患に関与している可能性も示唆されてきている。そこで本ワークショップでは、メカノシグナリング機構についてアクチンを軸に最新の研究動向を共有し、今後の研究の方向性や可能性について議論したい。
1PW18 |
生命のエネルギー代謝を模倣して発電するバイオ燃料電池 –生命科学の産業応用に向けて- Enzymatic biofuel cell generating electricity by mimicking our energy metabolism - To applicate life science to industries - |
J |
LOD |
- 生命は摂取した食物を代謝する過程において、生命活動に必要なエネルギーを非常に高い効率で生産している。バイオ燃料電池はこの過程を模倣した発電技術であり、酸化酵素と還元酵素を組み合わせることにより有機物の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。そして近年、安全かつクリーンな新しい電源として注目され、その実用化が待たれている。バイオ燃料電池の要は電子を引き抜く反応を触媒する酸化還元酵素であることは間違いないが、その実用化には生命科学のみならず、電子の授受を解析する電気化学、酵素に適した電極材を探求する材料工学など複数の分野の研究者が協力する必要がある。本ワークショップではこれまでに高効率のバイオ燃料電池の作製に成功してきたこれら他分野からなる研究者に加え、その実用化も視野に入れた企業の研究者にも参加して頂く。そして、これからのバイオ燃料電池について、その応用展開も含めて議論したい。
1PW19 |
ヒト染色体:維持と進化と疾患の新知見 Human chromosome: Maintenance, evolution, and disease |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
黒木 陽子(国立成育医療研究センター)、深見 真紀(国立成育医療研究センター) |
- 近年、ヒトや他の生物種の生殖細胞系列における染色体バリエーションに関する研究が急速に進展した。たとえば、chromothripsisと呼ばれる染色体破砕現象が複雑ゲノム再構成の原因となることが見いだされた。また、減数分裂時の染色体不分離の発症機序や、それに関連して生じる染色体異数性や片親性ダイソミーの病的意義についても知見が集積されつつある。さらに、遺伝性疾患の原因としてのゲノム構造異常の重要性が明確となり、染色体工学技術を用いた疾患の原因究明、治療法の開発が進んでいる。その一方で、間期核における染色体領域の空間的配置が遺伝子発現制御に重要な役割を果たしていることも明らかになっており、染色体の構造と機能を考える上で注目を浴びている。
本ワークショップでは、染色体安定性に関与する因子、ゲノム構造の進化、染色体異常に起因する疾患など様々な観点から、ヒトおよびモデル生物の染色体に関する最新のトピックを紹介し、議論を深めたい。
1PW20 |
肝がん再発予防薬非環式レチノイドのサイエンス Scientific Studies on Acyclic Retinoid, Chemopreventive Drug for Hepatocarcinoma |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
小嶋 聡一(理化学研究所)、清水 雅仁(岐阜大学) |
- ビタミンA構造類縁体の1つである「非環式レチノイド(一般名:ペレチノイン)」は、肝がんの再発を予防する世界初の薬として期待され、治験が進められている。我が国アカデミア創薬の一例として、過去30年にわたり産学官の連携研究が展開され、現在も臨床研究から基礎研究まで幅広い研究が我が国を中心に進められている。特に選択的に肝がん(幹)細胞を死滅させる効果や他の薬剤・サプリメントとの併用効果に注目が集まっており、genomicな分子機構並びにnon-genomicな分子機構が精力的に研究されている。
本ワークショップにおいては、非環式レチノイドのサイエンスに携わってきた臨床研究から基礎研究までの各専門家が初めて一堂に会し、非環式レチノイドの効果とその作用機序について、最新の知見と残された課題、今後の展望を整理し、研究討議することによって、患者の利益と関連領域研究のさらなる発展に資することにより、我が国のアカデミア創薬に貢献することを目的としている。
1PW21 |
血管性認知症の再定義 Redifinition of vascular dementia |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
小野寺 理(新潟大学)、猪原 匡史(国立循環器病研究センター) |
- 近年、認知症の病態において、血管因子の寄与が指摘されている。血管因子からのアプローチは、認知症の治療に画期的な変革をもたらす可能性がある。血管因子として、脳小血管の機能が注目を集めている。従来脳小血管の機能は血液脳関門の面から注目を集めてきた。それに加え、供給と排出の面での役割が注目を集めている。供給の面では、神経活動依存性の血流再分布である。また排出の面では、血管周囲腔を用いた、老廃物の排出機構や、Glympathich pathwayが知られ、βアミロイドや、髄液の排出にも関与すると考えられている。さらには脳内のリンパ管としての機能も推察されている。この脳小血管の機能障害による認知症は、動的な認知症で有り、従来の静的な理解を超えた解析手法が必要となる。本シンポジウムでは、近年明らかとなってきている脳小血管機構と、認知症との関連について議論し、この分野での研究の発展を促す。
1PW23 |
新規分子骨格・ナノ材料で挑む細胞ターゲティングのためのネオ・レクチン分子創出戦略 Novel strategy of creation of neo-lectin molecules for cellular targeting by novel scaffolds and nano-materials |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
舘野 浩章(産業技術総合研究所)、山本 一夫(東京大学) |
- 全ての細胞の最外層は、複雑且つ高密度の糖鎖で覆われている。糖鎖は様々な酵素により合成される遺伝子の2次代謝産物であり、細胞内外の環境変化により、その構造は劇的に変化する。それ故、糖鎖は細胞の状態を反映する細胞の顔と呼ばれ、癌等に対する創薬や細胞の品質管理技術開発のための最適な標的分子であり、近年では実用化に向けた研究が活発に進められている。しかし従来から糖鎖に対する抗体作製は大変難しく、糖鎖・レクチンを標的化するための新たな戦略が期待されている。本ワークショップでは、新たな分子骨格やナノ材料を用いた「ネオ・レクチン分子」の創出を通して、細胞表面糖鎖・レクチンをターゲティングする新たな技術開発に果敢に挑戦する先生方にご講演頂く。
1PW24 |
生殖における脂質生物学 Lipid biology in reproduction |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
杉本 幸彦(熊本大学)、村上 誠(東京大学) |
- 細胞膜脂質やそれに由来する脂質成分は生体内でさまざまな機能を発揮する。生殖も例外ではない。雌性あるいは雄性生殖器は複雑な細胞から構成され、また、それら細胞がさまざまな脂質分子種を発現していることが分かりつつある。また、これらユニークな脂質分子種から生理活性脂質が特異的な経路により産生され、受容体を介して精子形成、受精、着床など生殖のさまざまなステップを厳密に制御する。本ワークショップでは、こうした生殖系におけるユニークな脂質機能を紹介する。医学・薬学分野だけでなく、農学・生命科学・工学など幅広い研究者の参画を期待する。
1PW25 |
精神疾患の神経生物学 Neurobiology of developmental psychiatric disorders |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
若月 修二(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)、福田 敏史(東京薬科大学) |
- 自閉症や統合失調症などの脳の発達との関連する精神疾患では、遺伝的要因がその発症に強く関与すると考えられている。近年、これら精神疾患に関わる遺伝子が明らかとなり、主にモデルマウスを用いた解析から、遺伝子変異に起因するシナプスの形成・機能、および行動学的異常など、疾患の病態を理解する上で極めて重要な知見が報告されている。本ワークショップでは、精神疾患の発症機序に関して注目すべき成果を挙げている研究者を集め、広く最新のトピックスを紹介するとともに、精神疾患の基盤研究の意義について議論したい。
1PW27 |
非典型糖鎖の糖鎖生物学 Atypical glycans and their biology |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
岡島 徹也(名古屋大学)、萬谷 博(東京都健康長寿医療センター) |
- 糖鎖は細胞外環境に存在する主要な翻訳後修飾である。N-型やムチン型糖鎖として、細胞膜や細胞表面に存在するタンパク質を覆っているため、その存在は細胞機能に密接に関連し、またその変化は、細胞に発現している多様なタンパク質機能を統合的に制御することができる。このような複雑でかつ精巧な糖鎖の分子機能は、重要な生体機能に関連した糖タンパク質の糖鎖機能を解析することより、理解が深まった。その中でも、Notch受容体やジストログリカンには、N-型やムチン型糖鎖とは異なる非典型的な糖鎖が存在しており、タンパク質特異的にその機能を変化させることが明らかにされた。本ワークショップでは、これまで、メジャーな糖鎖に比して脇役とされてきた非典型糖鎖を取り上げて、ユニークな生物学的機能と分子レベルでの役割について議論する。
2AW02 |
古くて新しいポリコーム: そのエピジェネティック制御機構をマウスと一緒に考える Polycomb, new insights and old concepts: its molecular machinery of epigenetic regulation using animals |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
大森 義裕(大阪大学)、磯野 協一(和歌山県立医科大学) |
- ポリコーム群は、古くは1970年代から研究されているエピジェネティック制御の主要なメカニズムの一つである。最近の抑制的ヒストン修飾(H3K27メチル化やH2A119ユビキチン化)を制御するポリコーム抑制複合体の異性型の発見や、組織におけるバイバレントな修飾制御の理解、さらにトポロジカルドメインを考慮したゲノムワイドなエピジェネティクス状態を俯瞰するChIP-seqの改良やHi-Cなどの新技術の登場により、ここ数年でポリコーム研究を取り巻く状況は一変し、新しい時代に突入しつつある。本セッションでは、マウス個体レベルでの研究を中心に、神経、免疫、生殖、初期発生の幅広い発生現象におけるポリコームの役割を分子レベルで解明する若手・中堅研究者にフォーカスをあて紹介する。今後のエピジェネティック研究の方向性について議論を深め、新たな領域への展開や共同研究の推進の機会としたい。これからポリコーム並びに抑制的ヒストンを手がけようとしている研究者の参加も期待したい。
2AW03 |
核内受容体が制御する多彩な生命現象 Nuclear Receptors Biology |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
今井 祐記(愛媛大学)、清水 宣明(東京大学) |
- 核内受容体スーパーファミリーに属する転写因子はヒトで48種類あり、それぞれに特異的な標的遺伝子群の発現を、リガンド依存的、あるいは非依存的な機構を介し、様々な組織において調節している。その結果、各組織において環境応答、ストレス応答が適切に行われるとともに、代謝、発生、生殖、免疫応答など、組織間連携に基づく複雑な生理プロセスが精緻にコーディネイトされ、個体レベルでの恒常性維持が達成されている。近年、これら生理プロセスの核内受容体による制御機構に関する新たな知見が、技術革新により可能となった各種生体分子の網羅的定量解析結果を統合的に検討することなどからも続々と得られつつある。本ワークショップでは、生命現象の分類に関わらず領域横断的に核内受容体に関する最先端の研究成果を紹介し、多様な視点から集学的な議論を展開することで、高等動物の恒常性維持とその破綻(疾患)について、さらなる理解を深めたい。
2AW05 |
(量子物理学 + 生化学)x 生物学 = ? ~“量子生物学”とは何か~ (Quantum Physics + Biochemistry)x Biology = ? ~What is "Quantum Biology"~ |
J/E |
LOD |
- 本ワークショップでは、近年になって著しい進歩を見せている新しい学際科学分野“量子生物学”について紹介する。
これまで多くの生化学、分子生物学者は生体分子の構造や振る舞いをいわゆる古典的に捉えてきた。つまり、ボール&スティックで表示した分子模型をイメージし、その棒(結合)が切れたり作られたり、また球(原子)が移動したりすることが生化学反応の本質であると考えられてきた。実際にそのような考え方に基づいて多くの生命現象をうまく記述できる系もあるが、それだけでは説明不可能な現象も未だ数多く残されている。それら未解決の現象に対して、20世紀初頭に物理学分野で誕生したミクロな世界の現象を記述する“量子力学”の概念からアプローチを試みているのが本分野である。特に、量子レベルの描像がどのようにマクロスケールな生命現象へ影響するかに焦点をしぼり、本ワークショップでは、その中でも代表的な研究事例として、①「光合成における光励起エネルギー移動現象」、②「渡り鳥の磁気コンパス」、③「酵素中の電子とプロトンの協奏的トンネリング移動反応」等をとりあげて紹介し、また、新しい計測技術として④「窒素-空孔中心を用いた生命科学研究」、そして、がん治療などの医療分野への貢献も期待される⑤「最先端の量子技術を利用したDNA損傷に関連する生命科学研究」等を通じて、本分野で明らかにできること、そして本分野の今後の展望について議論したい。
2AW06 |
液性診断の求める次世代分子計測テクノロジーとは The liquid biopsy test seeks for next generation molecular technologies |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
松阪 諭(がん研究会)、新宅 博文(京都大学) |
- 液性診断(liquid biopsy)では血液などの体液から、がんを含めた各種疾患の治療方針決定につながる診断情報を、正確・迅速に導き出すことがめざされる。体液中の情報キャリアとしては、「血中循環腫瘍細胞(CTC, circulating tumor cell)」、「無細胞DNA (cfDNA, cell free DNA)」、「エクソソーム」等が考えられ、これらが運ぶ変異遺伝情報、遺伝情報発現パターンなどから診断情報を引き出すこととなる。理想的にはCTCやエクソソームの1分子解析で情報を得ることであるが、そのためには、さらなる計測テクノロジーの技術革新が必須である。また、臨床現場で求められる正確さ、迅速さも考慮に入れた開発を進めなければ、革新技術の社会実装が実現しない。本ワークショップでは、臨床現場での液性診断に携わる発表者からのニーズの提示と、それに応える分子計測テクノロジーの最先端研究の紹介をおこない、液性診断の今後の展開について幅広く議論する。
2AW07 |
多角的アプローチと革新的技術で迫るカルシウムシグナルの分子基盤と疾患治療戦略 The Molecular Basis of Calcium Signaling and its Application for Therapeutic Strategies Revealed by Multi-disciplinary and Innovative Technologies |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
杉浦 麗子(近畿大学)、御子柴 克彦(理化学研究所) |
- カルシウム(Ca2+)シグナルは細胞増殖、受精、発生・分化、転写、記憶、神経回路形成、筋肉の収縮など、生命現象の根幹を司る普遍的なシグナル伝達機構であり、細胞・組織・生体の恒常性の維持に不可欠である。近年のライブセルイメージングを用いた生体分子可視化技術や構造生物学的手法により、カルシウムシグナルが関与する生命システムの空間的、時間的な作動原理に関する理解が飛躍的に進んだ。具体的には“高性能カルシウムインジケーター”を用いた細胞内“カルシウムイオン振動”の可視化、結晶構造により解明されたIP3受容体のゲーティング機構、シグナル拠点としての役割など、生体におけるカルシウム動態の多様な分子基盤、新たな生物現象の理解が浮かび上がってきた。一方、カルシウムシグナルの破綻は、癌や神経・精神疾患、疼痛などの病態と深く関わることからも、カルシウムチャネルやカルシウム依存的リン酸化シグナルは疾患治療の魅力的な標的でもある。本ワークショップでは、分子薬理学、細胞生物学、ケミカルゲノミクス、神経科学、構造生物学、バイオフォトニクスなど、学際的研究手法を結集し、カルシウムシグナルの分子基盤と疾患治療戦略に関する最先端の話題を提供する。
2AW08 |
エキスポゾームから見た酸化・環境ストレス応答とその制御 Exposome: regulation and responses to oxidative and environmental stresses |
J |
オーガナイザー: |
内田 浩二(東京大学)、澤 智裕(熊本大学) |
- 個体の形質や病気、特に慢性疾患の進展には、個々の遺伝子情報と環境要因の密接な相互作用が大きく関与している。エキスポゾーム(Exposome)は、ある個体の発生(受胎)から死に至るまでの一生を通じて個体が曝露されるすべての環境要因をいい、これには食餌、環境汚染物質、放射線、などの外的要因と、感染・炎症、運動、腸内細菌などの内的要因を含む。エキスポゾームの理解にはこれら要因の統合的な理解が重要であり、そのための方法論としてオミクス技術が極めて重要である。エキスポゾーム研究を通じて、個体の環境への適応を知り、さらに慢性疾患に対する新しい予防法の確立が期待される。本ワークショップでは、新しい研究領域であるエキスポゾームについて、様々なアプローチから見た可能性について議論したい。
2AW10 |
心筋再生の礎を築く新しい心臓発生学 Novel cardiac development to accumulate base knowledge for regeneration of myocardium |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
八代 健太(大阪大学)、小久保 博樹(広島大学) |
- 心臓は、全身に必要な血液量を律動的拍動により供給するポンプとして重要な役割を果たす。成熟した心筋組織は再生しないため、虚血性心疾患などによる心筋の喪失は心機能に深刻な影響を与える。組織や細胞の構造破壊とエネルギー代謝や調律機能の破綻も心筋に深刻な機能低下をもたらし、このような異常による心機能の低下は生命存続の危機に直結する心不全を引き起こす。現在、最終手段である心移植のためのドナーが世界的に不足しており、in vitroで分化誘導した心筋の移植を中心とした再生医療的アプローチに拠る新たな治療法の開発は喫緊の課題である。近年、様々なアイデアのグラフトが開発されているなか、さらに発展・具現化するためには、心臓発生機構の基礎生物学的な更なる理解は、科学的のみならず臨床医学的に極めて重要な意義を持つ。本ワークショップでは再生医療の基盤を固めるための心臓発生に焦点を絞り、当該分野における第一線の研究者が集いその最先端を紹介する。
2AW15 |
細胞外小胞顆粒は我々に何を語るか?~細胞間コミュニケーションが織りなす生命現象の解明へ~ What are the extracellular vesicles telling us about the story of the human body? |
J |
オーガナイザー: |
吉岡 祐亮(国立がん研究センター研究所)、小坂 展慶(東京医科大学) |
- 細胞間相互作用の新たなコミュニケーション手段として注目を浴びている細胞外小胞顆粒(エクソソーム、マイクロベシクル)は、発見から約40年経つにも関わらず、生体における役割を明らかにする研究は最近まで限定的であった。しかし、この10年で本研究分野に対する注目度が再燃し、多くの発見がなされてきた。本ワークショップでは、細胞外小胞顆粒による様々な生命現象への関わりを多彩な視点で議論し、細胞外小胞顆粒を通して我々の体の成り立ちを理解する。また細胞外小胞顆粒による生理現象の維持が破綻した際に生じる疾患、つまり「エクソソーム病」を理解することは、現在までに治療法の確立されてない様々な疾患に対して、新たなアプローチを提供する。若手研究者を中心に、これらのトピックを語ることで、細胞外小胞顆粒研究の未来を予見するような議論が交わされることを期待している。
2AW16 |
必然から偶然に向かう生物学の新潮流 How do living creatures manage a chance to determine themselves? |
J |
オーガナイザー: |
井倉 毅(京都大学)、白木 琢磨(近畿大学) |
- 遺伝学を源流とする決定論的分子生物学の流れは、テクノロジーの進歩に後押しされて大成功をおさめた。一方、モノーが述べた偶然性とは、タンパク質合成が遺伝的な調節制御なのに対し、合成されたタンパク質は遺伝的支配から開放され独自の行動をとることができることにあった。ここで言う独自の行動とは、モノーの研究ではフィードバック制御、アロステリック制御という概念に相当する。これらの仕組みがDNAを中心とした決定論的プロセスの中からいかにして生まれるのか?この問いは今も存在し続けている。
本ワークショップでは、それぞれの分野で、個体から細胞、さらには分子・ゲノムへと決定論的分子生物学を追求して階層を掘り下げてきた研究者により、新しい生命像を描いてもらう事を目標とした。生命を動的にとらえる数理や進化などの新しい視点からの生命像を提示することで、若手研究者が、わくわくするような生命科学の未来を描けるようなワークショップにしたい。
2AW17 |
ザ・メカノバイオロジー: 分子から個体のメカノセンシング The Mechanobiology: Towards Comprehensive Understanding of Mechano-Sensing at Molecular, Cellular and Organismal Levels |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
澤田 泰宏(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) |
- 物理的力刺激(メカニカルストレス)による細胞機能制御の普遍性・重要性が明らかとなり、メカノバイオロジーが、生命科学の重要な一領域として認識されつつある。しかし、「メカノ(機械)」という言葉が独り歩きし、メカノバイオロジーを、工学技術で介入して解析する生物学と捉える向きもある。本ワークショップでは、メカノセンシング、すなわち、力が細胞・組織・臓器にどのように感知され、生物現象・生体機能調節機構がどのように修飾されるかを主たる解析対象とするというメカノバイオロジーの原点に戻り議論を進める。単に工学風味があるというだけの生物学とは対極にある、生命機能の基本中の基本を攻める姿勢を貫いているメカノバイオロジー研究による最近の知見を紹介・提供し、動物、さらには植物や微生物を含め全ての生物への「力」とそれらが「動くこと」の生物学的意義の包括的理解へつなげる。
2AW18 |
どこまできてる? in vitro再構成研究の最前線 Recapitulating cellular reactions in a test tube —Frontiers of in vitro reconstitution studies— |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
高橋 達郎(九州大学)、持田 悟(熊本大学) |
- ワトソン・クリックによるDNA複製原理の推測がコーンバーグの試験管内実験で証明されたように、試験管内再構成はその定性性・定量性・操作性から分子生物学、生化学の主たる実証手段で有り続けてきた。酵素—基質反応といった単純な反応からスタートした再構成研究は、近年の技術的進歩によって多因子の連携が生み出す高度な生命反応の再現に向けて進化し続けており、その究極のゴールは細胞そのものを試験管内で作り出すことである。本ワークショップでは染色体の構造や機能、細胞周期、細胞を作りだすための技術革新など、多様な着眼点をもってベンチワークを続ける現場の研究者にその難しさも含めた発表をしていただく。有用な機能を持つ細胞の創出など再構成的アプローチは応用面での期待も高いため、細胞機能の精緻な理解と応用に向けた議論の場となれば幸いである。そして再構成実験を始めようか迷っている学生や研究者にとっては実験のヒントを得られる場としたい。
2AW19 |
プロテオスタシス制御の新展開と疾患 New aspects of proteostasis regulation and diseases |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
養王田 正文(東京農工大学)、中井 彰(山口大学) |
- タンパク質の恒常性は細胞やオルガネラの機能維持に不可欠である。このプロテオスタシスの維持装置であるシャペロンネットワークとタンパク質分解系はタンパク質品質管理を担うことで、様々な細胞の機能に関わっている。外的環境や代謝の変化に伴うストレス刺激によりプロテオスタシスが損なわれると、がん,炎症、自己免疫疾患、老化と関連する神経変性疾患などの様々な疾病の原因となる。本ワークショップでは、ストレスによるシャペロンやプロテアソームの誘導と局在化の機構、細胞自律的および非自律的なシャペロンの作用機構、細胞質・小胞体・ミトコンドリア間のプロテオスタシスのコミュニケーション機構など、プロテオスタシス制御の新展開に関する研究を紹介する。ストレスによるプロテオスタシスの破綻によりもたらされる細胞機能障害や疾病の病態を理解することにより、その治療方法の開発につながる研究に発展することが期待される。
2AW20 |
技術革新がもたらすがん治療難治性の克服にむけた新しいアプローチ Novel strategies toward understanding mechanisms that lead to refractory cancer |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
岡本 康司(国立がん研究センター研究所)、井上 聡(東京都健康長寿医療センター研究所) |
- がん組織の特長として、症例間で異なる組織像を呈する事が多く、又同一の腫瘍内でも、組織多様性を呈する。このようながんの持つ組織多様性が、治療抵抗性の根底にある事が指摘されている。がん多様性を理解するための方法論として、単一細胞レベルの解析法等のゲノム、遺伝子発現解析技術が急速に発展している一方で、オーガノイド、スフェロイド等の新たな3D培養や、PDX等のin vivoモデルが、がん臨床病態を反映しうる実験系として確立されつつある。本ワークショップでは、これらの技術革新により可能になるがん多様性の解析法について紹介し、がん難治性を理解するための革新的な研究を中心に議論する。
2AW21 |
血管周囲細胞群の分子生物学 -基礎から臨床応用にかけて- Focusing to the perivascular cells -from basic science to applied science- |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
植村 明嘉(名古屋市立大学)、山本 誠士(富山大学) |
- 血管を構成する細胞として血管内皮細胞は重要かつ必須の細胞であるが、管腔状血管内皮細胞の外側に存在するペリサイト(周皮細胞)/血管平滑筋細胞などの血管周囲細胞群の存在が俄に注目を集めている。ペリサイトに関しては、100年以上前からその存在が知られていたにもかかわらず、長らく機能不明な細胞として扱われ、研究対象として魅力に欠ける存在であった。近年、ペリサイト低形成や血管周囲からの逸脱が血管機能不全をもたらし、血管新生や透過性亢進の結果、周辺組織の機能不全を引き起こすことが明らかになった。一方、ペリサイトは組織再生の幹細胞ソースとしても注目されつつある。そのような背景から、ペリサイトを含む血管周囲細胞群を対象とした多面的研究を施行し、病態生理学的意義を解明することが喫緊の課題である。本ワークショップでは、血管周囲細胞群の基礎から疾患治療研究に至る先進的研究に触れ、広く知識を共有し深く議論する場を提供したい。
2AW23 |
ホルミシスネオバイオロジー The Hormesis NeoBiology |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
伊藤 英晃(秋田大学)、鵜殿 平一郎(岡山大学) |
- 全ての分子およびマシナリーが正常の場合に、あるストレス刺激が加わり細胞・組織がそれまでとは全く異なる風景に様変わりする場合がある。我々はこれをストレス進化ないしホルミシスと定義する。ホルミシスは、例えば低線量放射線の暴露がストレス応答を誘導する中で修復メカニズムが発動し、放射線に暴露しなければ決して得ることのなかった様々な疾患に対する抵抗性を獲得するという仮説である。我々はホルミシスと考えられる複数の実験系を紹介し、その分子機構を提示する。即ち、全く新しい研究領域(ホルミシスネオバイオロジー)を展開する。
2AW24 |
記憶を作り出す分子と細胞のネットワーク Networks of molecules and cells that generate memory |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
齊藤 実(東京都医学総合研究所)、飯野 雄一(東京大学) |
- 記憶の実体は何か?この問題は、現在、細胞内外で働く分子の活性変化による神経細胞ネットワークへの記憶情報の符号化として理解されている。しかし記憶を作る感覚はどこで、どのように統合されてネットワークに符号化され、多様な行動に表出されるのか?これら根源的な課題には未だ不明な点が多い。
膨大な数の神経細胞を持つ哺乳類と比べて、限られた数の神経細胞しか持たない単純モデル動物では一細胞が担う役割が大きい。であるが故に分子レベル、細胞レベルでの観測・操作技術の進歩を取り入れて、記憶の実体を一細胞レベルの高解像度で明らかにし、多様な行動との関係づけを高精度に行うことが可能である。単純モデル動物からどのような分子の相互作用と細胞の相互作用が見出され、分子ネットワーク、細胞ネットワークでの情報処理機構が明らかになってきたのか? 本ワークショップでは単純モデル動物の研究者(と哺乳類との境界モデル動物の研究者)を招き独創的な研究の成果を紹介する。
2AW25 |
骨格筋の代謝・内分泌臓器としての新機能 Emerging aspects of skeletal muscle as a metabolic and endocrine tissue |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
小野 悠介(長崎大学)、河野 史倫(松本大学) |
- 運動などの身体活動が健康を増進し寿命を延ばすことは周知の事実である。しかし近年の疫学調査から、身体活動よりも骨格筋の量あるいは質そのものが寿命と強く相関するという興味深いエビデンスが蓄積され、運動器としての従来の概念を超えた骨格筋の新たな機能が注目されはじめた。骨格筋は体重の4割を占める生体内最大の臓器として、全身性のエネルギー代謝制御の中心を担う。したがって骨格筋の量的減少や質的変容は2型糖尿病などの引き金となりうるため、骨格筋は代謝性疾患の創薬標的として期待されている。その一方で、運動などの生理的刺激に対する骨格筋の代謝適応範囲も明確になりつつある。最近では、骨格筋はマイオカインと呼ばれる様々な生理活性因子を能動的に血中へ分泌し、代謝、免疫、認知機能などの生体機能に影響を与える内分泌臓器として機能することがわかってきた。本ワークショップでは、近年明らかになってきた骨格筋の代謝・内分泌臓器としての新機能について最先端の知見を集約し、生活習慣病や老年症候群に対する分子治療標的臓器としての骨格筋の新たな可能性を議論したい。
2AW27 |
化学の視点で拓く糖鎖生物学 Glycobiology Innovation through Chemistry Views |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
山口 芳樹(理化学研究所)、眞鍋 史乃(理化学研究所) |
- 糖鎖の構造と機能の相関は、主に分子生物学的手法や生化学的な手法により探求されてきた。一方で、異分野との連携や新しい手法の活用は、これまで捉えることが困難であった糖鎖機能を見出す潜在性を秘めている。例えば構造生物学や計算化学は、糖鎖の立体構造・ダイナミクスの観点から糖鎖の機能解明に貢献してきた。また化学者が生理活性化合物を合成して生物学者がその生物活性を評価することは化学と生物の典型的な連携様式の一つであるが、近年化学的手法によりプローブ化合物や酵素阻害剤が多く開発され、新しい視点から生命現象を捉えることも可能になってきた。化学と生物の相互の理解と連携により、既存の概念では説明できなかった事象も解釈が可能になると思われる。本ワークショップにおいては、「化学の視点で拓く糖鎖生物学」と題し、連携研究により糖鎖機能の解明を行なっている第一線の研究者とともに、今後の融合糖鎖研究の方向性を探っていく。
2PW01 |
デザイナーRNA: 人工RNA/RNPによる生命回路のコントロール The designer RNAs: controlling the gene circuits based on the regulation of RNA-protein interactions |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
星野 真一(名古屋市立大学)、秋光 信佳(東京大学) |
- 分子生物学や生化学の飛躍的発展により、生命回路(特に遺伝情報制御回路)を構成する生体分子の同定、生体分子の構造と活性、生体分子間相互作用、の理解が深まった。これらの成果を元に、制御回路を人為的に操作したり、または目的に合わせ意図通りの動作を実現できる回路を設計する方向に生命科学分野は今後発展して行くと考えられる。実際に、大規模なゲノム編集やゲノム合成が企図され、システム生物学や合成生物学の名の下に先駆的取り組みが始まっている。遺伝情報の制御回路を設計するためには、転写後の遺伝子発現フローを自在に操作する技術が必要不可欠である。そこで、転写後遺伝子発現フローを担う「RNA-タンパク質相互作用」を制御する技術が今後益々注目され、発展すると期待されている。本ワークショップでは、RNA-タンパク質相互作用を自在に制御可能な人工的RNAデザインを「デザイナーRNA」と命名し、デザイナーRNAを用いた生命回路の設計・操作を目指す国内第一線の研究者を一堂に集めて最新の研究成果を発表し、この新分野の盛り上がりを本学会参加者に紹介する。さらに、この分野の将来像について議論したい。
2PW03 |
遺伝的組換えの分子メカニズムとその生理的機能と技術応用 Molecular mechanisms of genetic recombination for physiological function and technical application |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
篠原 美紀(近畿大学)、笹沼 博之(京都大学) |
- ゲノムDNAは外的内的要因によって絶えず損傷を受ける。もっとも重篤な傷であるDNA二重鎖切断(DSB)は、DNA複製フォークの進行や転写停止を引き起こし、正確に修復されない場合は染色体転座、欠失、増幅といったゲノム不安定化から、細胞のがん化を引き起こす。また多様性創出を目的として、抗体遺伝子座領域や減数分裂期では、細胞が自己ゲノムに積極的にDNA二重鎖切断を導入する必要がある。DSBは、非相同末端結合と相同組換えの二つの経路で修復される。これらの経路はTALEN, CRISPRを用いた変異導入を目的としたゲノム編集で使われている経路でもあり、組換えの分子メカニズムの理解は、ゲノム配列を意のままに改変、操作するというゲノム編集の究極的な目的を達成する。本ワークショップでは、様々な生物種を対象に多彩なアプローチで、組換え研究に携わる第一線の研究者に講演いただき、相同組換えメカニズムに関する最先端の研究と、その技術応用について議論したい。
2PW05 |
シン•メタボリズム~代謝が関わる多彩な生命現象~ Neon・metabolism~unexpected correlation with vital phenomena and energy metabolism |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
増本 博司(長崎大学)、齋藤 成昭(久留米大学) |
- 細胞内の解糖系を中心としたエネルギー代謝経路は、エネルギーや材料を提供する「芯」となって様々な細胞・生体機能を支えている。近年、カロリー制限により早老症マウスの運動機能の大幅な改善が報告されるなど、細胞・生体内のエネルギー代謝が予想外の細胞・生体機能へ関与していることが明らかになりつつある。エネルギー代謝システムの「真」の姿を理解するためには、従来と異なる「新」視点からの研究アプローチが望まれている。本ワークショップではエネルギー代謝が生み出す多様な可能性:細胞・生体機能や疾病治療への関連について最近の研究を紹介したい。
2PW06 |
多様な微生物に見出したユニークな細胞・酵素機能とその応用 Unique mechanisms of cell/enzyme functions found in various microorganisms and their application |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
高木 博史(奈良先端科学技術大学院大学)、小林 達彦(筑波大学) |
- 高等生物の細胞モデルとしての「微生物」研究は、バイオロジーの基盤であり、人類による生物の「理解(基礎生物学)」と「利用(農学・工学・医薬学)」に大きな貢献をもたらしてきた。一般に、微生物は他の生物や環境との相互作用・相互応答により初めて本来の機能を発揮し、様々な環境に適応している場合が多い。近年、様々な環境で生育する微生物において新規な細胞・酵素機能が続々と発見され、それらの分子機構や代謝制御などの解析も急速に進展している。また、それらを利用したバイオテクノロジーへの展開も期待されている。本ワークショップでは、微生物の多様性及び特異性を基盤に、独自のアイデアやアプローチで生化学的な研究を進め、農学・工学・理学・基礎医学の第一線で活躍する若手~中堅研究者が微生物機能における最新・最先端の研究成果(細菌のリボソームレスキュー機構、翻訳後修飾による酵素の成熟化、新奇メタン生成菌の発見、病原真菌の環境応答機構、酵母における活性酸素・窒素種の分子機能など)を紹介する。幅広い観点からの領域横断型の話題を提供することで、微生物新機能開発の今後の方向性や産業への利用についても議論したい。
2PW07 |
細胞機能を理解する上での構造生物学的アプローチ Structural biology for understanding cellular functions |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
玉田 太郎(量子科学技術研究開発機構)、小柴 琢己(九州大学) |
- 構造生物学的アプローチは多岐にわたる細胞機能を原子レベルで理解するのにパワフルなツールである。特にX線結晶および溶液散乱、NMR、電子顕微鏡、蛍光イメージングの各手法はその中核を担っており、その技術的進歩も目覚ましいものがある。これらの手法を駆使することで、我々は細胞プロセスの変化を含む複雑な分子メカニズムをより深く理解することができる。本ワークショップでは、細胞機能の解明に精力的に取り組んでいる研究者をウイルスから哺乳類に至る広範囲の分野から招聘し、構造生物学的ツールを駆使した最新の成果について紹介いただき、深く議論したい。
2PW08 |
ゲノムは設計して合成する時代に Are we destined to design and synthesis genomes? |
E |
オーガナイザー: |
板谷 光泰(慶應義塾大学)、相澤 康則(東京工業大学) |
- ゲノムは長らく調べて学ぶ対象であった。しかし今、ゲノムは作って学ぶ時代に突入している。ゲノム編集技術の革新により、ゲノム構造の改変は細胞の種類を問わず可能になりつつある。しかし、長鎖DNAの合成および細胞内導入の革新技術により、単なる構造改変を飛び超えて、もはやゲノムの完全合成すら可能であることが明白にされている。既に人工ゲノムで生育するバクテリアや大規模なゲノム改変を施した人工酵母も報告され、ゲノム合成の対象は、単細胞微生物から動物、植物まで一気に拡大する動きを見せている。この合成生物学の潮流をまともに取り込む動きとして2016年6月に、ゲノム合成国際コンソーシアム(Genome Project-Write, GP-Write)が発足した。さらに2017年5月にニューヨークゲノムセンターで開催されたキックオフ会議には、日本を含む世界14カ国から総勢200名以上の研究者が参加し、ゲノム合成の現状と未来が熱く語られた。本ワークショップでは、GP-Writeの主要メンバーを国内外から招聘し、ゲノム合成の可能性と課題、将来性を議論したい。
2PW09 |
アストロバイオロジー:地球と宇宙での生命探査 Astrobiology: Search for life in the universe and the earth |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
山岸 明彦(東京薬科大学)、長沼 毅(広島大学) |
- アストロバイオロジーは、生命科学と宇宙関連の多分野境界領域である。米国航空宇宙局(NASA)をはじめ、各国がこの分野を推進している。日本でも、自然科学研究機構にアストロバイオロジー研究センターが設立された。この分野は、生命の起源、進化、伝搬および未来に関わる研究であるとNASAは定義している。海洋底での微生物生態系の研究が進み、大気球を用いた採集で微生物が採集され、国際宇宙ステーションでの微生物採集実験が現在進行し、太陽系外惑星の発見が続いている。今回、とくに地球と宇宙での微生物研究と地球外での生命探査に関わる研究の最先端を紹介する。
2PW10 |
モルフォゲン再考察 ~その多階層システムの実態と組織パターン形成における役割~ Morphogen-mediated tissue patterning revisited - Multi-level regulation and its role in tissue patterning - |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
石谷 太(群馬大学)、川出 健介(岡崎統合バイオサイエンスセンター) |
- モルフォゲンシステムは、シグナル分子の濃度勾配依存的に組織内の細胞に位置情報を与える仕組みであり、動植物の組織パターン形成において必須の役割を果たす。モルフォゲン研究の歴史は古く、1950年代から70年代にかけてチューリング、ウォルパート、クリックらによって概念的な土台が築かれ、その後の分子遺伝学の発展により、分子実体の大要が明らかにされた。加えて近年、堅実な生化学・遺伝学解析の積み重ねとともに、イメージング技術や定量解析技術の発展によって、生きた組織内におけるモルフォゲンの拡散様式や濃度勾配形成の制御機構が急速に明らかになりつつある。そして現在、これら最新の研究をふまえ、従来の概念を改訂する必要が出始めている。本ワークショップでは、ハエ、魚、マウスのみならず植物をも含めた多様な生物種を対象に、多彩な技術と考え方を基盤としてモルフォゲン研究に取り組む研究者が一堂に会して最新データを共有し、多階層システムとしてのモルフォゲンの実態と役割を議論する。そして、このモルフォゲン再考察により、既成概念を打ち破るロジックの創出を促す。
2PW11 |
核内アクチンとラミンから細胞核アーキテクチャーを解く Nuclear actin and lamins - deciphering nuclear architecture |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
宮本 圭(近畿大学)、原田 昌彦(東北大学) |
- 細胞核の精緻かつダイナミックな構造が、ゲノムの収納と機能制御に中心的な役割を果たしている。細胞核の設計思想(Nuclear architecture)の理解には、核内の構造タンパク質の解析が必須である。核内構造タンパク質とゲノムの直接、間接の相互作用により、核内のクロマチンランドスケープが構築され、これにより転写・複製・修復などのゲノム機能が制御されている。本ワークショップでは、核内部構造と核周辺部構造形成において、それぞれ中心的な役割を果たす核内アクチンとラミンに関する国内外の最新の研究を紹介する。両タンパク質が細胞核の設計を通じて真核生物のゲノム機能を制御する仕組みを考察する。さらに、両タンパク質は、発生、遺伝子初期化、分化、疾病(ラミノパシーなど)、老化にも深く関与することが近年の研究により明らかになっていることから、細胞核アーキテクチャーの高次生命機能への寄与についても論議したい。
2PW12 |
クロマチン動態のイメージング・定量解析による核機能理解 Understanding of nuclear function by imaging and quantitative analysis of chromatin dynamics |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
落合 博(科学技術振興機構さきがけ)、上野 勝(広島大学) |
- 核構造やクロマチン動態が核内の機能発現に重要な役割を果たしていることが示唆されているが、その詳細な関係性については十分に解明されていない。近年のライブイメージング技術やゲノム編集技術などの進歩によって、より高解像度の時空間データの取得が可能となり、ゲノムDNAが核内でどれほど動的に振舞うかについて詳細な観察が可能となってきた。さらにこれらの観察によって得られるデータを定量的に解析することで、核構造およびクロマチン動態と特定の核内イベントの関係性を調べることが可能となってきた。本ワークショップでは、中堅・若手を含む国内の研究者が核構造やクロマチン動態、それらの解析手法の開発などに関するの最先端の研究成果を発表、討論することで、種々の核内イベントとクロマチン動態の関係性の理解を目指す。
2PW15 |
プロテインキナーゼ:生理機能へのアプローチとリン酸化解析の統合 Protein Kinase Signaling System: Integrative studies of physiological approach and phosphoprotein analysis |
J |
オーガナイザー: |
吉川 潮(神戸大学)、本間 美和子(福島県立医科大学) |
- 細胞内情報伝達におけるプロテインキナーゼが果たす中心的な役割は教科書的に周知のことであるが、生体分子として多様な化学修飾、メチル化、アセチル化、ユビキチン化等が見出される中、リン酸化修飾は個体としての生理機能に直結する極めて重要な役割を果たしている。また、様々なアプローチから集約される生理作用のキー・プレイヤーとしてプロテインキナーゼが浮上するなど、プロテインキナーゼ関連シグナルにはさらなる奥深さと未解明の領域がある。一方、生理機能におけるリン酸化の検出は、その時空間的なダイナミズムに由来する難しさがあるが、近年、革新的な手法に後押しされ、その困難さは着実に払拭されようとしている。本ワークショップは生体におけるリン酸化解析、ならびに代謝調節、サーカディアンリズム、エネルギー産生等の生理機能をテーマとして、第1線の研究者により生命現象の根幹へとアプローチする統合的な研究の成果を紹介する。
2PW16 |
クロマチンとノンコーディングRNAが織りなすヌクレオーム制御 Nucleome regulation governed by chromatin and non-coding RNA |
J |
オーガナイザー: |
木村 宏(東京工業大学)、斉藤 典子(がん研究会がん研究所) |
- 真核生物のゲノムDNAは細胞核の3次元空間に収納されているが、細胞の種類、発生段階、環境の変化、疾患などで高次構造や核内配置が変化する。ゲノムの作動原理を理解するためには細胞核の複雑でダイナミックなバイオロジカルシステムを明らかにすることが重要であるとの認識から、“ヌクレオーム”という視点での研究が盛んになっている。近年、クロマチンが多階層でドメインを構築していることが明らかになってきたが、その構築原理や制御機構は不明な点が多い。この制御に関わる機構として、核内に留まる非コードRNAが重要な役割を果たしている証拠が示され、さらに、液相分離を含む細胞核の特殊な生物物理的性質があることなどが明らかにされ始めている。本ワークショップでは、最先端の研究報告をもとに、ヌクレオーム制御の基本的メカニズムと高次生命現象への寄与に関して活発な議論を行う。
2PW18 |
膜輸送体創薬~基礎研究によるメカニズムの理解から臨床まで~ Membrane transport proteins targeted drug development ~From molecular mechanisms to bed sides~ |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
阿部 一啓(名古屋大学)、栗山 千亜紀(田辺三菱製薬株式会社) |
- トランスポーター・ポンプ・チャネル等の膜輸送体によって形成・維持される、生体膜を隔てた物質不均衡は、個々の細胞の生存維持のみならず、組織の特異機能に寄与するなど疑う余地なく生命の根幹を担っている。これら膜輸送体は、その機能故に創薬標的として注目されている。膜という制約故に強敵である膜輸送体研究は、分子生物学、生化学、生理学に根差した研究を土台に、近年様々な革新的解析手法が加わることで、構造基盤の解明、及び生体機能・病態との関連の理解に大きな進展がみられ、幾つかの先駆的な研究は今まさに『創薬』へと結実し、またしつつある。本ワークショップでは、創薬の様々なステージで奮闘する若いトップランナーを招き、標的分子の構造機能解析に立脚したメカニズム研究から、大学及び企業における実際の応用研究までを網羅した、膜輸送体を対象とした創薬研究の現状と今後の展望について議論したい。
2PW19 |
限定的な翻訳後修飾の制御と機能 Regulatory mechanisms and biological functions of strict post-transrational modification |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
矢木 宏和(名古屋市立大学)、後藤 聡(立教大学) |
- 分泌または膜タンパク質は、糖鎖や脂質、さらにリン酸修飾など様々な翻訳後修飾を受ける。これらの修飾により、タンパク質の機能に多様性が生み出される。このような翻訳後修飾はさまざまな生命現象において非常に重要であるにもかかわらず、ゲノムに直接書き込まれていないため、緻密な制御が難しく、不均一であると考えられてきた。しかし、長年の研究より、厳密にコントロールされている修飾も数多く見出されている。この限定的な翻訳後修飾は、修飾酵素のもつ厳密な基質特異性によるものと考えられている。最近ではそれに加え、修飾されるタンパク質と修飾酵素の出会いが限定されている可能性も示唆されている。本ワークショップでは分泌経路中で起こりうる特定のタンパク質へ限定的な糖鎖修飾、脂質修飾、リン酸化修飾に関して、その修飾メカニズムおよび修飾タンパク質の機能発現に関する知見を紹介したい。
2PW20 |
本気でがんを予防する Seriously, Prevent the Cancer Now ! |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
武藤 倫弘(国立がん研究センター)、石川 秀樹(京都府立医科大学) |
- がんは長期に亘り死因の第一位であるのだが、制度上の問題から積極的ながんの予防は現在認証されていない。しかし分子生物学や生化学の基盤に基づいたこれまでの発がん研究/がん予防研究の成果として、近年ようやく大規模ながん予防臨床試験が施行される様になり(例:低容量アスピリン服用による大腸がん予防)、具体的がん予防策が視野に入りつつ有る。そこで本ワークショップでは具体的がん予防手法を提唱している若手を含む演者と共に、その論拠と可能性を議論したい。多種の学会より専門家が集結する本年度の生命科学系学会合同年次大会に於いて、多くの研究者の方にがん予防に関する現状を知って頂き、また裾野が広く、多くのアプローチが可能ながん予防研究に算入してきて頂ければと考えている。がんの予防を研究出口の一つとして異分野の専門家が議論する機会はこれまでになく、斬新な融合が期待される。「本気でがんを予防する」をテーマに、実社会におけるがん予防制度の実現に向けた第一歩としたい。
2PW21 |
生老病死における血管・リンパ管の生命科学的意義 Roles of blood/lymphatic vascular systems in health and disease |
J/E |
オーガナイザー: |
高倉 伸幸(大阪大学)、渡部 徹郎(東京医科歯科大学) |
- 血管とリンパ管は全身に分布し、体液の循環を介して生体の恒常性を維持することで生命の維持に必須の役割を果たしている。「人は血管とともに老いる」という言葉があるが、血管とリンパ管の老化に伴う機能低下は様々な病態を引き起こす。さらに、血管とリンパ管はがんなどの疾患の悪性化においても重要な役割を果たし、本国の死因の半数(がん・心疾患・脳血管疾患)に関与していることから、その形成・維持機構の解明は急務である。日本血管生物医学会と日本リンパ学会はこれまで海外の研究者とも連携しながら、血管とリンパ管に関する基礎・応用研究を推進してきたが、近年の分子生物学的手法とイメージング技術の進歩により、血管とリンパ管の生体における動態について大きなパラダイムシフトが起きつつある。本シンポジウムにおいては、上記2学会に関連する国内外の研究者に最先端の成果を紹介してもらうことで、様々なライフステージにおける血管とリンパ管の新たな意義を明らかにすることを目指す。
2PW23 |
オミクス研究から実用的システム生物学の構築へ How to integrate omics research towards practical systems biology? |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
木下 聖子(創価大学)、吉沢 明康(京都大学)、河野 信(情報・システム研究機構)、
山田 一作(野口研究所) |
- 「システム生物学」の概念が提唱されてから20年が過ぎた。しかしシステム生物モデルの構築は容易ではない。例えば全細胞シミュレーションの成功例は存在しているが、これには数百個ものパラメータの調整が必要である。現在の、確実な生化学データに基づく「オミクス研究の最前線」から、医学研究などでの応用を念頭に置いた、精密・正確な予測を行える“真の”システム生物学を確立するには、今後どのようなデータや技術が必要になるのか?それを探求するのが、このワークショップが目指すことである。講演者は、メタボロミクス・グライコミクス・プロテオミクス・ゲノムを中心としたマルチオミクスなど、オミクス研究の広い分野から参加いただいており、講演ではバイオインフォマティクスとシステム生物学の今後の可能性が示されることになろう。またパネルディスカッションでは、現実的かつ正確なシステム生物モデルを確立するための要件について論じる予定である。
2PW24 |
シナプス、軸索の変調から神経変性疾患を理解する Synaptopathy and Axonopathy in Neurodegenerative Disease |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
今居 譲(順天堂大学)、山中 智行(同志社大学) |
- アルツハイマー病、パーキンソン病などの加齢をリスクとする神経変性疾患では、臨床症状が現れた時点で病変部位の神経の大半は死滅しており、治療は対処療法しかない。一方これら疾患では、長期(~20年)にわたり神経変性が徐々に進行していることが明らかとなりつつある。この前臨床段階では、シナプスや神経突起において機能障害が生じていると考えられる。神経変性疾患の原因遺伝子に、軸索の維持、シナプス小胞の動態、細胞内小胞・ミトコンドリア輸送に関わるものが含まれることからも、この考えが支持される。すなわち、シナプス、軸索、樹状突起の機能障害の分子レベルでの理解が、神経変性疾患の効果的な治療法開発のための鍵となる。
本ワークショップでは、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症の病態の鍵となるタンパク質Tau、alpha-Synuclein、TDP-43、FUSなどが、神経回路を伝搬する現象、オルガネラ・軸索輸送・局所翻訳に障害を与える病態機序に焦点をあて議論する。
2PW25 |
尿毒素から紐解く臓器連関と生体恒常性破綻のメカニズム Updated pathophysiology of uremic toxins on organ crosstalk and homeostasis |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
稲城 玲子(東京大学)、和田 隆志(金沢大学) |
- 近年の超高齢社会は、加齢による腎機能低下(腎臓老化)や腸内細菌叢破綻で生体内に尿毒素が蓄積することを加速させている。尿毒素は糖・脂質由来代謝産物とアミノ酸由来の窒素代謝産物に大別され、その産生経路や構造の違いから、細胞・臓器に対して多様な病態生理学的活性を誘導する。特に尿毒素による蛋白恒常性の破綻(蛋白の立体構造・翻訳後修飾の異常)や細胞小器官(小胞体、ミトコンドリア)ストレスは、腎臓と他臓器の臓器連関、それに基づく臓器恒常性維持の新たなメカニズムを知る糸口となっている。尿毒素の体内蓄積は腎臓老化による心臓・脳・免疫系の機能低下やフレイル(骨格筋力・筋量低下、骨代謝の低下)を助長する要因として注目され、超高齢社会の健康長寿を目指す上でこの研究領域に大きなパラダイムシフトが起きている。
本ワークショップでは尿毒素と様々な臓器連関、生体恒常性維持、ひいては健康寿命に及ぼす影響などについて最新の知見に基づいて討論する。
2PW27 |
幹細胞性を支える糖鎖の本質に迫る: 幹細胞の顔と運命決定を担う糖鎖スイッチからの視点 Fundamental nature of glycans to support stem cell properties: From the aspects of stem cell marker and glycan switch |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
板野 直樹(京都産業大学)、西原 祥子(創価大学) |
- 細胞が発現する糖鎖は、発生過程で顕著に変化し、細胞のおかれた状態を反映する。このため、糖鎖やそれに関連する分子は、細胞の未分化および分化マーカーとして汎用されてきた。近年、構造グライコミクスや糖鎖改変の技術革新により、幹細胞性を特徴づける顔としての機能の他に、幹細胞の運命決定を担う分子スイッチ(糖鎖スイッチとよぶ)としての新規機能が明らかになってきた。
本ワークショップでは、はじめに、構造解析により、いかに糖鎖は幹細胞で特徴的かを示す。さらに、胚性/人工多能性幹細胞(ES/iPS)や組織幹細胞、がん幹細胞が見せる糖鎖の多彩な変化が、幹細胞に特徴的なシグナル伝達や代謝経路を多段階的に切り替えるメカニズムについて紹介する。このような”細胞の顔”と”糖鎖スイッチ”の両視点から、幹細胞性を支える糖鎖の本質へ迫りたい。
3AW02 |
染色体ダイナミクスを統合的に制御する新たなゲノムシグナチャー New genome signatures that orchestrate various chromosome dynamics |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
藤田 雅俊(九州大学)、正井 久雄(東京都医学総合研究所) |
- 従来、複製・転写・組換えなどの基本的かつ重要な染色体動態の研究は、主にそれぞれの分野で、また特定のモデルゲノム領域について、深く研究されてきた。また、それらを制御するものとして、一義的にはDNA配列が重要なシグナチャー(記号)として機能していると考えられてきた。一方、次世代シークエンス技術などの発展に伴い、それぞれの染色体動態の関連について、ゲノムワイドに共通性のある、より普遍的な像を導き出すことが可能になって来た。また、単純なDNA配列ではない種々のシグナチャーがこれらを統合的に制御していることも明らかになりつつある。そこで本ワークショップでは、複製開始点(休眠開始点を含む)、組換えhot spot、DNA特殊構造(G4 DNAなど)、転写制御、ヒストン修飾、染色体接着・凝縮およびそれらの連携のゲノムワイド解析を行っている研究者を集め、最先端の研究内容を発表してもらうと共に、それぞれの連携、あるいはそれらを統合的に制御するゲノムシグナチャーという観点から討議を行いたい。
3AW03 |
代謝セントラルドグマ Metabolic central dogma |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
曽我 朋義(慶應義塾大学)、酒井 寿郎(東北大学) |
- クリックによって提唱されたセントラルドグマは、微生物からヒトまでの全ての生物に共通する分子生物学の基本原理として盲目的に信じられてきた。ところが近年、DNAの遺伝情報の最終産物として考えられていた代謝産物そのものが、エピゲノム反応やタンパク質の翻訳後修飾を介して、遺伝子の転写・翻訳を調節し、多彩な生命現象を制御していることがわかってきた。我々は、代謝産物が起点となって、遺伝子の転写・翻訳が起き、生命現象を誘導するという生体分子の情報伝達の新概念を「代謝セントラルドグマ」と定義した。ゲノム情報が変化しなくとも、個体は栄養などの環境の変化に対し、代謝セントラルドグマを介して表現型の多様性を生み出すことで順応性・可塑性を獲得し恒常性を維持していると考えられる。本ワークショップでは、代謝セントラルドグマが、様々な生物種において、老化、がん化、寿命、ストレス応答、免疫、肥満などの生命現象を誘起している例を紹介し、その分子メカニズムを議論したい。
3AW05 |
分子生物学的アプローチによる運動器研究の新展開 New horizon of locomotorium research by molecular biology approaches |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
乾 雅史(明治大学)、早田 匡芳(筑波大学) |
- 骨、関節、靭帯、腱、筋肉などの運動器の健康維持は、超高齢社会における健康寿命を支えるのに重要である。運動器の発生・恒常性維持の分子メカニズムを理解することにより、骨粗鬆症や変形性膝関節症などの運動器疾患の発症原理の解明につながることが期待される。本ワークショップでは筋骨格系組織の発生・恒常性において近年その重要性が注目されるmicroRNAやnon-coding RNA(伊藤)、腱-骨など異なる組織間の相互作用(伊豆・吉本)に着目し、これらの新しい視点から筋骨格系組織の発生・恒常性・疾患メカニズムの理解(長尾)に迫ることを目指す。また、CRISPR/Cas9(乾)、シングルセル解析(團野)、メカノセンシング(道上)などの新しい分子生物学的手法が筋骨格系組織の解析にどのように適用されているか・今後していけるかを議論したい。
3AW06 |
DNA配列認識副溝結合物質(MGB)を応用した生体内のゲノム・エピゲノム構造介入 Sequence specific external intervention to the structure of the living genome and epigenome |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
永瀬 浩喜(千葉県がんセンター研究所)、杉山 弘(京都大学) |
- 自然界には、DNAやRNAウイルス感染等から自己を守るための細胞内での核酸干渉、編集機構が存在する。さらに、細胞外で周囲の外来生命体を排除する抗生物質、DNA配列を認識できるマイナーグルーブバインダー(MGB)が存在する。前者はゲノム編集技術に応用され、広く応用されているが、後者は、長い配列認識化合物の合成が困難であったため、様々な優位性は認められるものの発展して来なかった。しかし、この外分泌性のMGBを応用すれば、容易に細胞内もしくは生体内で配列特異的にDNAと結合し、ゲノム・エピゲノム構造を直接変更する編集技術と成り得る。近年ゲノム・エピゲノム構造に対し容易に介入できる化合物の自動合成技術が開発され、細胞や生物個体の運命を変更できることが実際に明らかになっている。本ワークショップでは、この新たなアプローチを多彩な領域研究者らに紹介いただき、様々な研究および臨床応用の可能性について議論を行いたい。
3AW07 |
最先端の表面科学手法による生体膜反応の実動作下計測 Operando measurement of reactions on biomembrane by advanced surface science techniques |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
深井 周也(東京大学)、手老 龍吾(豊橋技術科学大学) |
- 細胞膜に代表される生体膜は、膜で隔てられた空間同士での物質・情報・エネルギーのやり取りを行う反応場である。一方、近年では固体表面の微細加工や構造・物性の分子スケール観察・計測を行う表面科学的手法が生体分子の計測にも応用されており、特に二次元系である生体膜の観察や計測に成果を挙げている。本ワークショップでは原子間力顕微鏡、放射光、表面微細加工技術といった表面科学手法を駆使して膜タンパク質の構造と機能を実動作下で計測している気鋭の研究者に最先端の成果を紹介していただき、今後の計測手法の発展や計測が望まれる試料など将来展望について議論したい。
3AW08 |
遺伝学・光遺伝学を用いた神経回路形成研究 Genetics in neural development and function |
J/E |
オーガナイザー: |
水本 公大(ブリティッシュコロンビア大学)、丹羽 伸介(東北大学) |
- シドニーブレナーが神経系の基本原理を分子生物学によって解き明かすために線虫をモデル生物として確立してからおよそ40年、線虫を含む様々なモデル生物を用いた遺伝学は神経回路の形成や機能における分子実体を明らかにする大きな原動力になってきました。本ワークショップでは、変異体スクリーニングをはじめとする古典的遺伝学から、optogeneticsを含む近代遺伝学まで、様々な遺伝学的手法を用いて実際にご自分で手を動かして研究をされている若手研究者の方々に、神経科学分野における遺伝学の重要性とそこから得られた最新の知見についてお話しいただきたいと思います。
3AW10 |
多細胞動物における性決定システムの多様性と進化 Diversity and evolution of sex-determining systems in multicellular animals |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
伊藤 道彦(北里大学)、野澤 昌文(首都大学東京) |
- 性は生命進化において多様性の根幹として機能してきた。興味深いことに、性の決定に関わる性決定遺伝子および性システムは多様性に富む(近縁種間や集団間でさえ相違がある)が、その多様性を許容する分子基盤は未解明である。画期的なことに、ここ数年、日本の研究者が中心となって、様々な種(脊椎動物、節足動物、被子植物)で、様々なタイプ(転写因子、膜受容体・リガンド、smallRNA)の性決定遺伝子が同定され、漸く、その多様性システムおよびその進化的背景が分子レベルでわかりつつある状況になってきた。本ワークショップでは、その性決定研究者に進化研究者を交え、動物界(無脊椎動物から脊椎動物まで)における性決定システム研究の現状を概観し、性決定遺伝子、性染色体、生殖細胞-体細胞、あるいはニッチ・環境に応じた変異を内包するシステム変化という観点から、「性システムの多様性と進化」を考察・討論すると共に、「性の意味」を考える機会としたい。
3AW15 |
細胞死の多様性と死細胞からはじまる生体応答の解明 Diversity of cell death and biological responses triggered by dying cells |
J |
オーガナイザー: |
中野 裕康(東邦大学)、三浦 正幸(東京大学) |
- 最近の研究からアポトーシス以外の制御された細胞死の存在や、その分子メカニズムが急速に解明されつつある。一方で代表的な”eat me signal”であるフォスファチジルセリン(PS)の細胞表面表出の分子メカニズムも明らかになってきた。このような状況のもとで、本ワークショップでは様々な制御された細胞死(アポトーシス、ネクロプトーシス、パイロトーシス、フェロプトーシス、ネトーシスなど)の制御メカニズムや、その後に誘導される生体応答について第一線で活躍する研究者に紹介していただく。
3AW16 |
DNA複製とエピゲノム複製 DNA Replication to Epigenome Replication and The Between |
J |
オーガナイザー: |
眞貝 洋一(理化学研究所)、小布施 力史(大阪大学) |
- 個体は1個の受精卵から様々な系譜を経て組織や個体を形作る細胞に分化する。それぞれの細胞はDNA複製を経てすべて同じ遺伝情報を持ちながら、遺伝子の機能発現の組み合わせによりそれぞれの細胞の表現型を発現する。近年、遺伝子の機能発現は、DNAのメチル化、ヒストンの修飾、それらがもたらすクロマチン構造など、いわゆるエピゲノムにより支配されていると理解されるようになってきた。エピゲノム情報は細胞が形質を変えていく過程で書き換えられていく可塑性と、DNA複製と連動して細胞世代を経ても受け継がれる性質を併せ持つ。しかしながら、DNA複製とエピゲノム複製との連携の実態やメカニズムについてはあまり知られていない。本ワークショップでは、DNA複製研究、エピゲノム研究、それぞれから見えてきた接点を手掛かりに、両者の連携とその制御メカニズムについて議論したい。
3AW17 |
発生とがんのダイナミクスを明らかにするマルチオミックス
Multiomics dissects orchestration of the cells and unravels human development and tumorigenesis |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
渡辺 亮(京都大学)、吉田 善紀(京都大学) |
- 我々の体は1個の受精卵から発生し、数百種類以上の細胞へと分化するが、この制御は非常に厳密に行われている。一方で、同じ種類と思われる細胞でも個々の細胞に注目すると、転写や代謝をはじめとする機能が均一な状態ではないことが明らかになっている。そのため、個々の細胞の自律的な振る舞い、言い換えれば細胞の個性を明らかにすることは個体の理解に必須である。本セッションでは、シングルセル遺伝子発現解析を含むエピゲノム制御の解析、がんのクローン進化シミュレーション、そして細胞間コミュニケーションを再現する臓器再構築モデルによって、細胞の個性の理解を通じて臓器や個体の機能を考察する。そして、一細胞の振る舞いの理解から個体の機能を明らかにする細胞社会学を確立する。
3AW19 |
オートファジーの分子メカニズムと生理機能 Molecular mechanism and physiology of autophagy |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
山本 林(東京大学)、山野 晃史(東京都医学総合研究所) |
- オートファジーは真核生物が普遍的に備える細胞内分解機構であり、大隅良典博士による1992年の出芽酵母オートファジーの発見(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)を機に、日本が世界をリードする研究分野として発展を遂げてきた。オートファジーは二重膜オルガネラ(オートファゴソーム)の新生を伴う動的な膜動態から成り立ち、その分解ターゲットはタンパク質、オルガネラ、脂質など非常に多岐にわたることから、オルガネラバイオロジーや脂質バイオロジー、膜動態解析の観点からも高い関心を集めている。また、腫瘍形成や神経変性疾患、初期胚発生など様々な高次生理機能に関与することが知られており、さらに、核酸分解を担う新たなオートファジー様式が発見されるなど、その研究領域は拡大の一途を辿っている。本ワークショップでは、次世代、そして次々世代のオートファジー研究を担う若手研究者に集まって頂き、オートファジー全体を俯瞰した議論を展開するとともに、分野横断的な話題提供をしたい。
3AW20 |
知られざるp53の肖像画~“ゲノムの守護神”にとどまらないp53の新機能~ Portrait of p53 Unknown~New Destinations in p53 Research~ |
E |
LOD |
オーガナイザー: |
大木 理恵子(国立がん研究センター研究所)、Marco M Candeias(京都大学) |
- がん抑制遺伝子p53は1979年に発見されて以降、世界で最も多くのがん研究者が研究している遺伝子であると言っても過言ではないであろう。発見時にはどのような機能を持つタンパク質か不明であったが、1983年になって「がん遺伝子である」という報告がされた。実はp53のがん遺伝子としての機能は、変異型p53の機能であり、1989年になってようやく本来のがん抑制遺伝子としての機能が報告された。そして、近年の次世代シークエンサーによる膨大ながん組織のゲノム解析が進むに従い、がんにおいてp53に変異が入ることの重要性が再認識されている。おおよそ半数のがんではp53に変異が認められ、p53機能喪失と変異が、がん化促進において重要な意味を持っていることが明らかになっている。がんにおけるp53の重要性は疑いようがないが、p53機能の全容は未だに解明されておらず、p53の知られざる機能が次々と明らかにされている。本ワークショップでは、特にp53研究を通じて明らかになった国内外の「新発見」を強くアピールしたいと考えている。また、がん抑制遺伝子p53発見者の一人、David Laneがスピーカーとして参加する。p53発見の歴史から、最先端のp53研究、さらには今後のp53研究の方向性までをカバーするワークショップである。
3AW21 |
発生と再生を制御する組織・臓器の『血管化』 "Vascular-signpost" of tissue and organ guides its development and regeneration |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
水谷 健一(神戸学院大学)、長谷川 潤(神戸薬科大学) |
- 近年、血管が全ての組織・臓器の形成や機能維持に必須であると認識されつつあり、組織の発生と分化・再生において「血管化」が重要な役割を果たす可能性が指摘されている。すなわち、血管は、成長する組織からの酸素や栄養の要求に応答するために受動的に発生するのではなく、時間特性・領域特性を付与された内皮細胞が決まった場所に、決まったタイミングで規則的に発生し、これが組織の発生と分化・再生を調節する細胞外環境として極めて重要な役割を果たす可能性が示唆される。本ワークショップでは、生体内で規則的に血管ネットワークが形作られる原理、微小環境としての血管が幹細胞を調節する原理、血管が細胞移動の足場として利用される原理、血管が産生する物質が組織の修復・再生に果たす原理について、最新の研究成果を発表・議論する。これにより、基礎発生学、再生医学の各々の考え方、課題を共有できるワークショップを展開する。
3AW23 |
疾患関連分子の認識技術の革新 Innovation of recognition technology of disease-related molecules |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
坂野 大介(東京工業大学)、門之園 哲哉(東京工業大学) |
- 近年の創薬研究においては、ペプチド、核酸、低分子化合物を用いて疾患関連分子を認識する新たな技術によってその機能を阻害する仕組みの開発が盛んに行われている。
これらの研究は高額な創薬コストのために新薬開発から取り残され治療法が未だ確立していない疾患に対してのブレイクスルーとなりえる。
そして、新たな関連分子を遺伝子発現やタンパク質高次構造の変化を手がかりに探索し、創薬標的となる疾患関連分子を絞り込むことも大切である。
本ワークショップでは、これらの点を踏まえ治療・創薬につながる最新技術を開発する若手研究者に基礎から応用まで幅広く紹介してもらう。
3AW24 |
神経変性疾患への分子生物学的アプローチ Molecular biological approach to neurodegenerative disease |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
石田 直理雄(国際科学振興財団 時間生物学研究所) |
- 神経変性疾患と呼ばれる病気の原因は、そのほとんどが遺伝的に規定された早期の神経変性、もしくは脳の老化にその本質がある。しかしながらその本質が理解されてなお、部位的にも遺伝子治療アプローチの最も難しい領域であり、それらの根本的治療法は道半ばである。本シンポジウムでは、神経変性疾患の中でも、パーキンソン病、ゴーシェ病等の疾患に注目し、その原因遺伝子から異常蛋白の発現までの分子生物学的アプローチで焦点をあてる。具体的にはパーキンソン病原因遺伝子Vsp35、ヒトゴーシェ病モデルショウジョウバエのオートファジーによる寿命低下、パーキンソン病症状のサーカディアンリズム、ゴーシェ病原因遺伝子のパーキンソン病への関与等の話題を取り上げたい。これら多様な神経変性疾患の現状の分子論を解説していただく中から、病気の多様性と分子の一様性について議論を深める。
3AW27 |
脂質膜が活躍する生命現象を探究する Exploration of biological phenomena in lipid membranes |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
藤本 豊士(名古屋大学)、田口 友彦(東京大学) |
- 生命現象についての理解は、核酸にコードされた遺伝情報、ついでその遺伝情報に基づいて作られるタンパク質の機能を解析することによって急速に進んできた。一方、脂質については解析方法が限られていたため、細胞内局所での役割の理解は遅れていた。しかし、近年の研究方法の進歩により、細胞膜および細胞内のオルガネラを仕切る生体膜の脂質が、多くの現象において重要な機能を担っていることが次々に明らかになってきた。このワークショップでは、生体膜脂質の役割に注目して、様々な生命機能に迫っている研究者に講演をお願いした。今回取りあげられるテーマ以外にも、脂質を解析することによって初めて実相が明らかになる現象は数多く存在するに違いない。脂質膜が活躍する場にフォーカスすることにより、生命現象を新たな切り口から捉えるきっかけを提供できれば幸いである。
3PW02 |
ゲノム恒常性維持機構の破綻と疾患発症の分子メカニズム Molecular pathogenesis associated with genome instability |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
中田 慎一郎(大阪大学)、荻 朋男(名古屋大学) |
- ゲノムDNAの不安定化は、がんをはじめとする多様な疾患発症の原因となっている。ゲノムの恒常性を維持するDNA損傷応答・修復機構の研究はさかんに行われ、個々の分子メカニズムの理解が進んでいる。その一方でシステム全体では未解決の課題が多く存在する。DNA損傷応答・修復機構の異常に起因する疾患の分子病態の理解は困難であり、種々の遺伝性疾患の病態や、臓器特異的な発がん機構、さらには、そもそも健康人においてなぜDNAに変異が蓄積するのかなどについても未解明である。本ワークショップでは、DNA修復機構・ゲノムインスタビリティ・疾患の分子病態を縦断的に捉え、ゲノム恒常性維持機構の破綻から疾患発症にいたる分子メカニズムの理解を加速する。
DNA修復機構をターゲットとして、さらなるゲノム不安定性を誘導する合成致死や効率的な免疫療法を刺激する手法の開発についても議論したい。
3PW03 |
環境エピゲノム変化に基づく疾病の発症 ~DOHaDの生物学的基盤~ Environment-induced epigenomic alterations that cause non-communicable diseases: Biological basis of DOHaD |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
根本 崇宏(日本医科大学)、佐藤 憲子(東京医科歯科大学) |
- 近年、胎生期の劣悪な環境が成人病の発症を促す考え方(Developmental Origins of Health and Disease:DOHaD)が提唱されるようになった。一方、遺伝子調節に関わるエピゲノムが幼少期の生育環境の影響を受けて変化し、疾患体質形成に関わることがわかってきた。実際、我が国では、出産後の体型変化を気にして十分な栄養を摂取しない妊婦が増え、劣悪な栄養環境に曝させる胎児が増加し、将来成人病の増加することが危惧されており、その分子生物学的理解や早期発見などの介入の必要性が高まっている。以上を受け、本ワークショップでは、最新の出生前コホート研究に基づくエピゲノム変化要因、成人期の高血圧体質を生み出す胎児期の生理学的やエピゲノム的メカニズム、過剰栄養が2型糖尿病体質を獲得させるヒストン修飾メカニズム、環境で導入された胎児体質変化の次世代伝達メカニズムを示す。本ワークショップが、学会員の先生方にとって、次世代の健康を守る分子生物学研究を考えるきっかけになれば幸いである。
3PW05 |
in situ構造生物学による真核細胞内蛋白質の動態解明 in situ structural biology for understanding eukaryotic intracellular protein behaviours |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
伊藤 隆(首都大学東京)、木川 隆則(理化学研究所) |
- 細胞内の生体分子構造を原子分解能で解析できる唯一の手段であるin-cell NMRや、大規模な全原子分子シミュレーション解析の進展により、細胞内の蛋白質動態の詳細な解析と、その知見に基づき生命現象のメカニズムを総合的に理解する研究分野(in situ構造生物学)が実現しつつある。
本分野では、分子クラウディングや物質流動等の細胞内特有の環境が蛋白質動態に及ぼす影響を明らかにし、分子の構造や動態を基盤とした生命現象の理解をより深化させる。さらに、細胞応答の詳細な解析や薬剤スクリーニングにも応用可能であるがゆえに、先端医療や創薬科学等に波及的効果を及ぼすことで、ライフ・イノベーションの推進に大きく寄与することが期待される。本ワークショップでは、特に真核細胞を対象とした最先端の研究内容を当該分野の研究者に紹介していただく予定である。
3PW06 |
網膜視覚科学の最前線 Frontier of retinal vision science |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
古川 貴久(大阪大学)、渡辺 すみ子(東京大学) |
- 最近、iPS細胞由来視細胞の網膜変性疾患症患者への移植の具体的スキームが発表され、iPS細胞のみならず網膜変性疾患や視覚再建への関心が一般にも高まっている。一方で、網膜移植による視覚再建の最終的な実現のためには、網膜や視覚に関する基礎研究による移植再生研究の下支えが必須である。精密な中枢神経回路である網膜の発生、機能、疾患の解明に向けては、分子生物学、生化学、細胞生物学、解剖学、生理学、動物工学をはじめとする多分野にわたる研究の成果や手法が駆使されており、今後のさらなる発展にも他の研究領域との幅広い交流が望まれている。本ワークショップでは、網膜基礎研究の分野で日本を代表する研究者が集まり、最新の知見を交換し共有するとともに異分野の研究者に最新の網膜視覚研究の成果を提供して相互コミュニケーションを図ることによって、新たな研究軸の創成による研究の発展を目的としている。網膜視覚研究の第一線の研究成果をめぐった学問領域を超えた議論を行いたい。
3PW07 |
Smadシグナルのcanonical経路とnon-canonical経路 Canonincal and non-canonical Smad signaling pathways |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
宮澤 恵二(山梨大学)、北川 雅敏(浜松医科大学) |
- TGF-βファミリーのサイトカインは個体発生から成熟個体での恒常性維持に到るまで、重要な役割を担っており、主としてSmadタンパク質を介してシグナルを伝達する。その分子機構として、活性化した受容体によりSmad2/3あるいはSmad1/5/8がリン酸化され、Smad4と複合体を形成して核内移行して標的遺伝子の転写を制御するという"canonical Smad pathway”が明らかにされて20年近くになる。しかし最近でも、lncRNAなど、新しいシグナル伝達修飾因子が同定され、その全体像は修正されつつある。一方、ゲノムワイドなChIP-seqなどの研究により、Smadタンパク質がしばしばSmad4非依存的にシグナル伝達する"non-canonical Smad pathway”の存在も明らかになってきた。本ワークショップでは、Smadシグナル伝達の研究分野で解決された問題、未解決の問題、将来の展望について議論する。
3PW08 |
分子状酸素による遺伝子発現調節から紐解く疾患生物学 Oxygen-mediated gene regulations and their roles in diseases |
J |
オーガナイザー: |
合田 亘人(早稲田大学)、上田 潤(旭川医科大学) |
- 生物にとって必須の酸素はミトコンドリアでのエネルギー産生以外にも、生体の恒常性維持にかかわるさまざまな代謝反応に利用される。それ故、生物には外界の酸素に応答した多様な遺伝子発現制御機構が存在する。低酸素誘導性転写因子HIFはそのシステムの中心的な因子であるが、HIFの転写活性化能は酸素を基質とする水酸化修飾によって規定される。一方、DNAやヒストンの脱メチル化によるエピゲノム制御、またRNAの修復機構においても酸素が反応基質として利用されており、細胞の生存、分化やその機能発現にかかわる遺伝子発現様式も酸素代謝によって影響を受けている。本ワークショップでは、酸素による多様な遺伝子発現の調節機構とその破綻が惹起する疾患の成り立ちについて最新の知見を交えて議論する。
3PW10 |
「サイズ」で斬る分子細胞生物学 Molecular Celluar "Size" Biology |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
原 裕貴(山口大学)、山本 一男(長崎大学) |
- 生命体は、集団、個体、器官、細胞、オルガネラなど様々なスケールにおいて固有の「サイズ」を保っているように見える。現代の分子細胞生物学はこれらを構成する分子を対象に解析することで生命とは何かという命題に切り込んできたが、意外なことにそこには「サイズ」の恒常性という観点が抜け落ちている。生物の最小単位である細胞レベルにおいても、外部の環境が変化するのに伴い、細胞そのもののサイズや内包するオルガネラのサイズは大きく変化する。では、分子の集合体としてのこれら単位構造のサイズはどのように規定されるのであろうか?本ワークショップでは、真核多細胞生物を中心とした細胞スケールの問題に焦点を絞り、ウエットな実験系から数理モデルを使った研究を横断的に俯瞰することで、細胞を構成する様々な「サイズ」がどのように創成されるのかに迫りたい。
3PW15 |
ゆらぎが担う器官発生のしくみ Rolls of cell heterogeneity regulating organ development |
J/E |
オーガナイザー: |
高里 実(理化学研究所)、栗崎 晃(奈良先端科学技術大学院大学) |
- 個体発生時に器官が形成される過程では、様々な種類の細胞が相互作用しつつ、時間的空間的に定められたプランに沿って事象を再現している。近年の技術の進歩によって、これらの事象を1細胞レベル解析することが可能になりつつあるが、前駆細胞集団や組織幹細胞集団の不均一性がもたらす挙動のゆらぎは器官形成の肝であり、正しい器官形成にとって無視することのできない因子であることが分かってきた。また、こういった研究成果を人工臓器の開発に利用することで、現在盛んに行われている器官再生医療研究の分野においても多大な恩恵を享受できる可能性がある。本ワークショップでは、この緻密に仕組まれた器官形成の制御機構を明らかにする最新の研究から、それを可能にする1細胞解析の最先端技術の開発、幹細胞集団におけるゆらぎの意義、そして細胞の不均一性に依拠した臓器オルガノイドの形成まで、生命の神秘を担うゆらぎ研究のフロンティアを紹介する。
3PW16 |
細胞核を造る –染色体・細胞核の機能構造はどこまで分かったか?— Reconstruction of the nucleus - How much we understand functional structures of the chromosome and the nucleus? - |
J |
オーガナイザー: |
原口 徳子(国立研究開発法人情報通信研究機構、未来ICT研究所)、胡桃坂 仁志(早稲田大学) |
- ゲノミクスやプロテオミクスの発展により、生命を形作るためのゲノムDNA配列の情報や、部品となるタンパク質の種類・アミノ酸配列に関する情報が集積している。今後は、これらの情報を元に、生命を構築する部品を再構成し、真に機能する構造を作り出すことで、個々の部品の機能や構造の意味を知ることが重要になる。このような考えのもと、遺伝情報を担う染色体およびそれらを内包する細胞核を再構築することにより、核の構造と機能との関係を統合的に理解しようとする研究が新しい潮流となってきている。本ワークショップでは、ヌクレオソームの試験管内再構成から、生きたヒト細胞内での人工核の構築、マウス胚での人工核の構築など、原子・分子レベルから多細胞レベルまで、様々な階層で機能的な染色体や細胞核を作りだすことで核の理解を目指す研究を集め、細胞核の機能構造に関する最先端の研究成果を報告する。
3PW17 |
小胞体からはじまる多彩なシグナルと包括的生命機能制御 Comprehensive regulation of biological functions orchestrated by endoplasmic reticulum-derived diverse signaling |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
齋藤 敦(広島大学)、村尾 直哉(宮崎大学) |
- 小胞体はタンパク質の合成・修飾・分泌を司るオルガネラであり、タンパク質の品質管理機構などにおける分子メカニズムの研究を通してその重要性が数多く報告されてきた。加えて近年、小胞体は細胞内外の環境変化を集約して多様なシグナルを発信することで、従来の小胞体機能の概念とは異なる多彩かつ包括的な生命機能制御の起点となる場であることが明らかになりつつある。そこで本ワークショップでは新たな小胞体機能に着目し、小胞体シグナリングによる細胞新生・分化および活性化制御とそれに連動して展開される組織分化・形成コントロール、さらにはエネルギー代謝ならびに生理活性物質調節を介した細胞非自律的な作用について最新の知見を紹介する。また、トピックとなっている小胞体-ミトコンドリア接触部(MAM)を起点とした多岐にわたるシグナル発信などにも焦点をあて、小胞体を中心とする生命現象の新しい制御機構について議論するとともに、その破綻と病態形成との関わりについても言及したい。
3PW20 |
「生老病死」の分子生物学 Molecular Biology of “Life-Aging-Disease-Death” |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
田中 知明(千葉大学)、須田 将吉(新潟大学) |
- オミックス解析やビックデータ分析の技術革新に加え、Single Cellシークエンスとゲノム編集技術の登場が、分子生物学分野の大きなパラダイムシフトを起こしつつある。”D'où Venons Nous Que Sommes Nous Où Allons Nous”120年前のポール・ゴーギャンの問いに対する分子生物学的回帰点なのかもしれない。1遺伝子-1分子-1細胞-1個体を動的・質的・視的・システム的に捉えて、細胞→臓器→個体へと広く結びつけるだけでなく、「生老病死」の仕組みを紐解き、支配しようとする飽くなき研究者の挑戦とも言えよう。本ワークショップでは、「生老病死」の分子生物学をテーマに、新技術・独創的手法を軸に再生・老化・疾患病態を捉えたインパクトの高い研究を紹介する中で、最先端の知見を議論したい。
3PW21 |
環境因子による生体影響 アレルギーなのか化学炎症なのか!? Effects of environmental factors on human health – Cause allergy or chemical inflammation !? |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
三村 達哉(帝京大学)、市瀬 孝道(大分県立看護科学大学) |
- 近年、大気中浮遊粒子に代表される環境因子による健康被害が報告されている。大気中粒子には花粉、微生物や人為的な大気汚染物質、化学物質などが含まれている。粒子に含まれる有害物質の種類によって、呼吸器症状、アレルギー症状、神経症状、生体への化学炎症など様々な健康被害を引き起こす。本ワークショップでは、大気中粒子の大きさや種類の違いと、健康被害にどのような関わりがあるのか、各分野の専門家が、モレキュラーレベルでの最新の知見を紹介する予定である。また、大気汚染物質による健康被害を解決するために、各専門分野ごとの垣根を越えた共通の方法論や対策についても議論する予定である。
3PW22 |
全能性獲得と消失の分子機構の理解に向けて Toward the understanding of molecular mechanisms for the acquisition and loss of totipotency |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
中村 肇伸(長浜バイオ大学)、青木 不学(東京大学) |
- 全能性とは、個体を構成する全ての種類の細胞に分化することができる能力である。精子と卵子はエピゲノム情報を次世代に伝えるために特化した分化細胞であるが、受精後すぐにリプログラミングが生じて全能性を再び獲得する。全能性は着床前胚の発生過程において急激に消失していくが、将来精子や卵子に分化することが運命づけられた始原生殖細胞において受精後の全能性再獲得に向けたリプログラミングが再度開始される。始原生殖細胞が持つ潜在的全能性と初期の着床前胚が持つ全能性の獲得とその消失に必要な分子機構の理解は、生命科学において重要な課題である。本ワークショップでは、哺乳類の生殖細胞における潜在的全能性および全能性の獲得とその消失の分子機構について最近の話題を提供する。
3PW23 |
リピート病における神経変性の分子機構解明を目指して Elucidation that molecular mechanism of neurodegeneration in repeat diseases |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
塩田 倫史(岐阜薬科大学)、今野 歩(群馬大学) |
- リピート病はゲノム内の遺伝子に存在するCAG、CGGなどの3塩基の繰り返し配列が異常に伸長することによっておこる一群の遺伝性神経疾患である。翻訳領域内のCAGリピート配列の異常伸⻑を原因とする脊髄⼩脳失調症(SCA)1、2、3、6、7、17型などはCAGリピート配列にコードされたポリグルタミン鎖の異常伸⻑により、蛋⽩質の凝集を引き起こして神経変性を発症すると考えられている。⼀⽅で、⾮翻訳領域内のリピート配列の異常伸⻑を原因とするSCA8、10、31、36型、脆弱X関連振戦・失調症症候群(FXTAS)では、異常伸⻑リピートを持つRNAが細胞内に蓄積し、RNA結合蛋⽩質の異常を引き起こすことが示唆されている。また、近年、リピート配列を鋳型としたリピート関連性⾮AUG依存性翻訳(RAN translation)が起こることも発症要因のひとつと考えられている。しかしながら、その詳細な分子機構は明らかではない。本ワークショップではリピート病における神経変性の分子機構解明に関する最新の基礎研究を講演する。
3PW24 |
脂質と糖との間の隠れていたクロストーク Hidden crosstalk between lipids and sugars |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
花田 賢太郎(国立感染症研究所)、島野 仁(筑波大学) |
- 摂取しても細胞内で消費しきれなかった糖は脂肪酸へと代謝されて脂質が平常時の体内エネルギー保存物質となることは広く生物界で起こっている。また、本来サイトソル分子の糖が脂質と共有結合することで膜成分へと変化する例も生物界に普遍的にみられる。一方、脂質がインスリンシグナルを修飾することはよく知られている。このように密接な代謝関係にありながら、脂質が糖の代謝を直接・間接に制御しているのかという課題はそれぞれに専門性の異なる研究分野とされているためか世界的にもあまり注目されてこなかった。しかし、少し視座を上げてみると、脂質と糖との間にはヒトの生理・病理にも重要であろう精妙なやりとりがあることに気づかされる。本WSでは、グルコース含有脂質が哺乳動物生理に及ぼす機能も含め、脂質と糖との間の多様なクロストークを明らかにしつつある最近の研究を紹介するとともに、この古くて新しい基本的な生物学上の課題をあらためて検討して今後の展開を議論したい。
3PW27 |
古くて新しい脂溶性ビタミンの科学 A new era of fat-soluble vitamin research |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
上田 夏生(香川大学)、松浦 達也(鳥取大学) |
- 栄養学的に必須の微量有機化合物として定義される「ビタミン」は、発見以来100年以上の歴史を有するが、近年の健康志向の高まりを反映して、健康の維持・増進における役割が改めて注目されている。多価不飽和脂肪酸等のビタミン様化合物も同様であり、サプリメントとして身近な存在になっている。ビタミンは補酵素、情報伝達物質、抗酸化物質等として作用するが、ゲノム情報の蓄積やタンパク質の構造解析、微量成分の分析等の技術革新に伴い、分子機構の解明や新しい機能の発見が相次いでいる。本ワークショップでは、ビタミンA、D、E、Kの4種類の脂溶性ビタミンに加えて必須脂肪酸と関連バイオファクターに焦点を当て、それぞれについての最近のトピックスを紹介したい。これらの脂溶性物質は、構造・代謝・生物作用の点から広義の脂質分子に位置付けられる。これまで独立して研究されることが多かった脂溶性ビタミンと関連化合物を、脂質と一元的に理解することの意義についても考えたい。
4AW02 |
加齢関連疾患の発症と治療に関わるDNA損傷と細胞老化 DNA damages and cellular senescence relevant to aging-related disease development and effects of therapeutic treatment |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
吉岡 研一(国立がん研究センター)、日高 真純(福岡歯科大学) |
- がんを含む殆どの加齢関連疾患は、DNA損傷の蓄積と細胞の老化に伴って発症している。がんの場合、この背景でゲノム不安定性と変異が誘導され、これが発がん過程を促進していると考えられる。これらの疾患の発症機構を理解するためには、加齢に伴うDNA修復能の低下と損傷の蓄積、損傷応答と細胞老化、ゲノム不安定性と発がんの関係性を明確にし、さらに、それらの制御機構を解明することが極めて重要と考えられる。DNA損傷とその応答は、抗がん剤や放射線治療の作用機序、さらに、これらに対する耐性の形質獲得にも非常に重要である。しかし、現段階で、これらの機構には未解決な疑問が多い。本ワークショップでは、老化、加齢関連疾患(がんを中心として)、治療の視点から、DNA損傷とそれに対する応答機構を議論する。
4AW03 |
ライフサイエンスおよび創薬プロセスを支える共用基盤施設 Inter-community Facilities for Life Sciences and Drug Discovery Process |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
湯本 史明(高エネルギー加速器研究機構)、西村 善文(横浜市立大学) |
- 平成14年度から5年ずつ2期に亘って、タンパク3000、ターゲットタンパクプロジェクトが推進され、最先端のタンパク質構造解析環境が築き上げられた。これらの施設・装置を活用し、ライフサイエンス研究や創薬プロセスに寄与することを目的として、平成24年度から5年に亘り創薬等支援技術基盤プラットフォーム(PDIS)事業が実施された。本事業では単に構造を“解く”だけでなく、解いた構造を“使って”さらに創薬あるいは基礎科学研究を展開していくための基盤としての役割を担ってきた。本ワークショップではPDIS事業の中で高度化され、支援を行ってきた放射光X線、NMR、クライオ電子顕微鏡、更には化合物ライブラリーの施設からそれぞれの成果と課題について紹介すると共に、今後、益々発展が期待されているこれらの共用解析技術等を組み合わせた相関構造解析について議論したい。
4AW06 |
多様な臓器再生機構の解明~肝臓を対象とした基礎・臨床からのアプローチ Cracking the code for multiple modes of organ/tissue regeneration and their regulation: From a liver perspective in basic science and clinical applications |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
谷水 直樹(札幌医科大学)、伊藤 暢(東京大学) |
- 肝臓は高い再生能力を有することが古くギリシャ神話の時代から知られている。たとえ臓器の70%の組織が失われても、残存する細胞の増殖によって元のサイズ・機能を速やかに回復することができる。一方で、肝障害の種類・程度・期間などの状況に対応し、組織幹細胞からの細胞新生や、成熟細胞の脱分化、分化転換など、様々な様式での再生が誘導されることが明らかになっている。さらに、再生機構の理解に基づいて、慢性肝疾患から肝癌への進行の仕組みを明らかにし、再生能力の腑活化による治療法の開発など、臨床的な試みも進められている。近年、種々の臓器で上皮細胞の脱分化が組織幹細胞システムのバックアップシステムとして機能している事実が明らかとなってきた点を考慮すると、肝再生の多様性を理解することは、あらゆる臓器の再生の仕組みを統合的に理解することにつながる。本ワークショップでは、肝臓を対象とした、発生・再生機構および疾患の機序の理解とその臨床応用の可能性について最新の研究成果を発表いただき、多様な臓器再生機構について議論する場としたい。
4AW07 |
環境変化とそれに応答する細胞内変化の再発見 Re-discovery of cellular changes in response to environmental change |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
木村 洋子(静岡大学)、白土 明子(金沢大学) |
- 生物には環境変化に応答して恒常性を維持する仕組みがあり、物理的および化学的なストレスを受けた細胞は、遺伝子発現や酵素活性あるいは内部構造を変化させて、これに対応する。このワークショップでは、環境変化への細胞の振る舞いについて、これまでに調べられてこなかった細胞内構造や、機能の変化を扱った研究に着目する。例えば、細胞内構造体による磁場応答、傷創や熱ストレスを受けた細胞内構造変化と環境適応について新たな仕組みがわかってきた。感染免疫の分野では、ウイルス感染で宿主細胞に作られる構造体と免疫応答の関係や、宿主因子による細菌の毒性調節が調べられている。また、植物では器官の屈曲を感知した細胞が細胞骨格系を利用して屈曲を抑制するという仕組みの存在が見出された。異なる種類の生物、哺乳類、植物、細菌、酵母での研究が紹介され、それぞれの分野で展開が期待される話題を提供する。
4AW08 |
食欲・食嗜好の分子・神経基盤 Molecular and neural basis for appetite and food preferences |
J/E |
オーガナイザー: |
佐々木 努(群馬大学)、箕越 靖彦(生理学研究所) |
- 世界的な健康リスクの4番目の危険因子は肥満であり、過食はその一因である。古来より医食同源と言われ、健康維持には適切な食行動が重要だが、食行動を制御する分子・神経基盤の全容は未解明である。食行動には先天的・後天的な両面があり、複雑な決断プロセスを含むため、領域横断的・学際的アプローチによる研究が必要である。そこで本ワークショップでは、専門領域の異なる演者らが、食行動の調節に関与する6つの要因(味覚、嗅覚、内臓感覚、代謝シグナル、恒常的摂食調節、報酬系)と、食行動の制御メカニズムについて最新の知見を講演する。摂食調節研究の学際性と最先端を示し、ConBio2017に集まる様々な領域の研究者の興味を喚起し、研究領域の活性化を試みる。そして、食欲・食嗜好の分子・神経基盤解明を進め、健康的な食生活をおくりやすくすることにつなげ、国策である健康寿命の延伸に貢献することを最終目標とする。
4AW09 |
分子共生ーRNAタンパク質相互作用による機能創発 Molecular Symbiosis - functional emergence via RNA-protein interaction |
E |
オーガナイザー: |
廣瀬 哲郎(北海道大学)、中川 真一(北海道大学) |
- 機能性のRNA分子の多くはタンパク質と複合体を形成することで機能を発揮している。興味深いことに、多くの場合その相互作用は一方的なものではなく、あたかも共生する生物のように、お互いの機能を利用しながら単独では為し得ない分子機能を可能にしている。例えばmiRNAはAgoタンパク質によって分解から保護されており、AgoはmiRNAを取り込むことで初めて標的遺伝子への結合能を獲得する。Neat1は単独では極めて不安定なRNAであるが、プリオン様ドメインを持つRNA結合蛋白質群と複合体を形成することで安定化され、それらの蛋白質群はNeat1の力を借りて規則正しいcore-shell構造を持つ核内構造体パラスペックルを形成する。本ワークショップではRNAとタンパク質の相互作用を「分子共生」として捉え、多様なRNA―タンパク質複合体の機能を分子・細胞・個体レベルで概観することで、進化の過程で新たな分子機能がいかにして創発されてきたのかを議論する。
4AW10 |
ギャップジャンクションワークショップ
-コネキシン・イネキシン・パネキシン:構造から発生、病理まで- Gap Junction workshop |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
渡邉 正勝(大阪大学)、大嶋 篤典(名古屋大学) |
- ギャップジャンクションは細胞間をつなぐ巨大チャネル分子で、低分子化合物の輸送を仲介しているが、分子量1000Da前後までの分子を選択性低く通すという性質から、機能解明が困難な分子とされている。ギャップジャンクションは隣接する細胞の細胞膜に形成されるヘミチャネルのドッキングにより形成される。その構成分子として脊椎動物のコネキシン、無脊椎動物のイネキシンが知られているが、この両者のアミノ酸配列に相同性は見られない。また、脊椎動物にはイネキシンのオ-ソログとしてパネキシンが存在するが、生体内においてパネキシンはギャップ結合を形成せず、単一膜チャネルとして機能すると考えられている。つまり、脊椎動物のコネキシンと無脊椎動物のイネキシンは機能的ホモログであり、脊椎動物パネキシンと無脊椎動物イネキシンは進化的ホモログである。本ワークショップでは、ギャップジャンクションファミリータンパク質の持つ様々な機能に関する最新の研究について、構造学、発生学、病理学など様々な観点から議論したい。
4AW12 |
呼吸器生命科学のランドスケープ-分子生物学・発生生物学・再生医学の融合- Landscape of respiratory system life science: fusion of molecular, developmental biology and regenerative medicines |
J |
オーガナイザー: |
首藤 剛(熊本大学)、森本 充(理化学研究所) |
- 呼吸器は近年の分子生物学、細胞生物学、発生生物学の発展により急激に理解が進んだ複雑臓器の一つである。高効率なガス交換を達成する気管支の繰り返し分岐構造、肺胞のスポンジ構造、そこに配置された多彩な分化細胞の形成は発生生物学による解読が進んでいる。呼吸で生じる物理刺激への反応は神経科学で理解されようとしている。損傷への応答や病変は分子生物学、細胞生物学によってメカニズムが解明されつつある。さらにiPS細胞技術の発明は、一つの幹細胞からの呼吸器の再構築する夢に現実味をあたえ、さらに新薬開発の新しい選択肢になろうとしている。本ワークショップでは、上記分野で活躍中の新進気鋭の男女の若手研究者にご参集頂き、最新の呼吸器生命科学研究を俯瞰し、異分野融合による新たな呼吸器疾患治療薬創出のための議論を深めることを目的とする。
4AW13 |
ユビキチン・コード:細胞内の最も難解な暗号を読む Ubiquitin code: most complicated protein modification in the cell |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
佐伯 泰(東京都医学総合研究所)、村田 茂穂(東京大学) |
- ユビキチン化は“普遍性”と“多様性”を併せもつ細胞内のタンパク質翻訳後修飾である。ヒトゲノムにはユビキチンリガーゼが約500種類、脱ユビキチン化酵素が約90種類コードされ、ユビキチン化により制御されるタンパク質はヒトでは数百種類に及ぶ(普遍性)。一方、タンパク質に付加されるユビキチン鎖は、ユビキチンのどのアミノ基(7カ所のLys残基とN末端)を介して連結するかにより異なる立体構造をとり、それぞれが標的タンパク質に対して異なる制御シグナルとして働く(多様性)。ユビキチン・コードと称されるこの修飾の規模の大きさゆえ、これまでの精力的な研究にも関わらず、ユビキチンの細胞機能にはいまだ多くの謎が残されており、重要な発見が後を絶たない。本ワークショップでは、こういったユビキチン研究の最新の知見を、最前線で活躍する若手を含む第一線の研究者に紹介してもらい、ユビキチン生物学の今後の展開を議論する。
4AW15 |
ライフイベントを紡ぐ栄養環境への適応機構 Weaving animal life events by adaptive mechanisms to shifting nutritional environments |
J |
オーガナイザー: |
上村 匡(京都大学)、深水 昭吉(筑波大学) |
- 幼い個体の成長、性成熟を経た次世代の誕生、そして老化は、ヒトを含む全ての動物種の一生に必然の過程である。絶えず変化する栄養環境にさらされる動物が、どのようなメカニズムを働かせて適応しているのかを、モデル生物・非モデル生物を駆使し、マルチオミックスデータをもとに議論する。まず、幼い個体の健やかな成長に欠かせない、栄養バランスの変化に柔軟に対応する全身性システムに着目する。栄養素の中でも、最近発見されたアミノ酸の取り込みを調節する細胞間コミュニケーション機構と、個体の一生を越えて進化にも貢献する脂肪酸代謝を利用した適応機構を議論したい。次に、栄養シグナルを感知して性成熟の進行を調節する神経内分泌系の作用機序に注目して議論するとともに、摂取した栄養が代謝されてメチル化情報に変換された際の寿命と老化に果たす役割を紹介したい。さらに、食糧が枯渇する季節を乗り切るために獲得された冬眠時の栄養活用の実体について議論したい。
4AW16 |
原核細胞ゲノム動態の新たな基礎研究の展開 Frontier research on the genome dynamics of prokaryotic cells |
J/E |
オーガナイザー: |
片山 勉(九州大学)、石野 良純(九州大学) |
- 原核細胞ゲノムの基礎研究は、地球上の細胞生命活動の基本原理を明らかにしてきた。そればかりでなく、遺伝子工学やゲノム編集技術などの技術発展の端緒もまた、原核細胞のDNA動態やファージ耐性の基礎研究であったことも事実である。近年は、分子生物学、生化学、細胞生物学、構造生物学、情報生物学、理論生物学などの融合研究が活発に進められ、また、DNA因子、RNA因子、タンパク質因子のゲノムワイドな分子動態も新たに解明されつつある。さらにこのような研究成果を基に、病原微生物から真核細胞までを含む多様な生物種についての共通性や多様性を新たに示唆する研究の展開が始まっている。本ワークショップでは、原核細胞ゲノムの分子動態の最先端研究に焦点を当て、若手研究者らによる新規性の高い基礎研究について議論する。
4AW17 |
エンドサイト―シス生物学の新展開 New Vistas in Biology of Endocytosis: Molecules and Superresolution |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
五十嵐 道弘(新潟大学)、高森 茂雄(同志社大学) |
- エンドサイト―シスは細胞の外界と細胞をつなぐシグナル伝達の要である。最近、この現象の生化学的機構が非常に多数、わかってきた。特にクラスリン依存性のみならず、クラスリン非依存性のエンドサイトーシスも分子機構が解明されつつあり、意義が非常に明確となった。分子機構はプロテオミクスや分子修飾の観点からも急速の進歩がある。また超解像度顕微鏡や新しい分子プローブの開発は、エンドサイトーシスの直接可視化によるエンドサイトーシスの部位局在や速度、位置情報から、細胞の機能との関連性を明らかに出来つつある。今回のワークショップでは、これらの領域からこの1年間にエポックメイキングな発表を行った研究者を集めて、エンドサイトーシスの新しい方向性を聴衆と議論したい。
4AW24 |
生活習慣病において分子・細胞・組織・全身連携が司る代謝変容の病態意義 The metabolic crosstalk at the molecular, cellular and systemic levels that drives non-communicable diseases |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
尾池 雄一(熊本大学)、真鍋 一郎(千葉大学) |
- 肥満や糖尿病に代表される全身の代謝異常は生活習慣病とがんの主要なリスクである。最近の研究は、細胞代謝の新たな意義を急速に明らかにし、代謝の制御機構が従来考えられていた以上に、細胞・組織の機能制御機構と複雑に連結していることが示唆されている。例えば、免疫細胞の様々な活性化は、それぞれに特有の細胞代謝の変化によって支えられている。がん細胞におけるWarburg効果に代表される細胞代謝の変化が、がんの増殖に分かちがたく結びついていることはよく知られている。しかし、一方で、肥満等による全身代謝の異常がどのように細胞・組織レベルでの代謝機能を変調させ、病態をもたらすのか、その機序はまだよく分かっていない。本ワークショップでは、全身代謝と細胞代謝の両者のメカニズムを結びつけ、慢性疾患の基盤にある新たな代謝変容の理解を推し進めることを目標として、議論を深めたい。
4PW05 |
疾患バイオマーカー研究の新潮流 New stream of disease biomarker studies |
J/E |
オーガナイザー: |
越川 直彦(神奈川県立がんセンター)、神沼 修(山梨大学) |
- バイオマーカーは、種々の疾患における発症、進行度および治癒経過を反映し、またその治療戦略の決定根拠となりうる客観的な指標である。それは、体温や血圧などの基本的な生理学的パラメーターから、最先端の分析技術を用いてはじめて同定される分子指標に至るまで、さまざまな形で提供される。特に、予後不良な重症疾患の早期診断においてその重要性は際だっているが、近年、薬物治療における薬理効果や副作用を予見できるバイオマーカーも注目されつつある。バイオマーカーはこれまで、個々の疾患を掘り下げる方向で研究が進められてきたが、本ワークショップでは、診断、病態形成機構および治療応答性に関するさまざまなバイオマーカー研究を、敢えて腫瘍、免疫、炎症、ウィルス感染症等の疾患および目的横断的に取り上げ、その共通性と特異的なアプローチの特性を俯瞰することを通じて、バイオマーカーの本質的意義を見いだす一助となればと考えている。それにより、細分化・専門化によって失われつつあるグローバルな観点から、疾患バイオマーカーの実用的な応用法を切り開いてゆきたい。
4PW07 |
多角的解析からみえてくるGTPの新たな機能と人疾患への治療戦略 Multidisciplinary Approach Reveals Novel Function of GTP Energy and Strategy to Cure Human Diseases |
J/E |
LOD |
オーガナイザー: |
佐々木 敦朗(シンシナティ大学)、竹内 恒(産業技術総合研究所) |
- 細胞はエネルギー状態を把握し、細胞機能を柔軟に変化させる。このエネルギー制御機構の破綻は癌や代謝疾患を引き起こす。 GTP(Guanosine triphosphate)は、DNAとRNAの材料であり、細胞同化作用を駆動するエネルギー分子である。近年の研究から、GTPの合成は疾患でダイナミックに変化していること、さらにGTPエネルギーを検知する仕組みが明らかになりつつある。本ワークショップでは、 様々な専門分野の研究者を一堂に会し、GTPを起点とした新たな細胞機能制御システムへの包括的理解を目指す。原核生物から哺乳細胞の分野の垣根を越え、構造生物学やオミックス解析、進化論的解析、さらには細胞内でのエネルギー状態の可視化を目指すタンパク質工学的研究まで、広い領域を統合することで、GTPの持つ新たな機能を捉える。GTPを起点とした人疾患への新たな治療戦略を会場でディスカッションする。
4PW10 |
細胞膜分子によるatypicalな細胞応答 Atypical cellular responses mediated by cell surface proteins |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
山内 淳司(東京薬科大学)、加藤 裕教(京都大学) |
- 細胞膜に存在する受容体や接着分子、イオンチャネルなどは、細胞外からの様々な刺激に応じてそれぞれに特異的な細胞応答を引き起こす。またそれらの多くは、様々な組織における疾患との関連性が示されており、創薬のターゲットとしてもこれまでに数多くの開発対象となってきている。このような細胞膜分子の基本的な分子メカニズムやその役割の理解が大きく進み、その重要性が示されてきた。その一方で、顕微鏡などの技術の進歩や新しい実験系の開発などにより、これまでの報告によって明らかにされてきた細胞膜分子による典型的な細胞応答とは違った細胞応答(atypicalな細胞応答)に関する新たな発見が、最近になって次々と示されている。本ワークショップでは、様々な分野において細胞膜分子の研究を最前線で進めている方々を演者に選び、これまでの研究では見えてこなかった細胞膜分子による細胞応答の一端を、最新の研究成果をもとに議論していきたいと考えている。
4PW15 |
胚と配偶子の転写制御機構 Genome activation of zygote and gamete |
J/E |
オーガナイザー: |
山縣 一夫(近畿大学)、佐藤 優子(東京工業大学) |
- 有性生殖において、受精後しばらくの間は胚ゲノムからの転写活性がない状態で発生が進む。この間は卵子に蓄積された母性因子(RNA、タンパク質)により細胞機能が営まれている。そして母性因子が減少していくと、胚ゲノムからの大規模な転写活性化がおこる。この胚性ゲノムの活性化は、古くから知られた現象であるが、この間の転写活性がどのように制御されているのか未だ不明な部分が多い。近年発展が目覚ましい少数細胞を対象とした転写プロファイリングやエピゲノム解析、また新しい顕微鏡技術により、ノンコーディングRNAやエピゲノム修飾、核内構造が胚ゲノム活性化に重要な役割を担っていることが示唆されてきている。本ワークショップでは、マウス・ゼブラフィッシュ・アフリカツメガエルを中心に、胚ゲノム転写活性化機構についての最新の知見を集めて議論し、その特殊性および普遍性を浮き彫りにする。
4PW16 |
細胞個性を生み出す翻訳制御の「妙」 Elegant strategies of translational control that establish cell identity |
J |
オーガナイザー: |
藤原 俊伸(近畿大学)、浅原 弘嗣(東京医科歯科大学) |
- 高等生物の複雑で精巧な形態・機能を司る細胞個性は、mRNAがもたらす多様で緻密な遺伝子発現情報により規定される。そして、リボソームとその機能調節に関わるRNA結合タンパク質によってmRNA上に形成される「高次翻訳複合体」は、遺伝子情報の時空間的・量的な発現調整の制御装置として細胞の運命決定に大きく寄与する。したがって、この「高次翻訳複合体」の分子基盤および、多様な細胞シグナルに呼応してどのようにmRNA代謝およびタンパク質合成制御を行うかについて理解を深めることが急務である。
本ワークショップでは、遺伝子発現の制御記憶装置ともいえる高次複合体がもたらす翻訳制御の「妙」にアプローチする研究を紹介したい。
4PW24 |
必須微量元素“セレン”の生物学と医学―発見から200年を迎えて Essential Micronutrient “Selenium” in Biology and Medicine- 200 years from Discovery |
J |
LOD |
オーガナイザー: |
斎藤 芳郎(同志社大学)、今井 浩孝(北里大学) |
- 必須微量元素である“セレン”は、発見から200年を迎えた。これまで、セレンの毒性メカニズムや必須微量元素としての役割、特に酸化ストレス防御における重要性が明らかとなってきた。セレンは、セレノシステイン(システインの硫黄がセレンに置き換わったアミノ酸)という形でタンパク質中に存在する。セレノシステインは、翻訳されうる21番目のアミノ酸と呼ばれ、終始コドンの一つUGAでコードされ、ユニークな機構により生合成される。セレン含有タンパク質は、活性酸素の除去やレドックス制御に中心的な役割を果たしており、その破綻は重篤な障害を生じる。一方最近では、過剰に増加したセレン含有タンパク質が疾患の発症・進展に深く関わることも明らかとなり、糖尿病などの代謝性疾患の治療標的であることも明らかとなってきた。本ワークショップでは、セレンの代謝、およびセレン含有タンパク質の合成とその酵素機能に関する研究で活躍する研究者が、最先端の研究を紹介し、セレンの生物学に関する最新の進歩について議論する。さらに、セレン含有タンパク質と疾患の関連、そして医学への応用について討論する。