大会長ご挨拶

第68回日本細胞生物学会大会
大会長 松田 道行
(京都大学)

 

 第68回日本細胞生物学会大会を、2016年6月15日(水)より6月17日(金)の3日間の日程で、京都市「京都テルサ」で開催いたします。昨年に引き続き、学生、院生の参加費は無料です(一度ただにしたら二度と有料にはできないよねと、前大会長に恨み言もでるのですが)。有料・無料分け隔てなく歓迎しますので、みなさま奮ってご参加ください。

 本大会はキャッチフレーズにBiologist Meets Chemistを謳い、日本ケミカルバイオロジー学会との合同として開催されます。細胞生物学会主催のPlenary lectureにはStanford大学システム生物学部のTobias Meyer博士を、特別講演には大阪大学の長田重一先生をお招きしました。Tobias Meyer博士は、ケミカルバイオロジーを駆使した細胞生物学のトップランナーです。長田重一先生はアポトーシスと言えば、この先生を於いてほかにはありません。いつもの熱い講演をご期待ください。

 細胞生物学の基本は、細胞を観察することにあります。“なんか面白いのが見える”というワクワク感こそが研究の推進力です。しかし、細胞を観察するだけでは現象の背景にある分子機構の解明には至りません。いわゆるハイインパクト雑誌にも採択されません。”Descriptive (= without mechanical insight)”、有名雑誌が論文をリジェクトする時の殺し文句です。ですから、ねつ造寸止めぐらいのきわどさでも、何かの分子に重要性を持たせた論文にせざるをえないのです。しかし、分子の過剰発現やノックアウトを使うこれまでの手法にはそろそろ限界がきています。ここにブレークスルーをもたらしてくれると期待されるのがケミカルバイオロジーです。分子を操作したり、見えなかった分子や現象を可視化したりして、細胞の観察結果に分子の裏付けを与える夢のツールをケミカルバイオロジーが細胞生物学者に提供してくれるでしょう。一方、ケミカルバイオロジー側も問題を抱えています。“何かエキサイティングな観察結果”をもたらす化合物・方法論でなければ高い評価を得られないのです。でも、何がエキサイティングな観察結果かは生物学の人間が判断しますから、細胞生物学者の知恵が必要です。このような背景のもと、本大会はいま流行の出会いの場を作ることを目標にしました。もっとも、両大会ともこれまでとほぼ同じように運営されますから、プログラムを見て興味がある話題のときに、隣の会場に足を運んで面白そうな情報を得てくる、という気楽さで参加してもらえたらと思います。

 さて、今回は京都学園大のイメージキャラ太秦その嬢に細胞生物学会の宣伝を手伝ってもらうことにしました。京都は知る人ぞ知る漫画の街です。バスにも地下鉄にも萌えキャラがあふれています。京都市の広報誌も漫画です。京都国際漫画ミュージーアムもありますし、有名な漫画家が学長を務める大学もあります。今年の大学院リトリートのメインゲストは漫画家でした。学会のあとにでも(“あと”ですよ!)、京都を楽しんでいただければと思います。

 さて、会場です。京都には有名な国際会議場もあるのですが、現在の細胞生物学会には、そんなところで大会をやるほどお金がありません。政府がなんと言おうとも、基礎生物学に来ている研究費が大幅に減少しているというのは最前線で戦う研究者の異口同音の感想です。従って、バイオ系の会社も金回りはよくはなく、スポンサーの財布も厳しいのです。幸いなことに、京都駅から走れば5分、歩いても15分というとても便利な土地にある京都テルサ(京都勤労者総合福祉センター)を会場として確保できました。すこし手狭ですが、その分“お互いの顔が見える” 細胞生物学会を楽しんでいただけると思います。

 京都はいま外国人観光客であふれています。高級ホテルも賑わっていますが、隣の部屋と襖1枚で仕切られているという町屋の宿も繁盛しています。研究室の仲間と宿坊に泊まって修学旅行気分に浸るのもいいかもしれません。みなさんの財布に合わせてお泊りいただけると思います。鴨川の涼風を味わいに水無月の京都へぜひお越しください。

 

 



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