BMB2015(第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
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ワークショップ

ワークショップ初日(PDF) ワークショップ2日目(PDF) ワークショップ3日目(PDF) ワークショップ4日目(PDF)

ワークショップ テーマ名 一覧

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セッション番号について:
開催日(午後開催の場合+(P))+ワークショップ(W)+会場
(例)2W13-p:第2日目・午後・ワークショップ・第13会場

12月1日(火) 9:00-11:30

セッション
番号
会場テーマ名
1W5第5会場ドラッグ・リポジショニングの基盤技術と実践
1W6第6会場分子生物学と構造生命科学による創薬への挑戦
1W7第7会場硫化水素(H2S)とポリサルファイド(H2Sn)のシグナル分子としての機能
1W8第8会場アミロイド再考: これまでとこれから
1W9第9会場最新の生物毒の多様性がおもしろい!
~その構造と機能、進化そして利用について~
1W10第10会場ヘリカルリピートタンパク質の構造特性と細胞内機能
1W11第11会場がん治療抵抗性の解明にむけた新しいアプローチ
1W12第12会場周期的組織再生と体性幹細胞分化およびそれを制御する微小環境における分子機構
1W13第13会場シングルセル生物学
1W16第16会場鉄硫黄タンパク質が織りなす多彩な機能
1W19第19会場プロテオミクス なう&beyond
1W20第20会場細胞のふるまいの制御から解き明かす大脳皮質形成機構
1W21第21会場JSTによる科学コミュニケーション研修プログラム(基礎、メディア、対話力)
1W22第22会場健康度を最適化する成育環境と個体の干渉原理
1W24第24会場RNA機能を制御する酵素・複合体再考

12月1日(火) 14:00-16:30

セッション
番号
会場テーマ名
1W2-p第2会場染色体の機能・構築原理
1W3-p第3会場多機能オルガネラ・ミトコンドリアの動的振る舞いによる生命機能制御
1W4-p第4会場真核生物における細胞分化と遺伝子発現の連携した制御メカニズム
1W5-p第5会場稀少疾患の分子病態メカニズム
1W6-p第6会場異種間比較が解き明かす生命システムの普遍性と多様性
1W7-p第7会場NADとFADの分子生物学:水溶性ビタミンの多面的理解に向けて
1W8-p第8会場生理活性物質ポリアミンから疾病と健康を考える
1W9-p第9会場亜鉛シグナリング
1W10-p第10会場性染色体とエピジェネティクス
1W11-p第11会場ユビキチンシステムが切り開く新たな生命現象
1W12-p第12会場ゲノムに組み込まれたウイルス:その機能と進化
1W13-p第13会場実用化を見据えた様々な生体関連分子工学の基礎および応用
1W14-p第14会場Liquid biopsyの新展開
1W15-p第15会場遺伝子治療の復活
1W16-p第16会場プロテオスタシス制御と疾患
1W19-p第19会場多様性・特異性を基盤にした新しい微生物機能とその応用
1W20-p第20会場神経細胞の分化と回路形成を司る新たな遺伝子発現制御メカニズム
1W21-p第21会場In situ構造生物学による真核細胞内蛋白質の動態研究の現状と展望
1W22-p第22会場RNA病
1W24-p第24会場生命への道程:自己集合・自己組織化による秩序形成と創発

12月2日(水) 9:00-11:30

セッション
番号
会場テーマ名
2W5第5会場進化エピジェネティクス: エピジェネティックな状態の次世代への伝達から考える進化のしくみ
2W6第6会場酸化ストレスの発生と制御:発がんと老化の抑制をめざして
2W7第7会場膜輸送体学の「再統合」~分子レベルから疾患への橋渡しのために
2W8第8会場古くて新しい糖代謝経路研究の最前線
2W9第9会場小型魚類解体新書
2W10第10会場食品科学:食品の潜在能力を科学し、活用する
2W11第11会場細胞競合 ー その本質と生理的意義に迫る
2W12第12会場全能性獲得の分子機構の理解へ向けて
2W13第13会場非B型DNAの構造・生物学的意義とその生体制御への応用
2W16第16会場細胞機能を解析し創る新技術:1分子から時間空間制御まで
2W19第19会場老化の分子メカニズムと関連する老年疾患
2W20第20会場複製フォーク:多様なDNAトランスアクションのプラットフォーム
2W22第22会場複雑系システム生命科学の現在
2W24第24会場フォスタグ技術による神経科学へのアプローチ ~タンパク質リン酸化研究の新潮流~
2W26第26会場「5-アミノレブリン酸:その多様な生理機能と農学から医学までの応用」
2W27第27会場ライブイメージングから迫る植物科学

12月2日(水) 14:00-16:30

セッション
番号
会場テーマ名
2W2-p第2会場「NADPH oxidaseによる活性酸素種の積極的生成と動物・植物・菌類の高次生命機能」
2W3-p第3会場生命を司る少数分子のふるまい
2W4-p第4会場生活習慣病のバイオマーカー研究ー原因究明から治療標的の同定まで
2W5-p第5会場細胞膜・膜輸送から解明するアルツハイマー病と治療戦略
2W6-p第6会場疾患の治療を指向した神経糖鎖生物学
2W7-p第7会場呼吸鎖複合体とATP合成の新描像
2W8-p第8会場脳内免疫と疾患 -神経科学のオフェンス研究からディフェンス研究へ-
2W9-p第9会場転写因子による細胞分化・増殖制御
2W10-p第10会場植物エピゲノム研究の最前線
2W11-p第11会場生体膜ダイナミクスと脂質
2W12-p第12会場情報共有型再生医療研究の夜明け
2W13-p第13会場深化するNotchシグナル研究-理解され始めたコンテクストに依存するシグナル制御の分子基盤
2W15-p第15会場長鎖非コードRNAのフロンティア:生化学、分子生物学、医学からのアプローチ
2W16-p第16会場マルチオミックス統合解析の新機軸
2W19-p第19会場ギャップジャンクション:コネキシン・イネキシン・パネキシン
-構造から発生・病理まで-
2W20-p第20会場DGシグナリングと糖尿病関連疾患
2W22-p第22会場「遺伝情報のセントラルドグマに人工塩基・人工アミノ酸を組み込む」
2W24-p第24会場発生プログラムの時空間制御を担うカルシウム振動シグナルの新展開
2W26-p第26会場医科学へ進歩し続けるトランスグルタミナーゼ研究
2W27-p第27会場周皮細胞(ペリサイト)の病態生理学的重要性

12月3日(木) 9:00-11:30

セッション
番号
会場テーマ名
3W5第5会場生体分子ホモキラリティーのパラダイムシフト - D-アミノ酸研究の新展開
3W6第6会場脂質シグナリングとその破綻がもたらす病態の理解
3W7第7会場構造分子生物学・生化学の進展
3W8第8会場オモロイ生き物の分子生物学
3W9第9会場POKファミリーが司る組織分化の複雑性 ~転写抑制とクロマチン制御~
3W10第10会場血管・代謝異常の動的変化を探るエピゲノミクス
3W11第11会場RNA顆粒のバイオロジーとダイナミクス ~細胞運命決定機構と疾患研究の最前線~
3W12第12会場DNA複製開始を制御する高次複合体ダイナミクス:多様性と普遍性
3W13第13会場栄養・メタボライトと遺伝子発現調節~ニュートリゲノミクスの最前線
3W16第16会場放射線生物影響の課題に挑む分子生物学研究の力
3W19第19会場高次生命機能を支えるメンブレントラフィック
3W20第20会場Hippoシグナル伝達経路が制御する多様な細胞応答
3W22第22会場アミノ酸研究の新展開:細胞シグナルとしての動的制御機構
3W24第24会場データベース生物学: 公共データの再利用による新しい研究スタイルのすすめ
3W26第26会場病原微生物の増殖制御として働く宿主細胞オルガネラ
3W27第27会場新農薬を志向したケミカルバイオロジー

12月3日(木) 14:00-16:30

セッション
番号
会場テーマ名
3W2-p第2会場多様なDNA損傷応答の統合制御機構2015 ~ゲノム不安定性の病態解明研究~
3W3-p第3会場生体反応システムの頑強性と進化可能性
3W4-p第4会場生活習慣病の基盤にある代謝・免疫・老化クロストーク
3W5-p第5会場神経変性疾患の原因を遺伝子レベルからアプローチする
3W6-p第6会場生体機能創出基盤としての細胞間接着・骨格動態
3W7-p第7会場統合化に向けて加速する脂質生物学の現状と展望
3W8-p第8会場最近の技術から見えてきた細胞膜受容体の新しい側面
3W9-p第9会場分子機序に基づいた難治性呼吸器疾患治療の新展開
3W10-p第10会場分泌過程の修飾メカニズムとそのダイナミズム
3W11-p第11会場核内非コードRNA アーキテクチャと生体機能
3W12-p第12会場Nutri-developmental biolog :栄養に応じた発生調節の分子メカニズムの理解に向けて
3W13-p第13会場最先端の光イメージング技術と医学・生物学への新たな展開
3W14-p第14会場がんとワールブルグ効果
3W16-p第16会場糖鎖を利用した、異物と宿主の生存戦略
3W19-p第19会場生命システム原材料の起源と進化:遺伝子編成の基本原理は何か?
‐オペロン説を超えて‐
3W20-p第20会場「生殖」から読み解く哺乳類の生命現象
3W22-p第22会場トランスオミクスへ向けた定量生物学
3w24-p第24会場細胞運命変換
3W26-p第26会場転写後制御を標的とした次世代創薬プラットフォーム
3w27-p第27会場最先端技術を用いた局所クロマチン構造の包括的理解の試み

12月4日(金) 9:00-11:30

セッション
番号
会場テーマ名
4W5第5会場虫の会(まじめ版)2 昆虫学のこれから
4W6第6会場NAD+-poly(ADP-ribose)代謝を標的とした創薬研究の新展開ー基礎から臨床応用までー
4W7第7会場シリア・中心体系が織りなす生体システムのダイナミズム
4W8第8会場既成概念を超えるステロイド
4W9第9会場ラジカル酵素の動作原理の解明―その特異性を支配する因子
4W10第10会場感染を制御せよ!微生物と宿主の“覇権争い”生物学
4W11第11会場TORの実像に迫れ!
4W12第12会場認知症に対する次世代創薬・診断に向けた展開
4W13第13会場疾患とリンクする糖鎖―新しい研究分野からの挑戦
4W16第16会場はたらく細胞内共生体
4W19第19会場tRNAワールド-翻訳系概念の新たな創造
4W20第20会場受精を支える分子とそれを取り巻く分子環境
4W21第21会場最先端のX線イメージング技術が拓く生命科学研究の新しい世界
4W26第26会場ゲノムストレス応答における普遍性と多様性の相互転換
4W27第27会場生物時計と外部環境の統合機構

12月4日(金) 14:00-16:30

セッション
番号
会場テーマ名
4W2-p第2会場クロマチン構造の階層的変換によるゲノム機能制御メカニズム
4W3-p第3会場再生と破綻を制御する新しい血管生物学
4W4-p第4会場分子生物学の新技術から捉えた「生老病死」の最前線
4W5-p第5会場環境応答とエピジェネティクス
4W6-p第6会場ホスファターゼ研究のカティングエッジ:メディカルイノベーションへの橋渡しを目指して
4W7-p第7会場小胞体ストレス応答による生体内恒常性維持:臓器連関の新展開
4W8-p第8会場生体金属の最前線
4W10-p第10会場RNA制御のケミカルバイオロジー
4W11-p第11会場植物成長の可塑性・頑強性とその調和の制御機構
4W12-p第12会場個別化・予防医療での新たなパラダイムの創出
-健康・医療ビッグデータとスーパーコンピュータがもたらすもの-
4W13-p第13会場宇宙における生命の起源と進化:偶然と必然
4W15-p第15会場低酸素バイオロジーの最前線;細胞機能を制御する低酸素シグナル
4W16-p第16会場シグナル伝達を制御する糖・糖鎖
4W19-p第19会場筋生物学の最前線~疾患克服に向けた統合的理解~
4W20-p第20会場今こそ微生物の分子生物学・生化学を
4W21-p第21会場寄生、共生が駆動する多様な生物進化
4W26-p第26会場産業応用を指向した細胞の操作・計測技術の最先端
4W27-p第27会場mRNA分解の機能破綻がもたらす多様な疾患病態


ワークショップ概要 一覧

1W512月1日(火) 9:00-11:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

ドラッグ・リポジショニングの基盤技術と実践

オーガナイザー: 夏目 徹(産業技術総合研究所)

最近発売される新薬の数が減少している。この主な原因は、予想外の副作用が発生し臨床試験が失敗することである。そこで最近注目されているのが、ヒトでの安全性が確認されている既承認薬の作用分子や作用機構を最新の研究手法を用いて網羅的に解析することにより新しい薬理効果を発見し、その既承認薬を別の疾患治療薬として開発するドラッグ・リポジショニング(DR)である。DRの利点は、既に臨床で使われている医薬品なので、臨床試験で予想外の副作用が発生し開発が失敗する可能性が少ないことや、既にあるデータを利用出来るので、開発にかかる時間とコストを削減できることである。言い換えれば、早く安く確実に安全な医薬品を患者さんに届けられるのが、DRの利点である。本シンポジウムでは、DRに関する最新の研究手法、DRに貢献する情報科学、疾患情報を利用したDR、DRに基づいた臨床研究、DRに関する規制科学などを紹介する。


1W612月1日(火) 9:00-11:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

分子生物学と構造生命科学による創薬への挑戦

オーガナイザー: 由良 敬(お茶の水女子大学) / 千田 俊哉(物質構造科学研究所)

「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」(以下PDIS。平成24~28年度)は、従来の構造生物学分野の国家プロジェクトの成果を継承・発展させ、創薬プロセス等に活用可能な技術基盤の整備と積極的な外部開放(共用)等を行うことで、創薬・医療技術シーズ等を着実かつ迅速に医薬品等に結び付ける革新的プロセスの実現を目的とする。このプロジェクトの特徴は、日本国内で創薬等につながる可能性がある基礎生物学研究を、無償で支援するところにある。支援にはさまざまな方法がありえることから、PDISは解析拠点(タンパク質の構造解析)、制御拠点(低分子スクリーニング)および情報拠点(情報解析)の3拠点から構成されている。さまざまな研究支援申請に対して一番適確な拠点が対応し、時には共同研究として依頼研究を加速してきた。そこで本ワークショップでは、この活動で得られた成果を紹介するとともに、分子生物学分野のより多くの研究者にPDISの活動を知っていただき、PDISの利用を促し、日本の分子生物学と構造生物学が垣根なく協力し、構造生命科学が発展する環境の実現をはかりたい。


1W712月1日(火) 9:00-11:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

硫化水素(H2S)とポリサルファイド(H2Sn)のシグナル分子としての機能

オーガナイザー: 木村 英雄(国立精神・神経医療研究センター / 永原 則之(日本医科大学))

20年ほど前は毒ガスとしてしか認識されなかった硫化水素(H2S)が、神経伝達調節、血圧調節、虚血再還流障害や酸化ストレスからの細胞保護、抗炎症、血管新生、酸素センサーなど、様々な機能を持つ生理活性物質であることが明らかとなった。H2Sの生産酵素として、シスタチオニンベータシンテース、シスタチオニンガンマリアーゼ、3-メルカプトピルベートサルファトランスフェレースが同定され、その制御について詳細な研究が進められている。最近、H2SにS原子が複数加わったポリサルファイド(H2Sn)が脳に存在することが発見され、TRPA1チャネルを活性化することが分かった。これに続いて、Nrf2の核内移行促進による抗酸化遺伝子群転写亢進、癌抑制因子PTEN調節、血管弛緩による血圧調節などの機能を持つことが明らかになってきた。本ワークショップでは、H2SとH2Snの生成、生理的機能及びその検出法について討論を行う。


1W812月1日(火) 9:00-11:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

アミロイド再考: これまでとこれから

オーガナイザー: 八谷 如美(東京医科大学) / 茶谷 絵理(神戸大学)

アミロイド研究にはこれまで輝かしい成果と歴史があり,多様な研究手法の発展からアミロイド形成の分子機構も今では詳細に分かってきている。また,アミロイド関連疾患研究の進歩はめざましく,アミロイドーシスに対する有効な治療薬もすでにある。しかしながら,あまたあるタンパク質の中からどうして特定のタンパク質だけがアミロイド化するのか?アミロイド伝播の共通メカニズムは?アミロイドの合成・分解の律速は?近年急速に積み重ねられていく知見のなかで,いまいちど立ち止まって考えてみれば,実際のところ明確な答えを未だ得ていないばかりか,基礎研究と疾患研究のつながりすら希薄である。本ワークショップでは,議論の機会に乏しかったアミロイドタンパク質科学の研究者とアミロイドーシスの臨床研究を牽引する研究者とが最新の知見を持ち寄って,これからの新たなシナジー効果を期待しつつ,アミロイドの本質をあらためて議論する場としたい。


1W912月1日(火) 9:00-11:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

最新の生物毒の多様性がおもしろい! ~その構造と機能、進化そして利用について~

オーガナイザー: 北田 栄(九州工業大学大学院) / 千々岩 崇仁(崇城大学)

生物界ではバクテリアから哺乳動物まで様々な毒が生産されている。昆虫などが生産する低分子の毒性物質から蛇毒タンパク質まで、その構造は多種多様で作用する標的生物と細胞も多様性に満ちている。ヒトや動物への感染症に関する毒は顕在化しやすいが、今なお作用や本来の機能が不明な毒も多い。我々の生活環境に直接関係しない毒とその作用も潜在している。このような多様な種類と生物関係の中で、生物毒が生命進化にとってどのように淘汰的に有利に働いたのか不明である。事実、毒を持つか持たないバクテリア種が在り、昆虫やヘビなども同様である。一方、その作用が理解されてきた毒は、有用なバイオマテリアルとして注目され、医療、健康や美容といったライフサイエンスへの利用が進みつつある。今回のワークショップでは、最近の生物毒の研究を多面的に捕らえ、それらの分子や遺伝子構造、特異な機能とその進化、さらに生命科学への利用応用に関して紹介したい。


1W1012月1日(火) 9:00-11:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

ヘリカルリピートタンパク質の構造特性と細胞内機能

オーガナイザー: 原 幸大(静岡県立大学) / 吉村 成弘(京都大学)

ヒトタンパク質データベースには、両親媒性αヘリクスが繰り返し折りたたまれた構造モチーフを含むタンパク質が数多く見つけられる。これらのリピートモチーフには、アルマジロ(ARM)、HEAT、Tetratricopeptide (TPR)、Pumilio homology domain (PUM-HD, PUM), などが含まれ、全タンパク質の5%程度を占める。これらはすべて20アミノ酸程度の短い両親媒性αヘリクスが交互に疎水性相互作用で折りたたまれた構造的類似性を持つ一方で、関与する細胞内機能には、細胞内物質輸送、染色体凝縮分配、シグナル伝達、細胞骨格制御など、広い多様性が見られる。本ワークショップでは、i) 分子、原子レベルでの構造特性、ii) 複合体形成における分子間相互作用様式、iii) 細胞内における機能的関与、の3点に着目し、生物物理学、結晶構造学、分子生物学、細胞生物学等の幅広い分野からの研究成果を結集することで、これら多様なヘリカルリピートタンパク質の構造と機能の背後にある共通原理を探る。


1W1112月1日(火) 9:00-11:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

がん治療抵抗性の解明にむけた新しいアプローチ

オーガナイザー: 井上 聡(東京大学) / 岡本 康司(国立がん研究センター研究所)

近年の分子レベルのがん研究の進歩にも関わらず、多くの難治がんは依然として既存の抗がん剤やホルモン療法、放射線療法に抵抗性を示しているのが現状である。近年、複雑な生命現象を理解するための新たな方法論として、単一細胞レベルの解析技術や、次世代シークエンサーを用いた大規模機能スクリーニング等の新技術が続々と登場しているが、がん治療抵抗性克服のためには、これら新しい技術を取り入れた方法論でのブレークスルーが必要ではなかろうか。本ワークショップでは、抗がん剤抵抗性メカニズムを理解するための革新的な方法論を用いた研究を中心に議論したい。


1W1212月1日(火) 9:00-11:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

周期的組織再生と体性幹細胞分化およびそれを制御する微小環境における分子機構

オーガナイザー: 岩渕 徳郎(東京工科大学)

生体内には消化管、表皮、血液、毛髪、爪などのように周期的に再生を繰り返している器官・組織がある。そこでは体性幹細胞を基点に新たな細胞を生涯にわたって供給し続けられ、生体を恒常的に維持している。その仕組みの中では上皮-間葉相互作用なども重要な役割を果たしている。周期を繰り返すには、幹細胞の維持する環境と一定の分化開始のタイミングが必要だが、これらのメカニズムはまだ不明な点が多い。最近の研究でこれらの現象に、幾つかの生体分子や、細胞環境周囲の酸素分圧が関係していることがわかってきた。周期的再生に関わる体性幹細胞全体につながる仕組みはまだ明らかにされていないが、幾つかの知見を基点に普遍的原理が見えてくる日も遠くないと思える。本ワークショップでは、生体の周期的再生における幹細胞や分子機構の最新の研究動向を共有し、今後の研究の方向性や可能性について議論したい。


1W1312月1日(火) 9:00-11:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

シングルセル生物学

オーガナイザー: 渡辺 亮(京都大学) / 洲崎 悦生(東京大学)

多細胞生物では細胞一つ一つが異なった役割を担うことで生命体として機能している。個体レベルの生命現象を制御するメカニズムを解明するには、個体内の個々の細胞がもつ多様性(種類、ゆらぎ)の理解が必須である。近年特に発展してきた次世代シーケンサー、質量分析計、イメージング手法等をシングルセル解析に適応することにより、生命現象の理解を1細胞から構成体へボトムアップ的に行う方向性が実現可能となりつつある。本ワークショップでは、シングルセルレベルでのゲノミクスやプロテオミクス、そして1細胞解像度イメージングの最先端の技術を用いた解析を発生研究や創薬スクリーニングなどに応用した実例を紹介し、本研究分野の展望を議論したい。


1W1612月1日(火) 9:00-11:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

鉄硫黄タンパク質が織りなす多彩な機能

オーガナイザー: 高橋 康弘(埼玉大学) / 和田 啓(宮崎大学)

鉄硫黄(Fe-S)タンパク質はほぼすべての生物に存在し、電子伝達から遺伝子の発現制御にいたるまで、多彩かつ重要な生理機能を担っている。ミトコンドリアの呼吸鎖複合体、葉緑体の光合成反応中心がFe-S タンパク質であることからも、このタンパク質が生物界に必須なことは明白である。これらの機能を支えるのがコファクターであるFe-S クラスターである。Fe-S クラスターの構造は[2Fe-2S]、[4Fe-4S] または [3Fe-4S] と単純なものから、鉄以外の金属を含む複雑なクラスターも知られている。Fe-S クラスターを取り巻くタンパク質の環境には著しい多様性が見られ、それがFe-S タンパク質群の多彩な機能を生み出す要因になっている。本ワークショップでは、Fe-S タンパク質の構造・機能研究で活躍する研究者から、その最新知見や今後の展開に関しての話題を提供する。


1W1912月1日(火) 9:00-11:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

プロテオミクス なう&beyond

オーガナイザー: 梶 裕之(産業技術総合研究所) / 植田 幸嗣(東京大学)

プロテオームという造語が提案されて、今年で20年になる。ゲノム情報に基づいて発現されるタンパク質の総体をプロテオームと呼ぶが、当初は100タンパク質を同定するのにも大変な時間と労力を要した。分離技術や質量分析装置の進歩によって、いまや一度の分析で1万種のタンパク質同定や、大規模な定量分析も可能になった。さらに分析の微量化も進み、1細胞での分析が、その視野に入ろうとしている。この20年の時を経て、花開いた現在のプロテオーム解析技術は、今、生物の何を明らかにしようとしているのか、最新の技術とその先に見える展望を紹介していただく。


1W2012月1日(火) 9:00-11:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

細胞のふるまいの制御から解き明かす大脳皮質形成機構

オーガナイザー: 仲嶋 一範(慶應義塾大学) / 丸山 千秋(東京都医学総合研究所)

私たちは思考、記憶、学習などの高次脳機能を常に駆使して生活している。このヒトの脳への進化の基盤となっているのは、大脳皮質の複雑化を可能にした脳発生プログラムによるところが大きい。胚発生の過程で哺乳類の大脳皮質ができる際、新生興奮性ニューロンは、極性形成後、脳の深部から表層に向かって次々に遊走し、最終目的地にたどり着くと定着して、抑制性ニューロンやグリア細胞とともに6層構造が出来上がる。この過程が障害されると層構造が乱れ、脳形成異常や、様々な脳機能障害が発症することが知られている。しかしながらこの細胞移動過程の詳しいメカニズムについては不明な点が多い。 大脳皮質の層形成のメカニズムを理解することは、脳形成異常や、精神疾患の病態解明にとって重要である上、脳再生医療実現に向けての基礎研究としても必須である。そこで本ワークショップでは、大脳皮質の形成機構における分化、極性形成、軸索投射と、細胞移動とその障害による精神疾患発症との関連、について最近の話題を提供し、大脳皮質を作り上げる際の細胞のふるまいを、様々な観点から議論することで、私たちの理解を深め、本分野の研究を活性化することを目的としている。


1W2112月1日(火) 9:00-11:30 第21会場(神戸国際会議場 5F 504+505会議室)

JSTによる科学コミュニケーション研修プログラム(基礎、メディア、対話力)

オーガナイザー: 加納 圭(滋賀大学) / 田中 幹人(早稲田大学)

米国ではAAAS(アメリカ科学振興協会)が、英国ではThe Royal Society(英国王立協会)が、豪州ではオーストラリア国立大学等が、研究者向けの科学コミュニケーション研修プログラムを提供しています。日本でも近年、大型プロジェクトを中心に科学コミュニケーション活動実施に対する期待が高まってきています。STAP問題もあり、ますますアカウンタビリティ(説明責任)が求められる時代になっていくと思われます。アカウンタビリティといったある種の義務感だけでなく、より前向きに科学コミュニケーション活動を実施することも重要になってくるでしょう。このような現状や研究者による科学コミュニケーション研修への期待やニーズを踏まえ、日本ではJSTが科学コミュニケーション研修プログラムを普及展開しています。本ワークショップでは、JSTによる上記プログラムを構成する「科学コミュニケーション基礎研修」、「研究者のためのメディアトレーニングプログラム」、「対話力トレーニングプログラム」の実施者が登壇し、概要説明とデモ体験を実施します。


1W2212月1日(火) 9:00-11:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

健康度を最適化する成育環境と個体の干渉原理

オーガナイザー: 久保田 健夫(山梨大学)

近年、胎生期の低栄養環境や幼少期の過度な精神ストレスが生活習慣病や発達障害の増加に関連することが疫学調査や動物実験で示されてきた。一方、どの時期にどの程度の至適ストレスが個体の成育を最大限に促し最良の健康度を達成させるのかといった研究は、エピゲノム制御や神経・内分泌の分子レベルの理解の進展にも関わらず、世界的に行われてこなかった。そこで本ワークショップでは、エピゲノム分子MeCP2不全に基づくニューロン分化過程のアストロサイト化、糖刺激によるBRD4-ヒストンアセチル化依存的転写伸長の増進、分子シャペロンHsp90を介した胎生期環境による形質頑健性の変化、胎生期低栄養に基づく低出生体重仔の行動障害、胎生期脳グルココルチコイド制御による学習・運動能力の増進の可能性、といった成育環境と個体の干渉に関する最新知見を提示する。これらは、心身の発育を最良にする発達期条件を決定する際の要素となり、将来、生殖補助医療における受精卵培地から社会養育環境まで、生物学的基盤に根ざした示唆を与えることが期待できる。


1W2412月1日(火) 9:00-11:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

RNA機能を制御する酵素・複合体再考

オーガナイザー: 金井 昭夫(慶應義塾大学) / 程 久美子(東京大学)

機能性RNAの重要性が周知のこととなって10年を数えた。この間に真核生物では長鎖non-coding RNAやmiRNA、原核生物では低分子RNAとしてくくられる一群のRNAの様相が明らかとなってきた。忘れてならないのは、これらのRNAの制御には数々のRNA結合性のタンパク質(酵素)やその複合体が関与していることである。これは、新しく見出された機能性RNAばかりでなく、mRNAや古典的なnon-coding RNAであるtRNAやrRNAでも同じことである。上記のRNA分子に関わる酵素・複合体は分子生物学的にも生化学的にも興味深く、本合同大会ワークショップでは、これらを再考する機会としたい。個別の酵素学的な視点だけでなく、現在の比較ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームの各解析、あるいはシステム生物学的な解析などによって見えてくる生物学的な現象もあわせて議論できればと考えている。


1W2-p12月1日(火) 14:00-16:30 第2会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽1)

染色体の機能・構築原理

オーガナイザー: 加納 純子(大阪大学) / 深川 竜郎(大阪大学)

生物の生命維持には、染色体が細胞周期ごとに複製・分配され、安定に保持されなければならない。染色体上には、セントロメア、テロメア、複製起点などの各種機能ドメインが存在し、染色体の維持・継承のために重要な働きを担っている。さらに、コンデンシンやコヒーシンのような構造タンパク質やヒストン修飾に代表されるようなエピジェネティックな制御が連動して染色体構造が維持されている。近年、個別の機能ドメインに関する研究が進展する一方、染色体が一つの機能構造体として構築される原理の解明は遅れている。染色体の機能・構築原理の解明には、各機能ドメインの解析だけでなく、それぞれの染色体機能がどのように連携しているかを明らかにする必要がある。本ワークショップでは、各染色体生物学分野で活躍する研究者が、最新の研究を紹介し、染色体全体が一つの機能構造体として構築されるために必要な原理について議論する。


1W3-p12月1日(火) 14:00-16:30 第3会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽2)

多機能オルガネラ・ミトコンドリアの動的振る舞いによる生命機能制御

オーガナイザー: 石原 直忠(久留米大学) / 小柴 琢己(九州大学)

ミトコンドリアはエネルギー生産のみならず多彩な機能を持っており、様々な物質の同化と異化に関わり、またミトコンドリアの表面をプラットフォームとした細胞死・分化・自然免疫などの細胞応答にも関与している。2重膜構造のミトコンドリアは、細長く枝分れしたネットワークが融合と分裂により絶えず変化しながら維持されている。またコンタクトサイト(外膜‐内膜結合領域)、内膜の陥入したクリステ、またそれらの境界構造体などの独特な内部膜構造の分子理解も進展しつつある。さらに、ミトコンドリアDNAはパッケージングされた状態(核様体)で内膜に結合し、動的に構造変化しながら適切に複製・発現するという概念も認知されつつある。そこで本ワークショップでは、ミトコンドリア内の様々な内部微細構造が変化することでミトコンドリアの多彩な機能が発現・制御されるという、新しいミトコンドリア像に基づいた研究の最新の進展を議論する。


1W4-p12月1日(火) 14:00-16:30 第4会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽3)

真核生物における細胞分化と遺伝子発現の連携した制御メカニズム

オーガナイザー: 伊藤 敬(長崎大学) / 大熊 芳明(長崎大学)

近年、遺伝子発現は個体レベル、細胞レベル、分子レベルと幅広く活発に解析が進んできている。分子レベルでの発現制御機構の解析の重要性は、2006年のiPS細胞の樹立の報告によって再認識されてきた。iPS誘導では、4個の転写制御因子により分化した細胞が未分化な多能性細胞へと変換することから、遺伝子発現が細胞分化のために厳密に制御されることが広く認識されてきている。この遺伝子発現の制御は、その第一段階である転写が律速になることが明らかになり、その際には転写とクロマチンの制御が協調的になされている。幹細胞性の維持、幹細胞から臓器などの組織細胞への分化あるいは、細胞の増殖制御の破綻によるがん化は、これら制御が重要な役割を果たしている。そこで、今回のワークショップでは、細胞の分化が遺伝子発現により制御されている機構を分子レベルで解明する研究を展開している国内外の演者による議論をおこないたい。


1W5-p12月1日(火) 14:00-16:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

稀少疾患の分子病態メカニズム

オーガナイザー: 松本 直通(横浜市立大学) / 白髭 克彦(東京大学)

稀少疾患の多くは病態メカニズムの理解が進んでいない。しかしながら、その病態メカニズムの解明は生物の基礎的かつ普遍的な制御機構の理解へと直結する場合も多い。また、分子病態メカニズムを明らかにする事により、特異的な阻害剤が稀少疾患の治療薬として用いられるような事例も増えてきている。本シンポジウムでは先天性稀少疾患を中心に、稀少疾患の分子病態メカニズムに関する最新の知見を紹介する。


1W6-p12月1日(火) 14:00-16:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

異種間比較が解き明かす生命システムの普遍性と多様性

オーガナイザー: 竹内 隆(鳥取大学) / 田守 洋一郎(国立遺伝学研究所)

これまで生命科学は種の違いを越えても揺るがない普遍的原理が存在することを明らかにしてきた。これらの研究では主にモデル生物を用いられてきた。一方で、この地球上には既存のモデル生物以外に様々な興味深い特性を持つ生物がいる。たとえば、がんにならないとされるハダカデバネズミ、また、際立った再生能力をもつイモリなどである。このような特性が異なる生物種同士(たとえば、がんを発症するマウスとしないハダカデバネズミ;再生できるイモリとできないマウス、など)を直接比較することで特性の違いの背景となる分子機構を明らかできれば、その生命システム(たとえば、がんの発症機構や再生機構)のより深い理解が可能となろう。また、同時にその理解を生物がもつ普遍性と対峙させることで、生命の多様性の意義や進化の理解が深まるであろう。本ワークショップでは異種動物の比較を基盤とした意欲的な研究の紹介を土台にして、この研究戦略の方向性や発展性を議論したい。


1W7-p12月1日(火) 14:00-16:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

NADとFADの分子生物学:水溶性ビタミンの多面的理解に向けて

オーガナイザー: 中畑 泰和(奈良先端科学技術大学院大学) / 日野 信次朗(熊本大学)

水溶性ビタミン研究は生化学や代謝生理学の発展に多大な貢献を果たしてきた。近年、分子生物学的アプローチにより栄養素や代謝産物が様々な生物学的局面で重要な役割を果たしていることがわかりつつあり、水溶性ビタミン研究も新たな時代を迎えている。本ワークショップでは、ナイアシン及びリボフラビンからそれぞれ生合成されるNAD及びFADに焦点を当て、細胞内動態、遺伝子制御やタンパク質機能制御等について最新の研究動向を紹介する。水溶性ビタミンの多面的な理解を通して、生化学と分子細胞生物学の融合について考える場を提供したい。


1W8-p12月1日(火) 14:00-16:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

生理活性物質ポリアミンから疾病と健康を考える

オーガナイザー: 村井 法之(東京慈恵会医科大学) / 松本 光晴(協同乳業株式会社研究所)

ポリアミンは細胞増殖に必須で様々な細胞の生命現象に関与する生理活性物質である。癌との関連性を中心に研究されて来た経緯があるが、近年、ポリアミンとその代謝産物および調節系の生体内における変化が疾病や老化にも関与していることが相次いで報告されている。しかしながら、その広範囲に渡る機能性のため、各研究テーマは対象となる現象を扱う学会やジャーナルで発表されることが殆どで、ポリアミンという大きな枠で議論される機会は非常に少ない。本ワークショップでは、ポリアミンおよび関連物質が広範囲の疾病に関わる重要因子であることを紹介し、近い将来の疾病予防・治療や老化抑制に利用する方法を議論するため、幅広い分野から最新の研究を紹介する。具体的には、癌、脳梗塞、糖尿病との関わり、臨床マーカーとしての有用性、哺乳類の老化抑制効果および腸内細菌由来ポリアミンの生体への影響などを紹介する。


1W9-p12月1日(火) 14:00-16:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

亜鉛シグナリング

オーガナイザー: 深田 俊幸(徳島文理大学) / 神戸 大朋(京都大学)

亜鉛は多様な生命機能に関与し、その恒常性は亜鉛トランスポーターやメタロチオネインによって制御されている。これらの分子から発せられる亜鉛イオンがシグナル因子として機能し(亜鉛シグナル)、モデル生物やヒト遺伝学研究の解析によって、亜鉛シグナルが選択性を持って細胞機能を制御すること、その破綻が病気の原因になることが報告されている。すなわち、亜鉛シグナルが統合的な生命活動に深く関与していることが示されている。本ワークショップでは、次世代をリードする若手研究者や国際亜鉛生物学会の主要メンバーを含めた新進気鋭の研究者を招いて、亜鉛シグナルが関わる生命現象の最新情報を概観し、亜鉛シグナル研究今後の課題について議論する。


1W10-p12月1日(火) 14:00-16:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

性染色体とエピジェネティクス

オーガナイザー: 佐渡 敬(近畿大学) / 多田 政子(鳥取大学)

一対の常染色体が機能的分化を遂げ形成されたと考えられる性染色体は,その進化の過程で常染色体とは異なる特有の活性制御機構を獲得してきた.この機構の異常はしばしば胚や生殖細胞の発生に重篤な影響をおよぼす.これは正常な細胞機能の維持に性染色体間あるいは性染色体-常染色体間で,それぞれの染色体に連鎖する遺伝子の発現バランスを適切に調節することがいかに重要であるかを示唆している.性染色体の存在がもたらすこのような活性制御機構には,エピジェネティクスが中心的な役割を果たす.本ワークショップでは,XX/XY型およびZZ/ZW型の生物における性染色体のエピジェネティクスやこれらと常染色体のエピジェネティック制御の共通点あるいは相違点について議論し,染色体の機能分化や活性制御についての理解を深めたい.


1W11-p12月1日(火) 14:00-16:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

ユビキチンシステムが切り開く新たな生命現象

オーガナイザー: 嘉村 巧(名古屋大学) / 畠山 鎮次(北海道大学)

ユビキチン修飾は、ユビキチンと呼ばれる真核生物に高度に保存された76アミノ酸からなる小タンパク質が、標的タンパク質に付加される反応であり、細胞周期進行、シグナル伝達、転写やエンドサイトーシスなど様々な生命現象に重要な役割を果たしている。従来、ユビキチン修飾はプロテアソームによるタンパク質分解シグナルであると考えられていたが、近年の研究により、標的タンパク質に付加されるユビキチン鎖には、M1鎖、 K11鎖、K48鎖、K63鎖など構造的多様性があり、この多様性が分解とは異なる様々な機能的多様性に関与していることが明らかにされつつある。また、ユビキチン化酵素と脱ユビキチン化酵素のバランスにより標的タンパク質の機能が制御されていることも知られてきている。本ワークショップでは、ユビキチンシステムに制御される生命機能について基礎的な研究から疾患との関連まで幅広く最先端のトピックスを取り上げ議論し たい。


1W12-p12月1日(火) 14:00-16:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

ゲノムに組み込まれたウイルス:その機能と進化

オーガナイザー: 小島 健司(東京大学)

ヒトゲノムの約8%はレトロウイルスに由来する配列で占められている。真核生物のゲノムに挿入されているウイルスは、逆転写酵素を持つレトロウイルスの仲間だけであると長らく信じられてきたが、近年、ボルナウイルス、フィロウイルス、B型肝炎ウイルスなどの多種多様なウイルス由来の配列がゲノム中に挿入されていることがわかってきた。また、転移因子であると考えられてきたPolintonが実はウイルス粒子の構成タンパク質をコードしており、Polintovirusと命名されるなど転移因子とウイルスの境界は曖昧になってきた。一方、原核生物では、以前からゲノムに組み込まれ潜伏するプロファージがよく知られている。本ワークショップでは、真核生物、原核生物の両者からウイルス由来配列がゲノムに挿入されている例をご紹介いただき、その生物学的機能や進化における役割について議論する。


1W13-p12月1日(火) 14:00-16:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

実用化を見据えた様々な生体関連分子工学の基礎および応用

オーガナイザー: 赤沼 哲史(東京薬科大学) / 新井 亮一(信州大学)

生命は40億年をかけて、特異的な物質認識や効率的な代謝を司る多様な機能性生体分子を創り、進化させてきた。さらに、これらの分子に人工的に改変を施すことにより人間社会の繁栄に役立てることを目指した工学的研究が、バイオテクノロジー、ケミカルバイオロジー、核酸工学、タンパク質工学、進化分子工学、合成生物学として醸成してきた。しかし、工学の最終目標である実用化を達成するためには、さらなる革新的な発想や技術開発、新領域の開拓が求められている。本企画では、実用化を視野に先端的・独創的手法により生体関連分子の設計・合成・改変に取り組んでいる研究者に、基礎的な面だけでなく応用展開の可能性を含めて講演して頂く。幅広いバックグラウンド(金属錯体、低分子有機化合物、ペプチド、核酸、タンパク質、抗体、酵素、あるいは、タンパク質合成システムなど)を持つ研究者達が分野の垣根を越えて一堂に会する学際的なワークショップを最大規模の関連学会であるBMB合同大会で開催することで、これまでにない刺激となり、生体関連分子の実用化に向けた新たな領域の開拓や課題の発見、共同研究の推進の機会としたい。


1W14-p12月1日(火) 14:00-16:30 第14会場(神戸国際会議場 1F メインホール)

Liquid biopsyの新展開

オーガナイザー: 落谷 孝広(国立がん研究センター研究所) / 田原 栄俊(広島大学)

エクソソームなど細胞から分泌される細胞外小胞(EVs)は、生物学的な多様な機能を有しており、国内外で注目されている。癌化や認知症などの疾患に伴う体液分泌の変化は、疾患の発症や進展と密接に関わっている知見が多数報告されるようになってきた。一方で、体液分泌の変化は、体液中に含まれるEVsやマイクロRNAの変動は、疾患の早期診断としてのLiquid biopsyとして注目されている。疾患に伴う細胞外小胞の特性の変動は、細胞外小胞内の特徴的なマイクロRNA変動が起こることから、体液中のマイクロRNA検出は疾患の早期発見などのバイオマーカーとして注目されている。また、EVsに存在するタンパク質にも疾患特異性があることも報告され、早期発見のためのバイオマーカーの有用性が明らかになってきた。本ワークショップでは、体液分泌のバイオロジーを体液診断に結びつける日本における最先端の研究成果を紹介し、議論したい。


1W15-p12月1日(火) 14:00-16:30 第15会場(神戸国際会議場 3F 国際会議室)

遺伝子治療の復活

オーガナイザー: 三谷 幸之介(埼玉医科大学) / 金田 安史(大阪大学)

遺伝子治療はDNA/RNAを薬として用いる究極の先端医療の一つであり、分子生物学、細胞生物学、免疫学などあらゆる医学生物学の知識の集積によって初めて成功する。単一遺伝病への応用から始まり、がん、循環器疾患、感染症などにも適応範囲を広げて研究が進められてきた。その過程において治療用ベクターの副作用が報告され、人の体内で安全に一定のレベル・期間で遺伝子を発現することの難しさが再認識された。しかし、地道な基礎研究の結果、遺伝子治療臨床試験の成功例が世界中で報告されるようになり、2012年にヨーロッパにおいて家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症に対する遺伝子治療薬「Glybera」が承認されるに至った。更に近年は、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療法も注目されている。本ワークショップでは、遺伝子導入法の最近の進歩と臨床試験での成功例を紹介し、分子生物学や生化学と遺伝子治療学との結びつきについて議論したい。


1W16-p12月1日(火) 14:00-16:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

プロテオスタシス制御と疾患

オーガナイザー: 養王田 正文 (東京農工大学) / 中井 彰(山口大学)

生命活動は様々なタンパク質の機能により維持されており、ストレス刺激などによりその機能やネットワークが破壊されることが、死や疾病の原因となる。タンパク質の構造や機能は、誕生から分解までの一生に渡って厳密に調節されている。そのタンパク質のホメオスタシス(プロテオスタシスとも呼ばれる)の制御を主に担っているのが分子シャペロンと分解系である。本ワークショップでは、プロテオスタシス制御の分子機構からプロテオスタシスの破綻によりがん,炎症、自己免疫疾患、神経変性などの発症のメカニズムに関する最先端の研究を紹介する。ストレスによるプロテオスタシスの破綻によりもたらされる疾病の病態を理解することにより、その治療方法の開発につながる研究に発展することが期待される。


1W19-p12月1日(火) 14:00-16:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

多様性・特異性を基盤にした新しい微生物機能とその応用

オーガナイザー: 高木 博史(奈良先端科学技術大学院大学) / 小林 達彦(筑波大学)

高等生物の細胞モデルとしての「微生物」研究は、バイオロジーの基盤であり、人類による生物の「理解(基礎生物学)」と「利用(農学・工学・医薬学)」に大きな貢献をもたらしてきた。微生物は様々な「モノづくり」にも関わっているが、ごく一部の微生物種が利用されているのみである。近年、高温や高圧などの極限環境で生息する微生物も明らかになり、微生物において新規な生命現象や細胞機能が続々と発見され、それらの分子機構や代謝制御などの解析も急速に進展している。また、それらを利用したバイオテクノロジーへの展開も期待されている。本シンポジウムでは、微生物の多様性及び特異性を基盤に、独自のアイデアやアプローチで研究を進め、農学・工学・理学の第一線で活躍する研究者が微生物機能における最新・最先端の研究成果を紹介する。ケミカルバイオロジーやマルチオミクス解析などを含めた幅広い観点からの領域横断型の話題を提供することで、微生物新機能開発の今後の方向性や産業への利用について議論したい。


1W20-p12月1日(火) 14:00-16:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

神経細胞の分化と回路形成を司る新たな遺伝子発現制御メカニズム

オーガナイザー: 深井 周也(東京大学) / 吉田 知之(富山大学)

最近,マイクロエクソンと呼ばれる小さなエクソンの選択的スプライシングやプロモーター選択といった通常とは異なる遺伝子発現制御メカニズムによって作り出されるタンパク質の多様性が,神経細胞の分化や回路形成の調節に重要な役割を担うことが明らかとなってきた(豊田ら,Neuron, 2014; 飯島ら,Cell, 2011; 定方ら,PNAS, 2012; 黒柳ら,PLoS Genet., 2013; 植村ら,Cell, 2010; 吉田ら,J. Neurosci., 2011, 2012など).また,その調節機構の破綻は自閉症などの神経発達障害と関連することが示唆されている.本ワークショップでは,神経細胞の分化と回路形成を司る新たな遺伝子発現制御,神経細胞特異的な遺伝子発現制御によって生産されるタンパク質の機能,これらの制御破綻に起因する神経疾患病態について分子構造から個体行動レベルまでの最新の知見を持ちよって議論する.


1W21-p12月1日(火) 14:00-16:30 第21会場(神戸国際会議場 5F 504+505会議室)

In situ構造生物学による真核細胞内蛋白質の動態研究の現状と展望

オーガナイザー: 木川 隆則(理化学研究所) / 伊藤 隆(首都大学東京)

In-cell NMRは,細胞内の蛋白質構造を原子分解能で解析できる唯一の手段であ るが,真核細胞内蛋白質のための手法が未整備であり,立体構造を基盤とした高 等生物 の生命過程のその場解析を行う障壁となっていた.しかし,近年,NMRの 試料調製・測定・解析技術の開発と,実データに基づいた新しい分子シミュ レーションの方法的研究から,真核細胞内の蛋白質動態の詳細な解析と,それら の知見を用いた総合的な理解が現実のものとなりつつある.本手法 (in situ構造生物学)は,分子クラウディングの影響化における,生命現象のメカニズムの 理解を可能にする.さらに,細胞応答の詳細な解析や薬剤スクリーニ ングにも 応用可能であるがゆえに,先端医療や創薬科学等に波及的効果を及ぼすことで, ライフ・イノベーションの推進に大きく寄与することが期待さ れる.本ワーク ショップでは,国内外の当該分野の研究者に最先端の研究内容を紹介していただ く予定である.


1W22-p12月1日(火) 14:00-16:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

RNA病

オーガナイザー: 大野 欽司(名古屋大学) / 上山 久雄(滋賀医科大学)

RNA病はRNAプロセシングの異常による疾患群である.これまでの遺伝子解析では、例えば、サイレント変異は中立だがミスセンス変異は産物の機能に影響する可能性がある、あるいは、イントロン内部の変異は中立、などと短絡的に考えられてきた。しかし近年、これらの変異により、エキソンに存在するスプライシングエンハンサーやサイレンサーが破断、あるいはイントロンに存在するスプライシングエンハンサーやサイレンサーが破断され、異常なスプライシングの起こる疾患(例えば先天性筋無力症候群)が知られるようになってきた。本ワークショップではまずスプライシングの基本的な過程を概説し、次いでスプライシングシス配列の異常とそれによるトランス因子の異常に関する最近の知見を紹介し、最後に、このような異常スプライシングを回避する、RNA病の治療戦略(エキソンスキッピングやその回避など)について解説する。


1W24-p12月1日(火) 14:00-16:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

生命への道程:自己集合・自己組織化による秩序形成と創発

オーガナイザー: 大山 隆(早稲田大学) / 菊池 洋(早稲田大学)

生命は、気の遠くなるような長い時間をかけて物質から生じたと考えられている。その過程では、分子の化学的・物理的特性を基盤にした「自己集合」や「自己組織化」が繰り返され、より複雑な構造や分子複合体が生み出された。さらには、複雑さの増加に伴う「創発」現象も繰り返し起きた。こうして新たな機能が次々に付与されて、やがて原始的な生命が誕生したと考えられている。従って、生命の本質を理解するためには、生命分子に関する自己集合・自己組織化の原理や機構、および創発現象についての理解を深めることが重要である。実際、その種の研究が分子生物学分野においても急速に推進されはじめた。人工細胞の試験管内構築、生体高分子およびその複合体の自己組織化原理、生体分子が示す創発現象などを追究する研究はその例である。ここでは、先駆的で野心的な研究を多数取り上げ、急速に開拓されつつある生命科学新分野の熱い息吹を伝えたい。


2W512月2日(水) 9:00-11:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

進化エピジェネティクス: エピジェネティックな状態の次世代への伝達から考える進化のしくみ

オーガナイザー: 小林 一三(東京大学) / 角谷 徹仁(国立遺伝学研究所)

ヒトを含む動物と多くの植物では、ゲノムのエピジェネティックな修飾は、次の世代にはリセットされるのがルールとされているが、その例外が増えている。とくに、疾患関係での報告が目立っている。一方、植物の一部と、細菌など単細胞微生物の多くの場合には、エピジェネティックな修飾は、そのまま次世代に遺伝され、進化に直接寄与する。これらの過程では、いずれの場合でも、ゲノム内の遺伝子間のコンフリクトが、重要な課題となっている。 自然選択と進化の単位は、ゲノム配列に加えて、これらエピゲノム状態と見るべきなのかもしれない。さらに環境変化が積極的にエピゲノムを作り変えることがもし示せれば、自然選択だけにもとづく適応進化説(ダーウィニズム)も乗り越えられることになる。本ワークショップでは、このような観点からの最先端の研究を紹介し、進化のしくみを見直そうとする。ヒトなどほ乳類と、それ以外の様々な生物(細菌、植物、非哺乳類動物)でのしくみが比較され、フィールドでの進化生態学的研究で締めくくる。


2W612月2日(水) 9:00-11:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

酸化ストレスの発生と制御:発がんと老化の抑制をめざして

オーガナイザー: 康 東天(九州大学) / 早川 浩(福岡歯科大)

好気的代謝を行っている生物はそれに付随する活性酸素の発生と共に生きて行かざるを得ない。近年活性酸素に生体反応もようやく分子で語れるようになって来ている。活性酸素は害である一方、活性酸素自身を生命の営みに利用している一面もある。疾患との関わりも長年指摘されているが、少なくともヒトにおけるその実像は驚くほどエビデンスが少ない。活性酸素に関わる反応の分子/細胞・動物レベルでの研究からヒトにおける臨床的研究に至る最近の進歩について討論したい。


2W712月2日(水) 9:00-11:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

膜輸送体学の「再統合」~分子レベルから疾患への橋渡しのために

オーガナイザー: 永森 収志(大阪大学) / 小川 治夫 (東京大学)

膜輸送体(トランスポーター、チャネル、ポンプ)は、イオンや栄養素など低分子の細胞への取り込み/排出を担う膜タンパク質である。生命活動の維持に不可欠な膜輸送体の変異・破綻は、時として重大な疾患を引き起こす。したがって、膜輸送体を対象とした研究は、生命の理解のみならず社会的要請という点でも重要である。一方で、ゲノム計画以降、研究対象としての膜輸送体の数は増加し、関係する生命現象もふくれあがっている。その中で研究者は、発現、構造や機能、生理や病理、創薬など様々な立ち位置から各々の研究対象に向き合ってきた。だが、時に我々は自らの研究に集中するあまり、同じ問題意識を持っている「膜輸送体学」の同僚達との繋がりを失っていないだろうか。「膜輸送体学」のさらなる発展のためにも、我々の研究成果を社会に届ける橋を掛けるためにも、分子・現象、さらには研究手法を超えるシームレスな環境、議論の場、が必要ではないだろうか。そこで、本ワークショップでは、様々な観点から膜輸送体に向き合う国内外の研究者を中心に、会場の研究者と共に膜輸送体学の「再統合」を目指す。


2W812月2日(水) 9:00-11:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

古くて新しい糖代謝経路研究の最前線

オーガナイザー: 増本 博司(長崎大学) / 水沼 正樹(広島大学)

最近の研究により、解糖系を中心とした糖代謝経路はATPやアミノ酸などエネルギー代謝産物を供給工場としての役割だけでなく、補酵素として機能する代謝産物などを供給し様々な細胞内機能を直接的?間接的に支配している。そのため糖代謝経路の異常は生活習慣病や老化に伴う様々な疾病を引き起こす要因となっている。また糖代謝酵素へのアセチル化やリン酸化など様々な翻訳後修飾を介して糖代謝経路を積極的に制御する上位機構が存在することが明らかになるなど、糖代謝経路の研究が新たな展開を見せつつある。 本ワークショップでは、特にモデル生物を使った糖代謝研究:糖代謝経路を制御する機構や、糖代謝経路の異常によって引き起こされる様々な細胞機能欠損のメカニズムについて最新の研究成果を発表?討論し、今後の代謝研究の推進をはかることを目的とする。


2W912月2日(水) 9:00-11:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

小型魚類解体新書

オーガナイザー: 飯田 敦夫(京都大学) / 平田 普三(国立遺伝学研究所)

ゼブラフィッシュやメダカといった小型魚類は、飼育維持の容易さや、生体内イメージングにおける利点から、哺乳動物を補完するモデルとして認知されてきた。一方で、複雑なゲノム編集技術が発展途上であることや、解析に用いることができる抗体のコレクションに制限があるなど、インフラ整備の遅れによる汎用性の制限も否めない。では、小型魚類を用いた研究は普遍性のない動物学だろうか。答えはもちろん否であり、ゼブラフィッシュやメダカの局所的利点から、生命の共通原理が垣間見え、次のビッグクエスチョンが提起されるのである。また、魚類の多様性を活かし、極めて特徴的な形質を持つ魚を解析することから、新しい生命現象が発見されてきた。本ワークショップでは一見、魚を用いた動物学に見える研究から生命の普遍性に迫る核心的研究を幅広く取り上げる。また、未知の生命現象を拓く特徴的な魚モデルによる新たなサイエンス領域を紹介したい。


2W1012月2日(水) 9:00-11:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

食品科学:食品の潜在能力を科学し、活用する

オーガナイザー: 佐藤 隆一郎(東京大学) / 内田 浩二(名古屋大学)

超高齢社会を迎える日本において、医療費の膨大化、介護費用の突出を防ぐために、健康な高齢者が構成する社会の実現が求められている。この実現のためには、食生活、運動習慣の改善が必須であり、さらに十分な運動習慣を実行できない高齢者にとっては食生活の充実がより重要となる。このような背景の中、食品に含まれる微量成分に機能を見出し、健康維持に資する成分として機能性食品(トクホなど)が創製されている。食品機能を賢く活用する試みは今後も益々増えることが予想され、それに向けて信頼性の高い科学的エビデンスの提示も強く求められている。このような要求に応える研究成果をお持ちの先生方にお集まりいただき、食品の潜在能力の一端を提示いただく機会としたい。


2W1112月2日(水) 9:00-11:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

細胞競合 ー その本質と生理的意義に迫る

オーガナイザー: 井垣 達吏(京都大学) / 藤田 恭之(北海道大学)

細胞競合とは、生体内で近接する細胞間の適者生存競争であり、生体内環境への適応度が相対的に高い細胞(「勝者」)が低い細胞(「敗者」)を積極的に排除する現象である。ここ10年ほどの研究により、細胞競合が様々な生物種や実験系で観察される現象であることがわかり、またその役割として発生過程におけるロバストな組織構築の実現やニッチにおける優良幹細胞の選別、さらには組織に生じた異常細胞の排除など、多彩な生命現象に関わることが示唆されつつある。しかし、多様な細胞競合現象の共通原理や分子機構、生理的意義についてはいまだ不明な点が多い。本ワークショップは、いま拡大しつつある細胞競合研究において、様々なモデル系・アプローチを用いた最新の知見を提供していただき、細胞競合の分子機構と生理的意義からその本質に迫る議論の場としたい。


2W1212月2日(水) 9:00-11:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

全能性獲得の分子機構の理解へ向けて

オーガナイザー: 中村 肇伸(長浜バイオ大学) / 伊川 正人(大阪大学)

全能性とは、全ての種類の細胞の分化し、個体を形成する能力である。精子と卵子は遺伝情報を次世代に伝えるために特化した細胞であるが、受精後すぐにリプログラミングが生じて全能性を再び獲得する。全能性は着床前胚の発生過程において急激に消失していくが、将来精子や卵子を形成する未分化な生殖細胞である始原生殖細胞において受精後の全能性再獲得に向けたリプログラミングが再度開始される。受精および始原生殖細胞における全能性獲得に必要な分子機構の理解は、生命科学において重要な課題である。本ワークショップでは、哺乳類の全能性再獲得の分子機構について最新の話題を提供する。


2W1312月2日(水) 9:00-11:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

非B型DNAの構造・生物学的意義とその生体制御への応用

オーガナイザー: 正井 久雄(東京都医学総合研究所) / 三好 大輔(甲南大学 )

グアニン4重鎖、3重鎖DNA、Z型DNA等非B型DNA構造は、ゲノム上に多数存在すると想像されているがその生物学的機能はこれまで大部分不明であった。例えばグアニン4重鎖構造を取りうる配列はヒトゲノム上に40万カ所近く存在すると考えられている。最近の研究から、これらの構造は転写制御やテロメア構造形成に関与するとともに、染色体高次構造の形成や複製開始にも機能する可能性が示唆されている。又、これらの特殊構造は一般に複製進行に阻害的であり、ゲノム脆弱性、不安定性の誘導を介して疾患の発生にも関連する事から、これらに結合しゲノムを防御するタンパク質群も注目を集めている。更に、これらの非B型DNA構造の知見に基づき、新規の機能分子を設計し、生体機能を制御する新技術の開発が進んでいる。本ワークショップでは、生化学、分子生物学、有機化学、構造化学、分子設計など異なる分野の研究者を一同に集め、非B型DNAが関与する新しい生物学に迫る。


2W1612月2日(水) 9:00-11:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

細胞機能を解析し創る新技術:1分子から時間空間制御まで

オーガナイザー: 妹尾 昌治(岡山大学)

細胞の機能は個々の分子の熱力学的なゆらぎから複数の分子の協働的な相互作用までが複雑に関与して発揮される。たとえば、細胞内シグナル伝達系は、空間に配置するタンパク質が適時に連携した役割を担うことで適切な細胞機能を具現するために重要である。また、タンパク質の機能を正確に理解するためには、タンパク質一つ一つが持つ時空間情報を正確に把握する必要がある。そこで、これらを可視化するための蛍光ダイヤモンドナノ粒子による1分子イメージング技術やキナーゼ活性を中心とした細胞内タンパク質の活性ダイナミクスを可視化する技術およびタンパク質の局在情報を人工的に操作する新技術を紹介する。同時に、iPS細胞や株化細胞に対してマイクロRNAやエクソソームを用い、細胞の正常な分化・増殖およびがん化の制御を行って細胞に新しい機能を付与していく技術を紹介する。


2W1912月2日(水) 9:00-11:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

老化の分子メカニズムと関連する老年疾患

オーガナイザー: 藤田 香里(京都大学) / 丸山 光生(国立長寿医療研究センター研究所)

老化は、時間経過に伴って不可逆的に進行し、すべての細胞、組織、臓器の恒常性と再生能力の低下が付随した形態的・生理的な衰弱現象である。加齢は様々な疾患のリスクとなるが、一方で老化現象として捉えられる表現型は組織間で大きく異なり、老化の機構に関する統合的な理解が求められる。本ワークショップでは様々な角度から行われる老化研究を包括的に取り上げ、老化研究には不可欠であるモデル動物を用いた研究成果を中心に、老化のメカニズム、およびそれらが関わる加齢性疾患の発症機序について議論したい。


2W2012月2日(水) 9:00-11:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

複製フォーク:多様なDNAトランスアクションのプラットフォーム

オーガナイザー: 鐘巻 将人(国立遺伝学研究所) / 高橋 達郎(大阪大学)

Kornberg博士によるDNA合成酵素の発見以来60年近くにわたって、DNA複製は分子生物学の中心研究課題であり続けてきた。近年では真核生物複製開始反応の理解が進み、複製フォーク構築の中核反応が解明されつつある。一方で複製フォークはDNA合成のみならず、DNAダメージの検出と修復、染色体接着、ヒストン分配とエピジェネティック修飾など多様なDNA・クロマチン反応の中心でもあり、その構造や機能の理解はいまだ途上にある。これらの多様な反応の異常は染色体不安定化を引き起こし、細胞死やがん化の直接的な要因になりうる。また近年、細胞運命初期化には複製フォークによるDNA合成の必要性も指摘されている。そこで、DNAトランスアクションの場として複製フォークを捉え直すことは、DNA複製研究の新たな方向性を示すことになるだろう。本ワークショップでは、最新のデータを持ち寄り、複製フォークの多様な機能をディスカッションする。


2W2212月2日(水) 9:00-11:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

複雑系システム生命科学の現在

オーガナイザー: 太田 邦史(東京大学) / 澤井 哲(東京大学)

「生命」のダイナミクスを定量的に解析し、合成生物学、構成的手法や数理モデルなどを用いて、原理を解明しようとする新しい研究分野が盛んになりつつある。本ワークショップでは従来の分子生物学・生化学の枠を超越した新しいタイプの研究のあり方と今後の方向性について、関連研究者の成果を交えて考える。


2W2412月2日(水) 9:00-11:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

フォスタグ技術による神経科学へのアプローチ ~タンパク質リン酸化研究の新潮流~

オーガナイザー: 細川 智永(理化学研究所) / 木下 英司(広島大学)

生体内におけるタンパク質のリン酸化反応は,その機能を制御するための重要な翻訳後修飾である。負電荷を持つリン酸基がタンパク質に共有結合することにより,そのタンパク質の構造や性質は大きく変化し,酵素活性や局在性などをダイナミックに制御する。神経細胞においても,この翻訳後修飾は,細胞移動,突起伸長,長期増強などの生命活動の根幹をなす多くの働きを支えている。最近,タンパク質リン酸化研究への新たなアプローチとしてPhos-tag技術が,様々な生命科学分野において使用され始めている。特に,Phos-tag親和電気泳動法は,タンパク質のリン酸化状態の質と量の解析を可能にし,神経科学においても新たな研究領域を開拓しつつある。本ワークショップでは, Phos-tag技術を駆使することで神経細胞の生理機能やその機能破綻に関連するリン酸化標的分子を高精度に解析した先駆的な研究を幅広く紹介できるようにプログラムを企画した。最新の応用法に加え,最先端の成果を議論し, このPhos-tag技術がもたらす神経科学研究へのインパクトを示したい。


2W2612月2日(水) 9:00-11:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

「5-アミノレブリン酸:その多様な生理機能と農学から医学までの応用」

オーガナイザー: 北 潔(東京大学) / 千葉櫻 拓(東京農業大学) / 小倉 俊一郎(東京工業大学)

5-アミノレブリン酸(ALA)は全生物に含まれる天然アミノ酸であり、ヘム、チトクローム類、クロロフィル、ビタミンB12など、根幹的生化学反応の中心物質であるテトラピロール化合物の生合成経路の出発基質である。即ち、ALAは多様な生体反応に関わる生命の根源物質であり、その生理機能の解明と様々な分野への応用が大きな注目を集めている。まず、ALAは外的投与により動植物の呼吸・光合成活性を高めることより、栄養学的・農学的観点から重要視されており、栄養素・肥料として既に応用されている。また、生物種や疾患によるテトラピロール代謝の違いを利用した抗生剤・抗がん剤をはじめ、様々な薬理的応用も急速に進んでいる。このように農学から医学までの多様な分野で期待される、ALAの生理機能と応用に関する最新の研究を紹介し、幅広いオーディエンスとの討論の場としたい。


2W2712月2日(水) 9:00-11:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

ライブイメージングから迫る植物科学

オーガナイザー: 植村 知博(東京大学) / 別役 重之(JSTさきがけ/東京大学)

蛍光プローブの開発や光学顕微境システムの発展に伴い、生きたままの細胞や組織をリアルタイムで観察できるようになり、植物科学分野においても、ライブイメージングによって様々な生物学的現象に対する理解が一層深まりつつある。一口にライブイメージングと言っても、例えば細胞内オルガネラのダイナミクス解析系と根など組織の発生解析系では、必要な観察システムは大きく異なっており、観察対象毎に最適な顕微鏡システムを構築する必要がある。本シンポジウムでは、最新のライブイメージングシステムとそこから得られる最新の知見について、包括的レビューの後、細胞内現象から組織発生・環境応答といった幅広い研究対象にライブイメージングを適用している若手研究者による講演を行う。


2W2-p12月2日(水) 14:00-16:30 第2会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽1)

「NADPH oxidaseによる活性酸素種の積極的生成と動物・植物・菌類の高次生命機能」

オーガナイザー: 朽津 和幸(東京理科大学) / 勝山 真人(京都府立医科大学)

ミトコンドリア、葉緑体等における種々の代謝過程で不可避的に生成される活性酸素種(ROS)は生体にとって有毒なため、多くの生物が活性酸素消去系を発達させている。一方、ROSを積極的に生成する酵素NADPH oxidase (Nox)は、動物の食細胞において感染微生物の殺菌に重要な役割を果たし、その遺伝子変異が慢性肉芽腫症の原因となることが知られていた。しかし近年、Noxは、ほとんどの真核生物に複数のアイソフォームとして存在し、積極的に生成されたROSがさまざまな高次生命機能の発現に重要な役割を果たすことが明らかとなりつつある。本ワークショップでは、この分野の世界の第一線で活躍している医学・薬学・理学・農学系研究者が一堂に会し、動物・植物・微生物のNoxの活性制御機構・生理機能、NoxによるROSの積極的生成の意義を、生物種・専門分野を超えて議論したい。我が国では、本酵素について生物種・専門分野を超えて議論する機会がこれまでにほとんどなく、貴重な機会と期待される。


2W3-p12月2日(水) 14:00-16:30 第3会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽2)

生命を司る少数分子のふるまい

オーガナイザー: 前島 一博(国立遺伝学研究所) / 上田 泰己(東京大学)

生命現象の本質の一つとして、“数個から数10個程度”の少数の要素分子から構成されるナノシステムが“協同的”に機能・動作することが挙げられる。これまで“アボガドロ数オーダー”のタンパク質の反応や“単分子”の素過程を観察する1分子イメージングによる反応解析が数多く報告されているものの、 “少数分子間”で生まれる協同性の素過程を、生きた細胞内において解析した報告は“皆無”に等しく、少数の要素分子がいかにして極めて高い協同性を生み出すのかについては全く分かっていない。そこで本ワークショップでは、このような少数分子からなる生体ナノシステムにアプローチするための方法論や生命現象を取り上げ、生体ナノシステム研究の展望を議論する。


2W4-p12月2日(水) 14:00-16:30 第4会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽3)

生活習慣病のバイオマーカー研究ー原因究明から治療標的の同定まで

オーガナイザー: 日和佐 隆樹(千葉大学) / 北園 孝成(九州大学)

動脈硬化、糖尿病、脳梗塞、腎臓病、認知症などの疾患は生活習慣の影響を大きく受けると考えられている。しかし、喫煙、飲酒、塩分過剰摂取、高カロリー摂取など、悪影響を与えると言われている習慣を継続しているにもかかわらず健康を維持している人もいる。それらのリスクファクターをすべて排除するのは極めて困難である。もしバイオマーカー解析により各個人の発病の原因となる生活習慣がわかれば、一つの生活習慣を改善することによって予防が可能かもしれない。一方で、バイオテクノロジーの進歩と相俟ってバイオマーカーの探索は目覚ましい進歩を遂げてきた。生活習慣病のバイオマーカーの同定は単に診断への応用に留まらず、その解析により原因となる生活習慣の特定、さらにはバイオマーカーを標的とする新たな治療法の開発へとつながる可能性がある。本ワークショップでは各疾患におけるバイオマーカー探索の最新の知見を披露していただくとともに新規治療法の開発を含めた臨床応用への展望について考察したい。


2W5-p12月2日(水) 14:00-16:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

細胞膜・膜輸送から解明するアルツハイマー病と治療戦略

オーガナイザー: 道川 誠(名古屋市立大学) / 鈴木 利治(北海道大学)

アルツハイマー病(AD)では、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から生成するアミロイドβペプチド(Aβ)が、発症に中心的な役割を果たしている。特に凝集性の高いAa42 などの長いAa の生成増加が神経毒性を表すと考えられる。長いAa 種の生成は、家族性AD の原因遺伝子(APP とPS)変異により増強するが、患者の95%以上を占める孤発性AD の発症機構は未解明な点が多い。孤発性患者で長いAa 分子種が生成する原因と、それが主原因の孤発性患者の割合は判っていない。さらに孤発性AD の最大の危険因子であるApoE のa4 isoform(ApoE4) が発症に関わる機構は不明瞭である。最近の様々な研究成果は、原因遺伝子変異に依存しない細胞内のタンパク質、脂質代謝変化と膜成分の変化、および膜輸送の変化が発症に関わる可能性を提示し、孤発性ADの”Heterogeneity in primary causes”を示唆している。本ワークショップでは発症多様性に関わる分子機構の最前線を紹介すると共に治療戦略と方向性を議論する。


2W6-p12月2日(水) 14:00-16:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

疾患の治療を指向した神経糖鎖生物学

オーガナイザー: 北川 裕之(神戸薬科大学) / 門松 健治(名古屋大学)

細胞を取り囲む細胞外環境は、神経発生や神経可塑性などの様々な神経機能に重要な役割を果たしている。細胞外環境には多くの糖鎖が存在するため、糖鎖は神経機能を制御する微細環境として注目されている。最近の神経糖鎖生物学の進展により、神経可塑性において特定の構造をもつ糖鎖が重要な機能を果たしていることが判明した。また、糖鎖はアルツハイマー病、筋ジストロフィー、統合失調症などの神経疾患にもかかわることが明らかになりつつある。したがって、このワークショップでは、糖鎖がかかわる神経疾患を引き起こす分子機構の更なる理解とともに、それらの神経疾患の有望で新たな治療法の開発に向けて、包括的な糖鎖の構造と機能の関係の理解が必要である事を示したい。


2W7-p12月2日(水) 14:00-16:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

呼吸鎖複合体とATP合成の新描像

オーガナイザー: 高島 成二 (大阪大学) / 鈴木 俊治(東京大学)

ミトコンドリアの呼吸鎖複合体とATP合成酵素は、その基本機構が熱心に研究されてきたが、最近さらに細胞・個体の寿命や疾病など様々な高次の生命現象と深く関係している事が明らかになりつつある。本ワークショップでは、呼吸鎖複合体とATP合成酵素の機能の調節と高次生命現象の関係を、「構造、機能、調節、生理、病態」の視点から、最新の発見を紹介しながら概説する。はじめに複合体IVの超高解像度結晶構造解析、初出のATP合成酵素の膜部分の構造を紹介し(月原、Davies;Nature2015)、ヒトATP合成酵素の1分子観察による機能・制御解析(吉田、鈴木;NatureChemBiol2014)や、複合体IIの環境・進化的適応や調節の最新の結果を紹介する(原田)。また、最近発見された細胞内因子や天然物による呼吸鎖複合体(高島;ProNAS2014 PNAS2015)やATP合成酵素(鈴木)の活性化や阻害、それらATP産生能の変化による寿命伸長効果(Huang;Nature2014)やその欠陥が引き起こす病態(大竹)を紹介し、生命現象におけるATP合成の重要性を再考する。


2W8-p12月2日(水) 14:00-16:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

脳内免疫と疾患 -神経科学のオフェンス研究からディフェンス研究へ-

オーガナイザー: 平澤 孝枝(帝京大学)

私達の体には体内に侵入するバクテリアやウイルスなどから生体を防御する機構が存在しています。いわゆる免疫機構です。白血球は体の免疫細胞の代表的な細胞ですが脳内には白血球が入らない仕組みがあります。脳に白血球が侵入出来るのは病気や怪我で損傷した時だけで、通常の脳内の免疫制御はミクログリアというグリア細胞が担っています。ミクログリアはその起源も脳を構成するニューロンやアストロサイトは異なる特殊な細胞です。また同じ免疫を司る細胞とは形態が全く違い、通常は突起を伸ばして周囲の細胞に接触して異常がないかを感知し、ニューロンに異常が起こると形を変えます。脳内環境を維持するために成長因子を放出したり、あるいは細胞を殺してしまう因子も放出する両極の役割を持っています。いったいなぜ一つの細胞で様々な機能を持つのか?なぜ他の免疫細胞とは違った独特の形態を持つのか?そして、それらの機能は疾患とどのような関係があるのか?脳科学にみる行動やニューロンのダイナミックな機能を外に向けた反応(オフェンス)とするとミクログリアの機能は脳内の内に向ける反応(ディフェンス)と考えました。神経科学が多種多様なオフェンスを調べることもさることながらディフェンス機能のメカニズムを追及することも重要であることを幅広く知ってもらいたいと考えて神経科学のオフェンスからディフェンスへとサブテーマを設けました。また脳内免疫の異常は精神・神経疾患だけでなく幅広い疾患の原因と思われますが、具体的な根拠と他分野との情報の共有が出来ていないように思います。脳科学だけではなく幅広い分野の研究者に参加してもらいたいと考えています。


2W9-p12月2日(水) 14:00-16:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

転写因子による細胞分化・増殖制御

オーガナイザー: 横山 明彦(京都大学 ) / 田村 智彦(横浜市立大学 )

多細胞生物において,同一のゲノム配列を持ちながらも幹細胞や前駆細胞が機能の異なる様々な細胞に分化・増殖する過程では,転写因子による細胞種特異的な遺伝子発現パターンの確立が重要である.昨今注目されるエピジェネティクスや,非翻訳性RNAそして転写因子自身の発現も、転写因子によって制御される.そして転写因子に異常が生じると,必要な細胞が作られなくなったり,不必要な細胞が無制限に作られるようになり,病気として表面化する.転写因子研究は,次世代シーケンサーによるChIP-seqやRNA-seq,高感度質量分析,バイオインフォマティクスなど新たな網羅的分析技術が集結し,新たな時代に入っている.そこで本ワークショップでは,転写因子による分化・増殖制御に関する最前線の研究を,複数の細胞系譜にわたって紹介する.今一度転写因子の観点に立ち返って細胞分化・増殖を議論する事で,細胞種を超えた普遍的な機構が垣間見えることを期待している.


2W10-p12月2日(水) 14:00-16:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

植物エピゲノム研究の最前線

オーガナイザー: 関 原明(理化学研究所) / 松永 幸大(東京理科大学) / 木下 哲(横浜市立大学)

最近、DNAのメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティックな制御が環境ストレス適応や発生など種々の植物の生命現象において重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。植物を用いた解析からエピジェネティック制御に関与する新規な因子の同定も報告されてきている。さらに、高速DNAシーケンサーが解析に活用され、エピゲノム制御の機構解明が加速化されてきている。本ワークショップでは、上記分野における最新の研究を紹介して頂く。


2W11-p12月2日(水) 14:00-16:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

生体膜ダイナミクスと脂質

オーガナイザー: 中津 史(新潟大学) / 申 惠媛(京都大学)

細胞は膜で形作られ、オルガネラ等の細胞内コンパートメントもまた膜で形成されている。これら生体膜は、タンパク質・脂質の生合成やシグナリング等の局所場として利用され、また細胞内物流の媒介役として、ダイナミックに変形、曲折、分裂・融合することで細胞生理機能の根幹を制御する。これらの生体膜ダイナミクスの制御には脂質が重要な役割を担っており、近年の目覚ましい膜・脂質研究の発展から、様々な興味深い新知見が得られている。本シンポジウムでは、その脂質による巧みな生体膜ダイナミクス制御機構につき最新の知見を共有し、議論を深める場としたい。


2W12-p12月2日(水) 14:00-16:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

情報共有型再生医療研究の夜明け

オーガナイザー: 末盛 博文(京都大学) / 中井 謙太(東京大学)

ヒト幹細胞とそれに基づく再生医療研究については、非常に注目度が高く、その日々の進歩はマスコミを通して過剰なほどに報道されている。しかし、個々の研究室の規模は医療に求められる信頼性を確保するには小さ過ぎ、再生医療の一般化・実用化への壁が懸念される。我々は次世代の再生医療研究に必要なキーワードの一つは「IT技術を用いた情報共有と研究の情報科学化」であると考えている。これによって、たとえば、再生医療研究にビッグデータ情報解析技術を応用したり、複数の研究室がデータを出し合って、幹細胞研究の品質管理基準をつくったり、研究成果を産業化していったりすることが加速していけるはずである。世話人らは過去4年間、厚生労働科研費の支援を受け、その実現に向けて先駆的実証研究を進めてきた。本ワークショップでは、我々のプロジェクトの成果やその関連研究を、次世代を担う若手研究者を中心に発表していただき、再生医療研究の新時代について議論したい。


2W13-p12月2日(水) 14:00-16:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

深化するNotchシグナル研究-理解され始めたコンテクストに依存するシグナル制御の分子基盤

オーガナイザー: 伊藤 素行(千葉大学) / 北川 元生(千葉大学) / 松野健治(大阪大学)

Notch受容体を介するシグナル伝達系(Notchシグナル伝達系)は、多細胞動物でよく保存されており、発生や恒常性の維持において重要な役割をはたしている。Notchシグナル伝達系には発生過程や組織により異なった制御機構や機能が存在する。このような特異性のあるNotchシグナルのほとんどは、現象としては報告されてきたが、その実体は不明のままであった。この数年の研究の進歩により、Notchシグナルの組織、ステージ特異的な制御機構が分子のレベルで明らかになり始めた。例えば、リガンド非依存的なNotchシグナルの活性化経路はその例である。また、ヒト病態発現に関するNotchシグナルの役割の多様性を説明する分子メカニズムも明らかになりつつある。本ワークショップでは、このようなNotchシグナルのコンテクスト依存的な制御を中心に、この分野の研究の新たな方向性を討論する。


2W15-p12月2日(水) 14:00-16:30 第15会場(神戸国際会議場 3F 国際会議室)

長鎖非コードRNAのフロンティア:生化学、分子生物学、医学からのアプローチ

オーガナイザー: 黒川 理樹(埼玉医科大学) / 大吉 崇文(静岡大学)

多様な性質を示す長鎖非コードRNA(long noncoding RNA:lncRNA)は、様々な分野の研究者が注目しているが、その生理機能や発現機構など未解決の問題が多い。これらの問題への挑戦には多面的なアプローチが必要である。本ワークショップでは、化学を基盤にした構造解析、生化学・分子生物学による機能解析、計算機解析、そして、lncRNAの関連疾患研究を精力的に進めている最前線の研究者を中心に講演を企画した。ここでの論議はlncRNAの構造的基盤から、その生物学、そして、臨床研究への展望と広範な分野に強いメッセージを発信できるものと期待している。


2W16-p12月2日(水) 14:00-16:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

マルチオミックス統合解析の新機軸

オーガナイザー: 大澤 毅(東京大学) / 島村 徹平(名古屋大学)

生命は核酸、糖質、脂質、タンパク質などの複雑な有機化合物から構成されている。近年では次世代シークエンサー、質量分析器の普及により、ゲノム配列、転写、翻訳、代謝、タンパク質複合体、などの生命現象が網羅的にまた1細胞レベルで解析されており、メガデータを取り扱わなければ細胞の全体像は見えてこない時代を迎えている。真核生物の複雑かつ精緻な仕組みを解き明かし、病態へ繋がる細胞の不可逆的な変化を捉えるにはこれら様々なオミックスを統合する視点が必要である。本セッションでは、それぞれのオミックス及び情報解析で活躍する研究者が集い、時々刻々と変化する細胞内の物質を多元的に積分して捉える新たな解析の可能性を共有する場としたい。


2W19-p12月2日(水) 14:00-16:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

ギャップジャンクション:コネキシン・イネキシン・パネキシン   -構造から発生・病理まで-

オーガナイザー: 渡邉 正勝(大阪大学) / 大嶋 篤典(名古屋大学)

ギャップジャンクションは分子量1,000以下の低分子化合物を直接的に通すことで細胞間のコミュニケーションを仲介するチャネル分子であり、多細胞生物の様々な組織や器官で重要な機能を担っている。しかしその分子非特異性などから、分子機能の解明が難しい分子とされている。脊椎動物ではコネキシンが、無脊椎動物ではイネキシンがギャップジャンクションの構成タンパク質となっているが、両者に近縁性はなく、イネキシンの脊椎動物オロソログとしてはヘミチャネルとして機能するパネキシンが知られている。本ワークショップでは、構造生物学、発生生物学から病理学まで様々な角度からギャップジャンクションの機能について議論を行いたい。


2W20-p12月2日(水) 14:00-16:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

DGシグナリングと糖尿病関連疾患

オーガナイザー: 坂根 郁夫(千葉大学) / 白井 康仁 (神戸大学)

糖尿病は慢性的な高血糖状態がもたらす疾患であり、予備軍を含めると患者数は約2000万人を超える国民病である。罹患が長期に亘ると、網膜症、腎症、末梢神経症などの糖尿病性血管合併症を発症し、患者のQOLに大きな影響を与えている。これまでに、血糖調節ホルモンであるインスリンの分泌にプロテインキナーゼC(PKC)が関与していることや、糖尿病性網膜症や腎症の増悪化にPKCの異常な活性化が関与していることが知られている。一般的にPKCは受容体刺激によって産生されるジアシルグリセロール(DG)によって活性化されるが、近年このDGをリン酸化し、ホスファチジン酸に変換するDGキナーゼもまた、インスリン分泌やインスリン抵抗性などに関与していることが明らかとなってきた。そこで、本ワークショップでは両酵素に着目し、インスリン分泌や糖尿病性血管合併症におけるDGシグナリングについて過去から現在に至るまでの話題を提供し、糖尿病性関連疾患の創薬ターゲットとしてのDGシグナリングについて論議する。


2W22-p12月2日(水) 14:00-16:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

「遺伝情報のセントラルドグマに人工塩基・人工アミノ酸を組み込む」

オーガナイザー: 横山 茂之(理化学研究所) / 他1名を検討中

複製→転写→翻訳という遺伝情報のセントラルドグマにおいては、DNAおよびRNAにおけるそれぞれ4種類の塩基、タンパク質における20種類のアミノ酸という「文字」で構成される「アルファベット」が用いられる。複製、転写、翻訳の分子機構が核酸・タンパク質の立体構造のレベルで解明されるようになって、それらの文字に対する極めて高い特異性が新たなバイオテクノロジー開発のターゲットとなってきた。複製過程については、PCR反応においてワトソン・クリック型塩基対と特異性や効率で遜色ない人工塩基対が開発され、人工塩基を含む配列のDNAアプタマーの選択に応用され、天然塩基では達成できない優れた機能を実現することを可能にしている。他方、翻訳過程については、様々な有用人工アミノ酸を部位特異的にタンパク質に組み込むことのできる改変tRNA・酵素システムによる「拡張遺伝暗号」が開発され、新規のバイオ医薬品の開発に用いられている。


2W24-p12月2日(水) 14:00-16:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

発生プログラムの時空間制御を担うカルシウム振動シグナルの新展開

オーガナイザー: 榎本 和生(東京大学) / 上野 直人(基礎生物学研究所)

近年の高感度カルシウム・プローブ群の開発に伴い、in vivoレベルにおいてカルシウム動態を経時的かつ定量的に捉える事が可能となってきた。その結果、局所性カルシウム振動シグナルが、多細胞協調運動や神経回路再編など、高度な時空間制御や多細胞間コミュニケーションを伴う発生現象において中心的な働きを果たす事が明らかにされつつあり、カルシウム振動研究は新たな局面を迎えている。本シンポジウムでは、組織発生、神経再生、植物生殖など多分野の第一線で活躍する研究者に最新の話題を提供頂き、発生プログラムにおけるカルシウム振動シグナル研究の展望について議論したい。


2W26-p12月2日(水) 14:00-16:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

医科学へ進歩し続けるトランスグルタミナーゼ研究

オーガナイザー: 一瀬 白帝(山形大学) / 小嶋 聡一(理化学研究所) / 人見 清隆(名古屋大学)

トランスグルタミナーゼ(TG)は、タンパク質同士の架橋反応を触媒する酵素であり、多彩な病態や疾患に関与している。年々驚くべき新知見が得られており、国際的研究者がホットな研究成果を紹介する: Mutch博士は、活性化血小板表面に露出された凝固第XIII因子Aサブユニットがα2-plasmin inhibitorの架橋結合により抗線溶作用を発揮することを、惣宇利博士は、第XIII因子Bサブユニットがfibrinogen、トロンビンと3者複合体を形成して架橋結合反応を促進するという新しい止血機能を提唱する。Iismaa博士は、TG2の遺伝子改変マウス研究の経緯と変異体の表現型や生体の恒常性への影響について論じ、横崎博士は、TGの基質であるopteopontinが多量体化してインテグリンalpha9beta1のリガンドとなることとその欠失体、点変異体を用いた結合部位の探索について報告する。小嶋博士は、約3万化合物のスクリーニングで得た、TG2の新核内移行シグナルを阻害するヒット化合物について論じ、人見博士は、腎疾患において発現が変動するTG2とTG1の解析とそれらの基質タンパク質群の探索について語る。


2W27-p12月2日(水) 14:00-16:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

周皮細胞(ペリサイト)の病態生理学的重要性

オーガナイザー: 西山 功一(熊本大学) / 山本 誠士(富山大学)

微小血管周囲に存在するペリサイト(周皮細胞)は、100年以上前からその存在が知られていたが、長らく機能不明な細胞として扱われ、研究の対象としての魅力に欠ける存在であった。近年、ペリサイトに対する種々の分子マーカーの発見により、ようやく生物学的、病態生理学的意義が理解され始めた。生理的状態におけるペリサイトの機能は、微小血管の血流コントロールや透過性制御の他に、血管内皮細胞とペリサイトとの間で相互に細胞シグナル伝達を行い、血管の安定化に重要な役割を果たしていると考えられている。糖尿病や炎症性疾患などの病的状態では、血管内皮細胞とペリサイトの相互シグナルの破たんが起こるとされ、過剰な血管新生などの病的血管リモデリングが進行し、さらに血管透過性が亢進し、それらの結果周辺組織の機能不全をもたらすと考えられている。そのような背景から、ペリサイトを対象とした多面的研究を施行し、生理的・病的状態におけるペリサイトのバイオロジーを深く理解することが喫緊の課題である。本ワークショップでは、気鋭の演者たちによる最新の研究結果をもとに、ペリサイトの病態生理学的重要性を考察することを目的とする。


3W512月3日(木) 9:00-11:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

生体分子ホモキラリティーのパラダイムシフト - D-アミノ酸研究の新展開

オーガナイザー: 藤井 紀子(京都大学) / 本間 浩(北里大学)

生体分子のホモキラリティーは広く常識として受入れられているが、近年その対掌体の存在と機能について著しい進歩が見られる。特にアミノ酸においては、遊離型、結合型を問わず、D型アミノ酸(D-AA)が高等生物に広く存在することが明らかになっている。遊離型D-セリンやD-アスパラギン酸(D-Asp)は神経活動に深く関与して統合失調症やALSなどの発症に関わること、内分泌物質の産生を調節することが知られている。立体特異的なD-AA代謝酵素の研究も著しく進展している。また、食品化学ではD-AAの2次機能(呈味)が注目されている。一方、水晶体や脳の不溶性蛋白質中では、結合型D-AAとしてD-Asp残基が蓄積しており、白内障やアルツハイマー病の発症に関与することが指摘されている。本ワークショップでは、最新のD-AA分析法 (HPLC, LC-MS/MSなど) の紹介とともに、D-AA研究が、今まで不明であった種々の生命現象の解明に寄与すること、疾患の原因・予測に有用であることを紹介する。


3W612月3日(木) 9:00-11:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

脂質シグナリングとその破綻がもたらす病態の理解

オーガナイザー: 小林 俊秀(理化学研究所) / 深見 希代子(東京薬科大学)

リン脂質は細胞膜の単なる構成脂質ではなく、細胞膜を介したシグナル伝達や細胞膜の形状変化に関わる非常に動的かつ重要な生体物質である。リン脂質はゲノムにコードされていないため、その量的・空間的動態は各種代謝酵素により調節されており、リン脂質代謝の異常は様々な疾患に関与する。しかしながら脂質自体の可視化は技術的に困難なことが多く、脂質が何処でどう機能するのかは未だ不明な点が多い。本ワークショップでは発展途上の脂質イメージングをリードしている研究者と若手研究者を交えて、「どうやったら脂質が見えるか?」、そしてリン脂質動態がどのように各種疾患に関連しているのかを議論する。ミクロの細胞膜からマクロな個体機能へ繋がる脂質研究の一翼を展開したい。


3W712月3日(木) 9:00-11:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

構造分子生物学・生化学の進展

オーガナイザー: 箱嶋 敏雄(奈良先端科学技術大学院大学) / 前仲 勝実(北海道大学)

現在ほど蛋白質の立体構造と生命科学研究が密接につながることはなかった。最先端の技術を駆使して、空間的にも時間的にも生物現象を可視化することは、ますます重要となっている。日本からも、キネトコア複合体あるいはFGFシグナル共受容体などの分子生物学・細胞生物学、細菌感染や自然免疫などの医科学分野、あるいは糖タンパク質の構造生化学に関する構造生物学等での成果が、若手研究者の活躍で発信されている。このように構造生物学が生命科学の隅々に行きわたると、得られた成果が細分化された領域でのローカルな知識の集積等で終わってしまうのも残念である。そこで、本ワークショップでは、”構造生物学”を活発に展開する「異分野」構造研究者が一堂に会して、海外の新進気鋭の研究者等と共に、新しいテクニックや考え方、研究戦略等も踏まえて最新の成果や、各分野の現状を報告し、さらに産業応用も含めた今後の展望について議論する機会としたい。


3W812月3日(木) 9:00-11:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

オモロイ生き物の分子生物学

オーガナイザー: 三浦 恭子(北海道大学) / 嘉糠 洋陸(東京慈恵会医科大学)

生命科学を生業とする研究者なら誰しも、大好きな”オモロイ生き物”がひとつくらいはあるだろう。それはきっと線虫やショウジョウバエ、マウスなどのモデル生物ではなく、奇妙な生態や美しい形などの不思議な生命現象を煌びやかに纏った、実験室の外に息づく多士済々の生物種に違いない。これらオーセンティック(authentic【形】“本物の”)生物は、これまで分子生物学的な解析が困難な対象として位置づけられてきた。しかし近年、次世代シーケンス解読、トランスジェニック法、RNAiによる遺伝子機能解析、また CRISPR/Cas9によるゲノム編集など、様々な革新的技術の登場により、解析が困難であった生物種の生命現象と遺伝子・タンパク質機能を結びつける ことが可能になりつつある。本ワークショップでは、魅力溢れる様々なオーセンティック生物が表現する多様な生物学的事象に着目し、多岐に渡る方面で活躍されている研究者の最新の研究について紹介したい。


3W912月3日(木) 9:00-11:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

POKファミリーが司る組織分化の複雑性 ~転写抑制とクロマチン制御~

オーガナイザー: 岡戸 晴生(東京都医学総合研究所) / 宮武 昌一郎(東京都医学総合研究所)

POKファミリー(zBTB, POZ-ZF, BTB-ZF)はBTB(POZ)ドメインとzincフィンガーモチーフを有する分子で, これまで50種近く同定され、主に発生期に機能する。進化的には、脊椎動物から種類が飛躍的に増加し、免疫、神経系などの複雑な分化システムの構築に重要と推察される。POKファミリーの関わる免疫系の疾患では骨髄性白血病(PLZF)、B細胞リンパ腫(BCl-6)などが有名で多くのPOKが精力的に研究されてきた。最近、神経系でも、知的障害疾患で、RP58(zBTB18)やzBTB20のミスセンス変異が報告された。 POKファミリーのほとんどは転写抑制因子であり、HDAC、Sirt1、Dnmt等をゲノムの特異的な配列にリクルートし、DNAのメチル化やヒストンの脱アセチル化を介してクロマチンのリモデリングに関与する。すなわち、POKはエピジェネテイック過程に深く関与していると推察される。本ワークショップでは、いくつかのPOKの機能をクロマチン修飾の研究とともに議論したい。


3W1012月3日(木) 9:00-11:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

血管・代謝異常の動的変化を探るエピゲノミクス

オーガナイザー: 南 敬(東京大学) / 酒井 寿郎(東京大学)

日本人の主要な死因(がん・脳梗塞・心疾患)には血管や代謝の病的な変化が深く寄与している。その病態に至る細胞の動態をゲノムワイドに転写制御やヒストン/DNA メチル化制御の観点から解析することで新たなパラダイムやシグナルカスケードの発見に繋がるのみならず、生理的な又は制御を超えた病的なこれらのエピゲノム変動ががんや生活習慣病の初期段階のマーカーになり得ることも期待される。このエピゲノム制御は細胞系譜特異的であると考えられており、生体恒常性維持に深く寄与する血管細胞や脂肪細胞において最近進展が得られてきた。そこで本セッションでは生活習慣病に関わる細胞でのエピゲノム解析をベースにした疾患生物学(疾患エピゲノミクス)の観点からその原理や機能について最新の知見を交えて幅広く議論したい。


3W1112月3日(木) 9:00-11:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

RNA顆粒のバイオロジーとダイナミクス ~細胞運命決定機構と疾患研究の最前線~

オーガナイザー: 武川 睦寛(東京大学) / 杉浦 麗子(近畿大学)

ストレス顆粒やP-bodyに代表されるRNA顆粒は、様々なストレス刺激に応答してダイナミックに形成される細胞内構造体であり、RNAの輸送や分解、翻訳などのRNA代謝を時空間的にリプログラミングするが、その詳細な分子機構や生理機能は謎である。また近年、このようなRNAの運命決定における役割に加えて、RNA顆粒が様々なシグナル伝達経路(mTORやMAPキナーゼ経路など)を制御することで、アポトーシスなどのストレス応答やウイルス感染防御の拠点(ハブ)としても機能することが明らかとなり、強く注目を集めている。さらに、RNA顆粒の機能異常が、神経変性疾患や癌などの病因・病態にも深く関与することが見出されており、RNA顆粒がこれら難治性疾患に対する新たな治療標的となる可能性が指摘されている。本セッションでは、RNA顆粒のバイオロジーに焦点をあて、RNA顆粒の形成機構と生理機能に関する最新の知見を紹介すると共に、その破綻がもたらす疾患(ウイルス感染、神経変性疾患や癌など)との関連について議論したい。


3W1212月3日(木) 9:00-11:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

DNA複製開始を制御する高次複合体ダイナミクス:多様性と普遍性

オーガナイザー: 片山 勉(九州大学) / 升方 久夫(大阪大学)

DNA複製開始は細胞周期の決定的な制御ポイントとなっているため、多様な因子による巧妙な制御機構の下にある。多様な制御反応は、複製開始点DNAと多因子により一過的に形成される高次複合体ダイナミクスに集約される。種々のモデル生物を用いた研究から、複製開始点DNAや複製開始タンパク質の構造と機能、複合体形成の基本機構、細胞周期やクロマチン構造による制御などについて、生物種を越えた基本構造と種特異性とが俯瞰できるようになってきた。原核生物から多細胞真核生物まで大きく異なる細胞環境の中で、DNA複製開始のしくみが他の細胞内反応とどのように密接に結びつき、かつ独立性を保ちながら維持されてきたのかを考えることは、生命の本質を理解する助けになると考える。このワークショップでは、多くの新しい研究手法によってもたらされた複製開始とその制御の分子メカニズムの知見を集積し多様性と普遍性を論じることにより、生命継承の本質を考える機会としたい。


3W1312月3日(木) 9:00-11:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

栄養・メタボライトと遺伝子発現調節~ニュートリゲノミクスの最前線

オーガナイザー: 矢作 直也(筑波大学) / 松本 道宏(国立国際医療研究センター研究所)

ニュートリゲノミクスとは、栄養環境が遺伝子発現に与える影響の解明を目指す研究領域である。生体は栄養環境の様々な変化に適応する能力を持つが、これを発揮する上で遺伝子発現調節は中心的な役割を果たしている。近年、分子生物学的な解析技術の進歩により、臓器・個体レベルでのニュートリゲノミクス解析が可能となり、新たな知見が得られている。そこで本ワークショップでは、エピゲノム修飾や翻訳制御も含めて、栄養環境が遺伝子発現に及ぼす影響について、幅広く議論を行いたい。


3W1612月3日(木) 9:00-11:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

放射線生物影響の課題に挑む分子生物学研究の力

オーガナイザー: 小林 純也(京都大学) / 松本 義久(東京工業大学)

2011年の福島第一原子力発電所事故によって、137CS, 131Iなどの放射性物質が環境へ大量放出されたことは、それらが発する電離放射線の生物影響に関する社会的関心事・懸念を高めるきっかけとなった。電離放射線は生物のゲノムDNAに二重鎖切断(DSB)をはじめとするさまざまな損傷を生じさせる。DNA修復の分子機構に関する研究は酵母、放射線感受性遺伝病細胞などを用いてこれまで大きな進展が見られている。しかし、電離放射線はDNA損傷だけでなく、細胞内酸化ストレスの増大、それと関連したミトコンドリア異常、ストレス応答の活性化など、DNA損傷に直接起因しない様々な細胞反応を誘発し、とりわけ低線量ではDNA損傷にもまして酸化ストレス応答の重要性が高くなると考えられる。本ワークショップではこれまで放射線生物影響研究に接点が少なかった酸化ストレス、ミトコンドリア動態、細胞老化、炎症応答、幹細胞研究など、さまざまな観点から低線量放射線を含めた放射線生物影響研究の現在の課題との関係性を議論するとともに、これらの重要課題の解決するための分子生物学研究者による研究ネットワーク構築についても考えたい。


3W1912月3日(木) 9:00-11:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

高次生命機能を支えるメンブレントラフィック

オーガナイザー: 福田 光則(東北大学) / 佐藤 健(群馬大学)

真核細胞の細胞内では絶えず様々な物質が膜に包まれてダイナミックに輸送されている。2013年度のノーベル生理学・医学賞の対象ともなったこのメンブレントラフィックと呼ばれる現象は、全ての真核生物に普遍的に保存されており、進化的に保存されたタンパク質群によって制御されている。メンブレントラフィックは細胞自身の恒常性維持に不可欠なだけでなく、多細胞生物においては高度に分化した細胞・組織で特殊な役割を担っている。最近、神経細胞、上皮細胞、筋肉細胞などに特殊化したメンブレントラフィックが生体において高次機能を発揮する分子メカニズムが徐々に明らかになってきた。本シンポジウムでは、多細胞生物の高次生命機能を支えるメンブレントラフィックに焦点を当て、一線で活躍する研究者に最新の話題を提供して頂く。


3W2012月3日(木) 9:00-11:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

Hippoシグナル伝達経路が制御する多様な細胞応答

オーガナイザー: 仁科 博史(東京医科歯科大学) / 畑 裕(東京医科歯科大学)

器官サイズや発がん抑制を制御するHippo経路が発見されて10年以上経過し、その複雑性と多様な細胞応答への関与が明らかになってきた。Hippo経路は細胞間接触や細胞骨格刺激に応答し、細胞接触阻害や上皮間葉転換, 幹細胞の未分化維持の制御に関与する。一方、根本的な疑問も残っている。細胞内の事象であるHippo経路が細胞外の事象である細胞数を認識する仕組みや、器官の3次元構築に必要な張力に応答するHippo経路と張力制御との関係が挙げられる。また、Hippo経路破綻による病態の発症機構についても未だ不明の点が多い。本ワークショップでは、第一線の研究者たちに魅力的な話題を提供して頂く。


3W2212月3日(木) 9:00-11:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

アミノ酸研究の新展開:細胞シグナルとしての動的制御機構

オーガナイザー: 林 良敬(名古屋大学)

糖・脂質代謝の動的制御は糖尿病や高脂血症などの生活習慣病と直結し、その機構の解明が進んでいる。一方、アミノ酸は従来から栄養学的視点からの解析が重視され、アミノ酸代謝の動的制御に関連する知見は限られていた。しかしながら最近、細胞内アミノ酸濃度の感知機構の一端が解明されたことから、今後アミノ酸代謝の動的制御機構に注目が集まると考えらえる。アミノ酸はタンパク質合成や糖新生の基質となる一方で、その一部は神経伝達物質や細胞内シグナルとして機能するなど、生体において多様な役割を果たす。本ワークショップでは、アミノ酸による細胞分化制御とその機構・アミノ酸の輸送とその感知機構・ホルモンによるアミノ酸代謝制御・代謝シグナルとしてのアミノ酸の役割などに関する新しい話題を紹介する。本ワークショプを個体レベル・臓器レベル・細胞レベルにおけるアミノ酸の動的制御とその役割を融合的に解明する端緒としたい。


3W2412月3日(木) 9:00-11:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

データベース生物学: 公共データの再利用による新しい研究スタイルのすすめ

オーガナイザー: 広田 喜一(関西医科大学) / 坊農 秀雅(ライフサイエンス統合データベースセンター)

ビッグデータの時代である。生命科学の分野での典型例は本邦のDDBJも参加する「DDBJ/EMBL-Bank/Genbank国際塩基配列データベース」でありこのような公共データベースの活用は研究活動で重要な役割を占めるようになってきてすでに情報科学者だけのものではなくなっている。キュレーションと活用ツールの開発により公共データベースは装いを一新して存在感をましている。講習会,チュートリアルビデオなどを活用した学びの機会は数多く提供されているものの「自分」に必要なデータベース・ツールを見つけて自家薬籠中のものとするのは容易ではない。キュレーション・メタ情報の付加を含んだ公共データベース構築,それを活用するためのプログラミングを含む活用ツール作り,また研究者とデータベースの関わりの実際を紹介して誰でも”バイオインフォマティシャン時代”を俯瞰しデータベースの再発見を参加者にせまるワークショップを目指す。


3W2612月3日(木) 9:00-11:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

病原微生物の増殖制御として働く宿主細胞オルガネラ

オーガナイザー: 花田 賢太郎(国立感染症研究所) / 鈴木 哲朗(浜松医科大学)

様々なオルガネラが機能を維持、発揮することが真核生物にとって不可欠であるが、病原微生物が宿主細胞に感染し増殖する際にも、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなどの機能やメンブラントラフィックが重要な役割を果たしている。しかしながら、病原体因子によるオルガネラの機能利用、ハイジャックの分子実態は未だ不明な点が多い。一方、病原体感染におけるオルガネラの品質管理の破綻、オルガネラストレスが感染症の病態に関与することが明らかになりつつある。このようなオルガネラとの相互作用解析は多くの場合、各病原微生物の個別研究で進められてきた。本ワークショップでは、ウイルスや細菌等病原微生物の増殖制御を司る宿主オルガネラ機能に関する各研究成果を同時に議論することによって、病原微生物のライフサイクルの共通性と多様性、またオルガネラ・ダイナミクスからみた感染症病態に理解を深めるとともに、新しい切り口による研究創案に繋げることを目指す。


3W2712月3日(木) 9:00-11:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

新農薬を志向したケミカルバイオロジー

オーガナイザー: 長田 裕之(理化学研究所) / 河岸 洋和(静岡大学)

ケミカルバイオロジーは化学をツールとして用いて複雑な生命現象の解明に挑戦する学問である。農学の分野では古くからケミカルバイオロジー的研究が行われてきたが、最近のケミカルバイオロジー的手法の発展により更に効率的な研究が可能になってきた。公的化合物ライブラリーの整備や、化合物アレイ等の新たなツールの開発が行われてきている。現在、新しいタイプの農薬の開発を志向したケミカルバイオロジーが展開されている。本ワークショップでは、ケミカルバイオロジー的手法による病原菌の制御、かび毒の制御、病害虫の制御、植物の生長制御に関する最新の研究を紹介し、議論したい。


3W2-p12月3日(木) 14:00-16:30 第2会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽1)

多様なDNA損傷応答の統合制御機構2015 ~ゲノム不安定性の病態解明研究~

オーガナイザー: 柴田 淳史(群馬大学) / 荻 朋男(名古屋大学)

DNA損傷はがんや老化の原因となる危険な細胞刺激である。DNA修復、細胞周期チェックポイント、細胞死誘導など、DNA損傷により惹起されるそれぞれの分子機構は明らかになりつつある。これらの反応は相互に関連して制御されているはずだが、その反応機構は未だ詳しくわかっていない。本ワークショップでは次世代研究テーマであるDNA損傷から細胞運命決定までの連動について、病態研究に焦点を当て議論の場を設けたい。


3W3-p12月3日(木) 14:00-16:30 第3会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽2)

生体反応システムの頑強性と進化可能性

オーガナイザー: 堀越 正美(東京大学) / 一柳 健司(九州大学)

生命現象は様々な分子間の多様な相互作用や化学反応の集積によって営まれ、複雑なネットワークシステムが成立している。このような複雑系システムは各要素の変異や反応の障害などに対して頑強(ロバスト)であると同時に、可塑的な性質も持つ。例えば、個体発生過程は各細胞の遺伝子発現状態が経時的に変化していく軌道が安定化しており、環境や変異の摂動に頑強であるが、一方、進化の過程で変更されることもある。本ワークショップでは遺伝子発現制御、シグナル伝達や細胞質流動などの頑強性のシステム的理解をめざす数理的、実験的な研究を紹介し、さらにこれらのシステムの頑強性・可塑性が表現型の可塑性や生物進化にどのような影響を与えているのかを議論する。


3W4-p12月3日(木) 14:00-16:30 第4会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽3)

生活習慣病の基盤にある代謝・免疫・老化クロストーク

オーガナイザー: 尾池 雄一(熊本大学) / 真鍋 一郎(東京大学)

心血管疾患や代謝疾患を中心とする生活習慣病は、日本人の死因の1/3を占めており、肥満の増加や高齢化とともに増え続けている。近年、慢性炎症が生活習慣病に共通する基盤病態として理解されるようになったが、その誘導と拡大には代謝系と免疫系の複雑な相互作用が寄与していることが分かりつつある。その相互作用は、個体レベルの連携から、細胞間、細胞内の分子装置によるリンクまで、多岐のレベルにわたることが示唆されている。一方、細胞老化や個体老化は代謝や免疫の変容をもたらし、代謝・免疫連携機序を介して生活習慣病を増加させる可能性がある。本ワークショップでは代謝系・免疫系・老化のリンクの役割とその分子装置に関して最先端の成果をご報告いただき、今後のメカニズム研究と治療法開発の方向性を探りたい。


3W5-p12月3日(木) 14:00-16:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

神経変性疾患の原因を遺伝子レベルからアプローチする

オーガナイザー: 石田 直理雄(産業技術総合研究所)

高齢化する近代社会では神経変性疾患研究は避けられない研究課題である。特にパーキンソン病はアルツハイマー病に次ぐ罹患率の高い神経変性疾患であり家族性のものはその原因遺伝子が良く同定されている。さらに最近ではゴーシェ病原因遺伝子をヘテロに持つ患者さんがパーキンソン病に28倍罹りやすくなる事も話題となっている。今回様々な動物モデルからヒトまでを対象にしたこれら神経変性疾患の最先端の研究者にお集まりいただき、遺伝子レベルから分子機構を議論していただくとともに、これら認知症を克服するための方法についても討論すると共に、フロアーからも多くの意見をいただきたい。


3W6-p12月3日(木) 14:00-16:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

生体機能創出基盤としての細胞間接着・骨格動態

オーガナイザー: 池ノ内 順一(九州大学) / 月田 早智子(大阪大学)

多細胞生物における生体システムの構築では、多細胞が集団として獲得した特異的なパラメーターが重要である。多細胞体の生体機能構築過程において、細胞接着は細胞骨格シグナル系と協働することにより、統合的に細胞集団全体の動態を制御すると思われる。しかしながら、例えば、上皮細胞間の接着、神経細胞のシナプス、細胞と基質の接着、免疫細胞間の接着、幹細胞の非対称分裂など、様々な接着を介した生命現象に関して、個別の分子の機能に対する理解は進んでいるものの、接着を起点として、いかに機能的細胞群の動態が創発されるかについての理解は不十分である。本ワークショップでは、こうした背景を踏まえ、生体システムに重要な種々の細胞接着・骨格複合体を基軸とした、細胞群の統合的生体機能構築メカニズムについて、多角的な議論を展開する。


3W7-p12月3日(木) 14:00-16:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

統合化に向けて加速する脂質生物学の現状と展望

オーガナイザー: 平林 義雄(理化学研究所) / 伊東 信(九州大学)

生体膜の構築と機能発現に必須な脂質分子に多くの関心が集まっている。特に質量分析法の急速な発展は、何百種類もの脂質分子種を一挙に解析することを可能にし、生体膜脂質に関する情報量は急速に拡大しつつある。その一方で、今日においてもオミック的手法では捕らえることのできない機能的に重要な新規脂質分子の存在も明らかにされている。進化の過程で、生物はなぜ多くの脂質分子種を持つに至ったか、また、その生合成制御機構、生物機能は何かといった基本的命題を解明することは、生物学的に重要であるばかりでなく脂質代謝異常症、脳・神経疾患、皮膚疾患、感染症などの発症機構の分子基盤を理解し創薬の手がかりを得る上でも重要である。それを成し遂げるには、分野横断型の研究の推進とさらなる技術革新が必要である。本シンポジウムでは、多様な脂質分子が作り出され壊される分子機構、生体膜ドメインの形成、脂質と共役(あるいは標的)として働くタンパク質、1細胞脂質解析技術など、脂質研究の統合化と技術革新を目指した最新の話題を提供し、将来の展望を議論する。


3W8-p12月3日(木) 14:00-16:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

最近の技術から見えてきた細胞膜受容体の新しい側面

オーガナイザー: 山内 淳司(国立成育医療研究センター研究所) / 加藤 裕教(京都大学)

細胞膜受容体は、様々なシステムを利用して細胞内にシグナルを伝達する。また細胞膜受容体の多くは、様々な組織における疾患との関連性が示されており、創薬のターゲットとしてもこれまでに数多くの開発対象となってきている。このような細胞膜受容体シグナルの基本的な分子メカニズムやその役割の理解が大きく進み、受容体シグナルの重要性が示されてきた。その一方で、顕微鏡などの技術の進歩や、新しい実験系の開発、新たな遺伝子改変生物の導入などにより、これまでの研究では見えてこなかった受容体シグナルの役割に関する新たな発見が、最近になって次々と示されている。本ワークショップでは、様々な分野において受容体研究を最前線で進めている方々を演者に選び、新たな展開を迎えた受容体シグナル伝達ネットワークの一端を、最新の研究成果をもとに議論していきたいと考えている。


3W9-p12月3日(木) 14:00-16:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

分子機序に基づいた難治性呼吸器疾患治療の新展開

オーガナイザー: 首藤 剛(熊本大学) / 沖米田 司(関西学院大学)

生体は,酸素を空気中から体内に取り入れ,その酸素が体内で利用された結果,生じる二酸化炭素を排泄する「呼吸」により,生きるために必要なエネルギーを得る.呼吸に関わる臓器を総称して呼吸器とよび,中でも,上気道,下気道および肺は,空気の通り道であるとともにガス交換において重要な役割を担う器官である.呼吸器の構造や機能が何らかの理由で破綻すると,生体は呼吸不全に陥り,種々の呼吸器疾患を惹起する.近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD),嚢胞性線維症(CF),特発性肺線維症(IPF),肺高血圧症(PH)などの難治性の呼吸器疾患が問題となっているが,本疾患領域においては対症療法が中心であり,分子機序に基づいた疾患治療の実践は未だ発展途上であるといっても過言ではない.本ワークショップでは,これらの呼吸器疾患の分子機序に基づき,既存薬やユニークな化合物を用いた疾患治療研究の最新の知見について議論を深めたい.


3W10-p12月3日(木) 14:00-16:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

分泌過程の修飾メカニズムとそのダイナミズム

オーガナイザー: 石川 裕之(千葉大学) / 後藤 聡(立教大学)

細胞間の情報伝達や相互作用において分泌あるいは細胞膜タンパク質は主要な役割を果たす。それらタンパク質のほとんどは小胞体で翻訳されたのち、小胞体やゴルジ体などの分泌経路において様々な修飾を受け正しい機能を獲得する。したがって、分泌経路での修飾がどのようなメカニズムで行われ、どのように制御されているかを明らかにすることは、細胞社会を理解する上で非常に重要である。さらに、そのような修飾を担う小胞体やゴルジ体といった細胞内コンパートメントの構造や機能の解析も重要である。また、修飾の多様な構造を解析するための技術開発も欠くことができない。本ワークショップでは、分泌経路での修飾として、糖鎖、脂質、リン酸、硫酸などに着目し、酵素、細胞内コンパートメント、そして解析技術に関する講演を通し、その修飾メカニズムと制御について議論を深めたい。


3W11-p12月3日(木) 14:00-16:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

核内非コードRNA アーキテクチャと生体機能

オーガナイザー: 齋藤 都暁(慶應義塾大学) / 廣瀬 哲郎(北海道大学)

次世代シーケンサーの登場以来、様々な生物種においてノンコーディングRNA(ncRNA)の存在が明らかになり、その生理機能が徐々に明らかになってきた。ncRNA は、塩基対合によって遺伝子発現制御のガイド役として機能するものや細胞内の構造的基盤として機能するものなど多彩であり、このような特性は、ncRNA 自体だけでなく、それに結合した蛋白質によってもたらされる。従って、ncRNA を中心に形成される複合体、すなわち「ncRNA アーキテクチャ」を理解することがポストゲノム時代における生命システムの解明に重要である。本WS では、生物種を問わず核内におけるncRNA アーキテクチャに関する先進的な研究を展開している国内外の研究者に講演していただき、議論を通じて古典的ncRNA によって得られた概念とは一線を画す新たなncRNA アーキテクチャの基本原理の理解につなげたい。


3W12-p12月3日(木) 14:00-16:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

Nutri-developmental biolog :栄養に応じた発生調節の分子メカニズムの理解に向けて

オーガナイザー: 丹羽 隆介(筑波大学) / 上村 匡(京都大学)

従来の発生生物学のほとんどの研究では、実験室の均一飼育条件の下で起こる現象に焦点が当てられてきた。一方、発生プログラムは、外環境に応じて柔軟に変化できるポテンシャルを元来秘めている。こうした外環境の典型例として、個体を取り巻く栄養が挙げられる。発生プログラムは、貧富の栄養条件下の変化が生じてもそれに適応し、分化と形態形成の安定性を保持する。しかし、こうした栄養依存的な発生調節を下支えする遺伝メカニズムに関する研究『Nutri-developmental biology』は未だ多くない。本ワークショップでは、ショウジョウハエと線虫に敢えて対象を絞り、精緻な分子遺伝学を基軸としながら、次世代シーケンシング、メタボローム解析、ケミカルライブラリー、大規模変異系統コレクション、画像解析などの現代的手法/リソースを活用した最新の研究を紹介し、栄養と発生の理解の現状を議論したい。


3W13-p12月3日(木) 14:00-16:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

最先端の光イメージング技術と医学・生物学への新たな展開

オーガナイザー: 大嶋 佑介(愛媛大学) / 片桐 崇史(東北大学)

生体深部の観察を可能にする多光子励起顕微鏡や光シート顕微鏡、光の回折限界を超えた分解能を実現した超解像顕微鏡、生体分子を無染色で可視化するラマン散乱イメージングなど、最先端の顕微鏡技術が次々と誕生し、普及しつつあるなかで、光イメージング技術の新たな応用展開を見据えた異分野連携を促すべく、本ワークショップでは工学分野および医学・生物学分野で顕微鏡開発や生体光イメージング技術の応用に携わる若手研究者を演者として迎え、最先端技術の原理や応用に関する基礎的知識を共有し、その将来展望について未知の生命現象の解析や疾患メカニズム解明や治療診断への応用の観点から議論したい。


3W14-p12月3日(木) 14:00-16:30 第14会場(神戸国際会議場 1F メインホール)

がんとワールブルグ効果

オーガナイザー: 曽我 朋義(慶應義塾大学) / 江角 浩安(東京理科大学)

多くのがんは代謝を解糖系にシフトしてATPのみならず、増殖、転移に必要なや核酸、タンパク質、脂質などの生体高分子の前駆体を生産することが知られており、このがん細胞特異的な代謝は、ワーブルグ効果として名高い。実際に、各種のがん細胞、がん組織、がん幹細胞やがんの進展に関する過程でワーブルグ効果は頻繁に観察されている。近年の次世代シーケンサー、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム解析などの網羅的測定技術や分子生物学の手法の進展に伴い、ワーブルグ効果に重要な役割を果たしている因子や分子機構が徐々に明らかになってきた。本ワークショップでは、最先端のがん研究をされている先生方に最新の知見を紹介して頂き、100年来のがんの謎であるワーブルグ効果の本質に迫りたい。


3W16-p12月3日(木) 14:00-16:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

糖鎖を利用した、異物と宿主の生存戦略

オーガナイザー: 山本(日野) 美紀(立教大学) / 白土 明子(金沢大学)

本ワークショップでは、感染病原体やがん細胞(異物)と宿主間のめくるめく攻防戦における糖鎖の役割について、最新の知見を提供する。宿主細胞に感染して増殖する病原体やウイルスは、宿主の糖鎖を使って侵入し、宿主の糖鎖を改変して、自分自身の生存や増殖に都合がよい環境を作り出している。また感染病原体やある種のがん細胞は、自分自身の糖鎖を使って、宿主の異物排除機構を回避している。一方、宿主は感染病原体の糖鎖を認識して免疫系を活性化させるだけでなく、自らの糖鎖を変化させて、感染病原体に対抗または寛容を誘導していることが明らかとなってきた。こうした様々な局面における感染病原体および宿主側の巧妙な戦略について、モデル動物による基礎的研究から糖鎖科学に基づく応用的研究に取り組む研究者が発表を行う。そして、生体防御における糖鎖の新しい機能を理解し、糖鎖を標的とした新しい創薬の可能性についても議論する。


3W19-p12月3日(木) 14:00-16:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

生命システム原材料の起源と進化:遺伝子編成の基本原理は何か? ‐オペロン説を超えて‐

オーガナイザー: 三瓶 嚴一(電気通信大学) / 根本 直樹(千葉工業大学)

私たちは2010年以降の本大会において,「生体システムは如何にして作られたか?」「ゲノムから見た物質代謝システムの統合性」「物質代謝システムの自己組織化」「生命の起源・進化・本質」というタイトルでワークショップやシンポジウムを開催してきた。そこでは,生命システム原材料がどのように選択されたか,それらを生合成する代謝やエネルギー代謝を原始生命体はどのように獲得し進化してきたか,といった問題について,科学的に検証可能な物質代謝の起源と進化の理論構築を目指した包括的な議論を行ってきた。 本大会では,ある機能に関わる一連の遺伝子群が,オペロンやクラスターを形成して並ぶ場合やバラバラに離れて存在する場合など,生物種によって大きく異なるというゲノム解析の結果を踏まえて,どのようなメカニズムでゲノム上での遺伝子編成が起こるのかという疑問に焦点を当て,その基本原理を明らかにすべく議論を進めたいと考えている。


3W20-p12月3日(木) 14:00-16:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

「生殖」から読み解く哺乳類の生命現象

オーガナイザー: 深見 真紀(国立成育医療研究センター研究所) /
宮戸 健二(国立成育医療研究センター研究所)

哺乳類は、多くの生物と同様に生殖によって子孫を残す。従来の研究から、脳・神経系、内分泌系によって生殖機能が制御されていることが知られている。一方、生殖機能は免疫系、更には個体の加齢と密接に関連していることを示す知見が、変異動物やヒト疾患患者の解析から集まりつつある。また、配偶子の加齢が妊孕性や胎仔/胎児ゲノムに与える影響が解明されてきた。そこで、本ワークショップでは、哺乳類において生殖研究から見えてくる生命現象全体の理解について議論するとともに、個体の生殖機能維持にむけての可能性と課題を討論する。


3W22-p12月3日(木) 14:00-16:30 第22会場(神戸国際展示場 2F 2A会議室)

トランスオミクスへ向けた定量生物学

オーガナイザー: 中山 敬一(九州大学) / 黒田 真也(東京大学)

生体内の全ての反応は、タンパク質とその化学修飾や代謝産物などを含む膨大な種類の分子の相互作用により制御されている。生体反応のメカニズムを全て明らかにするためには、ヒトの仮説や興味により特定の分子を計測する従来のアプローチ(仮説駆動型バイアス研究)ではなく、これらの分子の動態を偏りなく網羅的に定量計測する新しいアプローチ(データ駆動型非バイアス研究)が必要である。これらの計測対象は、ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボローム等の複数の階層にまたがり、階層を統合したシステムの解析(トランスオミクス)を行うことが今後のテーマであるが、その実現には各計測手法に高度な定量性が要求される。本シンポジウムでは、トランスオミクス解析に必須な定量計測技術と、これらのデータを統合して解析する数理手法の演題を通して、バイアスのない定量生物学の将来像について議論する。


3w24-p12月3日(木) 14:00-16:30 第24会場(神戸国際展示場 3F 3A会議室)

細胞運命変換

オーガナイザー: 菊池 裕(広島大学) / 鈴木 淳史(九州大学)

細胞は、分化過程において外部からの様々な情報を受け取ることにより自らの運命を決定する。決定された細胞の運命は、転写制御ネットワークが維持されることにより、安定した状態が保たれる。しかし、損傷・疾患などにより外部要因が大きく変化すると、再生或いは疾患関連のリプログラミングが起こり、細胞自身が自らの運命を変えることが知られている。さらに細胞内に特定の転写因子を導入することにより、強制的に細胞運命を変換できるダイレクトリプログラミングも報告されている。以上の様な外部環境変化や転写因子による細胞運命変換は、様々なモデル実験系を用いることにより解析が進められてきたが、細胞運命の自由な変換にはほど遠い状況である。本ワークショップでは、様々なモデル生物・モデル実験系を用いることにより、発生・再生・炎症・疾患・環境変化に応答した細胞運命変換の機構解明を目指した研究を紹介する。


3W26-p12月3日(木) 14:00-16:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

転写後制御を標的とした次世代創薬プラットフォーム

オーガナイザー: 山下 暁朗(橫浜市立大学) / 藤原 俊伸(近畿大学)

様々な生命現象において、mRNA転写後制御が重要な役割を果たしている。近年の研究進展により、mRNAスプライシング・分解・翻訳といったすべての転写後制御段階が疾患原因となること、また、疾患治療の分子標的となりうることが明らかとなりつつある。本ワークショップでは、転写後制御分子機構研究のために樹立したあらたな実験技術・手法を新規創薬プラットフォームとして応用する探索研究 (組織特異的翻訳試験管内再構成、選択的スプライシングモニタリング、mRNA分解モニタリング、個体を用いたmiRNA活性モニタリングなど)と同時に、転写後制御因子であるmiRNA/siRNAを用いた応用技術(機能性人工生体高分子、ガン標的治療、siRNA農薬など)について紹介することにより、転写後制御を標的とした次世代創薬プラットフォームの創出とその可能性を議論する場を設けたい。


3w27-p12月3日(木) 14:00-16:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

最先端技術を用いた局所クロマチン構造の包括的理解の試み

オーガナイザー: 和田 洋一郎(東京大学) / 藤井 穂高(大阪大学)

転写やエピジェネティクス制御をはじめとするゲノム機能の発現調節機構の解明には、局所におけるクロマチン構造の解析が必須である。局所クロマチン構造は、DNAと、蛋白質やRNA、さらには他のゲノム領域との相互作用によって決定されるが、近年、こうした相互作用を検出する方法論の開発が進んできた。本ワークショップでは、3C法及びChIA-PE法などの変法、遺伝子座特異的ChIP法、PICh法等を用いて、ゲノムの三次元構造など局所クロマチン構造の解明を目指した研究を俯瞰するとともに、セルオートマトン等の数理モデルや、persistent homology等のトポロジー解析による、局所クロマチン制御の基本原理を探索する試み等のトピックスを扱う。


4W512月4日(金) 9:00-11:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

虫の会(まじめ版)2 昆虫学のこれから

オーガナイザー: 尾崎 克久(JT生命誌研究館) / 伊藤 建夫(信州大学)

次世代型シークエンサーやゲノム編集技術の発展は目覚ましく、いわゆる“モデル生物”と“非モデル生物”の間にある障壁はかつてないほど低くなっている。好奇心をかき立てる、昆虫たちの多種多様な生命現象の解明に、分子の証拠を用いて挑戦できる世の中になった。これまでに培った研究技術を駆使し、昆虫たちが巻き起こす不思議な現象を理解したいと考える研究者は今後ますます増えていくことであろう。虫の会(まじめ版)2は、最先端の昆虫学研究の情報を共有し、分子生物学者としてどの様な取り組みが可能か議論することを目的とする。生態学的な研究を中心とする演者らと、分子生物学会の会員間で新規共同研究へ進展することにも期待する。


4W612月4日(金) 9:00-11:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

NAD+-poly(ADP-ribose)代謝を標的とした創薬研究の新展開ー基礎から臨床応用までー

オーガナイザー: 藤森 浩彰(国立がん研究センター研究所) / 佐藤 聡(東京理科大学)

NADを基質とするADP-リボシル化反応は低分子からタンパク質やDNAなど高分子を修飾する反応であり、様々な生体応答反応への関与が報告されている。近年、ポリADP-リボシル化を行うPARP familyの阻害剤はBRCA機能欠損型腫瘍に対する抗癌剤として認可されつつあるが、PARP familyの関与はクロマチン制御、分化、細胞死誘導等多岐にわたる。加えて、モノ及びポリ(ADP-リボース)のマクロドメインとの相互作用等、新たなシグナリング分子としての意義も報告されており、関連する基礎研究の推進がより求められている。本ワークショップではNAD代謝とリンクする種々のADP-リボシル化経路で働く多彩なシグナリング分子の機能に注目して生体応答におけるNAD代謝系からADP-リボシル化の反応経路の意義と制御を紹介し、多面的に討議することでPARPの新たな研究の発展に繋げることを目指す。


4W712月4日(金) 9:00-11:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

シリア・中心体系が織りなす生体システムのダイナミズム

オーガナイザー: 北川 大樹(国立遺伝学研究所) / 大森 義裕(大阪大学)

シリア(繊毛)と中心体は、単細胞生物から脊椎動物まで高度に保存された細胞内小器官であり、様々な生命現象の中でキーとなる役割を果たし密接に関連している。シリアは動力を基盤とした情報(フロー)を生み出す場であるだけでなく、細胞外からの情報入力装置(アンテナ)としての役割も担っている。シリアの基底部として機能する中心体は、細胞分裂において中心的な役割を担うだけでなく、シリアからの情報を細胞内に取り込み展開する司令塔としての役割が注目されている。一方、個体においてはシリア―中心体系システムは非対称分裂や左右軸の決定などの個体発生に必須の役割を持ち、このシステムの破綻は細胞のがん化、腎障害、網膜変性症、肥満、不妊症など様々な疾患を引き起こすことからも、シリア―中心体系システムの根本的な理解が必要とされている。本ワークショップでは、シリア―中心体系の構造、機能、そして個体発生や疾患との繋がりまで、幅広い視点からの研究を取り上げ、最新の情報をもとに議論を深めたい。


4W812月4日(金) 9:00-11:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

既成概念を超えるステロイド

オーガナイザー: 荻島 正(九州大学) / 向井 邦晃(慶應義塾大学)

従来、ステロイドホルモンはそれぞれ固有の臓器、すなわち性腺、胎盤および 副腎皮質において、特定の調節様式により合成分泌され、システミック(全身 的)な輸送を経て標的細胞で作用すると理解されてきた。しかし、近年の研究 は、ステロイドの合成と作用に関し、この既成概念を越えた次の結果をもたら している。(1)脳にはじまり最近では膵β細胞、肝臓、心血管系、筋肉、さらに 涙腺にいたるまで、局所的・ノンシステミックに生成・作用するステロイド、 (2)ヒトを含むホ乳類性腺で性非依存的に合成される11-ケトアンドロゲンな ど、(3)上位調節因子支配を受けずに独立にアルドステロン合成をするヒト副腎 皮質細胞群の形成、(4) 脊椎動物を離れた生物界における構造・機能も全く異 なるステロイド。本ワークショップでは、古典的ステロイドホルモンの枠組み を超えたステロイドの世界を探求する場として、最新の研究をもとに議論を深 め、さらなる飛躍を目指す。


4W912月4日(金) 9:00-11:30 第9会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 菊水)

ラジカル酵素の動作原理の解明―その特異性を支配する因子

オーガナイザー: 小林 一雄(大阪大学) / 鍔木 基成(神戸大学)

生体でのラジカル反応は1960年に山崎勇雄 (北大) がペルオキシダーゼ反応をESRフロー法により発見したことに遡る(JBC Centennial 1905-2005)。しかしながら、これまでのラジカル反応の研究のほとんどが、酸化ストレスに代表される過程に関与するもので、非常に特別な系に限られてきた。ラジカル反応は水素引き抜き、酸素分子との反応、ラジカル同志のカップリング等その反応は非特異的である。それに対して近年、リボヌクレオチド還元酵素やS-アデノシルメチオニン(SAM) 等の酵素反応において活性中心にラジカルを生成し、その活性種が酵素触媒反応に重要な役割を演じている例が明らかになった。これらの反応は、通常の有機化学反応では実行が困難なものも多い。本ワークショップでは生化学、構造生物学、理論化学等これらの分野を研究する第一人者に議論していただき、ラジカル酵素の新しい概念を提出したいと考えている。


4W1012月4日(金) 9:00-11:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

感染を制御せよ!微生物と宿主の“覇権争い”生物学

オーガナイザー: 案浦 健(国立感染症研究所) / 大西 なおみ(北海道大学)

感染症の分子メカニズムは、近年の分子生物学の進展に伴い日進月歩で解明されつつあるが、感染症は今なお世界中で多くの犠牲者を出し人類を脅かし続ける。なぜ感染症対策は一筋縄ではいかないのか?その原因の一端として、微生物と宿主間で繰り広げられる「覇権争い」が多様であり、環境により変動することが挙げられる。病原微生物は宿主内で増殖し拡散伝播するために様々な手段を講じ、宿主も微生物のこのような動向に対抗措置を講じる。また、同一の微生物感染であっても惹起する病態は宿主の生理状態によって異なり、不顕性感染から突如顕在化するなど、正にon goingな覇権争いが展開される。このような覇権争いの不可思議を紐解くためには、これまでに種々の病原体・領域で蓄積されてきた知見を共有し、共通メカニズムなどを議論する場が求められている。そこで本ワークショップは、このような“覇権争いの生物学”を病原体横断的に議論することを目的とし、自由な発想でこの問題に挑む研究者の講演を通して、そこから広がる生物学的魅力について議論したい。


4W1112月4日(金) 9:00-11:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

TORの実像に迫れ!

オーガナイザー: 丑丸 敬史(静岡大学) / 前田 達哉(東京大学)

タンパク質リン酸化酵素Target of rapamycin (TOR)は栄養源に応じて様々な細胞機能を制御することで細胞を環境に順応させる。TORはTORC1およびTORC2という異なる複合体を形成し、その下流のイベントは、タンパク質の新生、分解、脂質合成、細胞骨格、オートファジー等の制御を介して、細胞の分化、老化、がん、細胞死に深く関与する。TORシグナル系の解明は細胞の営みの俯瞰につながる。近年、ロイシンtRNA合成酵素を介したTORC1の活性制御のモデルが提示されたが、疑義も呈されている。TORの活性制御、およびその下流イベント制御の核心部分に関しては、虚実入り乱れた情報が錯綜し未だに秘密のベールに包まれている。本ワークショップでは、これらの核心部分の問題に加えて、TORにまつわる様々な諸現象を幅広く採上げることで、現時点における最先端の知見を集積しTORの実像に迫る。


4W1212月4日(金) 9:00-11:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

認知症に対する次世代創薬・診断に向けた展開

オーガナイザー: 富田 泰輔(東京大学) / 斉藤 貴志(理化学研究所)

認知症は、世界中で大きな社会問題に発展しているが、有効な予防・治療・診断法は未だに確立されていない。認知症を呈する病気はいくつかあるが、いずれの病気にも共通する病理は、“脳内での異常タンパク質の蓄積(プロテイノパチー)”であり、共通の病態形成機構の存在が示唆される。認知症で最も患者が多いアルツハイマー病の原因として、長らくアミロイドβペプチドとタウタンパクのどちらが重要か、ということが議論されてきた。しかし様々な解析から、いずれもが発症に必要であるという認識が確立しつつあり、抗アミロイド薬、抗タウ薬の開発が進められている。しかしアミロイドとタウをつなぐ分子機構や、それらの病態を修飾する因子及び病理の進展機構など未だ不明な点が多い。本ワークショップにおいては、アルツハイマー病及び認知症研究の新たな潮流を目指している研究者に、「次世代」創薬・診断への新たなアプローチを紹介していただき、議論したい。


4W1312月4日(金) 9:00-11:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

疾患とリンクする糖鎖―新しい研究分野からの挑戦

オーガナイザー: 山口 芳樹(理化学研究所) / 山本 一夫(東京大学)

糖鎖のもつ生理機能は、糖鎖関連遺伝子のノックダウンや過剰発現、糖付加アミノ酸変異による糖鎖の欠損、グリコシダーゼによる糖鎖の除去、プロセシング阻害剤による糖鎖構造の改変など、様々な実験手法によって明らかにされてきた。一方で、原因遺伝子の特定を契機に糖関連酵素やレクチンが特定の疾患に関わっている事象も多数見つかってきており、これまで全く知られていなかった新しい糖鎖機能の発見につながっている。また近年ではイメージング技術、インフォマティクス、計算化学などの新たな研究領域の参画があり、新たな視点から糖鎖機能の理解を深めている。本ワークショップでは、「疾患とリンクする糖鎖」と題して、疾患から明らかになる新しい糖鎖・糖鎖関連分子の機能発現メカニズムについて議論するとともに、これまで知られていなかった糖鎖の新しい機能を浮かび上がらせる異分野の研究についても紹介する予定である。


4W1612月4日(金) 9:00-11:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

はたらく細胞内共生体

オーガナイザー: 原 清敬(静岡県立大学) / 野崎 智義(国立感染症研究所)

真核細胞は、複数の生物が多重・多層に共生しあった結果、革新的な進化を遂げた。ミトコンドリアや葉緑体は、細胞内共生の結果として成立した成熟したオルガネラであるが、細胞内共生体にはそれ以外にも多様な適応段階にあるものが知られている。このような入れ子状態にある所謂マトリョーシカ型の生物では、異種の生物の持つ優れた特性がひとつの細胞内に共存するため、さまざまな利用可能な特性が認められる。それらを模倣し、改変し、さらにはまったく新しい共生関係を構築することで、様々な産業応用への試みが始まっている。ここでは、バイオマスの有効利用や有用物質の生産から環境浄化や放射能汚染の除去に至るまで、幅広い応用範囲を有する「細胞内共生体による共生細胞工学」を紹介する。


4W1912月4日(金) 9:00-11:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

tRNAワールド-翻訳系概念の新たな創造

オーガナイザー: 田村 浩二(東京理科大学) / 相馬 亜希子(千葉大学)

mRNAの塩基配列をアミノ酸配列に対応させる、いわゆる翻訳過程のアダプターとして発見されてきたtRNAは、二十世紀後半、生物学に大きな質的転換をもたらした。tRNAは特異的にアミノ酸と結合し(アミノアシル化)、特異的にmRNAと相互作用をする。tRNAに付加されたアミノ酸がつながることによって生み出されたタンパク質が行う化学反応が地球生命系の根幹である。tRNAをめぐる近年のいくつかの発見は、翻訳系そのものに対して新しい概念を提出している。tRNAそのものの起源、アミノアシル化におけるキラル選択性・アミノ酸特異性、tRNAの塩基修飾に関する分子認識、tRNAがコドンを解読する際の厳密な機構、翻訳品質管理システム、そして、翻訳終結の分子メカニズム。本ワークショップでは、「tRNAワールド」におけるこれら最近の知見を俯瞰しつつ、それをもとにして翻訳過程を考え直すことで、分子生物学における新概念を生み出す起爆剤にし、生命の本質に迫ることを目的とする。


4W2012月4日(金) 9:00-11:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

受精を支える分子とそれを取り巻く分子環境

オーガナイザー: 井上 直和(福島県立医科大学) / 真野 昌二(基礎生物学研究所)

動物、植物に限らず、次世代へ遺伝情報を伝える役割は配偶子の融合による受精に託されている。しかしながら、一口に受精と言っても、配偶子の接近、認識、融合、細胞内小器官の再構成といった様々な現象を含み、種において、その様式やそれを支える分子は多様化している。では、なぜこのような多様化が生じ、それはどのように制御され受精を支えているのであろうか? その答えを見つけ出すためには、様々な動植物種における受精戦略とそれを支える分子群を地道に理解する必要がある。本ワークショップでは、動植物の壁を撤廃して、横断的な論者により受精研究の最前線を紹介して頂き、受精研究の今後の広がりについて議論したい。


4W2112月4日(金) 9:00-11:30 第21会場(神戸国際会議場 5F 504+505会議室)

最先端のX線イメージング技術が拓く生命科学研究の新しい世界

オーガナイザー: 加道 雅孝(日本原子力研究開発機構) / 別所 義隆(理化学研究所)

イメージング技術の進展とともに生命科学研究は進歩してきた。観察原理や物理設計が違う様々な種類の顕微鏡により、細胞内の微細構造や生体分子の観察が可能となり、疾病の原因の究明にも繋がっている。X線をプローブに用いたX線顕微法は、高分解能と深い焦点深度を併せ持ち、無染色・無固定の生物試料を直接観察できるイメージング技術として、生命科学研究への貢献が期待されてきた。最近のSACLAをはじめとしたX線レーザーの開発や高強度レーザーを用いた高輝度短パルスX線源の開発により、遺伝情報の伝達機構や免疫の作用機序、アポトーシスによる細胞核の構造変化の詳細観察などに成功し、複雑な生命現象解明に寄与する段階になった。最先端のX線顕微法を駆使した生命科学研究への応用例を紹介し、X線イメージング技術が切り拓く生命科学研究の未来について議論を行う。


4W2612月4日(金) 9:00-11:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

ゲノムストレス応答における普遍性と多様性の相互転換

オーガナイザー: 井倉 毅(京都大学) / 垣塚 彰(京都大学)

マウス疾患モデルやヒトの遺伝病の解析からゲノムストレス応答の破綻が、がんや神経変性疾患を引き起こすことはよく知られている。今後、疾患研究としてゲノムストレス応答研究をさらに発展させるためには、網羅的な解析によって得られた膨大な知見を個々に統合、再構成し、これまでの普遍性に視点をおいた研究から、組織あるいは細胞特異的なゲノムストレス応答研究、すなわち多様性に視点をおいた研究に目を向けることが重要である。本ワークショップでは、ゲノムストレス応答研究に関して、従来の遺伝学あるいは生化学的アプローチに加え、分子イメージング、超高解像顕微鏡解析、定量生物学的手法などを取り入れた新たな視点での融合研究の可能性を提示する。その中で特に、様々な組織あるいは細胞においてゲノムストレス応答の多様性が生み出される仕組みについて考察し、ゲノムストレス応答とがん、神経変性疾患等の難治性疾患の発症メカニズムとの関係について議論したい。


4W2712月4日(金) 9:00-11:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

生物時計と外部環境の統合機構

オーガナイザー: 八木田 和弘(京都府立医科大学) / 深田 吉孝(東京大学)

我々の身体には昼夜一日のリズムを予測する「体内時計システム」が存在し、睡眠覚醒や体温といった生理機能の「概日リズム」を生み出すことで健康を維持している。この「体内時計」は明暗などの光条件や他のさまざまな因子によってリセットされる機構をもつため外部環境の周期的変化に同調できるが、この同調機構が攪乱される不規則な生活習慣やシフトワークなどにより、体内時計が乱れる「概日リズム障害」が引き起こされる。また最近では、体内時計は生涯にわたって質的な変容を遂げることが分かってきた。特に発生発達期と老年期には体内時計の出力が弱く、外部環境への適応機構も脆弱である。発生発達期および老年期における体内時計の変化の分子基盤を解明することで、生涯にわたる生物時計と外部環境との統合機構を理解することができる。本ワークショップでは、生物時計と環境との接点を探り、生涯にわたる生物時計の質的変容と、環境要因による同調機構との統合的理解を目指す融合研究の試みを紹介したい。


4W2-p12月4日(金) 14:00-16:30 第2会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽1)

クロマチン構造の階層的変換によるゲノム機能制御メカニズム

オーガナイザー: 胡桃坂 仁志(早稲田大学) / 原田 昌彦(東北大学)

多様なクロマチン構造によって遺伝子発現やゲノム安定性が支配され、これによって細胞機能および発生・分化などの高次生命機能が制御されている。クロマチンの構造は、複数の階層により調節されている。すなわち、ヒストン修飾やヒストンバリアントによるクロマチン自体の特性、ATP加水分解活性を有するリモデリング複合体やシャペロンによるクロマチン構造の変換、さらに細胞核構造との相互作用によるクロマチン空間配置や機能因子の集積などである。これらの階層的なクロマチン構造調節により、複雑な生命現象の制御が可能となっている。その一方で、このような階層的調節の存在が、時間的・空間的なクロマチン機能制御メカニズムの解明を難しくしている。最近の分子生物学的・構造生物学的手法の進展や、イメージングやモデリングの手法との組み合わせによって明らかになってきた最新の知見を紹介し、論議したい。


4W3-p12月4日(金) 14:00-16:30 第3会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽2)

再生と破綻を制御する新しい血管生物学

オーガナイザー: 山下 潤(京都大学) / 渡部 徹郎(東京薬科大学)

血管は全身に分布し、酸素や栄養分を供給することで成体の恒常性の維持に必須の役割を果たしている。そのため、糖尿病による動脈硬化症などによる血管機能の低下は組織の壊死を引き起こし、再生医療の手法を用いた血管の再構築は急務である。また、近年肝臓などの組織を3次元構築するにあたって血管の存在がその効率を上昇させることから、様々な組織の再生における血管の重要性が改めて注目されている。一方、がんの進行ならびに転移において血管は中心的な役割を果たすため、がんの治療において血管新生は抑制する治療標的となっている。つまり、血管の形成機構の生化学的・分子生物学的解明は基礎・臨床の両者において重要な意義を持つ。本ワークショップでは再生医療と腫瘍医科学の2分野に焦点を絞り、当該分野における第一線の研究者が集いその最先端を紹介する。


4W4-p12月4日(金) 14:00-16:30 第4会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 偕楽3)

分子生物学の新技術から捉えた「生老病死」の最前線

オーガナイザー: 田中 知明(千葉大学) / 南野 徹(新潟大学)

ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームの解析技術やゲノム・遺伝子編集技術の目覚ましい進歩により、ゲノムの配列情報のみならず、細胞内・細胞間・臓器間の多くの情報が捉えられるようになってきた。釈迦の目指した「生老病死」への分子生物学的回帰である。核初期化・細胞老化に代表されるような細胞生命現象の多様性と複雑さのみならず、環境や臓器・個体とのクロストーク、エピゲノム制御や分子シグナルとの結びつきが引き起すがんや糖尿病など多くの病気の原因との結びつきである。例えば、癌抑制遺伝子p53はこれらの作用メカニズムを用いて「生(まれ変わり):核リプログラミング」、「老:細胞老化・個体老化」、「病:がん・生活習慣病」、「死:アポトーシス」を制御するkey regulatorとも言えよう。本ワークショップでは、「生老病死」をテーマに分子生物学の新技術から捉えた研究を紹介する中で、最先端の知見を議論したい。


4W5-p12月4日(金) 14:00-16:30 第5会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 和楽)

環境応答とエピジェネティクス

オーガナイザー: 近藤 隆(神奈川科学技術アカデミー) / 磯野 協一(理化学研究所)

生体は環境に応じて、表現型を変化させる。また、その表現型の変化は遺伝子発現の変化を伴っている。これらの応答のほとんどは遺伝子の配列の変化を伴う物では無く、いわゆるエピジェネティックな応答であり、この反応により、疾病発症の頻度も決定されると考えられる。また、この変化は必ずしもその環境下に有る当該世代のみならず、子孫の表現型にも影響することが近年明らかになって来ている。このセッションでは、発生における、シグナリング等による細胞を取り巻く微小環境の変化に対する遺伝子発現変化応答のメカニズムといったミクロな視点から、栄養状態、生育環境等の個体を取り巻く環境の変化に対する個体としての表現型の応答といったマクロな視点までの様々なレベルの外部環境とエピジェネティック変化の関係、およびその世代間伝播を対象として議論を深めたいと考えている。


4W6-p12月4日(金) 14:00-16:30 第6会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 生田)

ホスファターゼ研究のカティングエッジ:メディカルイノベーションへの橋渡しを目指して

オーガナイザー: 坂口 和靖(北海道大学) / 的崎 尚(神戸大学)

プロテインホスファターゼは、細胞増殖、分化、運動、接着など多彩な細胞機能の制御に関与している。一方で、生体内情報伝達の中心的役割を担うタンパク質リン酸化の制御異常は、癌、炎症、代謝異常を含む多様な疾患と深く関連している。最近、包括的なgeneticおよびproteomic解析や遺伝子改変マウスを用いた解析に基づき、プロテインホスファターゼの新たな生理機能や疾患との関連性が次々と明らかになっている。また、抗癌剤や疾患治療薬を目指した各種プロテインホスファターゼに対する分子標的薬開発も精力的に展開されている。本ワークショップでは、プロテインホスファターゼ研究の分野で世界的に活躍する方々に、プロテインホスファターゼの新規な活性制御機構やシグナル伝達制御における機能、さらに疾患との関わりや臨床応用への取り組みに関して、最新の知見と将来への展望についてご紹介いただく。


4W7-p12月4日(金) 14:00-16:30 第7会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 布引)

小胞体ストレス応答による生体内恒常性維持:臓器連関の新展開

オーガナイザー: 森 和俊(京都大学) / 堀 修(金沢大学 )

小胞体ストレス応答(UPR: unfolded protein response)は酵母から哺乳類細胞まで保存された細胞内応答系であり、その破綻は脳虚血、神経変性疾患、糖尿病、肝障害、ウイルス性疾患など様々な病態の形成・進展にかかわることが知られている。一方、最近の研究から、この小胞体ストレス応答は我々の生体内恒常性維持においても重要な役割を担っていることが明らかになってきた。本シンポジウムにおいては、生体内における恒常性維持機能に欠かすことのできない①視床下部-末梢系、更には、②臓器間のネットワーク(臓器連関)における小胞体ストレス応答の重要性について最新の知見を紹介し、細胞自律的(cell autonomous)及び細胞非自立的(non-cell autonomous)に働く小胞体ストレス応答について理解を深めたい。


4W8-p12月4日(金) 14:00-16:30 第8会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1F 北野)

生体金属の最前線

オーガナイザー: 城 宜嗣(理化学研究所) / 石森 浩一郎(北海道大学)

金属イオンは生体内において生命維持に必須の構成要素であり,最近の研究によりその生物学的,医学的な重要性とともに,生体内の種々の反応過程における金属イオンの有する化学的,生化学的な特異性が注目され,さらにその機能異常と病態についても議論が進められている。本シンポジウムではこのような生体金属,特に生体内には微量しか含まれていないにもかかわらず,その機能的重要性が指摘されている遷移金属イオンについて,その生体内での生物学的動態から,タンパク質との相互作用やその機能制御,遷移金属タンパク質の生体内における機能発現機構,さらには遷移金属イオンの生体内恒常性の破綻による病態に至る分子レベルから個体レベルまでの広い範囲における最新の研究を概観し,合わせて今後の研究の方向性について,さまざまなバックグラウンドを有する研究者の講演から議論したい。


4W10-p12月4日(金) 14:00-16:30 第10会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F トパーズ)

RNA制御のケミカルバイオロジー

オーガナイザー: 片岡 直行(京都大学) / 谷 時雄(熊本大学)

真核生物の遺伝子発現においては、選択的スプライシング、RNA編集、翻訳、そして長鎖non-coding RNAやmicroRNAによる制御など、DNAからRNAへの転写後に様々な制御を受ける。それらの転写後制御に影響を与える低分子化合物を用いた解析は、RNA研究においても新たな注目を浴びており研究が進んでいる。本ワークショップでは、RNAケミカルバイオロジーについて、RNA制御機構解明の基礎的研究から、難治性疾患治療への応用を目指した研究まで、幅広い視点から紹介し、今後の展開を見据えた議論を行いたい。


4W11-p12月4日(金) 14:00-16:30 第11会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F エメラルド)

植物成長の可塑性・頑強性とその調和の制御機構

オーガナイザー: 梅田 正明(奈良先端科学技術大学院大学) / 伊藤 寿朗(奈良先端科学技術大学院大学)

植物は動物とくらべて高い再生能を持ち、かつ外環境の変化に柔軟に対応して成長をなし遂げている。その根源となる植物の分裂組織では幹細胞が一生を通じて増殖を繰り返し、器官を構成する新しい細胞を供給し続ける。植物成長は植物ホルモンなどを介したシグナル伝達系により、環境変動に柔軟に適した最適化を果たしている。遺伝学的および分子生物学的解析から、植物の発生・成長過程において、環境変動を植物の内生シグナルに翻訳して最適化した成長をなし遂げる可塑性の分子機構、逆に環境変動に応答せず恒常性を維持する頑強性の分子機構、さらにはそれらのバランスを保つ調和のしくみが明らかにされつつある。本ワークショップでは、植物成長の可塑性、頑強性およびその調和機構に着目した研究の最新の知見を紹介し、議論する場としたい。


4W12-p12月4日(金) 14:00-16:30 第12会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ダイヤモンド)

個別化・予防医療での新たなパラダイムの創出
-健康・医療ビッグデータとスーパーコンピュータがもたらすもの-

オーガナイザー: 宮野 悟(東京大学) / 井元 清哉(東京大学)

急激なゲノム解析技術の革新と高精度計測機器の登場は、研究ならびに医療現場で新たな健康・医療ビッグデータを生み出しつつある。一方、「京」に代表されるスーパーコンピュータの進歩は生命科学・医学の歴史においてかつてないビッグデータ解析研究とシミュレーション研究を可能としてきている。これら研究の先には生命科学および医学をさらに高度化し、国民の健康に資するための新たなパラダイムの創出が期待されている。本ワークショップでは、現在および将来(2020年代)のスーパーコンピュータを視野に入れ、健康・医療ビッグデータ解析と生体階層統合シミュレーションを融合し、個々人に適した医療および、健康寿命を延ばす予防医療をめざした研究戦略について議論する。


4W13-p12月4日(金) 14:00-16:30 第13会場(神戸ポートピアホテル 南館 B1F ルビー)

宇宙における生命の起源と進化:偶然と必然

オーガナイザー: 山岸 明彦(東京薬科大学) / 平尾 一郎(理化学研究所)

太陽系外に惑星候補が5000個以上発見されている。液体の水を持つ可能性のある惑星も複数発見され、そこでの生命探査が科学的課題となっている。太陽系内天体での有機物と生命の探査計画も準備が進んでいる。地球外にそもそも生命体はいるのか。いるとすればそれは、どのような生命体なのか。今から半世紀近く前にJ. モノーは完全にランダムに起きる変異と、進化の必然性の関係を論じた。宇宙での生命探査が現実のものとなりつつある今、もう一度生命の誕生と進化の必然性と偶然性を精査する必要が出てきている。生命の誕生と進化は偶然なのか必然なのか。生命が誕生するとしたら、それは炭素を主体とする生物なのか。アミノ酸、DNA、細胞は必然なのか。現在の地球生命の生化学は、偶然なのか必然なのか。多細胞化は必然なのか。知的生命体はSFなのか。それとも宇宙のどこかでは誕生する可能性があるのか。生命の誕生から知的生命体に至る各ステップの偶然性と必然性を検討する。


4W15-p12月4日(金) 14:00-16:30 第15会場(神戸国際会議場 3F 国際会議室)

低酸素バイオロジーの最前線;細胞機能を制御する低酸素シグナル

オーガナイザー: 井上 正宏(大阪府成人病センター) / 武田 憲彦(東京大学)

生体内では外的ストレス、組織構造変化などに伴い局所の酸素分圧がダイナミックに変化するが、酸素供給の相対的な低下は低酸素(ハイポキシア)シグナルを活性化させる事が知られている。これまで転写レベルでの細胞応答機構として、低酸素センサーとして機能するPHD、およびエフェクターとしての低酸素応答型転写因子HIFに注目したアプローチが広く行われて来た。近年、低酸素シグナルの研究は細胞代謝、エピジェネティクス系への関与のみならず、未知の低酸素センサー・エフェクターの探索など新たな展開を迎えている。これらのアプローチの結果、低酸素シグナルが単なるストレス応答では無く、細胞の固有な機能獲得において重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。本ワークショップでは、細胞、臓器および個体レベルでの恒常性維持機構において低酸素シグナルが果たしている役割について議論したい。


4W16-p12月4日(金) 14:00-16:30 第16会場(神戸国際会議場 3F レセプションホール)

シグナル伝達を制御する糖・糖鎖

オーガナイザー: 岡島 徹也(名古屋大学) / 竹松 弘(京都大学)

細胞は例外なく糖鎖で覆われており、分子レベルで見ても、多くのシグナル分子が糖鎖修飾されている。そこで、細胞間のコミュニケーションにおいては糖鎖がインターフェース的に存在する状態で、シグナル分子間の相互作用がおこる。糖鎖構造の複雑性とその発現の特異性・多様性から、糖鎖は細胞間コミュニケーションの機能制御における主要因子であると推測される。本ワークショップでは、糖修飾を介したシグナル伝達の制御とその分子機構についての最近の話題について、糖鎖生物学の内外の研究者を交えて論じたい。


4W19-p12月4日(金) 14:00-16:30 第19会場(神戸国際会議場 5F 501会議室)

筋生物学の最前線~疾患克服に向けた統合的理解~

オーガナイザー: 金川 基(神戸大学) / 小野 悠介(長崎大学)

骨格筋は日常生活動作に必須であり,その作動原理に関して本邦の研究者が多大な貢献を果たしてきた。最近では,non coding RNAや翻訳後修飾による骨格筋の適応維持の分子原理や,筋幹細胞を中心とした筋発生・再生に関して,まったく新しい分子機序も明らかになりつつある。また,骨格筋は生体最大のエネルギー代謝臓器として位置づけられること,ミオカインに代表される生理活性物質を分泌する内分泌器官としての新機能も同定されたことから,多臓器ネットワークを介した治療・薬剤標的組織としても注目されている。つまり,筋ジストロフィーなどのいわゆる難治性筋疾患のみならず,国民的問題である生活習慣病や加齢性筋萎縮(メタボリック・ロコモティブ症候群)など,様々な疾患の予防・治療技術の開発,更には,超高齢化社会や東京五輪をひかえ,個人の運動機能やQOLの向上に,まさに骨格筋の統合的な理解が必要とされている。本WSでは,今さまざま分野から熱い視線が注がれている骨格筋の最先端研究について,BMBならではの視点から若手研究者を中心に議論し,統合的筋生物学への展開や医療福祉への貢献を考える場としたい。


4W20-p12月4日(金) 14:00-16:30 第20会場(神戸国際会議場 5F 502会議室)

今こそ微生物の分子生物学・生化学を

オーガナイザー: 河原林 裕(九州大学) / 木村 誠(九州大学)

ヒトゲノムが解読され疾患遺伝子の探索や再生医療による治療の実現に注目が集まっている。しかし、ヒトに一番の恩恵を与えているのは微生物だという事を、アルコール好きで無くとも理解頂けると思う。様々な発酵食品、加工食品、防腐効果、医薬品等に微生物は大きな貢献をしている。さらに次世代シーケンサーが普及した現在では大きな遺伝子資源としても理解されるべきものであろう。微生物の新たなゲノム配列が決定されると中には機能未知遺伝子が多数見いだされてくる。さらに我々ヒトには培養できない微生物が、この地球上には無数に存在する事が推定されている。これらヒトへの貢献度の高い微生物の今後の利用、ゲノム時代の新たな取組み等について、微生物を研究対象としているが異なるアプローチをされている研究者、さらに応用面については企業の研究者の方に集まって頂き議論する場を設け、今一度微生物の有用性・発展性について考えてみたい。


4W21-p12月4日(金) 14:00-16:30 第21会場(神戸国際会議場 5F 504+505会議室)

寄生、共生が駆動する多様な生物進化

オーガナイザー: 永宗 喜三郎(国立感染症研究所) / 金子 修(長崎大学)

あらゆる生物は単独では存在できず、必ず他の生物との密接な関係を構築したうえで存在している。この「自己と非自己の関係性」はしばしば生物進化の原動力となっており、この関係性を分子生物学的、生化学的に理解することは、進化の過程を理解する重要な手掛かりを提供するものと考えられる。このような事象の典型的な例として、腸内共生細菌と宿主との共進化、細胞内共生オルガネラの成立と宿主による隷属化(あるいはオルガネラによる宿主の隷属化)、病原体と宿主との果てしない戦いと、その結果としての共進化や遺伝子転移などがあげられる。本ワークショップでは、このような「関係性の生物学」を分子生物学的、生化学的なアプローチにより理解しようと試みた最新の研究例を紹介する。これらの事象を統合的に議論することにより、進化の原動力としての生物間の関係性の重要性を浮き彫りにしたい。


4W26-p12月4日(金) 14:00-16:30 第26会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールA )

産業応用を指向した細胞の操作・計測技術の最先端

オーガナイザー: 藤田 聡史(産業技術総合研究所) / 河原 正浩(東京大学)

分子生物学・生化学の進展に伴って、細胞内の様々な事象に対する理解が急速に進んできた。一方、得られた知見を利用して細胞を工学的に操作・加工・計測・評価し、その過程で見出された有用な分子や加工された細胞を物質生産・創薬・再生医療といった産業分野に応用する研究が注目を集めている。中でも、遺伝子工学・蛋白質工学を駆使した細胞機能改変技術とそれを評価・支援する細胞アレイ技術やデリバリー技術、細胞挙動の計測・理解に基づいた三次元組織の調製技術、およびマイクロ流体デバイスを駆使した細胞操作技術の進展は近年著しく、これらの要素技術を用いて、医薬品生産・創薬ターゲット選定に関する技術革新や、複雑な三次元組織を簡便且つ任意に調製するための技術開発が進んでいる。本ワークショップでは、細胞の操作・計測技術に関する研究を意欲的に進めている新進気鋭の若手研究者による最新の研究成果を紹介し、本分野の今後の発展性について議論したい。


4W27-p12月4日(金) 14:00-16:30 第27会場(神戸商工会議所 3F 神商ホールB )

mRNA分解の機能破綻がもたらす多様な疾患病態

オーガナイザー: 竹内 理(京都大学) / 久場 敬司(秋田大学)

遺伝的変異に起因するRNAの分解、スプライシングなどの代謝異常が疾患発症の原因になることが家族性の精神神経疾患や悪性腫瘍などで知られており、これらの知見はRNA代謝の分子機構の解明に大きく貢献してきた。一方で、疾患におけるmRNA分解異常が特定の遺伝性疾患や一部の悪性腫瘍のみならず他の疾患病態にも寄与するかは不明であった。近年、サイトカインmRNAを調節するRNA分解酵素Regnase-1の発見、心機能制御や肥満代謝におけるCCR4-NOTデアデニレースの重要性が報告され、さらに神経変性疾患で長らく機能不明であったAtaxin-2がmRNA分解抑制の機能をもつことが新たに発見された。したがって、mRNA分解制御が高次生命機能の発現、臓器の恒常性維持に不可欠であるという概念が確立されつつある。本ワークショップでは、神経、免疫など様々な疾患をmRNA分解の機能破綻というキーワードで俯瞰することで、高次機能維持の新しい視点を提示し、活発な議論を展開したい。