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偏見や・ヘイトスピーチに及ぶ映画「ある男」

2023-11-20 NEW!
カテゴリ:つぶやき

 映画『ある男』は、平野啓一郎さんによる日本の長編小説で、『文學界』2018年6月号に掲載されたのち、2018年9月30日に刊行されました。第70回読売文学賞受賞。2022年に石川慶が監督を務め、実写映画化されました。第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞に選出された、とても深い味わいのある作品となっています。

 

「ある男」の妻となる里枝は、前の夫と離婚後、子供を連れて故郷に帰り、そこで出会った「ある男」谷口大祐と再婚。新たに生まれた子供と4人で暮らしていましたが、大祐は事故で他界してしまいます。ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が、遺影に写っているのは大祐ではないと告げたことから、夫が全くの別人だったことが判明します。かつて里枝を担当した弁護士・城戸章良は大祐の正体を追う中で、驚くべき真実に近づいていきます。

 

里枝の夫である大佑は、本人ではない・・・。温泉旅館の次男である大佑という男は、結婚していた男とは全くの別人であることを知る里枝。では、自分が愛したこの男は一体誰なのか?そのルーツを探っていくと見えてくるのは、戸籍交換をするブローカーの存在。大佑を名乗っていた男は、死刑囚の息子の小林誠という人物でした。死刑囚の息子という出自からどうしても逃げ出したかったのです。父親にそっくりな自分の顔を見るたびにどうしようもない苦しい衝動に駆られ、父親の顔を被った自分の姿を見ることがたまらなく嫌でした。

 

どんなに近しい相手でも、その人から「あなたはこういう人」と決めつけられてしまうと、それはその人にとってはすごく息苦しいこと・・・。どう生きていても父親の影がちらついていきます。暴力的な面を見せれば「死刑囚の父親」だからとレッテルを貼られます。小林姓から母親の旧姓に変えたところでどこかでバレてしまう・・・。呪縛のような名前から逃れるために、戸籍交換をしたのです。

 

人里離れた場所で生きていこうとしたところで、里枝と出会います。里枝は幼い子どもを亡くし、元夫と離婚・・・実家に帰ると父親が亡くなるという壮絶な境遇にありました。2人は程なくして愛し合い、結婚します。里枝のもう1人の子供と、2人の間にできた娘と4人で仲良く暮らしていました。過去を話さない男でしたが、その時間が幸せだったことは、里枝と息子の悠人とのやりとりでわかりますが、そこで暮らした4年間はとても平穏なものでした。

 

「こうやってわかってみるとですけど、本当のことを知る必要はなかったのかもしれません」・・・これは、真実を知った里枝が、城戸に言った言葉です。男と出会い、愛し合って、家族と仲良く過ごした時間は事実だったし、家族を愛していたし、そして愛されていたのですから。

 

城戸は、里枝からの依頼で調査を続けるうちに、自分の出自とも否が応にもむき合うことになります。在日3世という立場で、日本に帰化し、日本人の妻を持つ。日本人の生活に溶け込んでいるものの、出自がついてまわるのは、城戸も同じでした。殺人鬼の息子という、戸籍を変えてでも逃れたいと願うほどの出自ではないにしろ、義父のように在日に対する偏見のある人に出会ったり、外国人へのヘイトスピーチがテレビで報道されたりするたびに自分を意識せざるを得なかったのです。

 

色々な物事や過去に囲まれてその人自身の本質が見えにくくなる中、本当に大切なものは、そこにある「その人そのもの」を見てあげる事。一方的な思い込みから誹謗中傷が、そこかしこから溢れ出し、暴走し、心無い刃となって罪もない人まで傷つけていきがちな世の中・・・。もっと皆が思いやりのある世の中になっていって欲しいものです・・・。

 

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